今日の一冊バックナンバー

  • Oct

    01

    『17歳のポケット』山田かまち(集英社)

    『17歳のポケット』山田かまち(集英社)

    「かまち、おまえはもっと自分を大切にしろ。
    激しく美しく生きろ。
    みせかけや、いくじなしなみじめさは、
    軽く、安いものだ。
    激しい美しさ、真の叫びこそが美しい。」
    芸術を、音楽を愛し、射抜くようにまっすぐでやさしい心を持った少年、山田かまちは、17歳のときエレキギター練習中に感電して亡くなりました。彼がベッドの下に残した、たくさんの言葉や詩や絵を集めて並べたのがこの『17歳のポケット』です。ときに悩み、ときに激しく、ときにふしぎなほど安らかな彼の言葉を読んでいると、心の背筋が伸びてくる。そんな一冊。

    (ミシマ社 京都オフィスデッチ 菊池まどか)

  • Oct

    02

    『ありがとうがエンドレス』田口ランディ(晶文社)

    『ありがとうがエンドレス』田口ランディ(晶文社)

    読書にはいろんな醍醐味がありますよね。物語のなかに浸ったり、知的な思考回路に目を回したり、ただただばか笑いしたり。もしあなたが、愛にあふれた言葉で心を叩いてもらって生きるエネルギーを受けとりたいなーなんて思っていたら、これです。母から娘に贈られた、「しあわせになることばの贈りもの」。読むだけでしあわせになれるなんて、なんてしあわせなんだ!!

    (ミシマ社 京都オフィスデッチ 小林翔太)

  • Oct

    03

    『切りとれ、あの祈る手を』佐々木中(河出書房新社)

    『切りとれ、あの祈る手を』佐々木中(河出書房新社)

    本を読むとはどういうことか。 それは果たして「読む」という名に値する行為か。 読み書くという技藝(アート)とは。 テキストとはどのように向き合うべきものか。
    読み書き、テキスト、文学、革命。これらの言葉がどれほどの射程をもつものであるか、彼の著を読んだものは知ることになるだろう。彼は読んだ。彼らは読んだ。それはつまり、あなたのその読む姿が試されるということでもある。

    (ミシマ社 京都オフィスデッチ 小林翔太)

  • Oct

    04

    『ルポ 電王戦  人間vs.コンピュータの真実』松本博文(NHK出版新書)

    『ルポ 電王戦  人間vs.コンピュータの真実』松本博文(NHK出版新書)

    将棋のプロ棋士とコンピュータソフトが対決し話題となった棋戦、電王戦。世間的には棋士の真剣勝負が大いに話題となったが、本書を読んで面白いのは、コンピュータ将棋ソフトの開発の歴史とそこに関わった人々の息づかいが感じられるところにもある。その黎明期からの流れが、一気に読めてしまう。コンピュータの可能性と、棋士の素晴らしさ。その両方に感激しながら読了した。棋譜や局面図などは一切出てこないので、将棋の知識があまりない人にもオススメしたい。

    (ミシマ社 渡辺佑一)

  • Oct

    05

    『けもの道の歩き方』千松信也(リトルモア)

    『けもの道の歩き方』千松信也(リトルモア)

    千松さんは今では珍しくなってしまった若手の猟師さんです。大学在学中に猟師になったというちょっと変わった経歴の持ち主。近年、増えすぎた野生動物たちによる里山への被害や林業への影響などが問題になっています。しかし、野生動物たちは悪いことをしているという自覚は全くありません。「ちょっと里山へおりて畑でも荒らしてやろうか」なんてことを考えている訳ではないのです。そう、彼ら(彼女ら)も僕たちがご飯を食べるのと同じように、ただ生きるためにご飯を食べているだけなのですから。「なぜ畑を荒らすのか?」と尋ねたらきっと「そこに食べ物があったから」と答えるのではないでしょうか。野生動物たちには登山家が山に登るのと同じくらいシンプルな理由しかないのです。現代社会における野生動物たちと人間との関係を見つめ直すことができる素晴らしい一冊です。クスッと笑えるエピソードや、最後にはちょっと泣きそうになってしまうエピソードも......。

    (三省堂書店 京都駅店 宇野爵さん)

  • Oct

    06

    『困難な成熟』内田樹(夜間飛行)

