今日の一冊バックナンバー

  • Feb

    01

    『気になる部分』岸本佐知子(白水社)

    『気になる部分』岸本佐知子(白水社)

    ユーモアと幻想を今一番感じるのは、岸本佐知子さんです。この本はエッセイ集なのですが、どこまでが本当でどこからが虚構なのか、すべてホントなのかすべてウソなのか、時に大笑いし、時に背筋が寒くなる、なんとも不思議な本なのです。
    本業(?)は翻訳家として、アメリカ現代文学のヘンな小説(失礼!)を訳されているのですが、おそらくご本人もかなりヘンな方ではないかと思われます。この本を読むとそうとしか考えられないのです。
    内容をここで書き写しても、陳腐になってしまうので書きません。とにかく読んでみて下さい。そうすれば、私の言っていることがわかるはずです。何度も書きますが、ユーモアと幻想、乱歩の言った奇妙な味、これを感じるのです。
    ちなみに、筑摩書房から『ねにもつタイプ』『なんらかの事情』と、エッセイ集が出されており、こちらも必読です。

    (青森県弘前市 ジュンク堂書店弘前中三店 鳥羽隼弥さん)

  • Feb

    04

    『いま、地方で生きるということ』西村佳哲(ミシマ社)

    『いま、地方で生きるということ』西村佳哲(ミシマ社)

    革小物など手仕事の品を紹介するセレクトショップに喫茶を併設する私たち夫婦の店で「ミシマ社さんの本を売りたい!」と思ったのは、この本を紹介したかったからだと言っても過言ではありません。「どこで、どう生きる?」人それぞれ、正解も間違いもないのはわかっているのに、その答えを掴んだかのように見える登場人物を眩しく感じたり、深く考えさせられたりしました。そして、共感したり、勝手に励まされたりも! 私たち自身、東京を離れて地方へ移ってきたばかりですが、このまちで「これでいいのか?」と感じながら暮らしている人が、この本を読んだ後に、答えは得られなくても「ここで生きるのも悪くないかも」と思えるように願いながら届けていきたい、大切な一冊です。

    (山口県岩国市 himaar coffee & crafts 辻川純子さん)

  • Feb

    05

    『アラスカ物語』新田次郎(新潮文庫)

    『アラスカ物語』新田次郎(新潮文庫)

    アラスカで救世主と呼ばれる実在の日本人・フランク安田の生涯を描いた名作です。つまりは事実に基づく話なのですが、とてもそうとは信じられません! 海か陸かも区別のつかない氷の上を吹雪の中たった一人で何日間も歩き続けたり! 客人に奥さんを貸す(!)エスキモーの村の習慣などを断固拒否しながらも村のリーダーになったり! 果ては、病気と飢餓に脅かされた村をまるごと率いて未開の地へ移住させたり! たいへんな大冒険ドラマが繰り広げられます。実在のフランク安田さんもすごいし、その話を書き上げた新田次郎さんもすごい! いろんな意味で「すごい本だなあ!」と感嘆せずにはいられません。読書の醍醐味を味わえます!

    (山口県岩国市 himaar coffee & crafts 辻川純子さん)

  • Feb

    06

    『忘れられた日本人』宮本常一(岩波文庫)

    『忘れられた日本人』宮本常一(岩波文庫)

    うちの店がある岩国の近く、周防大島出身の民俗学者・宮本常一さん。宮本さんが聞き上手であることは間違いないでしょうが、文章も学術論文のような堅苦しさがなく親しめるのは宮本さんのお人柄なのかもしれません。とりわけこの本は、宮本さんのフィールドワークについてまわって田んぼの畦道や農家の縁側に座り込み、一緒にご老人方のお話を聞かせてもらっているような気持ちで読みました。不便さや不自由さもあったけれど、ちょっと前の日本人のなんとあけっぴろげで生き生きとしていたことよ! 「忘れられた日本人」たちから語られた話は、この本によって決して忘れられない話となりました。これからの日本人の生き方や暮らし方を考えるとき、この本の中にとても大切なことが伝えられていると感じます。

    (山口県岩国市 himaar coffee & crafts 辻川純子さん)

  • Feb

    07

     『クロニクル千古の闇1 オオカミ族の少年』ミシェル・ペイヴァー(評論社)

    『クロニクル千古の闇1 オオカミ族の少年』ミシェル・ペイヴァー(評論社)

    いまから6,000年前の昔、ヨーロッパ北西部を覆っていた深い深い森から始まる冒険ファンタジー・シリーズの1作目です。ファンタジーといっても突拍子もない夢物語ではなくて、これはたぶん、はるか遠い私たちの祖先が実際にいた世界の話、そう思います! 自然のあちこちに精霊を強く感じられて、私たちがとうに失ってしまったふしぎな力を持った人間がまだ多くいた時代の話。それにしても、おもしろいファンタジー小説には決まって、なんでこうも苛々はらはらさせる少年少女の主人公が登場するのでしょうか! オオカミ族の少年・トラクとオオカミの子・ウルフに出会ってしまったら、彼らの旅を見守らずにはいられません。子どもはもちろん、大人にも読みごたえたっぷりのシリーズ本です。

