今日の一冊バックナンバー

  • Nov

    01

    『R62号の発明・鉛の卵』 安部公房 (新潮文庫)

    『R62号の発明・鉛の卵』 安部公房 (新潮文庫)

    11月になりました。どうりで寒いと思いました。
    今日は犬の鳴き声「ワンワンワン」の語呂合せで「犬の日」だそうです。
    愛犬を引き連れ、肌寒くなった晩秋の風を頬に感じながら、タバコに火をつけ、つい先日、押し入れから引っぱり出したお気に入りのマフラーに顔を埋め、近所の土手沿いをのんびりと散策する。ついそんな素敵な一日を過ごしたくなりますね。僕、犬派なんです。
    しかしながら、僕はそもそも犬を飼っておりませんし、禁煙中ですし、近所に土手なんてありませんし、まだ扇風機さえ片づけておりませんし、今日も仕事がありますし、満員電車に揺られながら、この原稿を書いていますし。ああ、人生って理不尽・・・。
    というわけで、今日は、学生時代にかぶれた不条理系作家の神さま安部公房の短編『棒』(新潮文庫『R62号の発明・鉛の卵』に収録)にちなんで、11月1日は「棒の日」とさせていただきたく思うのですが、いかがでしょうか。犬も歩けば棒に当たるみたいですし・・・。おあとがよろしいようで。

    (東京都豊島区 山下書店大塚店 出沖慶太さん)

  • Nov

    02

    『幽霊たち』ポール・オースター(新潮文庫)

    『幽霊たち』ポール・オースター(新潮文庫)

    本日で最後の選書となります。寂しいです。
    しかし、月曜日から、自分が持っているネタを切り取ってオススメ本を紹介させていただきましたが、ネタが枯渇してしまいました。ゼロです。ネタがないというネタがあるだけです。って、まるで、ポール•オースターのような言い回しですね。存在しない存在、それはまるで幽霊じゃないか、とかなんとか。ちなみに僕はニューヨーク三部作のうち、『幽霊たち』が大好きで、結構いろんな人にオススメしてきたのですが、この本、好き嫌いが両極端に分かれるんですよね。
    ようするに捉え方しだいなんですよね。「結局最後まで、何も起こらない小説じゃないか」or「結局最後まで、何も起こらないことが起こった小説じゃないか」の違い。
    もしかすると、幽霊の存在を半信半疑にも認められるかどうかが、読書の幅を決めるのかもしれませんね。

    (東京都豊島区 山下書店大塚店 出沖慶太さん)

  • Nov

    05

    『童話物語 上・下』向山貴彦(幻冬舎文庫)

    『童話物語 上・下』向山貴彦(幻冬舎文庫)

    おとぎ話のようなファンタジー小説って、内容如何に関わらず、そのジャンル分けだけで最初から一段低く評価されてるのではないでしょうか? そんな中でも、もっと評価されてもいいのでは?と常に思っている作品がコチラ。ジャンルで読まず嫌いしている人にこそ読んでもらいたい、まさに「上質な」物語がここにはあります。難解な言い回しでなく平易な文章でありながら、丁寧に、そして壮大に構築された世界感。その中で繰り広げられる登場人物たちの喜怒哀楽に、強く心を揺さぶられること請け合いです。素直な気持ちを、ともすると忘れがちな大人にこそ読んでもらいたい作品です。スタジオジブリはこの作品こそ映像化すべきだと思うのですが。

    (愛知県名古屋市 ブックセンター名豊緑店 川崎龍さん)

  • Nov

    06

    『オネアミスの翼 王立宇宙軍』飯野文彦(朝日新聞出版)

    『オネアミスの翼 王立宇宙軍』飯野文彦(朝日新聞出版)

    同じ映画を2度以上見ることはほとんどないのですが、この映画だけは何度となく見返しました。そしていつ見ても、その度に胸が熱くなります。この小説版は、映画とは若干異なる内容になっていますが、ひとつの目標に向かって、悩みながらも熱くなる男たちのカッコ良さは変わりません。いくつになっても純粋さを忘れぬバカであらねば! と、棚に入っているこの本を見るたびに思う今日このごろです。

    (愛知県名古屋市 ブックセンター名豊緑店 川崎龍さん)

  • Nov

    07

    『水滸伝シリーズ』北方謙三(集英社)

    『水滸伝シリーズ』北方謙三(集英社)

