今日の一冊バックナンバー

  • May

    02

    『砂上のファンファーレ』早見和真(幻冬舎)

    『砂上のファンファーレ』早見和真(幻冬舎)

    何を考えているかわからない父、母の突然の病気、住宅ローン、新たに発覚する借金・・・どこにでもいそうな家族に次々おそいかかる問題。読み進むにつれ、読者はやがて錯覚する。これってウチのこと―? 地震後、完読した最初の本が本書でした。リアルなのに、どこか滑稽。家族を客観的に見ることのできる快作。

    (ミシマ社 三島邦弘)

  • May

    06

    『ぼくが真実を口にすると 吉本隆明88語』勢古浩爾(筑摩書房)

    『ぼくが真実を口にすると 吉本隆明88語』勢古浩爾(筑摩書房)

    「結婚して子供を生み、そして、子供に背かれ、老いてくたばって死ぬ、そういう生活者をもしも想定できるならば、そういう生活の仕方をして生涯を終える者が、いちばん価値がある存在なんだ」
    吉本46歳のときの言葉です。
    人の生について考えざるを得ない毎日だからこそ、この言葉が響きます。

    (ミシマ社 大越裕)

  • May

    09

    『次郎物語』下村湖人(新潮文庫ほか)

    『次郎物語』下村湖人(新潮文庫ほか)

    小学校の頃、何が琴線にひっかかったのか、夜更かししてまで読んだ本。子どもだったので徹夜はできず、布団の傍にテーブルライトを置いて読み耽っていたら、本気で火事になりかけました。。。里子に出された次郎が結局実家に戻って育つ幼少期、複雑な感情を抱えての青年期まで一気に読み進み、5巻まで読んで実は未完だった・・・と気づいた時の衝撃は今でも忘れられません(涙)

    (東京都 紀伊國屋書店 店売総本部和書仕入本部 池田飛鳥さん)

  • May

    10

    『シャーロック・ホームズ10の怪事件』ゲイリー・グレイディ/スーザン・ゴールドバーク/レイモンド・エドワーズ著、各務三郎訳(二見書房)

    『シャーロック・ホームズ10の怪事件』ゲイリー・グレイディ/スーザン・ゴールドバーク/レイモンド・エドワーズ著、各務三郎訳(二見書房)

    長崎の商店街の個人書店で見かけて以来、ずっと気になっていた本。捜査資料が一緒についてくる、いわばロールプレイングのはしり。当時買えなくて、タイトルも出版社もわからず、これを見つけられたら辞めてもいいと思っていたのですが、3年もしないうちに当時の仕入部長が見つけて下さり。。。なんだか今に至ってます(爆)

    (東京都 紀伊國屋書店 店売総本部和書仕入本部 池田飛鳥さん)

  • May

    11

    『アルセーヌ・ルパン全集(全30巻)』モーリス・ルブラン(偕成社)

    『アルセーヌ・ルパン全集(全30巻)』モーリス・ルブラン(偕成社)

    高校1年の1学期しか在学しなかった長崎の県立高校で、お昼休み削ってまで図書館に通い詰め、3日に一冊のペースで読んでいたくらいはまっていました(爆)ご存知、怪盗アルセーヌ・ルパンの活躍を描いた全集。今は、偕成社の児童用のもの等が入手可能ですが、私が読んだ高校の図書館所蔵のものは、革張りで束が厚いシリーズでした。今は移動時間が短いので重い単行本よりもっぱら文庫ですが、本はやっぱり単行本が良いですね。

    (東京都 紀伊國屋書店 店売総本部和書仕入本部 池田飛鳥さん)

  • May

    12

    『残像に口紅を』筒井康隆(中公文庫)

    『残像に口紅を』筒井康隆(中公文庫)

    言語が消滅してゆく世界の設定なので、当たり前なんですがこの本、最後にちゃんと文字がなくなるのです。言葉がなくなっていく過程で物語も終結していく。ラストの白紙は圧巻、です。

    (東京都 紀伊國屋書店 店売総本部和書仕入本部 池田飛鳥さん)

  • May

    13

    『チャイルド44(上)(下)』トム・ロブ・スミス(新潮文庫)

    『チャイルド44(上)(下)』トム・ロブ・スミス(新潮文庫)

