今日の一冊バックナンバー

  • Oct

    03

    『輝く夜に』百田尚樹(講談社)

    『輝く夜に』百田尚樹(講談社)

    クリスマスイヴ、5人の女性に起こった5つの奇蹟の物語です。めっちゃ、ベタやんって、言ってください。思ってください。ページをめくるうちに、きっと当代随一の書き手・百田さんのストーリーテリングに、一気に読み進みたくなります。紡がれる「奇蹟」の物語は、大人のおとぎばなし。ですが、読み終えると、きっと現実の暮らしのなかの「縁」や「絆」を改めて考えたりします。クリスマスへのカレンダーを思い描きはじめる季節に、たった一冊の文庫がそんな「感謝のとき」をシンクロさせてくれるとしたら、それこそ日常の小さな「奇蹟」かも。

    (今井書店 松本邦弥さん)

  • Oct

    04

    『困ってるひと』大野更紗(ポプラ社)

    『困ってるひと』大野更紗(ポプラ社)

    まぎれもなく更紗さんは「闘病」しています。だけど、全編を突き抜けるユーモアに、何回も泣き笑いさせられました。人間、それぞれつらいこと悲しいこと、いっぱいあるんだけど、やっぱ、そこで「笑い」でしょって。
    世の中、ほんと「困ってるひと」だらけだし、大小「困ること」って、みんなに起きているんだけど、「はい、そこでそんな辛い顔しない!」って。
    更紗さんのまっすぐなメッセージが、ガツ―ンと。なぜか不覚にも心地いいのです。

    (鳥取県 今井書店 松本邦弥さん)

  • Oct

    05

    『空飛ぶタイヤ(上・下)』池井戸潤(講談社文庫)

    『空飛ぶタイヤ(上・下)』池井戸潤(講談社文庫)

    なんだろ、この高揚感、なんで自分こんなに熱くなってんだろ。
    上下巻を一気に読み切ったあと、待っていたのは、そんな至福のとき。
    作品に出会った当時、なぜか飲み屋で仲間にこの本を薦めまくっていました。
    感動きわまって、「飲むと薦めたくなる本」にまで昇華した一冊です。
    飲み会で「空飛ぶタイヤ」の話をすると、決まって場の空気がめちゃめちゃ前向きになり、「結局さあ、『信じきること』なんよね」てな、セリフを吐く自分にも酔えるのでした。

    (鳥取県 今井書店 松本邦弥)

  • Oct

    06

    『スローカーブを、もう一球』山際淳司(角川文庫)

    『スローカーブを、もう一球』山際淳司(角川文庫)

    1995年、山際さんが46歳という若さでなくなってから、もう16年。「タラレバ」を今さら唱えてもむなしいけど、さまざまなスポーツの場面を目の当たりするたびに、「いまこの時を、山際さんだったらどんなふうに描いてくれたんだろう」と、思い続けてきました。
    「スポーツ好き」のココロの琴線に触れる珠玉のノンフィクション短編集とそのライターは、まぎれもなく読書体験のレジェンドです。

    (鳥取県 今井書店 松本邦弥さん)

  • Oct

    07

    『テスの木』著:ジェス・ブロウヤー/イラスト:ピーター・レイノルズ/訳:なかがわちひろ(主婦の友社)

    『テスの木』著:ジェス・ブロウヤー/イラスト:ピーター・レイノルズ/訳:なかがわちひろ(主婦の友社)

    懐かしい記憶のなかに封印している原風景。自分にとっての『テスの木』って、なんだろ・・・。大切な"友人"との別れを越えて、成長していくテスのエピソードに、むしろ大人が「グッ」ときたり、「ジワ~」としたりします。ココロの深いところに、『テスの木』みたいなブレない思い出を持ってたら、きっとどんなに時代が変わっても、人って大丈夫なんだと。たった一冊の絵本なのに、読むたびに(年をとるごとに)感慨深いのです。

    (鳥取県 今井書店 松本邦弥さん)

  • Oct

    11

    『めしばな刑事タチバナ』作:坂戸佐兵衛/画:旅井とり(徳間書店)

    『めしばな刑事タチバナ』作:坂戸佐兵衛/画:旅井とり(徳間書店)

    深夜に読んではいけない(お腹が空く+サッポロ一番では何派か語りたくなるので)C級グルメ薀蓄漫画。絵柄はスピリッツっぽい? のだが、掲載誌はアサヒ芸能。『極道めし』+ラズウェル細木と漫画ゴラクイズムに満ちているのもむべなるかな。首都圏の外食チェーンばかり取り上げられているので読者を選ぶかもしれないが・・・

    (東京都武蔵野市 ジュンク堂書店吉祥寺店 中本美恵さん)

  • Oct

    12

    『スッパニタータ』ツギノツギオ(青林工藝舎)

    『スッパニタータ』ツギノツギオ(青林工藝舎)

    母の遺品「宝塚漫虫先生の『シャカ』」に倣い性欲を捨てようとするも、○○のため次々と女性に迫られる中学生の滅私への道。手塚ブッダのパロディに溢れたその道程は爆笑の連続なのだが、肉欲の果てに愛を見つけるラストは感動を呼ぶだろう。絶賛か酷評のいずれかの両極端で中庸を許さない、カルトとはこういう作品をいうのだ。

