今日の一冊バックナンバー

  • Dec

    01

    『千利休  無言の前衛』赤瀬川原平(岩波新書)

    『千利休 無言の前衛』赤瀬川原平(岩波新書)

    千利休という茶の湯の世界を創り出した人物を、赤瀬川原平独自の切り口で考察した『千利休』。話は「超芸術トマソン」と「侘び寂び」のつながりを発見するところから始まる。読みながら、俳句についていろいろ考えた。彼の本はいつもそうだ。一見関係のないものから必ず何かしらのヒントを与えてくれる。あとがきに「この本は資料としては何の価値もない。」とあって、その「らしさ」に、微笑んでしまう。
    その赤瀬川原平が亡くなった。赤瀬川原平はわたしに、ものの見方は自由であるとあらためて教えてくれたひとだ。自分の目で見て、自分で考え、自分でつくり、しかもそれはとてもたのしいことで、それでいい、という勇気と自由を与えてくれた。

    (東京都新宿区 紀伊國屋書店新宿本店 梅﨑実奈さん)

  • Dec

    02

    『平凡倶楽部』こうの史代(平凡社)

    『平凡倶楽部』こうの史代(平凡社)

    こうの史代の『長い道』を初めて読んだとき、こわくなってすぐ友達にあげてしまった。ホラーな内容でも何でもないのに、なぜかじわじわと畏怖に囚われてしまって、手元に置いておけなくなったからだ。
    こうの史代のその「こわさ」が凝縮されているのが『平凡倶楽部』というエッセイだと思う。こうの史代は対象に向かい合うための熱烈な切実さと真面目さがある。取材能力とか、内容の重さとかがこわいのではない。おそらく、その純な精神、切実な思いの穂先に触れてしまい、こわくなるのだ。桜の定点観測、ライターとの会話、一万円札の使い道など、なんてことはない物事をすべてその「こわさ」で素晴らしい作品に変えてしまう。本当にすごい人だ。

    (東京都新宿区 紀伊國屋書店新宿本店 梅﨑実奈さん)

  • Dec

    03

    『現代歌人文庫   葛原妙子歌集』葛原妙子(国文社)

    『現代歌人文庫 葛原妙子歌集』葛原妙子(国文社)

    国文社の現代歌人文庫のなかでも『葛原妙子歌集』は特別な存在だ。葛原は「幻視の女王」と呼ばれ、その短歌は幻想的でほの暗く、不穏な雰囲気に包まれ、魅惑そのものである。胎児や赤子のうた、薔薇や葡萄、目玉など、まるいものに関するうたが多いのが気になる。まるみのあるものに特に「不穏」を嗅ぎ取っていたのかもしれない。
    〈廃車の窓に朱きゆふぐも流れたり喪ひしものをかぎりなく所有す〉このうたは、生活のなかで人を喪ったり、別れがあったとき、必ずあたまに浮かぶ思い入れのある一首だ。葛原妙子のうたの世界では、あるはずものが見えなくなったり、ないはずのものが見えてくる。それは妖しくも夢があることに違いない。

    (東京都新宿区 紀伊國屋書店新宿本店 梅﨑実奈さん)

  • Dec

    04

    『望郷と海』石原吉郎(みすず書房)

    『望郷と海』石原吉郎(みすず書房)

    石原吉郎はシベリヤ抑留を体験した詩人である。戦犯として、刑期は25年。人間であることを自然と離脱してしまうほどの過酷な労働と生活を強いられた。しかしこれは単なる過去の辛い体験記ではない。体験から新たな「ことば」が生まれる瞬間というのはこういうものであるのかと、読む者に身体の芯から実感させる、奇跡的な文章である。彼の疲労や思索の軌跡が全身に染み込み、実感、ということのほんとうの意味を知った。石原吉郎が生み出した新たな「ことば」、それは他人への無関心や「沈黙」を経てやってきたものだ。「沈黙」があったからこそ、このような文章が誕生したのだろう。

    (東京都新宿区 紀伊國屋書店新宿本店 梅﨑実奈さん)

