今日の一冊バックナンバー

  • Sep

    03

    『本当はちがうんだ日記』穂村弘(集英社文庫)

    『本当はちがうんだ日記』穂村弘(集英社文庫)

    バスに乗った時の車内にある両替機。みんなの視線が気になって、あれが上手く使えないんです。もう中年なのに・・・。
    そんな自分なので、ひとりでドキドキしたり茫然としたりしている穂村さんに、ものすごい共感を感じます。まずは、この本からどうぞ。

    (知遊堂三条店 堤拓己さん)

  • Sep

    04

    『試みの地平線<伝説復活編>』北方謙三(講談社文庫)

    『試みの地平線<伝説復活編>』北方謙三(講談社文庫)

    Q&Aといえば、北方謙三。シモのことから、人生のことまで、悩める小僧どもに北方節全開の(珍)解答が面白すぎる! 若者に対する温かい視線が全編を貫いています。いい。なかに収録されているコラムや写真がいい味だしてます。

    (知遊堂三条店 堤拓己さん)

  • Sep

    05

    『日本の教師に伝えたいこと』大村はま(ちくま学芸文庫)

    『日本の教師に伝えたいこと』大村はま(ちくま学芸文庫)

    著者の教えることに対する情熱がハンパないです。慣れきったやり方を潔しとせずに、常に新しい試みに挑戦していく姿に、中学校時代のちょっと怖かった先生を思い出しました。あの変てこな教材がなつかしい。

    (知遊堂三条店 堤拓己さん)

  • Sep

    06

    『剣客商売一 剣客商売』池波正太郎(新潮文庫)

    『剣客商売一 剣客商売』池波正太郎(新潮文庫)

    書店員になって初めて読んだ時代小説です。この小説の一番の魅力は、人物が描けている所と思います。勧善懲悪ではなく、強さも弱さもあわせたとても人間くさい登場人物がおりなす人間模様がこの小説をとても深く魅力的なものにしています。食べものの描写や季節の移ろい、江戸に息づく粋など他にも見どころ多数。1巻を読んだら全巻読まずにいられない。

    (知遊堂三条店 堤拓己さん)

  • Sep

    07

    『日本のデザイン』原研哉(岩波新書)

    『日本のデザイン』原研哉(岩波新書)

    「デザインという概念は、消費をあおる道具や、ブランドの管理のノウハウの一環ではなく、暮らしの本質や文化の誇りに覚醒していく営みである」。一流のデザイナーの至高、いままでの仕事の軌跡をたどる読書体験は、感嘆のため息の連続でした。読んだ後、自分の素敵度が上がった気がするのが不思議です。

    (知遊堂三条店 堤拓己さん)

  • Sep

    10

    『あさになったのでまどをあけますよ』荒井良二(偕成社)

    『あさになったのでまどをあけますよ』荒井良二(偕成社)

    「幸せは不幸のときしかわからない」そんな歌詞を耳にした。そのとき、軽い違和感とフレーズ自体が寂しいなと思った。相対評価でない絶対評価の幸せは、みえていても、みえないものかもしれない。この本には温かい山や優しい海が広がっている。心に風を入れるため、窓をあけて欲しい。縁あってこの本の著者にお店に来ていただく機会に恵まれた。初めてお会いしたとき、ふたつの印象を抱いた。「ロイド眼鏡かけた人に悪い人はいない」「画家の長生きする理由がわかった」。店の壁に2006エイプリル15と彼のサインが残っていることが私とお店の自慢なのだ。

    (鳥取県倉吉市 今井書店倉吉パープルタウン店 尾上今日子さん)

  • Sep

    11

    『スノーボール・アース』ガブリエル・ウォーカー(早川文庫)

    『スノーボール・アース』ガブリエル・ウォーカー(早川文庫)