    (東京都武蔵野市 ジュンク堂書店吉祥寺店 中本美恵さん)

  • Oct

    13

    『恋とセックスで幸せになる秘密』二村ヒトシ(イースト・プレス)

    『恋とセックスで幸せになる秘密』二村ヒトシ(イースト・プレス)

    恋愛指南本にありがちな題名だが、恋愛資本主義を育てたナルシズムから脱し、いかにして他者と自己を肯定するかを丁寧に説く一冊。心の穴に触るフレーズだらけで付箋は必須。カウンセリングを受けているように気になり、むしろもう恋もセックスも要らないのではと思わせられた。ぜひ男性にも読んで頂きたい。著者はAV監督の二村ヒトシ。

    (東京都武蔵野市 ジュンク堂書店吉祥寺店 中本美恵さん)

  • Oct

    14

    『エロスの原風景─江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史』松沢呉一(ポット出版)

    『エロスの原風景─江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史』松沢呉一(ポット出版)

    「他の人の嫌がる仕事こそやる」ライター、松沢呉一が数万冊に及ぶコレクションから江戸時代以降のエロ表現史を概観する。「トルコ風呂の元祖=東京温泉」説を覆すなど知的(?)好奇心を刺激してくれるが、全ページフルカラーで印刷されたビジュアルを見ているだけでも楽しい。「エロ本は遠からず消えると言っていい。そんな時代だからこそ、こんな本を出す意義もあるだろう。」。続刊を望む。

    (東京都武蔵野市 ジュンク堂書店吉祥寺店 中本美恵さん)

  • Oct

    17

    『砂漠』伊坂幸太郎(新潮社)

    『砂漠』伊坂幸太郎(新潮社)

    平日夜に読んだなら、すぐさま旧友を呑みに誘うでしょう。
    休みの前の日に読み終わっちゃったなら、夜中にテンションあがって卒業アルバムもしくはそれに代わる思い出の品々を朝まで見まくってしまうでしょう。ダッラダラしてるくせに、馬鹿みたいに楽しい大学生の日常が、キラッキラに描かれてます。一気読みです。その昔、ビールと麻雀にまみれてた貴方なら尚更!

    (大阪府 紀伊國屋書店梅田本店 高橋淳子さん)

  • Oct

    18

    『パトさん』がんも大二(羽鳥書店)

    『パトさん』がんも大二(羽鳥書店)

    同僚曰く、「2分で読めますが、感動はずっと長く続きます。」とのこと。そう言って勧められるがまま読んだら、本当にそうでした。2分で、人生を味わえるこの本は、凄い。登場人物がこういう描き方をされているのは、読む人皆が自身や、自身の周りの人の人生を重ね合わせられるようにするためでしょうか。優しい本だなあ。

    (大阪府 紀伊國屋書店梅田本店 高橋淳子さん)

  • Oct

    19

    『choo choo 日和 愛のマタタビ。』絵:jetoy/文:こやま淳子(メディアファクトリー)

    『choo choo 日和 愛のマタタビ。』絵:jetoy/文:こやま淳子(メディアファクトリー)

    可愛すぎて、可愛すぎて、手にすると、胸が射られるとはこのことかと思います。だって本当に胸がザワザワしますから、その可愛さに。時々放たれる毒までも愛おしい。写真集じゃないけれど、あなたの周りの猫好きな人に贈ってあげてみて下さい! あなたのポイントが間違いなく上がるでしょう。何この可愛さ!! ずるい!!

    (大阪府 紀伊國屋書店梅田本店 高橋淳子さん)

  • Oct

    20

    『でんせつのきょだいあんまんをはこべ』作:サトシン/絵:よしながこうたく(講談社)

    『でんせつのきょだいあんまんをはこべ』作:サトシン/絵:よしながこうたく(講談社)

    アツい。アツすぎる! あんまんを、まるごと運ぶという、不可能と思える挑戦に、命をかけて挑んだアリたちの、勇気と知恵と努力の物語。馬鹿馬鹿しいことを思い切りまっすぐに、不可能と思われることを決して諦めずに、全力で取組むアリ達の姿は暑苦しくも美しい。大人も子どもも爆笑できる上に、努力や協力の素晴らしさも教えてくれる、絵の細部まで面白い、表紙からは想像・・・できるようなできないような、素晴らしい絵本です!!

    (大阪府 紀伊國屋書店梅田本店 高橋淳子さん)

  • Oct

    21

    『子規を語る』 河東碧梧桐(岩波文庫)

    『子規を語る』 河東碧梧桐(岩波文庫)

    昭和9年に刊行され、2002年に岩波文庫の一冊として再刊されたこの本は、正岡子規を慕ってやまない河東碧梧桐の眼を通して、明治25年に社会に出るまでの正岡子規の姿が書かれています。すこーし、古い本かもしれません。が、何かに一心に取り組む人間の強さや、人を惹きつける力、そして時折ある恐さというのは、今も変わらないのではないかと。教科書でおなじみの、例の写真からはなかなか伝わらないくらいの、カリスマ性がありますよ、子規は!!

