今日の一冊バックナンバー

  • Mar

    02

    『新版 つげ義春とぼく』 つげ義春 (新潮文庫)

    『新版 つげ義春とぼく』 つげ義春 (新潮文庫)

    夢の不思議さ、おもしろさをそのままに正気の世界に持ち込むことは、本当にむずかしい。夢日記はたいていおもしろくない。ただ、つげ義春の夢日記だけはおもしろい。『和服を着たままの人妻が、海に腰までつかりながら釣具の新製品を客に説明している。』ほら、もうおもしろい。なんか、チャーミングだ。つげ義春の夢日記だけが、なぜおもしろいのか?もっと考えられてもよさそうな謎だと思う。

    (100000tアローントコ 加地猛さん)

  • Mar

    03

    『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル、柳瀬尚紀訳(ちくま文庫)

    『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル、柳瀬尚紀訳(ちくま文庫)

    昔、アニメの天才バカボンで、バカボンのパパの学生時代の友人たち、バカ田大学の卒業生が集結して、その場がバカ過ぎることになる、という回が確かあって、弟と二人で転げまわって笑った覚えがある。パパたちはけっきょく、ママに叱られて正気の側に引き戻されるのだが、不思議の国のアリスは、ママの現れない(アリスがママを半分担っているが)、バカ田大学の同窓会に似ていやしないか。アリス役はもちろん少年バカボン。いや、ちょっとバカボンには荷が重いか。

    (100000tアローントコ 加地猛さん)

  • Mar

    04

    『MUSICS』大友良英(岩波書店)

    『MUSICS』大友良英(岩波書店)

    そしてベケットのモロイやな、と思っていたんだがやめて今回はこちら。内容はさっぱり覚えていないが、読後7年近く経っても全身がその時のままに傾いているのがわかる。本に説得されるとはそういうことでしかないのではないか?音や音楽に関する本に違いはないが遥かにそれ以上だ、なんてこと言うより、こんなにおもしろい音楽の本は他にないぜ、とだけ言っておこう。表紙の紙質がデパートの包装紙みたいなのも気に入っている。

    (100000tアローントコ 加地猛さん)

  • Mar

    05

    『アンナ・カレーニナ』 トルストイ(新潮文庫)

    『アンナ・カレーニナ』 トルストイ(新潮文庫)

    現在、周りの誰からも読んだと聞かない世界の巨匠大賞受賞者は、トルストイだろう。ドストエフスキーは読むが、トルストイは読まない。そして私が今、1番読む気満々なのが、アンナ・カレーニナなのだ。なぜか?上記の賞を受賞して(させて)いるからだ。中でもなぜアンナ・カレーニナなのか?全然わからない。アンナ・カレーニナを読んだことを誰とも共有できないなんて!最高じゃないかと思う。でも読書って、そういうことだと思うんです。

    (100000tアローントコ 加地猛さん)

  • Mar

    06

    『「あの戦争」から「この戦争」へ ニッポンの小説 3』 高橋源一郎(文藝春秋)

    『「あの戦争」から「この戦争」へ ニッポンの小説 3』 高橋源一郎(文藝春秋)

    最後はブラジルの音楽家カエターノ・ヴェローゾのレコードを聴いた話をしようかと思っていたのですが、そういうコーナーではなかったのでこちらを紹介。しかしそういう気になっていたのも、最近ずっとこの本を読んでいたためかもしれません。無類の小説読みである著者の、小説の感想文集第3巻。中断、脱線、寄り道、だらけ。と言うと、読まずに済む余分ばかりのような気がしましょうが、逆で、一行たりとも目が離せない。20巻くらいまで書いてほしい。

    (100000tアローントコ 加地猛さん)

  • Mar

    07

    『組織で生き残る選手 消える選手』吉田康弘(祥伝社)

    『組織で生き残る選手 消える選手』吉田康弘(祥伝社)