    「北方水滸伝は、とにかく読むべきだ」という評判を聞きました。三国志などの中国モノは元々嫌いではなかったのですが、水滸伝だけはどうも肌に合わないようで、読み始めては頓挫しての繰り返しで、これまでキチンと読んだことはありませんでした。今回も投げ出してしまうのでは? と思いつつ1巻を手にしたのですが、19巻までまさに一気読み! 現在は、続編の楊令伝の14巻目まで来ましたが、とにかく隙あらば本を開きたいと思わせる魅力溢れるストーリーと登場人物たち。主人公である梁山泊の面々以上にとにかく敵役が魅力的で、自分の贔屓の登場人物が登場すると思わずテンションが上がります。未読のあなたは本当にモッタイナイ! 全方位視点で楽しめる圧倒的な物語の奔流にあなたも早く身を任せるべきだと断言します。

    (愛知県名古屋市 ブックセンター名豊緑店 川崎龍さん )

  • Nov

    08

    『しごとばシリーズ』鈴木のりたけ(ブロンズ新社)

    『しごとばシリーズ』鈴木のりたけ(ブロンズ新社)

    息子が生まれてから「寝る前にできるだけ本の読み聞かせをしよう」と、いろいろな本を読むようにしてきました。たくさんの本を読んで聞かせてきましたが、このシリーズには親子ともども心をわしづかみにされました。2巻目である「続 しごとば」には、書店員の「しごとば」も紹介されているのですが、その細かい描写は現役書店員も思わず舌を巻くクオリティです。細かいしかけもいっぱいで、何度本を開いても新たな発見があります。「将来は本屋さんになる!」と息子が言っているのも、この本のおかげでしょうか?(親バカ)

    (愛知県名古屋市 ブックセンター名豊緑店 川崎龍さん )

  • Nov

    09

    『避暑地の猫』宮本輝(講談社文庫)

    『避暑地の猫』宮本輝(講談社文庫)

    宮本輝さんといえば、今や知らない人はいない大御所で往復書簡で綴られる美しい物語「錦繍」や、骨太なライフワーク「流転の海」などが定番どころであります。個人的には胸キュン青春モノの「青が散る」がお勧めです。
    しかし、こんな毛色の違う作品も書かれているってのは意外と知られていないのではないでしょうか? 背徳で耽美、妖しい雰囲気に満ち満ちた、まさに昼ドラ的な内容であるにも関わらず、なぜか不思議な透明感を感じるという、なんとも不思議な読後感を持つ作品です。ドロドロな昼メロが話題になったり、海外でもソフトSMチックな官能小説が大ベストセラーになったりしている昨今、手に取られてみてはいかがでしょう?

    (愛知県名古屋市 ブックセンター名豊緑店 川崎龍さん)

  • Nov

    12

    『明日に向って撃て!』古澤利夫(文春文庫)

    『明日に向って撃て!』古澤利夫(文春文庫)

    前説
    私ごとですが、先々週、和歌山県田辺市主催の「田辺・弁慶映画祭」に映検審査員として参加してきました。映画好きの熱気というか毒気に煽られたその勢いのまま、今週のお座敷、関心のない方にとっては座興にもならないと思われますが、ご容赦の程を・・・。
    さて、「今日の一冊」。ジョージ・ルーカスのスタジオがディズニーに買収されたことが話題ですが、本家「スターウォーズ」は日本公開が1978年6月24日、随分昔のことになりました。本書は20世紀フォックスという洋画配給会社でその日本への紹介に直接立ち会った映画配給マンの回顧録です。バックステージ的興味も尽きませんが、俳優や監督以外の、普段なかなか取り上げられないキャメラマンや編集マンにスポットを当てていることが映画への愛情の現れと同時に、資料的価値を高めています。

    (群馬県前橋市 ケイ・コーポレーション商品部 黄木宣夫さん)

  • Nov

    13

    『映画の構造分析』内田樹(文春文庫)

    『映画の構造分析』内田樹(文春文庫)

    前説
    「プロメテウス」という前日譚が公開されましたが、「スターウォーズ」と並んで20世紀フォックスを代表するカルト作が「エイリアン」シリーズでしょう。
    さて、「今日の一冊」。その「エイリアン」をフェミニズムの視点で分析しているのが本書ですが、同様に「北北西に進路を取れ」や「ゴーストバスターズ」など押しも押されもせぬ娯楽作を、「内田式」(?)分析で斬りまくります。目から鱗が落ち過ぎて困ってしまうこと請け合いです。そして、私自身も何度見たかわからなくなっている「大脱走」!その解析は映画製作者自身が驚くに違いありません。

    (群馬県前橋市 ケイ・コーポレーション商品部 黄木宣夫さん)

  • Nov

    14

    『ブロンソンならこう言うね』ブロンソンズ(田口トモロヲ+みうらじゅん)著(ちくま文庫)

    『ブロンソンならこう言うね』ブロンソンズ(田口トモロヲ+みうらじゅん)著(ちくま文庫)

