今日の一冊バックナンバー

  • Sep

    01

    『くもり ときどき 晴レル』岩瀬成子(理論社)

    『くもり ときどき 晴レル』岩瀬成子(理論社)

    10代の淡い恋心が、6編の小品集で味わえます。家族や、友だち、自分の思いや言動で、揺れ動いていく感覚が、まるで友だちに打ち明けられてるようにも感じます。
    離婚後、実家に越してきた甥に、姉になってもいいからと甥の安否を気にする女の子。学校に行きたくないなぁと思った日の出来事。何をやっても、うまくいかない自分に腹をたててる6年生の男の子。太ってることが気になってしょうがない中学生の女の子。お父さんの再婚に悩む6年生の男の子。密かに、男の人の恋心を抱く女の子。
    それぞれの短編に登場する人たちの経験を、懸命に受け止めたい作品群です。
    私は、冬二の消息が気になります。

    (ジュンク堂書店京都店 高木須恵子さん)

  • Sep

    02

    『炭坑町に咲いた原貢野球』澤宮優(現代書館)

    『炭坑町に咲いた原貢野球』澤宮優(現代書館)

    2013年3月8日、WBC台湾戦。9回二死での島谷の盗塁こそ、原貢野球の真髄だったと思う。
    スポーツノンフィクションの傑作!

    (京都府京都市 ジュンク堂書店京都店 星野耕士さん)

  • Sep

    03

    『69 sixty nine』村上龍(集英社文庫)

    『69 sixty nine』村上龍(集英社文庫)

    フェスティバルもバリ封も、女子生徒に気に入られたいだけ。天使レディ・ジェーン松井和子は闘争する男が好きなのだ。高校時代に読んでおけばよかった、と後悔した1冊。「何かを強制されている個人や集団を見ると、ただそれだけで、不快になるのだ」「うち、ブライアン・ジョーンズの、チェンバロの音のごたる感じで、生きていきたかとよ」など、キラーフレーズも満載。うんこに思想はない!

    (京都府京都市 ジュンク堂書店京都店 星野耕士さん)

  • Sep

    04

    『プロ野球 構造改革論』岡田彰布(宝島社新書)

    『プロ野球 構造改革論』岡田彰布(宝島社新書)

    『そらそうよ』に次ぐ新刊です。キャンプで二日酔でも打てるようにフラフラでバットを振っていた定番面白エピソードから、村上ファンド裏話まで。さらにFA導入できたのも私が会長だったからだ、など選手会長時代の方言も満載。中日落合の選手会脱退→FA宣言には、ルール上問題ないけど「オレやったらそんなことせんけど」とも。赤裸々過ぎます。統一球問題にも、ルールに適合していれば大した問題ではないとし、(硬式ボールは牛のお尻の皮で包んである)そないに同じ尻の牛はおらんやろ! と一蹴。そもそも合理的でないのが、野球本来の姿なのだ。高校野球はじめ、日本の野球は日本の文化に根差したもの。何でもメジャーを模倣して合理化する必要なんてあるはずない。などなど名言も。そらそうよ! と拍手を送ってしまいます。
    また、引退したプロ野球選手の第二の人生のフォローのためのプロアマの問題、下部組織としての3部リーグ制など、など未来に繋がる提言も。将来の夢はプロ野球選手になること、と子どもたちに思ってもらえるために現場意識で戦い続けるどんでん、なのです。

    (京都府京都市 ジュンク堂書店京都店 星野耕士さん)

  • Sep

    05

    『将棋名勝負2006-2012』将棋世界/編(マイナビ)

    『将棋名勝負2006-2012』将棋世界/編(マイナビ)

    王位戦が佳境を迎え、王座戦がついに開幕し、竜王戦の挑戦者も決定しつつある。将棋タイトル戦たけなわのこの時期、実践派にも観戦派にも、全ての将棋ファンにお勧めするのがこの一冊。月刊『将棋世界』誌上の企画「プレイバック」2006年から2012年分までをまとめた。現役のプロ棋士がその年の名局として投票したもののランキング。プロすら驚く、超絶妙技の対局の数々はファンには垂涎。今期も圧倒的な存在感を見せつける羽生が、やはり毎年上位に名を連ねている。