  • Dec

    05

    『ボディ・アーティスト』ドン・デリーロ著/上岡伸雄訳(ちくま文庫)

    『ボディ・アーティスト』ドン・デリーロ著/上岡伸雄訳(ちくま文庫)

    ほそく透明な糸をぴんと張り巡らせてつくった網状の立体があって、その立体のどこか一カ所をはさみでぱちんと切ると、たちまちバランスを失って倒れてしまう。『ボディ・アーティスト』の第一章は、まさにそのような危うくも絶妙なバランスをもって書かれた、完璧な文章だ。
    第一章には、ある朝、キッチンに居合わせた男女の様子が描かれている。事件という事件は何ひとつ起きない。だがそのワンシーンが、ひとつの単語、ひとつの句読点、ただ一文字でさえも抜け落ちると一気にばらばらに壊れてしまうような、儚くも繊細なつよさで書かれている。もはやこれは小説である以前に詩である。思わず笑ってしまうほどの素晴らしさに、何度も何度も読み返しては唸ってしまう。

    (東京都新宿区 紀伊國屋書店新宿本店 梅﨑実奈さん)

  • Dec

    06

    『邪宗門』高橋和巳(河出文庫)

    『邪宗門』高橋和巳(河出文庫)

    学生の時分、人にすすめられて読み出した本です。当時は絶版で、図書館にあった全集を一人で三ヶ月程お借りしていました。「ひのもと救霊会」という新興宗教を中心に、軍国主義につき進む日本の姿、さらには、当時を生きていた民衆の声が丁寧に描かれています。先日、書店で見つけた時は、思わず「え?!」と声をあげてしまいました。河出文庫の8月の新刊ということで復刊したようです。是非ご一読を!

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Dec

    07

    『サバイバル登山入門』服部文祥(デコ)

    『サバイバル登山入門』服部文祥(デコ)

    「読む登山ファン」の私としては、あの『サバイバル登山家』(みすず書房)で知られる服部文祥さんが初めてのハウツー本を上梓したと聞けばこれはもう買うしかない。計画を立てるところから、装備を調え、歩き、火をおこし、狩猟をして、食べ、眠る。これらがなんと全編オールカラーで写真、イラストがたっぷりと。さらに巻末には南アルプスの「サバイバル登山」ルート地図まで収録。そしてこの方はなんといっても文章が面白い。「はじめに」や途中のコラム、本文中のところどころで文祥流サバイバル登山の思想が語られる。本書を読んでから氏の著作をもう一度読み直せば、さらに文祥ワールドが楽しめること間違いなし。この表紙を見よ! 山の恵みが育んだ、最高に面白い一冊。本当に面白いです。

    (ミシマ社営業チーム 渡辺佑一)

  • Dec

    08

    『供述によるとペレイラは......』アントニオ・タブッキ/著、須賀敦子/訳(白水Uブックス)

    『供述によるとペレイラは......』アントニオ・タブッキ/著、須賀敦子/訳(白水Uブックス)

    「供述によると、ペレイラがはじめて彼に会ったのは、ある夏の日だったという。陽ざしは強いが風のある素晴らしい日で、リスボンはきらきらしていた」。静謐で、しかし波乱を予感させもする文章で始まるタブッキの傑作。舞台はファシズムの嵐が吹き荒れるポルトガル。三流夕刊紙の中年記者ペレイラが、ある青年との出会いを機に政治運動に巻き込まれる羽目に。調書的文体のリフレインが不穏な時代を描くのにぴったりで息をつかせない。

    (文藝春秋 鳥嶋七実さん)

  • Dec

    09

    『生きる哲学』若松英輔(文春新書)

    『生きる哲学』若松英輔(文春新書)

    悲しみ、と一口に言っても悲しみの経験は人それぞれで、一つとして同じ悲しみはない。悲しみのうちにある時には悲しみが極まるけれど、しかし悲しみとはむしろ豊かな経験で、悲しみを体験することで広く開かれる道がある。その信のもと、批評家の若松英輔さんが先達たちの哲学を読み解かれたのが本書。須賀敦子、フランクルから美智子皇后、孔子、宮澤賢治まで。きっと「生きるヒント」と励ましの言葉を見つけてもらえると思います。