    前説
    「大脱走」は当時のオールスターキャスト作品のようですが、それはリヴァイバル公開以降の話で、スティーブ・マックイーンにせよジェームス・ガーナーにせよ、ジェームス・コバーンにせよ、当時は新進の若手俳優という感じでした。
    さて、「今日の一冊」。そのなかで特に印象深かったのが、チャールズ・ブロンソン。トンネル堀りのプロ(?)なのに暗闇がトラウマになっているという、強烈な印象を残す情けないキャラクターでした。しかし、その後、「ウーン、マンダム」の世界で、ブロンソンは男の中の男の称号を手に入れました。本書は、そんな男の煩悩を相談する相手として相応しい彼に、ブロンソンフリークの「ブロンソンズ」のふたりが人生相談をぶつけるのです。

    (群馬県前橋市 ケイ・コーポレーション商品部 黄木宣夫さん)

  • Nov

    15

    『仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―』春日太一(新潮新書)

    『仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―』春日太一(新潮新書)

    前説
    昨日の話の続きですが、ブロンソンといえば、私が好きな作品に「マジェスティック」があります。アクション映画の快作(脚本エルモア・レナード!)ですが、話の骨組みは日本のヤクザ映画そのまま、前科者が耐えて耐えるが、最後に怒りを爆発させるというものでした。
    さて、「今日の一冊」。ヤクザ映画といえば東映、ということになっていますが、1970年代の映画斜陽期に如何に東映、東宝のメジャー2社が苦しみながら映画を生みだしていったかを、1973年が分岐点という視点で、戦後の映画産業の歴史を踏まえつつ描いたのが本作です。

    (群馬県前橋市 ケイ・コーポレーション商品部 黄木宣夫さん)

  • Nov

    16

    『名画座番外地――「新宿昭和館」傷だらけの盛衰記』川原テツ(幻冬舎文庫)

    『名画座番外地――「新宿昭和館」傷だらけの盛衰記』川原テツ(幻冬舎文庫)

    前説
    今や映画界はテレビ局に乗っ取られた様子がありますが、映画館もシネコンへシフト、名画座はほとんどその姿を消しました。惜しむらくも平成14年に閉館した「新宿昭和館」もそのひとつ、365日ほぼヤクザ映画の上映という専門館(?)でした。
    さて、「今日の一冊」。そこに出入りするのは当然、アウトロー。とんでもないエピソードの連続は、旧き良き時代というノスタルジーでは済ませられない凄まじさです。そんな昭和館が唯一上映した洋画(ジャッキーチェン作品除く)がなんと「スターウォーズ」、それも日本語吹き替え版だったという事実。恐るべし「スターウォーズ」、というべきか。
    ・・・というわけで、映画好きな私の話は月曜日へと戻るのであります。

    (群馬県前橋市 ケイ・コーポレーション商品部 黄木宣夫さん)

  • Nov

    19

    『にょっ記』穂村弘(文春文庫)

    『にょっ記』穂村弘(文春文庫)

    なんとなくゆるくて、ちょっと笑えて、少し考えさせられる。そんな時間って贅沢だなと思うのです。満員電車に揺られ、日々のノルマをこなし、くたくたになって眠る。そんな日々にほんの少しうるおいを。穂村さんのような毎日を暮らせるわけではないけれど、この本を読んでいる間と、読み終えてちょっと散歩にでかける時間くらいは、日々のしがらみから離れ、ニヤニヤしてください。そんなことをお客様に伝えたくて、あえてこっそりならべています。その方が見つけたときの喜びが大きいから。店の片隅で、お買い上げいただける日を健気に待っています。

    (京都府長岡京市 恵文社バンビオ店 鳥居貴彦さん)

  • Nov

    20

    『イカの哲学』中沢新一・波多野一郎(集英社新書)

    『イカの哲学』中沢新一・波多野一郎(集英社新書)

    漁師にイカの言葉が聞こえていたら、はたして漁師はイカたちに向かって網をうつことができるだろうか? イカが人間に見えてきた大助君の気持ち、僕にはわかる気がします。まな板の上にでろんと寝転がってるイカ・・・ほら、なんだか人間に見えてきませんか? お風呂あがりの。もちろん著者が言いたいことはそんなことではありません。もしも今、わたしたちに隣の国の人たちの声が聞こえていたら。テレビやネットを通してではなく、通訳や文字を間に挟んだのでもない、直の声を理解することができたら。彼らは何と言っているのでしょう。そして僕たちはなんと答えるべきなんでしょうね。

    (京都府長岡京市 恵文社バンビオ店 鳥居貴彦さん)

  • Nov

    21

    『新装版・双子のオヤジ』しりあがり寿(青林工藝舎)