    (京都府京都市 ジュンク堂書店京都店 小杉悠平さん)

  • Sep

    06

    『昔日の客』関口良雄(夏葉社)

    『昔日の客』関口良雄(夏葉社)

    大正、昭和を生きた関口さんの心温まるエッセイと、その復刊をされた夏葉社さんの想いが伝わってきて、ページを繰る手がとまりません。

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Sep

    07

    『兄 小林秀雄との対話-人生について-』高見沢潤子(講談社文庫)

    『兄 小林秀雄との対話-人生について-』高見沢潤子(講談社文庫)

    私の中で小林秀雄という人は、「よくわからないけど難しいことを書いているえらい人」というくくりの人物でした。だって、書いている本をぱらっと読んでも、すっごく難しい・・・でも、本当はとても誠実で、優しく、おちゃめな一人の人間だったことがこの本を読むとわかります。私と同じように「お兄さんの書くこと、言うことは難しい・・・」と思った妹さんが、お兄さんの話を一生懸命聴き、やさしい言葉で書き起こしたものがこの本。心和むエピソードがあいまに入りつつも、小林秀雄がなにを思い何を記したのかがあたたかく伝わってくる、そんな優しい1冊です。

    (ミシマ社 平田薫)

  • Sep

    08

    『ライダー定食』東直己(光文社文庫)

    『ライダー定食』東直己(光文社文庫)

    いまはハードボイルドな探偵もので人気の東直己さんが、札幌の「零細なタウン雑誌で働いていた、か、無職であって、わりと困窮していた」(本書あとがきより)頃に習作的に書いた短編集である、ということはあとで知ったことですが、まがまがしさを抜いた江戸川乱歩のような、この「そこはかとないおかしさとコワさが入り交じった奇妙な味わい」は妄想小説の醍醐味。キャンプの夜、焚き火を囲んでの朗読タイムなどにピッタリかも。

    (ライター 佐藤大成さん)

  • Sep

    09

    『哺育器の中の大人』伊丹十三、岸田秀(文春文庫)

    『哺育器の中の大人』伊丹十三、岸田秀(文春文庫)

    初刊行は30余年前。俳優で出発し、後に映画監督として成功する伊丹さんも、この頃は
    世評高きエッセイスト。「結局、自分のない心理学なんてインチキなんですよ」と言いつつ飄々と受け答えする岸田秀さんに、抜群の明晰さと粘着力で伊丹さんが迫る対話は実にスリリング。「われわれの信じている価値体系はすべて幻想である」という岸田流"唯幻論"は、ベタな"思想"が横行する今、Now is the timeという気がします。

    (ライター 佐藤大成さん)

  • Sep

    10

    『言えないコトバ』益田ミリ(集英社文庫)

    『言えないコトバ』益田ミリ(集英社文庫)

    漫画系の世界には独特の才人が多いなあ、と感じるのは自分の世間が狭いせいかも、と思いながらも、やりますなあ!と思わずにはいられない。「言えないコトバ」というこの切り口の新鮮さ!「おひや」「おもてなし」「思ってたより」・・・益田さんが本業のコミカルイラスト付きで次々に告白していく「言えないコトバ」の理由はそのまま「コトバとカラダの関係論」とも読める。小中高の先生方の必読図書!――かもしれませんよ。

    (ライター 佐藤大成さん)

  • Sep

    11

    『老人ホームに音楽がひびく』野村誠(晶文社)

    『老人ホームに音楽がひびく』野村誠(晶文社)

    YouTubeの検索窓に「ワイワイ音頭 野村誠」とカシャカシャ。と、♫月曜日には床みがき〜と元気よく合唱するお年寄りたちの映像をバックにピアノを弾く若者のシルエットが――そう、この人が本書の著者のひとり、現代音楽家の野村誠さん。歌は野村誠さんとお年寄りたちが「一緒に」「即興で」作った曲らしい。「なぜ、こんなことに?」と思った方は本書をぜひ。優れた音楽家の力、人間の底力をたっぷりと教えてくれます。

    (ライター 佐藤大成さん)

  • Sep

    12

    『美味礼賛』海老沢泰久(文春文庫)

    『美味礼賛』海老沢泰久(文春文庫)

    この本を読む前にいったフランスへの取材旅行。たった二日で、その濃厚さにカラダがまいった経験をもつ人間には「美味礼賛」というコトバがまぶしい。「辻さんは命をかけてフランス料理の味をカラダに叩きこんだんだなあ」としみじみ思うのである。日本に本格的なフランス料理を広めたパイオニア、辻静雄さんのこの伝記小説は、不世出の作家、海老沢泰久さんの代表作でもある。本書を読んだあとの"美味"はまた格別です!