    平均引退年齢は26歳。プロサッカー選手というととかく華やかな一面に注目が集まりがちだが、その実体は10代でも戦力外通告を受けることのある厳しい世界の職人である。本書を読むと、考えてスポーツに取り組むことの重要性を再認識するとともに、スポーツ選手としての真の成功の定義について考えさせられる。

    (ミシマガジンサポーター いとみきさん)

  • Mar

    08

    『クラバート』オトフリート・プロイスラー/著、中村浩三/訳(偕成社)

    『クラバート』オトフリート・プロイスラー/著、中村浩三/訳(偕成社)

    中学時代、素晴らしい司書の先生のおかげで、たくさんの本と出会いました。そのひとつがこの『クラバート』。ドキドキワクワクとはまったく違う、死や生きることの難しさ、哀しさ、そして愛がたくさんつまった、いままでに読んだことがないようなファンタジーに胸がいっぱいに。プロイスラーはこの作品を書いているなかで、あまりの重さに耐え切れず愉快な作品『大どろぼうホッツェンプロッツ』を書いたんだとか。大人になった今でも大好きで、あのときに出会えて本当によかったなあ、と思う一冊です。

    (ミシマ社 新居未希)

  • Mar

    09

    『読めば 宮古! あららがまパラダイズ読本』さいが族編著(ボーダーインク)

    『読めば 宮古! あららがまパラダイズ読本』さいが族編著(ボーダーインク)

    沖縄本島から南西に300キロに位置する驚くほど平たい島、宮古島。人口は約55,000人、おじいもおばあも生まれたての赤ちゃんも総出で東京ドームがやっといっぱいになるくらいだ。沖縄本島とも八重山諸島とも異なる「濃く」て「熱く」て「酒豪」の島、宮古島の人達がばんたが(私たちの)島を語り尽くす一冊。
    外国人のような顔立ちや、島特有のお酒の飲み方「オトーリ」やら「あららがまスパイク」という必殺技やら、「パリ」によく行くというおじいやおばあなど、観光ガイドには絶対に載らない「???」マーク全開のディープな宮古島ワールドに本書で足を踏み入れてほしい。ちなみに私もそのディープな宮古島出身である。

    (ボーダーインク 企画営業 金城貴子さん)

  • Mar

    10

    『笹の舟で海をわたる』角田光代(毎日新聞社)

    『笹の舟で海をわたる』角田光代(毎日新聞社)

    わたしは復帰後の沖縄に生まれ育ち、日本の高度経済成長を体感したことはもちろんないのだけど、戦後日本がもっていたであろう空気感がこまやかに織り込んであって、圧倒された。だけど本当に圧倒されるべきはべつのところかもしれない。わたしたちは徹底的に見ていないし、見ていないということを、知りもしない。そういうことだと気づいて戦慄する。

    (ボーダーインク編集 喜納えりかさん)

  • Mar

    11

    『明日戦争がはじまる』宮尾節子(思潮社)

    『明日戦争がはじまる』宮尾節子(思潮社)

    この詩集にはすきな詩編がたくさんあるけれど、ひとつだけあげるなら、「きれいに食べている」だ。東日本大震災で亡くなった息子の弁当箱を、がれきの中から見つけた母親が、弁当箱が空なのを確認し、「きれいに食べている」と嗚咽した、という新聞記事を読んでつくられた詩だ。空の弁当箱に嗚咽する母親、その母親のことばに感応する詩人。ここには小さいもの、ありふれたもの、なにげないものへの愛がある。ささくれだった時代に、こういう詩を読むと慰められる。

    (ボーダーインク 社長 宮城正勝さん)

  • Mar

    12

    『山原バンバン』大城ゆか(ボーダーインク)

    『山原バンバン』大城ゆか(ボーダーインク)

    沖縄本島の北部地域を山原(やんばる)と言うが、本書は変則的に「やんばらばんばん」と読むオキナワンコミック。なんでも「魔法使いサリーのうた」 のフレーズ「ヤンバラヤンヤンヤン」の語呂からきているらしいが、だからどうしたというわけではない。本書の空気感はそんなこだわらなさに満ちあふれている。主人公の少女・夏美の学生生活には特に事件は起こらない。会話は本当の意味での山原の日常会話。そしていつ読み返しても心地良い山原の風が吹いている。