    (大阪府 紀伊國屋書店梅田本店 高橋淳子さん)

  • Oct

    24

    『薔薇だって書けるよ』売野機子(白泉社)

    『薔薇だって書けるよ』売野機子(白泉社)

    売野機子さんの短編作品集です。なかでも一番は「遠い日のBOY」。暗闇の中、垣根を隔てた先に、男が一人こちらを見ている。こんな始まりは怪奇と思われてしまうかもしれませんが、その得体の知れない男は、何をする訳でもなく、毎夜垣根の前にやって来ては少しの会話をして何処かへ去って行く。遠い日のBOYが見つめ、見つけてくれたこころの在処。途方もない淋しさに襲われた時に読んで頂きたいです。

    (千葉県習志野市 丸善津田沼店 田中萌さん)

  • Oct

    25

    『腦病院へまゐります。』若合春侑(文春文庫)

    『腦病院へまゐります。』若合春侑(文春文庫)

    全編にわたって旧字旧仮名を使用されています。それだけでも満腹ですが、表題作の「腦病院へまゐります。」は谷崎潤一郎に傾倒しサディズム全開のおまへさまとの愛と変態行為の日々。旧字旧仮名、サドマゾ、変態と、三拍子揃ってうへえと思うなかれ! 虐げられているからこそなのか、"おまへさま"との日々のなかで主人公の女性の感受性やことばはきらきらと輝いています。解説で島田雅彦先生が著者のことを"この女、相当グレているな"と仰っています。愛すべき異端児ここに在り!

    (千葉県習志野市 丸善津田沼店 田中萌さん)

  • Oct

    26

    『着物女のソコヂカラ』吉田久美子(ブルース・インターアクションズ)

    『着物女のソコヂカラ』吉田久美子(ブルース・インターアクションズ)

    格好良くて艶っぽい。けれど儚い女の人がだいすきです。本書は往年の日本映画の中から、イイ女のことばと着物の着こなしを紹介。イイ女は良家の御令嬢から復讐に燃える女賭博師と様々ですが、皆等しく言えるのは「わたしはわたし」という心意気。凛とした女性は国宝だと思う(写真家の蜷川実花さんもそんなようなことを仰っていたなあ)。着物を愛する女性達(特に若い方!)には是非本書を指南書として、溝口健二監督の構図の美しさや鈴木清純監督の色彩感覚で、"わたし"を国宝へと研ぎ澄ませて頂きたい。

    (千葉県習志野市 丸善津田沼店 田中萌さん)

  • Oct

    27

    『名古屋の喫茶店』大竹敏之(リベラル社)

    『名古屋の喫茶店』大竹敏之(リベラル社)

    小学校の時分、夕方のニュース番組を見ていると、名古屋の喫茶店の特集コーナーが始まり、そのなんでもアリな自由さに、一瞬にして私の心は奪われました。その魅力がこれでもかっ! とばかりに詰め込まれた本書。コメダのアイスコーヒーには最初からガムシロップが入っている。シャポーブランのモーニングは480円でパン食べ放題+ゆで卵とドリンク一杯がついてくる。リヨンのモーニングは一日中やっているし、プリンスのモーニングは蕎麦がついてくる。おかげ庵には"炭火焼"というメニューがあって、小さい七輪と一緒に団子やらお餅が運ばれて来る。自分で焼くのだ。自由だなあ、名古屋。喫茶店でモーニングを頂いて、名古屋おもてなし武将隊に会い、お昼は喫茶店、疲れたら喫茶店、夜はドアラに会って、夜ごはんも喫茶店。名古屋旅行のスケジュールはこれで決まり。

    (千葉県習志野市 丸善津田沼店 田中萌さん)

  • Oct

    28

    『ドクター・ラット』ウィリアム・コッツウィンクル(河出書房新社)

    『ドクター・ラット』ウィリアム・コッツウィンクル(河出書房新社)

    あのサンリオSF文庫の刊行予定リストに載っていながらも、刊行されず眠っていた伝説の小説が遂に翻訳! ある日、世界中の動物達が動き出す。「もう人間にはウンザリだ!」。燃え上がった動物達がやってくる! どうする人間!? いや恐れるな! 私達にはあいつがいる! マッドサイエンスラット・ドクターラットが!!

    (千葉県習志野市 丸善津田沼店 田中萌さん)

  • Oct

    31

    『疾走(上下)』重松清(角川書店)

    『疾走(上下)』重松清(角川書店)

    読み終わったときに、まさに畳に沈み込むような感覚に陥りました。
    これほどまで人間はちっぽけでどうしようもなく、それでもあがいて救いを求めているのかと、脱力感に苛まれました。
    閉塞感のある錆びれた港町で、主人公の少年は未来に絶望してしまうのだけど、少年が思い描くよりも現実は残酷で、暴力的で、だけど、少しだけ愛に包まれているのです。
    最後の最後にふっと救われる、そんな話です。

    (大阪府 TSUTAYA枚方駅前本店 鈴木正太郎さん)