    (ライター 佐藤大成さん)

  • Sep

    13

    『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹(文藝春秋)

    『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹(文藝春秋)

    村上春樹さんが、20年以上続けているランニングについて語りながら、仕事や人生について「はじめて自分自身について正面から語った」という貴重な「メモワール(個人史とエッセイの中間)」です。
    一見、小説家という職業には何の関係もないランニングという媒体を通すことで、村上さんの人間性や人生観が、ありありと親しみやすい形で見えてきます。
    ランニングの本質は「与えられた個々人の限界の中で、少しでも有効に自分を燃焼させていくこと」であり、それは「生きることのメタファー」であると真摯に語る村上さんのことを、ますます好きになりました。

    (ミシマガジンサポーター かつ!さん)

  • Sep

    14

    『水滸伝 上』施耐庵(著)、松枝茂夫(編訳)(岩波少年文庫)

    『水滸伝 上』施耐庵(著)、松枝茂夫(編訳)(岩波少年文庫)

    一騎当千の豪傑たちが108人も集まり、無茶苦茶な活躍を繰り広げる大活劇。とにかくたくさんの豪傑が出てくる上に、名前や特技が似た人物も出てきますから、「あれ、この人さっきも出てこなかったかしら...?」と混乱すること請け合いです。高速移動キャラだけで、一体何人出てくるのだろう(もちろん、剣や弓、兵法に長けた豪傑もぞろぞろ)。みんな規格外なので、やることなすこと破壊力抜群。そしてその一人ひとり、それぞれの事情で梁山泊(彼らの根城)入りするわけです。だからもう大変。読めば血沸き肉踊ります。(※全3巻)

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Sep

    15

    『天ぷらの全仕事 「てんぷら近藤」の技と味』近藤 文夫(柴田書店)

    『天ぷらの全仕事 「てんぷら近藤」の技と味』近藤 文夫(柴田書店)

    職人が自分が修行してきたてんぷらの全てを語る本です。だから、書いてあるのは天ぷらのことばかり。油と鍋と素材しかでてきません。車エビを揚げるのと、キスを揚げるのとでは何が違うのか?全76種類のネタについて油の温度、衣の厚さ、油から出すタイミングを事細かに解説しています。正直、素人には読んでもわからないことばかりですし、家庭での料理には無理です。でも、ページをめくるとお腹がすいてくる、食べてしまいたくなります。特に、季節感のある野菜の天ぷらが美味しそうです。

    (時・遊・館 佐藤裕司さん)

  • Sep

    16

    『ひとり飲む、京都』太田 和彦(マガジンハウス)

    『ひとり飲む、京都』太田 和彦(マガジンハウス)

    男が一人で旅に出る。仕事も忘れて京都に行く。一週間ひたすら飲む。そんな夢のような生活を、居酒屋批評で知られた太田和彦氏が実践した、酒浸りの紀行エッセイです。朝起きて朝食を食べながら、その日の夜の飲み屋のことを考え、生活の全てを酒のためだけに費やす。まるで修行僧です。ガイドブックには出ていない地元の店に出かけ、暮らすように飲む。いつかは自分でも実行してみたくなる本です。さあ、京都に出かけましょう。

    (時・遊・館 佐藤裕司さん)

  • Sep

    17

    『カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩』竹内正浩(中公新書)

    『カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩』竹内正浩(中公新書)

    東京の街は、どんどん変わっていきます。先週あった店がなくなって新しい店ができる、古いお屋敷がなくなって、マンションに変わる。一度変わると、人の記憶からはいずれなくなっていきます。そんななくなってしまった記憶を著者はひたすら歩き、古い地図と照らし合わせて、昔の姿を再現していきます。巻末についている、都心にあったお屋敷が変遷していったリストがすごい。面積、昔の町名、現在の用途まで徹底して調べ上げています。グーグルマップを見ながら読むと、面白さ倍増ですよ。