    およそ6億年前、地球が完全に凍結していた。ぶ厚い氷の下、生命は?その氷が解けはじめたとき、何が起こったのか。全地球凍結仮説をめぐり、極寒の北極から灼熱の砂漠を駆け巡りながらパズルのピースをはめていくように仮説を組みたてていく。机の上で思いついた学説ではない、研究者たちの信念と執念の過程に興奮してしまった。地質学者とは、科学者とはこんなに格好良く、ドラマチックなのか。学術・解説書多々あれど、中学生よ、これを読め。学問とは戦いなのだ。人類滅亡の暦をめくり待つよりも、生きてる限り足元の地球に心動かせと、おばさんは思うよ。

    (鳥取県倉吉市 今井書店倉吉パープルタウン店 尾上今日子さん)

  • Sep

    12

    『文体練習』レーモン・クノー(朝日出版社)

    『文体練習』レーモン・クノー(朝日出版社)

    高1の時、先生から谷川俊太郎の「ことばあそびうた」を紹介された。こどもの本でも、こども扱いのない情緒のある装丁。日本語の語感に度肝を抜かれた。この本も「ことばあそびうた」同様、瞠目した。なんだ、これは。他愛のないひとつの出来事が延々と書きかえられていく。99通りの文体は同じストーリーをなぞりながら、まるでいろんな監督が撮った映画のような、じわじわ来るおもしろさ。装丁もいい。訳者も凄い。日本人ゆえ原書のニュアンスを味わうことができない本なのかもしれないが、いい加減な覚悟で翻訳はできなかったと思う。想像力を刺激しまくる1冊。

    (鳥取県倉吉市 今井書店倉吉パープルタウン店 尾上今日子さん)

  • Sep

    13

    『桃尻娘』橋本治(ポプラ文庫)

    『桃尻娘』橋本治(ポプラ文庫)

    高校の頃、世の中に疎い私を憂いて「読んだほうがいいよ」と、町内人口五千人の書店には決して売ってない雑誌を貸してくれる友人がいました。「ビックリハウス」「月光」「OUT」「8ビートギャグ」を読んで過ごした学生時代の感覚を正直、今も引きずって過ごしているように思います。田舎モノには非常に刺激の強い少年少女のモノローグ。自由とリスクの間をズンズン歩く主人公の姿は、私にとって新しいアン・シャーリーであり、長靴下のピッピのようにまぶしかった記憶がよみがえる。橋本治には、なんで何でもわかってしまうのだろう。

    (鳥取県倉吉市 今井書店倉吉パープルタウン店 尾上今日子さん)

  • Sep

    14

    『つっこみ力』パオロ・マッツァリーノ(ちくま新書)

    『つっこみ力』パオロ・マッツァリーノ(ちくま新書)

    データは剣より強し。稀代の「戯作者」の統計漫談。「人は正しいことには、必ずしも納得しない。面白いと思ったときに反応を示す」といった言葉に、頭を上下に強く振ってしまう。とにかく目次を開いてください。タイトルと章立てから既にパンチが効いたつっこみにノックアウトされました。この本の毒は薬と紙一重です。

    (鳥取県倉吉市 今井書店倉吉パープルタウン店 尾上今日子さん)

  • Sep

    18

    『采配』落合博光(ダイヤモンド社)

    『采配』落合博光(ダイヤモンド社)

    これほど、(「ど」がつくほど)クールなリーダー論があっただろうか・・・。落合といえば、三度の三冠王に輝く日本最高峰の野球選手であり、その後も中日ドラゴンズを4度のリーグ優勝に導いた名監督である。そんな落合の辞書に、過剰な仲間意識や妥協など一切ない。バッターボックスに立った瞬間に勝敗を分けるのは自分自身の決断のみだ。「孤独に勝たなければ、勝負に勝てない」、その言葉は、どんなビジネスマンにも当てはまる。「オレ流」と異端のように言われているが、その行動は綿密に計算された思考の上に成り立っていることが本書を読むと理解できる。落合すごい! 落合天才! (でも、そんな落合を支えている信子夫人は、もっとすごい!! )あまりにも売れているので食わず嫌いをしていたが、そんな人にこそぜひ読んでほしい。