    『このミステリーがすごい2009』(宝島社)海外編の第一位でした。ベストセラーはめったに手に取らないのですが、ソ連に実在した大量殺人犯:アンドレイ・ロマノヴィチ・チカチーロの事件をベースにしているとの事、チカチーロが表紙の本を数年前に販売していたのを思い出し、一気読みしました。この連続殺人事件が続いた要因が「殺人事件などというものは資本主義の悪しき弊害であり、共産主義社会では起きるはずがない。よって連続殺人犯など我が国では存在しない・・・」という奇妙な公式見解がソ連にはあったためとも。。。事実は小説より奇なり、ですね。

    (東京都 紀伊國屋書店 店売総本部和書仕入本部 池田飛鳥さん)

  • May

    16

    『シュルレアリスム―終わりなき革命』酒井健(中公新書)

    『シュルレアリスム―終わりなき革命』酒井健(中公新書)

    今回私が紹介する本書は、東京で先日まで開催されていた、「シュルレアリスム展」に先立ち刊行されました。読んだ私は展覧会への関心が一気に高まりましたが、残念ながら行けませんでした。4月23日にはアンドレ・ブルトン著『シュルレアリスム宣言』訳者である巖谷國士氏の講演会があったそうで、奇しくも直前に起こった東日本大震災とシュルレアリスムとの関係についても話が及んだということです。
    それにしてもシュルレアリスムは第1次世界大戦とそれに前後する社会情勢が契機となって起こったムーブメントですが、一方日本を揺るがした震災はその影響があまりに大きいため、時代を画する出来事になりそうです。本書でブルトンとマッソンは共に戦場の最前線で「放心」(distraction)を感じた、とあります。それは砲弾や狂気が入り混じる戦前でふと現れる心の魅惑、解放感といった矛盾した感情のことです。それが「超現実」の契機となりました。災害もまた人知を超えたものです。そこから我々は何を生み出すのでしょうか。

    (旭屋書店 イオン鹿児島店 南信行さん)

  • May

    17

    「闘う!ウイルス・バスターズ」河岡義裕・渡辺登喜子(朝日新書)

    「闘う!ウイルス・バスターズ」河岡義裕・渡辺登喜子(朝日新書)

    この本はウイルス研究の最前線の一端を垣間見させてくれます。どのエピソードも興味深かったのですが、新型インフルエンザの対応の話は特に面白かったです。本書によると日本での最初の感染報告は2009年5月16日。4月28日には厳重梱包されたウイルスが米国から彼らの元に届きます。厳重に管理された施設で宇宙服のような防護服を着用して実験に臨みます。まずウイルスを培養してからマウスを使った様々な実験を行い、ウイルスの特性を調べます。次いでよりヒトに近いサルでも実験を繰り返し発症の様子を観察し、驚異的な速さで論文をまとめ6月3日には「ネイチャー」誌に投稿。追加実験の後ネイチャー電子版に発表されたのは7月13日。彼らの迅速な仕事は現場の医療者の治療方針やワクチン開発に大いに寄与したことは間違いありません。果たして危惧されていたパンデミックは起こりませんでした。
    ウイルス研究は当代の専門家が一丸となって進めているにもかかわらずまだ撲滅できないウイルスがあるのは、各国の政治的、財政的事情が関係していることが本書を読むとわかります。行政が国土の隅々まで把握している先進国と違い、世界には病気の蔓延に気づかない、或いは気づいても何の手も打てない国々があります。そんな現実の下でもパンデミックを起こさないよう尽力している研究者、政府関係者に敬意を表します。

    (鹿児島県 旭屋書店 イオン鹿児島店 南信行さん)

  • May

    18

    『宇宙に終わりはあるのか?―素粒子が解き明かす宇宙の歴史』村山斉(ナノオプトニクスエナジー出版局)

    『宇宙に終わりはあるのか?―素粒子が解き明かす宇宙の歴史』村山斉(ナノオプトニクスエナジー出版局)