    (時・遊・館 佐藤裕司さん)

  • Sep

    18

    『アンパンの丸かじり』東海林 さだお(朝日新聞出版)

    『アンパンの丸かじり』東海林 さだお(朝日新聞出版)

    週刊朝日の好評連載をまとめた『丸かじり』シリーズ。ひたすら食べものについてこだわって、連載開始からすでに25年。バブル以前から、日本の食べものを語り尽くしています。おいしいものを紹介するのではなく、当たり前の食生活の中にある「ちょっとした違和感」を、独自の目線で笑いの中に包み込んでおにぎりのように料理しています。特にこの本の中の、『駆け込み買い物』のエッセイは、東日本大震災の買い占めで空っぽになったコンビニの棚に残ったある商品(読んでからのお楽しみに内緒)について、恐ろしい程の冷静な目でつづられた傑作です。笑ってしまいますが、とても怖いホラーなのです。ショージ君、恐るべしです。

    (時・遊・館 佐藤裕司さん)

  • Sep

    19

    『ジャッカルの日』フレデリック・フォーサイス(角川書店)

    『ジャッカルの日』フレデリック・フォーサイス(角川書店)

    サスペンス小説の傑作です。初版が出たのは今から40年前、初めて読んだのは中学生の時でした。同じ頃に書店の推理小説コーナーに並んでいたのは、アガサクリスティのポアロ、シムノンのメグレ警視。そういったゆっくりした名探偵の時代の犯罪とは異なるスピーディーな展開が驚きでした。テロリズム、国際問題といった現代社会の抱える問題点がストーリーにリアリティを持たせています。エドワード・フォックス主演の映画版もお勧めです。DVDと併せて読んでください。21世紀の今だからこそ、面白い作品です。

    (時・遊・館 佐藤裕司さん)

  • Sep

    20

    『部長、その恋愛はセクハラです!』牟田和恵(集英社新書)

    『部長、その恋愛はセクハラです!』牟田和恵(集英社新書)

    なぜ男の人はセクハラしていることに気づけないのか、なぜ女の人はハッキリ拒絶できないのか。その背景を丁寧に解説してくれています。そうするとタイトルのような部長は職場恋愛だと思っていたのに、部下はセクハラだと感じる、おかしな事態がなぜ発生するのかもよくわかります。私たち全員が男社会の中で生きているために、その仕組が本当に自覚しにくいのです。

    (ミシマガジンサポーター 佐藤朝子さん)

  • Sep

    21

    『河童が覗いたインド』妹尾河童(新潮文庫)

    『河童が覗いたインド』妹尾河童(新潮文庫)

    妹尾河童さんのイラストと手書き文字がかわいい「河童が覗いた」シリーズ。インドでも河童さん独自の視点でタージマハルからカレー屋さん、ガンジーのスリッパまで覗きまくります。僕もインドで腹を壊し、電車を間違え、タクシーの運転手と喧嘩をし(日本語で)、汚い安宿をさまよったことがあるのですが、ページをめくれば当時の匂いが立ち上ってきてなぜかそわそわします。インドの大地が呼んでいる!のかもしれない。

    (ミシマ社営業チーム 鳥居貴彦)

  • Sep

    22

    『ゴーストバスターズ』高橋源一郎(講談社文芸文庫)

    『ゴーストバスターズ』高橋源一郎(講談社文芸文庫)

    世界を因数分解していくと、たくさんの詩が出てきますよね。その詩の間を、二人のガンマン、ハーレーに乗ったBA-SHO、正義の味方タカハシさんらが駆け抜けていく物語です。彼らが走り去った草原の、足元の草の葉にたまった露、そこに映る星空の広さと、僕の心臓の鼓動。

    (ガタムプレイヤー 久野隆昭さん)

  • Sep

    23

    『鉄鼠の檻』京極夏彦(講談社文庫)

    『鉄鼠の檻』京極夏彦(講談社文庫)

    本屋さんの宗教コーナーに置かれた「禅」と名のつく本を全て集めて燃やし、その炎で仏を焼く。そして坐る。それが禅。ということがわかる本。サスペンスです、ジャンルとしては。