    (山口県岩国市 himaar coffee & crafts 辻川純子さん)

  • Feb

    08

     『カキじいさんとしげぼう』畠山重篤(カキの森書房)

    『カキじいさんとしげぼう』畠山重篤(カキの森書房)

    海から吹いてくる風のにおい、木々の葉がざわざわいう音、夏休みのキラキラした感じ!・・・・・・読むとそんなものが思い出されます。海は森とつながり、人は自然とつながっているということを、穏やかにわかりやすく語りかけてくれる童話です。著者は、森に木を植えている漁師さん、宮城県の気仙沼湾でカキを養殖し「森は海の恋人」運動をはじめた畠山重篤さん。この本は、3.11の津波で流され再建されたカキの養殖場内ではじまった小さな出版社「カキの森書房」から再版されました。英語版、フランス語版、ロシア語版と、外国語版も続々出版中だそうですよ。

    (山口県岩国市 himaar coffee & crafts 辻川純子さん)

  • Feb

    12

    『オデッサ・ファイル』フレデリック・フォーサイス(角川文庫)

    『オデッサ・ファイル』フレデリック・フォーサイス(角川文庫)

    時効のない戦犯とされたナチスに、親衛隊を守るための秘密組織が存在した。その名は『オデッサ』。若いルポライターが主要メンバーを追い詰めてゆくこの小説は、サスペンスの形をとりながらも隠された史実をひきずり出すドキュメンタリーの要素が強い。フォーサイスが得意とするこの手法は著者の経験(様々な噂があるが!)と綿密な取材の賜物だが、事実と創作の境界は? ホロコーストの悪夢はまだ終わっていないのかもしれない。

    (滋賀県草津市 Book House ひらがきエイスクエア店 福島明子さん)

  • Feb

    13

    『スプートニクの恋人』村上春樹(講談社文庫)

    『スプートニクの恋人』村上春樹(講談社文庫)

    スプートニクとは、宇宙へ犬を送った宇宙船のことだ。その犬が戻ってくることはなかった。この小説には僕とすみれ、ミュウが登場する。もちろんこの三人が生きているのは地上であるが、ミュウはあちらとこちらに分かれてしまっており、すみれは突然消えてしまう。残された僕に、すみれから電話がくるけれども同じ世界からではないような感じがする。こちらとあちらが地球と宇宙のように触れていく感覚があって面白かったです。

    (滋賀県草津市 Book House ひらがきエイスクエア店 O・Tさん)

  • Feb

    14

    『ごんぎつね』新美南吉 作・黒井健 絵(偕成社)

    『ごんぎつね』新美南吉 作・黒井健 絵(偕成社)

    「日本のアンデルセン」と呼ばれ、29歳で夭折した新美南吉が18歳で書いた作品。4歳で母を亡くし養子に出された新美自身が、ひとりぼっちのごんや兵十に投影されているように思います。ラストでごんを撃った兵十の発する一言、火縄銃の煙の描写が心に深い余韻を残す、哀しさ、切なさだけじゃない、美しい物語。小学校の教科書にも載る名作ですが、新美南吉生誕100年の今年、大人になってもう一度じっくり読みたい大切な一冊です。

    (滋賀県草津市 Book House ひらがきエイスクエア店 平柿芙紗子さん)

  • Feb

    15

    『あきらめない限り、夢は続く―難病の投手・柴田章吾、プロ野球へ―』田尻賢誉(新潮文庫)

    『あきらめない限り、夢は続く―難病の投手・柴田章吾、プロ野球へ―』田尻賢誉(新潮文庫)

    「病気になって良かった」。帯に書かれたこの言葉に衝撃を受けました。日本代表にも選出された天才ピッチャー柴田章吾を突如襲った原因不明の病気、ベーチェット病。「ここまでうまくいかない人生って何なんだろう?」。夢は途絶えたかに見えた。しかし、厳しい闘病生活の末、念願のプロ野球入りを果たす。「成功の反対」ってなんだろう? 元気が出ない時、うまくいかないと思った時に是非読んで欲しい1冊です!

    (滋賀県草津市 Book House ひらがきエイスクエア店 森慶太さん)

  • Feb

    18

    『るり姉』椰月美智子(双葉社)

    『るり姉』椰月美智子(双葉社)

    るり姉が目の前にいる。読んでいてそんな気分がしてくるのが不思議で、笑いながら楽しく読めてしまいます。どこかの街のひとつの家族、しかもありふれた日常なのですが、"るり姉がいる"それだけで、この物語の景色は一変してしまうのです。この本を読み終えた後、"るり姉"はもちろん、本の登場人物だけでなく自分の家族まで愛おしくなる。ハイセンス? な笑いと、胸いっぱいに広がる温かさを堪能して下さい!!