    『新装版・双子のオヤジ』しりあがり寿(青林工藝舎)

    すべてが曖昧な生活。自分と相手、思考と言葉、自己と世界、すべての境界がモヤモヤした世界。もう服だって着てんだか着てないんだかわかんない。いや着てない。すっぱだか。でも誰も気にしない。そんな世界に生きているふたりのオヤジ。ふたりのオヤジのつぶやきは曖昧なままいつまでも響きます。「存在」ってなに? 「時間」ってなに? 「自分」ってなに? そんなふたりのオヤジにだれかがそっとつぶやくのです。「神様はいないよ。」ホントそうだよね。

    (京都府長岡京市 恵文社バンビオ店 鳥居貴彦さん )

  • Nov

    22

    『高知遺産』ART NPO TACO

    『高知遺産』ART NPO TACO

    「なくなる」ということを考える。街がなくなる。モノがなくなる。ヒトがなくなる。それはとてつもなく暴力的で、一方的で、突然だ。僕が幼いころに育った家は、高速道路建設のために取り壊された。でかい機械がやってきて、たった一台で、あっという間にすべてをなくしてしまった。小学生だった僕がそれを眺めながら何を考えていたのか、今となってはもうわからないが、すべてが詰まっていた家がぺしゃんこになったその光景だけはいまでも忘れない。本書によって、なくなる前に気づいてもらえたモノたちは幸福である、と思う。

    (京都府長岡京市 恵文社バンビオ店 鳥居貴彦さん )

  • Nov

    26

    『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦(角川文庫)

    『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦(角川文庫)

    初めに、これは恋愛小説です。サークルの後輩である「黒髪の乙女」とその彼女に思いを寄せる「先輩」のお話です。四章の話で構成されていて、三章までは彼女という城の外堀を埋めるべく、ただ空回りをしています。四章では風邪を引いています。もう一度言いますが、これは恋愛小説です。不思議で独特な言葉使い、森見ワールド全開!!

    (東京都渋谷区 大盛堂書店 稲坂梨奈さん )

  • Nov

    27

    『グラスホッパー』伊坂幸太郎(角川文庫)

    『グラスホッパー』伊坂幸太郎(角川文庫)

    カバーイラストを手掛けた漫画家・大須賀めぐみさんの絵に惹かれて即購入。元教師、鈴木は妻を殺した犯人の復讐を目論むのだが、その復讐を「押し屋」という殺し屋に横取りされてしまう。「押し屋」の正体を探る為、鈴木は彼の後を追う。一方、相手を自殺に追い込む殺し屋「鯨」、ナイフ使いの天才「蝉」も後々「押し屋」を追うことになり、「鈴木」、「鯨」、「蝉」、3人の異なる視点で物語が進行していきます。一体誰が生き残るのか、ハラハラしながら一気に読み終えてしまいました。

    (東京都渋谷区 大盛堂書店 稲坂梨奈さん )

  • Nov

    28

    『イニシエーション・ラブ』乾くるみ(文春文庫)

    『イニシエーション・ラブ』乾くるみ(文春文庫)

    「女って怖い!」と思う人もいるはずですが、時代が違えども女というものはいつだって強かな生き物なのです。有名な作品なので既に読まれた方が多いと思いますが、どんでん返し系の話が好きな人におすすめ。恋愛小説の化けの皮を被ったミステリー、いや、ある意味ホラー・・・? でも一番怖いのは、女の怖さを男性作家が描いているという事・・・。

    (東京都渋谷区 大盛堂書店 稲坂梨奈さん )

  • Nov

    29

    『燃えるスカートの少女』エイミー・ベンダー(角川文庫)

    『燃えるスカートの少女』エイミー・ベンダー(角川文庫)

    某遊べる本屋にて出会った一冊です。16話の短編を収めた短編集で、どれも摩訶不思議。恋人がどんどん退化したり、父親のお腹にドーナツのような穴が開いたり、炎の手を持つ少女と氷の手を持つ少女が登場したり・・・。有り得ない設定を日常的に描くエイミー・ベンダーさんの世界に引き込まれること間違いなし。

    (東京都渋谷区 大盛堂書店 稲坂梨奈さん )

  • Nov

    30

    『オレの宇宙はまだまだ遠い』益田ミリ(講談社)

    『オレの宇宙はまだまだ遠い』益田ミリ(講談社)

    32歳の書店員・土田君のゆるゆるとした日常。「誰かよりマシ だから幸せ そういう生き方って違うんだよな。」色々な人と出会い、人生について考えるなかで土田君がぼそっと呟く言葉が心にしみる。サクサク読めるコミックでじんわりとあたたかくなる本。おすすめです。

    (東京都渋谷区 大盛堂書店 稲坂梨奈さん)