    (ガタムプレイヤー 久野隆昭さん)

  • Sep

    24

    『宇宙誌』松井孝典(岩波現代文庫)

    『宇宙誌』松井孝典(岩波現代文庫)

    (現在、我々が認識できる限り)地球上にしかいない生命は、発生以来、生き延びることを存在理由としてきた。が、人間だけが、違う。――我々はどこから来たのか。我々は誰なのか。我々はどこへ行くのか――ゴーギャンと同様に問う科学者の本。

    (ガタムプレイヤー 久野隆昭さん)

  • Sep

    25

    『ムーミン谷の彗星』トーベ・ヤンソン/著、下村隆一/訳(講談社)

    『ムーミン谷の彗星』トーベ・ヤンソン/著、下村隆一/訳(講談社)

    小さないきものたちが暮らす谷の、海の波は暗く、山は寂しい。夏は短く、長い冬は全てを閉ざす。その谷は、ここからずっと遠いところにある。それなのに、彼らの存在を近く、愛おしく感じる。大人も子どもも夢中になれるファンタジー。

    (ガタムプレイヤー 久野隆昭さん)

  • Sep

    26

    『チベット』旅行人編集部(旅行人)

    『チベット』旅行人編集部(旅行人)

    この本と、同シリーズの『アジア横断』を持って上海行きの船に乗ったのが2001年。あの道が現在まで続いているような気がする。細かさと精密さで群を抜く、世界最強のチベットガイドブック。

    (ガタムプレイヤー 久野隆昭さん)

  • Sep

    27

    『破獄』吉村昭(新潮文庫)

    『破獄』吉村昭(新潮文庫)

    脱獄を四度繰り返した一人の男を中心に物語は進みますが、太平洋戦争という緊迫した時代背景や刑務所運営への影響、囚人達の日常生活なども丹念に描かれています。刑務所からの脱走事件などルパン三世の世界だけだと思っている皆さんにお薦めしたい読み応えのある一冊です。網走監獄の観光を予定している方も旅行前に一読あれ。

    (ミシマガジンサポーター いとみきさん)

  • Sep

    28

    モネ、ゴッホ、ピカソも治療した 絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事岩井希久子(美術出版社)

    モネ、ゴッホ、ピカソも治療した 絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事岩井希久子(美術出版社)

    この本を読むまで修復家というのは、上から色を塗ったりして補正するお仕事だと思っていました。でも岩井さんは、長年積もったほこりや汚れを取り除いたり、絵が長持ちするようにキャンバスを貼り替えたりと、絵の上に足し算することはほとんどしません。何もしない、ということはこんなにも細やかで美しい作業なんだとはっとしました。また、働く女性としての困難や葛藤も綴っていて、絵に興味のない人でも共感できる一冊なのではないかと思います。

    (ミシマ社 長谷川実央)

  • Sep

    29

    『たましいの場所』早川義夫(ちくま文庫)

    『たましいの場所』早川義夫(ちくま文庫)

    「たましいの場所」を読んでいると、素敵な音楽を聴いたら鼻歌を歌いたくなるような感覚で、なんか文章書いてみたいなぁという気分になる。友人はこの本を読んで田舎に帰りたくなったらしい。二階堂和美はこの本の一文をきっかけに自身のアルバムを「にじみ」と名付けたそうだ。この本は様々な読者の暮らしに寄り添って、それぞれの思いを引き受けることができる。「これは本当にいい本」というクドカンの帯文が、すんなりと腑に落ちる。

    (BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿 前田香織さん)

  • Sep

    30

    『プロ無職入門』高木壮太(スペースシャワーネットワーク)

    『プロ無職入門』高木壮太(スペースシャワーネットワーク)

    高木壮太の常軌を逸した知識量と愛と笑いと冷めた視線が詰め込まれた本。腹抱えて笑ったり、「高木壮太には国ひとつ牛耳れるくらいの能力があるんじゃないだろうか、いや、ないか」と考えてみたり、ページをめくる度に忙しい。この本が売れれば売れるほど、日本は平和に近づいていくと本気で思いますが、コラム部分の文字が非常に細かいので読んでいると視力は落ちます。

    (BIBLIOPHILIC & bookunion 新宿 前田香織さん)