    (ボーダーインク 編集 池宮紀子さん)

  • Mar

    13

    『マンスフィールド短編集』マンスフィールド/著、安藤一郎/訳(新潮文庫)

    『マンスフィールド短編集』マンスフィールド/著、安藤一郎/訳(新潮文庫)

    最近は古い短編小説ばかり読んでいる。阿部昭『短編小説礼賛』で紹介されているなかからキャサリン・マンスフィールドにはまった。100年ほど前のイギリスの作家で若くして亡くなっている。人生の断片を印象的に切り取る、繊細な描写。この感じは何かに似ている、懐かしい・・・と思い出したのが1995年に亡くなった漫画家・三原順の作品たち。「はみだしっこ」のワンシーンのように心が震えてしまった。そういえば三原順も今年は復活展があるんだよなぁ。

    (ボーダーインク 編集 新城和博さん)

  • Mar

    14

    『喋々喃々』小川糸(ポプラ社)

    『喋々喃々』小川糸(ポプラ社)

    『食堂かたつむり』をきっかけに小川糸さんの小説にハマり、今年は4冊も読んでしまいました。中でも、『喋々喃々』は、着物好きにはたまらない作品。谷中に住み、着物を着て暮らしたい。そして恋もしたい。

    (ミシマガジンサポーター ウエスギエリコさん)

  • Mar

    15

    『里山資本主義――日本経済は「安心の原理」で動く』藻谷浩介、NHK広島取材班(角川oneテーマ21)

    『里山資本主義――日本経済は「安心の原理」で動く』藻谷浩介、NHK広島取材班(角川oneテーマ21)

    マネー資本主義へのアンチテーゼを示す一冊! 過疎化の進む中国山地や瀬戸内海、そして「里山資本主義」先進国のオーストリアの事例をとりあげながら、地域の過疎化、エネルギー問題、少子化・高齢化など、日本の抱える様々な問題を有機的に解決する方法を提示してくれます。この静かな革命が、不安定な日本経済に「安心」をもたらすかもしれません。

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Mar

    16

    『風が強く吹いている』三浦しをん(新潮文庫)

    『風が強く吹いている』三浦しをん(新潮文庫)

    年々注目が高まる正月の風物詩、箱根駅伝を題材にした本作。走りを通して、選手10人それぞれの悩みや葛藤、また仲間との厚い信頼関係を描いた、ちょっとファンタジーな青春ドラマです。スピード感があって読みやすい筆者の文体も、箱根路を走る疾走感によくマッチしていて、さらさらとゴールまで読み進められます。たとえ強く厳しい風が吹いてこようとも、真正面から立ち向かってみよう、そう前向きな気持ちになれる1冊です。

    (浜陶 自由が丘店 濱田智人さん)

  • Mar

    17

    『シアター』有川浩(メディアワークス文庫)

    『シアター』有川浩(メディアワークス文庫)

    解散の危機に瀕したある劇団の困難を、外からやってきた主宰者の兄が、ビジネスの常識に置き換え成功へと導く痛快なサクセスストーリーです。崇高な芸術をやっているという強い自負を抱きながらも、実際にはノーギャラでチケットノルマは当たり前、生活費はバイトで稼ぐという日常にどっぷり浸かっている劇団員たち。その甘えの構造を遠慮なくぶった切って、お金を稼げる劇団へと理詰めで改革していく様に、プロフェッショナルで在ることの意味を教えられます。

    (浜陶 自由が丘店 濱田智人さん)

  • Mar

    18

    『本当に旨いサンドウィッチの作り方100』ホテルニューオータニ監修(イカロス出版)

    『本当に旨いサンドウィッチの作り方100』ホテルニューオータニ監修(イカロス出版)

    一流ホテルの本格的なサンドウィッチを、家庭で使う身近な食材を使って簡単に作ってしまおうという嬉しいレシピ集。一口にサンドウィッチといっても、B.L.Tなど王道からスイーツ系まで、具材の組み合わせ方次第でこれほど多彩に味わえるものかと驚かされます。また、具材のカットの仕方など料理の基本から丁寧に説明があるのも、普段料理をしない男子には嬉しいですね。ピクニックやお花見で仲間にふるまえば、人気者になれるかも? 