    (東京都新宿区 芳林堂書店新井薬師前駅店 吉見侑悦さん)

  • Feb

    19

    『幻想郵便局』堀川アサコ(講談社)

    『幻想郵便局』堀川アサコ(講談社)

    山の上に広がる一面のお花畑。想像しただけでうっとりしてしまいます。そんな所に、幻想郵便局こと"登天郵便局"はあります。主人公のアズサは、この郵便局で働くことになるのですが、とっても重要な秘密がこの郵便局にはあったのです。登場人物一人ひとりがとっても明るくて、愛おしくて、読んでいて元気をもらえます。ほのぼの癒し系ファンタジー『幻想郵便局』、どこかで見つけたら手に取ってご覧になってみて下さい。自信を持ってオススメします!!

    (東京都新宿区 芳林堂書店新井薬師前駅店 吉見侑悦さん )

  • Feb

    20

    『MISSION 元スターバックスCEOが教える働く理由』岩田松雄(アスコム)

    『MISSION 元スターバックスCEOが教える働く理由』岩田松雄(アスコム)

    僕たちは何のために働くのか。この問いに瞬時に答えられる人は何人いるでしょうか? この本は、「どうやって働くか」ではなく「何のために働くか」を考える本です。会社員、フリーランスなど、働くスタイルが注目されがちですが、この本を読んで働くことの本質を見つめることができます。すべての働く人に読んでほしい1冊です!

    (東京都新宿区 芳林堂書店新井薬師前駅店 吉見侑悦さん )

  • Feb

    21

    『海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)

    『海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)

    こんなすごい男たちが実在した! 戦後なにもかも失い、借金のみが残った状態で、「国岡商店」店主 国岡鐵造は、「ならん! ひとりの馘首もならん」といった。そんなことを私には言えるだろうか。小説としての面白さだけでなく、これからの社会、仕事のありかたを深く考えさせられる傑作です。今を生きる私たちに勇気をくれる必読書です!

    (東京都新宿区 芳林堂書店新井薬師前駅店 吉見侑悦さん )

  • Feb

    22

    『自分の中に毒を持て』岡本太郎(青春出版社)

    『自分の中に毒を持て』岡本太郎(青春出版社)

    「何かしなきゃ、でも何をすれば・・・」そんな人は立ち読みでいいから読んでほしい。この本でその「何か」は見つからないかもしれないけど、必ず助けになるはずです。

    (東京都新宿区 芳林堂書店新井薬師前駅店 吉見侑悦さん )

  • Feb

    25

    『生きてるうちに、さよならを』吉村達也(集英社文庫)

    『生きてるうちに、さよならを』吉村達也(集英社文庫)

    隠れすぎている名作です。
    この本はすべての感情に語りかけてきます。
    ジャンルなんて考えるだけ無駄。
    この小説は読む人によって顔を変えてしまうので。
    あっ、最後の最後にあまりに耐え難い「おわり」があります。
    絶対に先に読まないでくださいね。後悔しますよ。

    (東京都千代田区 TSUTAYA BOOK STORE 有楽町マルイ 栗俣力也さん )

  • Feb

    26

    『愛読者 ファンレター』折原一(文春文庫)

    『愛読者 ファンレター』折原一(文春文庫)

    ある覆面作家に係わる手紙やFAXでつづられた短編集。
    折原作品といえばやはり大仕掛けや驚きのトリックに期待してしまうのだが本作にはそれを抜いても抜群に楽しめる面白さがある。
    (もちろん、仕掛けがないわけがないのだけれど)
    覆面作家に係わった人たちが最後、どうなるのか・・・。
    そんなことを考えつつ読み進めて下さい。
    ちなみに北村薫さんの覆面作家シリーズ読んでいるとさらに面白さがましますよ。

    (東京都千代田区 TSUTAYA BOOK STORE 有楽町マルイ 栗俣力也さん )

  • Feb

    27

    『11の物語』パトリシア・ハイスミス(ハヤカワ文庫)

    『11の物語』パトリシア・ハイスミス(ハヤカワ文庫)

    海外小説が苦手という方にぜひ読んでいただきたい海外小説。
    この一冊で世に出ている小説の面白みをほとんど網羅してしまっているといっても言い過ぎではない。
    1作品、1作品が濃く、心に響いてきます。
    個人的には結末に驚かされた「ヒロイン」が好きです。
    11作のなかでこの本を読んだあなたが一番人に薦めたくなる作品はどれでしょうか。

    (東京都千代田区 TSUTAYA BOOK STORE 有楽町マルイ 栗俣力也さん )

  • Feb

    28

    『蛍』 麻耶雄嵩(幻冬舎文庫)

    『蛍』 麻耶雄嵩(幻冬舎文庫)

    「本を読む人間にとって当たり前であることが当たり前ではなくなっている」
    私は見事に騙され思い入れの深い一冊。
    小説のひとつの楽しみに騙される快感があると思うのですが、この小説はそれに恐ろしく秀でています。だって叙述の真逆なんて思いつきませんよ。。。

    (東京都千代田区 TSUTAYA BOOK STORE 有楽町マルイ 栗俣力也さん )