    (文藝春秋 鳥嶋七実さん)

  • Dec

    10

    『寺田寅彦 わが師の追想』中谷宇吉郎(講談社学術文庫)

    『寺田寅彦 わが師の追想』中谷宇吉郎(講談社学術文庫)

    『吾輩は猫である』の寒月のモデルであり、名随筆家であった物理学者・寺田寅彦。その弟子である雪の研究者・中谷宇吉郎(やはり名随筆家)による師の追想録なのだが、寅彦一門による"総合の"物理学の豊かさと面白さが、当時の学問現場の雰囲気とともにからりとした文章で描出され、魅了されてしまう。「藤の実の割れ方の研究」「椿の花の落ち方について」など、論文タイトルの一端を記すだけでもポエジーが感じられると思う。

    (文藝春秋 鳥嶋七実さん)

  • Dec

    11

    『シンメトリーの地図帳』マーカス・デュ・ソ―トイ(新潮文庫)

    『シンメトリーの地図帳』マーカス・デュ・ソ―トイ(新潮文庫)

    自然界や人を魅了するデザインの裏に、ひそかに隠されているシンメトリー。その魅力にとりつかれたオックスフォード大学教授の数学者が、自らの数学探求史を縦軸に、シンメトリーをめぐる長い長い(群論の)数学史を横軸に語る数学の啓蒙書にして、一つの文学作品のような冒険譚。アルハンブラ宮殿に17種類のシンメトリーを探して歩き、古今東西の天才数学者たちの起伏ある数学人生を語り、研究のひらめきの興奮と難しさをも綴る。

    (文藝春秋 鳥嶋七実さん)

  • Dec

    12

    『甘美なる作戦』イアン・マキューアン(新潮クレスト)

    『甘美なる作戦』イアン・マキューアン(新潮クレスト)

    1970年代初頭、東西冷戦真っただ中のイギリス。美人で数学が得意だけれども、根っからの文学少女セリ―ナは、イギリスの諜報機関MI5に勤めることに。そこに、共産主義に懐疑的な新進気鋭の作家を支援する作戦が浮上。セリ―ナは女スパイとして送り込まれる。しかし、いつしか彼と恋に堕ちてしまい......。スパイ小説にして恋愛小説、手練の作家マキューアンの巧妙なプロットとトリックが愉しく、最高にロマンチックな1冊です。

    (文藝春秋 鳥嶋七実さん)

  • Dec

    13

    『さむがりやのサンタ』レイモンド・ブリッグズ/作・絵、菅原啓州/訳(福音館書店)

    『さむがりやのサンタ』レイモンド・ブリッグズ/作・絵、菅原啓州/訳(福音館書店)

    風が涼しく感じられるとこの絵本を思い出すことがあります。サンタさんがもしも市民生活をしていたら??さてはて。☆コマ割りも楽しい☆ですよっ。

    (ミシマガジンサポーター  三浦裕子さん)

  • Dec

    14

    『チョコレートパン』長新太(福音館書店)

    『チョコレートパン』長新太(福音館書店)

    チョコレートの池にパンが入ると、チョコレートパンになる。車が入ればブーブーいうし、ゾウは長い鼻でチョコの噴水だ。こんな単純なことがこんなにも面白く、魅力的に見えるのは長新太さんの力であり、僕にこの本を読み聞かせしてくれた人の力であり、ゆったり絵本を手に取ることができるのんびりした時間のおかげです。やっぱり絵本はいいなあ。

    (ミシマ社 鳥居貴彦)

  • Dec

    15

    『歌集 乱反射』小島なお(KADOKAWA)

    『歌集 乱反射』小島なお(KADOKAWA)