    (浜陶 自由が丘店 濱田智人さん)

  • Mar

    19

    『受け月』伊集院静(文春文庫)

    『受け月』伊集院静(文春文庫)

    桜の開花と時を同じく、プロ野球の開幕もまた、春の到来を感じる風物詩のひとつ。戦後日本における娯楽の花形であった野球を、登場人物それぞれの人間ドラマの背景に、共通の題材としてさりげなく置いたライトな短編集です。父と子がキャッチボールをする姿にキュンとする思い出をお持ちの方には、穏やかで温かい文章が心にじんわり染み入ることでしょう。父からの目線、子からの目線。歳を重ねて読むたびに、新しい思いが募る一冊です。

    (浜陶 自由が丘店 濱田智人さん)

  • Mar

    20

    『陰翳礼讃』谷崎潤一郎(中公文庫)

    『陰翳礼讃』谷崎潤一郎(中公文庫)

    文明開化以降、ガス灯だ、蛍光灯だと、常に明るさを求めてきた日本人。いやしかし待てよ。伝統的日本家屋に特有のその薄暗い空間の中にこそ、この国が培ってきた、「光の対極としての陰の美」があるのではないか、といかにも谷崎らしい優美な文章で綴られたエッセイです。昭和初期に、なんという先見性でしょう。大学時代に建築を専攻していた友人によると、デザインに関わる業界ではバイブル的な書物とのこと。むべなるかな。

    (浜陶 自由が丘店 濱田智人さん)

  • Mar

    21

    『もっとも美しい数学 ゲーム理論』トム・ジーグフリード(文藝春秋)

    『もっとも美しい数学 ゲーム理論』トム・ジーグフリード(文藝春秋)

    生きている様々なわりきれなさを説明しようとする試みの物語。認知の外へ分け入るスリリングさを感じてください!

    (ミシマガジンサポーター 三浦裕子さん)

  • Mar

    22

    『文學界 2015年2月号』(文藝春秋)

    『文學界 2015年2月号』(文藝春秋)

    一年に一回くらい顔を出す「ミーハーなトリイ」が購入してきた雑誌。目当ては芸人・又吉直樹の書いた小説『火花』だろう。でも彼は又吉直樹のことなんてほとんど知らないし、純文学なんてめったに読まないし、雑誌を買うこと自体が珍しい。
    だからこそ、変な先入観なく読んだ。関西の中学校にはかならずいる「俺は漫才師になんねん!」って言ってる奴が自分のクラスにもいたなあとか、そいつにちょっと影響されて将来のことをなんやかんやと考えてた時期もあったなあとか、懐かしく思い出しながら。

    (ミシマ社 鳥居貴彦)

  • Mar

    23

    『長距離走者の孤独』アラン・シリトー(新潮文庫)

    『長距離走者の孤独』アラン・シリトー(新潮文庫)

    人はある種のタイミングでその後の人生のスタンスを決めるような人や物に出合えますよね。
    僕の場合は、それはこの本でした。確か中学生か高校生の時であったと思います、読み返すことなく現在に至っていますが、細かいストーリーは忘れてもまちがいなく自分の骨のどっか一部になっている一冊です。
    60年代イギリスの"怒れる若者たち"の代表作らしいのですが、漂う閉塞感とそれにあらがう若者とを描き、後のイギリスのパンクムーブメントにもつながるような精神が描かれているような気もします。
    まあ当時はそんなことも関係なくとにかく見かけのかっこよさではない人間の本当の意味でのかっこよさを知らされた気がして、強烈な印象をうけました。以来「長いものには巻かれたくないおじさん」となって今に至っています。