    (東京都渋谷区 青山ブックセンター本店 佐々木貴江さん)

  • Sep

    19

    『短篇コレクションⅠ(世界文学全集 第3集)』池澤夏樹=個人編集(河出書房新社)

    『短篇コレクションⅠ(世界文学全集 第3集)』池澤夏樹=個人編集(河出書房新社)

    「ぼくは世界が多様であることを証明したいと思い・・・」と著者の言葉にあるとおり、これほどまでに世界はひらかれ、曲がりくねっているものか、と感じさせる一冊。ブローディガン、カーヴァーなど、名だたる作家たちの短篇がギュッと詰め込まれており、「さすが!」と思わせる構成。短篇ほど作家の力量が試されるものはないと思うが、特におすすめは、フアン・ルルフォの『タルパ』。たった12ページで、どこまでも暗く退廃的な世界へ引き込まれ、読後はこの短篇の重苦しさと物語りの美しさに、しばらく放心状態。

    (東京都渋谷区 青山ブックセンター本店 佐々木貴江さん)

  • Sep

    20

    『完本 酔郷譚』倉橋由美子(河出文庫)

    『完本 酔郷譚』倉橋由美子(河出文庫)

    心がざわついたときには倉橋由美子の作品を読む。文章に対する潔癖と呼んでもいいほどの厳しさを隅々から感じ、襟を正されるような気持ちになる。私の軌道を修正してくれるような作品ばかりだ。本書は、サントリーが発行していたクウォータリーでの連載をまとめたもの。作中にはこの世のものかわからぬバーテンダーの九鬼さんが、主人公の慧くんのために、不思議なカクテルをつくり、夢か現実かわからぬ世界へ誘う。酔郷のなかで慧くんが恋に落ち、振りまわされるのは、これまたこの世のものではない女ばかり。おどろおどろしさと官能美が同居した、著者にしか見出すことのできない物語に、うっとりと酔ってしまう。倉橋作品初心者にも読みやすい作品。

    (東京都渋谷区 青山ブックセンター本店 佐々木貴江さん)

  • Sep

    21

    『Telomere(テロメア)』永石勝(木楽舎)

    『Telomere(テロメア)』永石勝(木楽舎)

    Perfumeやチャットモンチーなど、多くのアーティストの写真やグラフィックなどを手がける永石勝さんによる押し花の写真集。押し花になっても、花はその美しさを失わず咲き続ける。透き通るような花弁や葉の色は、一度観たら忘れてなくなるだろう。この花たちを眺めていると、自分の手のひらを太陽にかざしてみたときと同じように、花にも命があることを感じる。瞬間瞬間に、私も鮮やかに生きて死んでいきたい。平野敬子さんによるブックデザインも素晴らしい。

    (東京都渋谷区 青山ブックセンター本店 佐々木貴江さん)

  • Sep

    24

    『夏への扉』ロバート・A.ハインライン(ハヤカワ文庫)

    『夏への扉』ロバート・A.ハインライン(ハヤカワ文庫)

    SF小説に馴染みのない私にとって冷凍睡眠に時間旅行というキーワードだけでもハードルが高そう、と尻込みするには十分。でもこの「夏への扉」は巧妙なSFの舞台装置以上に主人公ダンの生き方が魅力的です。親友と恋人に裏切られ未来世界に放り出されたダン。新しい仕事を見つけ、進歩した技術に心躍らされ、復讐に心を割く暇もありません。手酷く騙されてもまた人を信頼し、身ひとつで放り出されても好奇心を持って順応する。ダンの前向きさと、作中に溢れる新しい時代への希望が爽やかな余韻を残します。SFだからと敬遠するにはもったいない作品です。

    (佐賀県佐賀市 紀伊國屋書店佐賀店 松本優子さん)