    この歌集は著者の小島なおさんが高校生のときに詠んだものが主になっている。読んでみればきっと、わたしと同じ高校生のひとにはきらめきを、かつて高校生だったひとにはある種の苦しさを与えてくれるはずだ。小島さんの歌は、わたしたちを取り巻く一瞬々々の見つめ方を、静かに、でも確かに変えてしまう。わたしも人に勧められて読んだのだが、なるほど素敵。短歌は教科書でだけ親しんだくらい、という人こそぜひ。

    (宮城県仙台第三高等学校 2年生 小原みさきさん)

  • Dec

    16

    『一億円もらったら』赤川次郎(新潮社)

    『一億円もらったら』赤川次郎(新潮社)

    問題です。一億円から人を透かして見てください。回答時間は2時間半です。あなたならどう解答しますか?
    この問題にとってもスマートに答えたのが本書である。一億円をもらって笑う人、泣く人...。使い道は人それぞれ。赤川次郎の5億円の答えをあなたもご覧あれ。

    (宮城県仙台第三高等学校 2年生 相澤由布佳さん)

  • Dec

    17

    『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵(サンマーク出版)

    『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵(サンマーク出版)

    何回片づけても部屋が散らかっていました。そんな時に出会ったのがこの本です。 こんまり先生は、本当に片づけのプロでした。本に従って片づけを進めていくと、部屋がすっきりしていくのがよくわかります。片づけを終えてみてしばらく経っても、全く部屋が散らかりません! 私が「片づけ祭り」を決行したのは三年ほど前ですが、未だに綺麗な部屋をキープしています。あなたもぜひお試し下さい!

    (宮城県仙台第三高等学校 2年生 遠藤柚奈さん)

  • Dec

    18

    『小林賢太郎戯曲集 CHERRY BLOSSOM FRONT 345 ATOM  CLASSIC』小林賢太郎(幻冬舎文庫)

    『小林賢太郎戯曲集 CHERRY BLOSSOM FRONT 345 ATOM  CLASSIC』小林賢太郎(幻冬舎文庫)

    小林賢太郎戯曲集は彼の本公演をもとに書かれた本ですが、その中の「ATOM」の中にある「採集」という話を紹介します。地元にいる男とそこに呼ばれた友人が、思い出話にふけりながら話は進みます。男が出かけて一人になったとき、友人は不可思議な点に気付き始めます・・・。実は男の語りにも、友人が気付けなかった隠された男の心が・・・。最後の一行まで見逃せません。ぜひ一度、読んでいただきたい作品です。

    (宮城県仙台第三高等学校 2年生 芳賀里佳子さん)

  • Dec

    19

    『Nのために』湊かなえ(双葉文庫)

    『Nのために』湊かなえ(双葉文庫)

    私がこの本を読むきっかけとなったのは、この本が原作となっているドラマを見て興味を惹かれたからです。この物語は、都内にある高層マンションで起こった夫妻の殺人事件と、その場に居合わせた男女四人が何の偶然か顔見知りであったことから展開していきます。四人の語りで進む本文は、読みながら一緒に推理できることが魅力の一つです。湊かなえの描く人々の様々な愛の形。読んでいるうちに本の世界に引きずり込まれていくような作品です。

    (宮城県仙台第三高等学校 2年生 田中さくらさん)

  • Dec

    20

    『鉄道員』浅田次郎(集英社文庫)

    『鉄道員』浅田次郎(集英社文庫)

    もうすぐ廃線になる鉄道の鉄道員(ポッポヤ)、佐藤乙松は、同時に、間もなく定年を迎えようとしていた。正月、子にも妻にも先立たれた乙松のもとに、ふしぎな姉妹が現れる。乙松の人柄と方言による語り口が心をあたたかくする『鉄道員』をはじめ、不気味な家庭教師が巻き起こす数奇な物語『悪魔』など、他6話を収録した、冬の長夜に読みたいショートストーリー集です。

    (宮城県仙台第三高等学校 2年生 佐藤七瀬さん)

  • Dec

    21

    『健康で文化的な最低限度の生活(1)』柏木ハルコ(小学館)

    『健康で文化的な最低限度の生活(1)』柏木ハルコ(小学館)