    (bookcafe&gallery UNITE'(ユニテ) ハガミキオさん)

  • Mar

    24

    『ブタとおっちゃん』山地としてる(FOIL)

    『ブタとおっちゃん』山地としてる(FOIL)

    写真集を文章で推薦すること表現することは存外むづかしいものだと今回思い知らされました。
    ただ「見てくれ、見ればわかる」だけでは話になりませんので、文章にしますが、この写真集、ブタとおっちゃんの表情がすべてを伝えています。そして幸せな幸せな光景は、時としてすこし悲しみを誘います。

    (bookcafe&gallery UNITE'(ユニテ) ハガミキオさん)

  • Mar

    25

    『星の王子さま』サン=テグジュペリ(新潮文庫)

    『星の王子さま』サン=テグジュペリ(新潮文庫)

    あえてのド定番です。
    小説にはきわめておおまかに分けて2つの種類があると思います。強烈なカウンターパンチ一発で派手に転がされるタイプと、「ぼうや、そんなへなちょこパンチじゃ俺は倒せないぜ」とか言ってるうちに膝から崩れ落ちてしまうタイプ。前者が先日あげた「長距離走者の孤独」だとすると今回の作品は明らかに後者です。1,2回読んだだけでは作者の本当に言いたいことは明確にとらえられません。星の王子さま風に言うと「深いものほどシンプルな形をして表れてくるんだ」とでも申しましょうか。
    実際わたしも若いときに一度読んだ時は、ちょっと訳わからなくてこれのどこが名作なんだとまで思いましたが近年読み返して泣きました(どこで泣いたかは秘密です)。やはり人間、年を経て好むと好まざるとにかかわらず、人生のなんだかんだを経験してくるとわかってくるものってありますよね。今はサンテグジュペリが生きていれば一緒に立ち飲みにでも行って酒をくみかわして語りあいたいものです(いったい何語で?)。
    1回読んだという人も、あまりに定番で読んでないひとも、何度も読んでほしい一冊です。
    それもできるだけ間を開けて、10代、20代、30代、40代、50代、60代と、その都度見えてくるものが違うと思います。私もおじいちゃんになってまた読み返したいと思います。その時またどんなことを教えてくれるのか楽しみです。

    (bookcafe&gallery UNITE'(ユニテ) ハガミキオさん)

  • Mar

    26

    『夜の木(The Night Life of trees)』シヤーム、バーイー、ウルベーティ(タムラ堂)

    『夜の木(The Night Life of trees)』シヤーム、バーイー、ウルベーティ(タムラ堂)

    印象的な黒をバックに木が描かれた表紙をめくると、何か懐かしさを感じるインクの香りがたちこめます。この本はすべてが手作り、手漉きの紙を使い1枚1枚シルクスクリーンで印刷し製本ももちろん手製です。この独特の絵を描いているのは中央インド出身のゴンド族の3人のアーティスト。ゴンド族に伝わる木に関する神話的な話を絵にしています。その絵の素晴らしさは言葉ではなかなか表せませんが、私たちが子どもの頃は持っていた夜の暗い森や木、そこに潜むであろうものたちへの畏れや憧れなどの忘れていた感情を思い起こさせてくれます。匂い、手触り、視覚などを通して人間の持つプリミティブな部分に直接に語りかけてくるこういう本は、現代では、ほとんど見られなくなりましたが、電子書籍の利便性とは対極の位置にある本であり今こういう本を作り、出版する意義は非常に大きいと思います。すべての工程に人間の手作業の技術や労苦が入り、別の人間が手に取り、それを感じられるもの、「紙の本」の良さを最大限に生かした一冊です。

    (bookcafe&gallery UNITE'(ユニテ) ハガミキオさん)

  • Mar

    27

    『偶然の装丁家』矢萩多聞(晶文社)

    『偶然の装丁家』矢萩多聞(晶文社)