    皆さんは宇宙の果てはどうなっているか考えてみたことはありますか? 壁のようなものがあるのでしょうか。専門知識のない私は日常生活の狭い枠にとらわれて何億光年といった途方もない距離は想像することもできません。望遠鏡ではかなり離れた星々を見ることができます。しかしその奥にも宇宙は広がっています。本書は一般の人に向けて語りかける宇宙論の本です。講演をまとめた本ですから簡潔にわかりやすく書かれています。
    さて本書によると宇宙は膨張しているそうです。「果て」はないのかも知れません。さらに膨張が続くため、遠くの星は将来地球から見えなくなるそうです。また膨張は加速されているといいます。その速度が無限大になるとき、無限大より大きくなることはないので、それが最期です。素人は結論のみ聞いてポカンとするしかないのですが、理論物理学ではモデルを立証していきます。
    宇宙の話はまさにスケールが大きく、極大から極小まで扱います。宇宙を知ることは宇宙の始まりを知ることだといいます。ですから本書には原子や素粒子についても書かれています。宇宙空間は原子、ニュートリノ、「暗黒物質」、「暗黒エネルギー」で満たされているといいます。私は不可思議な名称に興味をそそられ、さらに別の宇宙の本が読みたくなってしまいました。

    (鹿児島県 旭屋書店 イオン鹿児島店 南信行さん)

  • May

    19

    『モモ』ミヒャエル・エンデ(岩波少年文庫)

    『モモ』ミヒャエル・エンデ(岩波少年文庫)

    この本を読み終わったとき私はほっとしました。何しろ一人の少女が時空を超えた旅をして戻ってきたら旧友が皆変わってしまっていた。たった一人で不気味な悪の集団と戦い、また平和な日常に戻ってくる、そんな冒険を外から眺めていた私自身の世界も何か変わったような気すらしています。
    時間泥棒の手下共(これは確かに我々の敵です)はいなくなりました。でもやはりそこらにまだいそうな気もします。だけど心配は無用です。「時間の国」の美しい景色はずっと私の心に残るでしょうから。 ―そこに咲く美しい花々はつまり人それぞれの時間であり、違う美しさを持ち、違うメロディーを奏でながらも全体として優美なハーモニーをつくります― エンデの描写から物語のイメージ(読者それぞれの)がわき出てくるような本だと思います。

    (鹿児島県 旭屋書店 イオン鹿児島店 南信行さん)

  • May

    20

    『生きるのが楽しくなる15の習慣』日野原重明(講談社プラスアルファ文庫)

    『生きるのが楽しくなる15の習慣』日野原重明(講談社プラスアルファ文庫)

    今週最後に紹介する本は、旅先で飛行機に乗る前に買いました。テレビでも時折拝見する聖路加病院の日野原先生が先賢たちを紹介しつつ、より良く生きるための習慣について述べています。
    私は読みながら機内で胸が熱くなりました。先生は飾らない言葉で自らのつらい体験も包み隠さず語ります。90歳を超えてもみずみずしい感性で世の中をとらえ、また自らの信念を伝えようとする姿勢に私は感動しました。
    先生が師と仰ぐカナダの医学者ウィリアム・オスラーの言葉です。「その日の仕事をせいいっぱいやり、明日について思いわずらわないこと」シンプルなこの言葉は、私たちが生きる上で大切なことを伝えていると思います。

    (鹿児島県 旭屋書店 イオン鹿児島店 南信行さん)

  • May

    23

    『論語』桑島武夫(ちくま文庫)

    『論語』桑島武夫(ちくま文庫)

    祖父が集めていた「中国詩文選」のなかの一冊、『論語』を手にしたのはどんな理由だったか。今ではすっかり忘れてしまったが、論語を「もっぱら文章の妙を味わうこととしたい」「プラグマチックにしてポエチック」と書く、著者の読みと語り口に一瞬のうちに魅了されてしまったことはよく覚えている。もし、論語を読んだことがあるかと問われれば、私は「桑原版論語」を読んでいると答えるであろう。本書は、その文庫版。手軽な一冊もまた嬉し。古典はわかるために読むより、おもしろく読むものだ。

    (東京都渋谷区 リブロ渋谷店 幸恵子さん)

  • May

    24

    『クマのプーさん』A.A.ミルン/石井桃子訳(岩波少年文庫)

    『クマのプーさん』A.A.ミルン/石井桃子訳(岩波少年文庫)