    新米ケースワーカー・義経えみるの奮闘記。生活保護というテーマを、漫画で書くということにとにかく痺れました。生活保護の不正受給や保護費の増加ということにばかり目がいっていて、いったいどういう制度なのかということをまったく知りもせずにいた自分をすごく恥ずかしく思うとともに、知りたい、と思いました。「健康で文化的な最低限度の生活」とはいったい何なのか。生きるって何なんだろうと、考えずにはいられません。

    (ミシマ社 新居未希)

  • Dec

    22

    『モイラの裔』松野志保(洋々社)

    『モイラの裔』松野志保(洋々社)

    萩尾望都や竹宮恵子、......少年たちの物語を、十代のころから読みふけり、読みたい物語は読みつくしたなと絶望していたとき、この歌集を手に取った。
    性や恋の外にある愛の物語が開かれ、一つの起承転結を持った物語が見える。同じ歌を読み返すと、また違う物語と出会う。短歌を読み解くことが、己の中から物語を発見し展開させてゆくことにつながってゆく。何度読んでも、幸福な時間に浸れる歌集。

    (古本ジャンボリーズ 古本うみうさぎ堂 井上梓さん)

  • Dec

    23

    『焚き火大全』吉長成恭・関根秀樹・中川重年/編(創森社)

    『焚き火大全』吉長成恭・関根秀樹・中川重年/編(創森社)

    童謡「たき火」に見える原風景を辿って容易に焚き火などできなくなった昨今に於いてこの名曲は何処へ向かうのだろう、そんなことをふと考えるこの季節。その答えはこの本にあったのです。技術、思想、歴史文化に現代の焚き火の姿から焚き火料理まで、焚き火の全てを網羅した重厚な一冊。火は人を育て今も火と共にあります。「危ないからいけない」から「危ないから知識を持たないといけない」と意識する、かつてを未来に。

    (古本ジャンボリーズ 古本屋ぽらん 奥村悠介さん)

  • Dec

    24

    『南極越冬記』西堀栄三郎(岩波新書)

    『南極越冬記』西堀栄三郎(岩波新書)

    日本人初の南極越冬隊、その隊長による1年間の生活記録。すべてが未知、極限の地での暮らしを、理智で乗り越え、豊かにしていこうとする姿は〈パイオニア=開拓者〉としての使命感と興奮に満ち、とにかくかっこいいのです。タロとジロらカラフト犬たち、オスの三毛猫タケシ、カモメの焼鳥パーティー、イグルーに置かれた人形「ベンテンさん」など興味深い話題も満載。寒い寒い今日このごろ、いま読めば臨場感も抜群ですよ。

    (古本ジャンボリーズ 徒然舎 深谷由布さん)

  • Dec

    25

     『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス/著、高杉一郎/訳(岩波書店)

    『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス/著、高杉一郎/訳(岩波書店)

    親戚が住む古い邸宅に預けられたトム。退屈な夏休みを一人で過ごすことになった彼はある夜、古い大時計が13時をうつのを聞く。月の光に導かれるように裏口のドアを開けると、そこには、彼にしか見ることのできない素晴らしい庭園がひろがっていた――。
    この物語は、すっかり大人になってしまったわたしたちの心にこそ響くSFです。子供の頃のあの眩しい日々を、そして、二度とそこには戻れないことを思い、読み返すたび最後には必ず泣いてしまいます。

    (古本ジャンボリーズ 徒然舎 深谷由布さん)

  • Dec

    26

    『心が雨漏りする日には』中島らも(青春文庫)

    『心が雨漏りする日には』中島らも(青春文庫)

    この本は、中島らもさんが亡くなる数年前に書かれた、躁うつ病と戦う日々を綴ったエッセイ。らもさんが書く文章なので、暗鬱な雰囲気は無く、ふふっと笑え、時に心に深く響く言葉に涙が出てきます。
    雨漏りしそうな時は、この本を手にとってみてください。読み終える頃には「やっぱり人生には少々の辛さがあってもいいよなあ」なんて、らもさんの言葉で思わされちゃって、少し幸せな気持ちになっています。雨漏りしてる人も、しそうな人も、してない人も、みんなであははと笑える本ですよ。