    晶文社の人気シリーズ「就職しないで生きるには」シリーズの最新版。
    このシリーズ、本当に長く続いていて私も昔、学生のころ、その魅力的なタイトルに惹かれて買った思い出があります。時代を問わず若者にとって大きな関心は「就職」だろうと思いますが私も決して「就職」が嫌だったわけではなく「就社」ができれば避けたいことでした。仕事をするということ、そして働いて対価を得るということは当時の私にとっては「自由になる」という意味でしたので、早く働きたいという気持ちはおおいにありましたが、
    生来団体行動が苦手で会社員生活になじめそうになかった私は何か他の道を探そうと必死にあがいていました。当時このシリーズの最初の本である(確か著者はレイモンド・マンゴーさん)それはベストセラーぽく売れていたので、私と同じく特別な才能もないのに何かフリーランス的な生き方をしたいと思っていた若者は少なからずいたという事でしょう(もっとも今現在の私は自分のできないことをされている方は、サラリーマンさんを含めただただ尊敬の対象でしかないのですが)。
    前置きが長くなりました。この本で多聞さんは偶然を強調されています。確かに人生は偶然の連続かもしれません。でも一つ確かなのはその偶然をもたらすものは自分自身であるということです。自分の内なる声を信じ、自分のしたくないことでは無しに本当にしたいことの方向へ歩を進める事こそが「偶然」に出合える唯一の方法ではないでしょうか。

    (bookcafe&gallery UNITE'(ユニテ) ハガミキオさん)

  • Mar

    28

    『ぼくのニセモノをつくるには』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

    『ぼくのニセモノをつくるには』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

    なんだか気になって立ち読みしたら、なんだかとっても深くて自分自身に問いかけられているような気がして印象に残った一冊です。

    (ミシマガジンサポーター 三宅沙弥さん)

  • Mar

    29

    『杉浦非水のデザイン』杉浦非水(パイ インターナショナル)

    『杉浦非水のデザイン』杉浦非水(パイ インターナショナル)

    杉浦非水は、明治から昭和にかけて活躍したグラフィックデザイナーです。このデザイン集の中には、デパートの三越のポスターや、カルピスのパッケージラベルなど、今でも私たちに身近なもののデザインがたくさん入っています。完全に好みの問題ですが、私は新しいものより古いものが好きなので、この本の中のものがいま町の中にあったら、どんなにすてきだろうと思います。作られた年代は古いけど、デザインは古くさくないです。それってすごいな、って思います。

    (ミシマ社 長谷川実央)

  • Mar

    30

    『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』礒井純充(学芸出版社)

    『本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた』礒井純充(学芸出版社)

    当館の目標でもある「人と本が町をつくる」可能性を教えてくれる本です。
    町のどこにでも本があり、本に人が集まってくると、人間関係も地域もまるごと良くなっていく。
    そんな事が本当に起こるのか? どうしたらそうなるのか? を実例を交えて説明してくれ、夢の町を身近なものにしてくれます。
    まちづくりをテーマにした棚では一番になくなる、補充必須の本です。

    (佐賀県武雄市 蔦屋書店武雄市図書館 櫻井香織さん)

  • Mar

    31

    『ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記』ウィトゲンシュタイン・L/著、ゾマヴィラ・I/編、鬼界彰夫/訳(講談社)

    『ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記』ウィトゲンシュタイン・L/著、ゾマヴィラ・I/編、鬼界彰夫/訳(講談社)

    20世紀を代表する哲学者と言われ、名言集でもよく見かけるウィトゲンシュタインが残した日記帳の全訳。
    完成された著書とは違い、その日に感じた「何か」によって日々新しい論理が生まれていくのが分かります。
    天気を嫌がったり不安になったりという悩ましい人間の部分が見えれば見えるほど、哲学者としての彼の発言が今までよりさらに偉大に感じられるのが不思議です。

    (佐賀県武雄市 蔦屋書店武雄市図書館 櫻井香織さん)