  • Sep

    25

    『書店ガール』碧野圭(PHP研究所)

    『書店ガール』碧野圭(PHP研究所)

    恋も仕事も自由奔放な27歳の亜紀と真面目で堅物な40歳の理子、反目していた二人がお店の危機に一時休戦、共に立ち向かう姿が素敵なワーキングガール小説です。社員二人だけじゃなく店全体が一丸となった「私達の店を守ろう」という想いが伝わってきて、書店っていいなという気持ちがむくむくわいてきます。お店に来てくださったお客様に楽しんでいただきたい、何より活気のある店づくりを考えるのが楽しい! という姿勢にとても共感しました。書店業は、自分達が良いと思った本、売りたいと思った本を積極的に発信し売り場をつくることができる、とてもやりがいのある幸せな職業なのだと改めて感じます。書店員が自信を持ってオススメする、書店の心意気をみなさまにお伝えできる物語。書店人はもちろん、書店に足を運んでくださる本好きのみなさまにも、もっともっと本屋が好きになっていただけるような素敵な本だと思います。

    (佐賀県佐賀市 紀伊國屋書店佐賀店 松本優子さん)

  • Sep

    26

    『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』森下典子(新潮文庫)

    『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』森下典子(新潮文庫)

    お茶の本というと少し堅苦しく感じるかもしれませんが、お茶をお通して見えてきた日々のなかの季節や自分自身を見つめたエッセイです。がんじがらめになった作法の向こう側に、見えるもの見えないものをありのままに感じ、あるがままの自分を受け止める無の瞬間が訪れる。なにをしているのか、なんのためにしているのかわからないまま茶道を続けていた著者が、ある日突然自分のなかにお茶が息づいていることに気づく。気づいたとたん世界が広がっていくような驚きが、爽やかに表現されています。今までもずっとそこにあったのに見えていなかったもの。そのことに気づける幸せ。もしかしたらそれは他の人には当たり前であったり、取るに足らないことなのかもしれないけど、きっと気づく瞬間の訪れはその胸に震えるほどの感動をおこして今までとは違った目を持てるようになる。そんな風に思います。

    (佐賀県佐賀市 紀伊國屋書店佐賀店 松本優子さん)

  • Sep

    27

    『月の影 影の海」小野不由美(新潮文庫)

    『月の影 影の海」小野不由美(新潮文庫)

    十二国記が最初に出版されたのは20年前、いまだにファンの方に愛されている未完のシリーズですが、そのなかでも一作目の衝撃は忘れられません。平凡な女子高生が学校に突然現れた異国風の若い男に異界へ連れ去られる、というティーン向け小説的な入り口とは裏腹に、陽子の異界での旅は苛烈を極めます。自分を連れてきた男とはぐれ、ただひとり見知らぬ土地を彷徨い、何度も人に裏切られ心をすり減らしていく旅を追いながら、人を信じるということの強さを陽子から学びました。新潮文庫から新装版で再刊行が始まっていますので、ファンタジーだからと敬遠していた方もぜひ読んでみて下さい。

    (佐賀県佐賀市 紀伊國屋書店佐賀店 松本優子さん)

  • Sep

    28

    『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ(岩波書店)

    『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ(岩波書店)

    小学生の頃から読み続けている特別な一冊。子どもの頃は、何の取り柄もない子どもが物語のなかに入って本の世界を救うというストーリーにわくわくして、アトレーユがバスチアンを迎えに来るのを今か今かと待っていました。映画化もされているのでここまではよく知られたあらすじなのですが、実はこの物語の半分はバスチアンが自分の世界に帰るための旅なのです。救い主として敬われ、どんな願いも叶う世界から、いじめっこの待つ灰色の世界に帰りたいなどとはだれも思わないもの。最後にバスチアンが見つけた願いはなんだったのか。たまねぎの皮がはがれていくように、心が裸になっていく物語です。

    (佐賀県佐賀市 紀伊國屋書店佐賀店 松本優子さん)