    私にとってのクマのプーさんは、Winnie-the-Pooh.でもなければ、ディズニーのプーさんでもなく、この石井桃子訳のプーさんである。石井さんによる翻訳は、まさに神業。Heffalump=象の幼児語は「ゾゾ」と訳され、たどたどしく書かれた誕生日のメッセージは「おたじゃうひ、おやわい」。魔法の言葉は、私をたちまちに虜にした。しかし、なんといってもスゴイのは、コブタのおじいさんの名前が「金次郎」(!)と訳されていることである。その理由をまだご存知でない方、ぜひ、石井桃子訳のプーさんをご一読あれ。(英語版は講談社英語文庫で手に入ります)

    (東京都渋谷区 リブロ渋谷店 幸恵子さん)

  • May

    25

    『性悪猫』やまだ紫(小学館クリエイティブ)

    『性悪猫』やまだ紫(小学館クリエイティブ)

    長い間、入手が困難になっていたやまだ作品が大判で復刊! やまだ作品はどれもこれも素晴らしいのだが、なかでも、猫的なるものを使ってマンガを描くのではなく、猫そのものを描いている『性悪猫』は逸品。「やさしさ なんかに こだわるうち 貴方はちっとも やさしく なんかないんだ」(「さくらに風」より) 何度読んでも、やまださんの絵と言葉に、心を鷲掴みにされてしまう。ことあるたびに紹介している、私にとってもはや座右の書。

    (東京都渋谷区 リブロ渋谷店 幸恵子さん)

  • May

    26

    「蜜柑」芥川龍之介(『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫所収)

    「蜜柑」芥川龍之介(『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫所収)

    文庫本で僅か6頁程のこの小品。削ぎ落とされた的確な情景描写、列車の動き、人の動作と感情、そして蜜柑。時間にして僅かな間の出来事を切り取る巧みに文章に、読むたび酔いしれてしまう。読み終えた後も、甘酸っぱい蜜柑の香りと、静かな列車のガタゴト音が身体に残る。文章による巧みな空間と時間、感情のコントロール・・・短編小説の魅力がこれでもかと堪能できる作品。

    (東京都渋谷区 リブロ渋谷店 幸恵子さん)

  • May

    27

    「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」高野史子 作・絵(福音館書店「こどものとも年少版 2010年2月号」)

    「しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん」高野史子 作・絵(福音館書店「こどものとも年少版 2010年2月号」)

    「漫画家・高野史子さんの絵本」それを聞いただけで傑作間違いなしではあるのだが、その傑作の「想定」を超えた、愛らしく頼もしい絵本。何が頼もしいかって? それは、男気に溢れた、しきぶとんさんと、かけぶとんさんと、まくらさんの三人。みなさまも、寝るときは、パジャマのシャツはスボンにイン。お間違いなく。

    (東京都渋谷区 リブロ渋谷店 幸恵子さん)

  • May

    30

    『ともだち』谷川俊太郎・文/和田誠・絵(玉川大学出版部)

    『ともだち』谷川俊太郎・文/和田誠・絵(玉川大学出版部)

    歳を重ねるたびに「ともだち」って言葉がその有難味も含め年々重くなってゆく気がします。この絵本を読むごとに、その捉え方、意味が変わっていくのは、きっと自分が成長したから。でも読むごとに、変わらずいつも思うのは古い友人に会いたくなるということです。映画や小説で泣いたことのない自分が涙腺のゆるんだ初老をむかえ、初めて号泣するのは、コレを読み返したトキに違いない。そう確信しています。

    (大阪府高槻市 大垣書店高槻店 安原宏さん)

  • May

    31

    『パンダ通』黒柳徹子/岩合光昭(朝日新聞社)

    『パンダ通』黒柳徹子/岩合光昭(朝日新聞社)

    いったい何なんだ、こいつら。食っちゃ寝、食っちゃ寝のぐうたらが何故こんなに意地らしく可愛いのか。ぼってり座り込んでたたずむあの背中。ほんと見ているだけで癒されるんです。でも「大好きなんだ、パンダが」って言うと必ず「似合わねぇなぁ」ってうるせえのでパンダ好きはもうやめて、パンダ通になることにしました。
    パンダを知り尽くす、パンダ博士のおふたりが、撮り、語り、対談を繰り広げる一冊です。とくに黒柳さんなんてパンダと同等か、ともすればそれ以上に希少な動物でいらっしゃいますから・・・この本、とても面白いことになってます。通読すればその日から、もう皆さんがパンダ通。

    (大阪府高槻市 大垣書店高槻店 安原宏さん)