    (古本ジャンボリーズ 太閤堂書店 藤田真人さん)

  • Dec

    27

    『10ぱんだ』岩合日出子/作、岩合光昭/写真(福音館書店)

    『10ぱんだ』岩合日出子/作、岩合光昭/写真(福音館書店)

    たまに遊びに来る姪っ子(当時1歳10カ月くらい)のために買いました。始めは次々と出てくるパンダの写真に大興奮するだけでしたが、やがてパンダの数を数え(時にはわざと間違えながら)、1字1字大きな声で文字を読み上げる頃には、彼女は6歳になろうとしていました。

    (ミシマガジンサポーター 戸田百合子さん)

  • Dec

    28

    『高い城の男』フィリップ・K・ディック/著、浅倉久志/訳(ハヤカワ文庫SF)

    『高い城の男』フィリップ・K・ディック/著、浅倉久志/訳(ハヤカワ文庫SF)

    第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わってから十五年、世界はいまだに日独二国の支配下にあった――逆転した世界を緻密に描く歴史改変SFの傑作。作品全体の空を覆う(アメリカ人の)憂鬱と、水面下でマグマのようにうごめく陰謀=スリルをぜひ味わってほしいです。それにしても、「敗戦国・アメリカ」の市民チルダンが「戦勝国・日本」の人々に抱く屈折した感情は、カフカの『城』の主人公Kのそれによく似ています。もしかして、これは不条理文学?1963年度ヒューゴー賞受賞作!

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Dec

    29

    『あやしい! 目からウロコの琉球・沖縄史』上里隆史(ボーダーインク)

    『あやしい! 目からウロコの琉球・沖縄史』上里隆史(ボーダーインク)

    琉球・沖縄史の「影」の部分を前面に出して紹介したという一冊です。
    「琉球にあった!?ミイラの風習」「琉球の死刑と拷問」「沖縄にピラミッド?」「巨大カタツムリ飼育ブーム」など。なかでも衝撃なのは、琉球王国ではハゲたら強制的に引退させられるルールがあったというエピソード。男性はハゲたら仕事上の肩書きをすべて返上していたというのですが、なんなのそのルール。理由がよくわかりません。ちょっと自分の生え際を確認。まだセーフかな・・・?
    そもそも沖縄の歴史についての知識が乏しい僕にとって、どこからが影でどこからが影でないのかもよくわからないのですが、「あやしい」といわれれば確かに怪しい、妙な史実がたくさんです。

    (ミシマ社 鳥居貴彦)

  • Dec

    30

    『HOLIDAY 布川愛子 ART WORKS』布川愛子(玄光社)

    『HOLIDAY 布川愛子 ART WORKS』布川愛子(玄光社)

    タイトルがこの時期にぴったりかな、と思って選びました。布川さんの描く絵はあたたかいにおいがします。見ているだけで、からだがじんわりします。動物や植物のモチーフがよく出てくるのですが、線1本1本までものすごく心がこもっていて、優しさにあふれていて、現実で私が目にしている世界も、本当はこうなんじゃないのかなあ、と思えてきます。ところで、ネズミもとってもかわいらしく登場しているのですが、オフィスのネズミだってきっと... と思うよう努力しています... 。

    (ミシマ社 長谷川実央)

  • Dec

    31

    『書を楽しもう』魚住和晃著(岩波ジュニア新書)

    『書を楽しもう』魚住和晃著(岩波ジュニア新書)

    ミシマ社の悪筆ワースト3(ホシノ、ミシマ、トリイ)に数えられる私ですが、その分、美しい文字への憧れは人一倍あります。自分では書けなくても、美しい書の楽しみ方だけでも知りたいと思って手に取ったのが本書。中国の王義之に始まり、空海、良寛等々の手本を味わいながら、書法・書道の歴史や基礎知識を知ることができます。「書は心の画なり」。やっぱり字が上手くなりたいなぁ。みなさま、明日から新年、書初めの前に一読いかがでしょうか。

    (ミシマ社 星野友里)