    『困難な成熟』内田樹(夜間飛行)

    僕は1981年生まれ34歳。年齢的には大人ですが中身はまだまだ子供です。この本は「なぜ自分はこんなにも中途半端なのだろう?」という疑問にひとつの答えを教えてくれました。自分は大人ですと答えられる人ってどれくらいいるのでしょうか?仕事をしているから大人?結婚しているから大人?貯金がいっぱいあるから大人?どれもピンときません。そもそも大人って何ですか?子供から大人へと成熟していく過程で出会う様々な疑問にこの本は答えてくれます。これからの日本を創っていく子供たちにおススメします。この本が何かを疑問に思い考えるきっかけになればよいと思います。個人的にはもうちょっと早く出会いたかった一冊です。

    (三省堂書店 京都駅店 宇野爵さん)

  • Oct

    07

    『脱東京』本田直之 (毎日新聞出版)

    『脱東京』本田直之 (毎日新聞出版)

    「ローカル」と聞くと、一昔前までは田舎で何もなくて面白くない、と言った印象しかなかったように思います。都会への憧れ、特に東京にはモノも情報も溢れ何でも揃うというイメージがあります。ところが3.11東日本大震災をきっかけに人々の価値観は大きく変化したように思います。時間や経験に価値を見出し、ローカルへと移住し、ビジネスの一線で活躍する人達が増えてきました。東京ではなくローカルだからこそ実現できるライフスタイル。お金の交換ではなく価値や経験の交換が成立する社会。これからの新しいビジネスモデルとしても興味深い一冊です。

    (三省堂書店 京都駅店 宇野爵さん)

  • Oct

    08

    『僕がコントや演劇のために考えていること』小林賢太郎(幻冬舎)

    『僕がコントや演劇のために考えていること』小林賢太郎(幻冬舎)

    この本はタレント本ではなく、どちらかと言えばビジネス書に近い気がします。内容は小林さんがコントや演劇のために考えていることです。小林さんの作品の特徴は「ちょっと不思議で美しくて笑える」でしょうか。笑いをアートに変える男なんて呼ばれています。作品を見る度に、「どうやってこんな事思いつくのだろう?」といつも疑問に思います。この本に書かれている小林さんの作品の作り方、仕事に対する姿勢や考え方、アイデアの出し方などは「なるほど、そこまでやっているのか!」と驚きの連続です。できれば小林さんの作品を見てから読んでもらいたい一冊です。おススメは「Potsunen」ですかね。小林賢太郎作品本当に面白いですから。

    (三省堂書店 京都駅店 宇野爵さん)

  • Oct

    09

    『島の美容室』福岡構造(ボーダーインク)

    『島の美容室』福岡構造(ボーダーインク)

    沖縄・渡名喜島、人口400人のこの島に月に10日だけあいている美容室があります。この島には何年も美容室がありませんでした。しかし、茨城県で美容師をされている福田さんが月に10日だけ島に来て美容室を開かれているのです。
    僕は髪を切るという行為には何か特別なものを感じます。「何か嫌なことがあってバッサリ髪を切った」みたいな、過去の事を忘れて新しい自分に生まれ変わる儀式のような、神聖な行為にも感じられます。この本は写真集なのですが、福田さんに髪を切ってもらった後の島民のみなさんの表情が本当に素晴らしいのです。みんな生まれ変わったような素敵な笑顔(なかにはちょっと緊張している人もいらっしゃいますが)。ページをめくる度に自分も新しく生まれ変わったような不思議な力を貰えます。

    (三省堂書店 京都駅店 宇野爵さん)

  • Oct

    10

    『上林暁傑作小説集 星を撒いた街』上林 暁(夏葉社) 

    『上林暁傑作小説集 星を撒いた街』上林 暁(夏葉社) 

    本を開いた瞬間から、すこし前の懐かしいセピア色の言葉の時空に入り込み、人の心の紐解いた優しさに包まれました。

    (ミシマガジンサポーター マル企画さん)

  • Oct

    11

    『移民の宴』高野秀行(講談社文庫)

    『移民の宴』高野秀行(講談社文庫)

    日本には、およそ200万人もの外国人が住んでいるという。京都で暮らしていても、外国人に会わない日はない。中心部に行かなくても、そこらへんの居酒屋に、ラーメン屋に、ふつうに居るのである。そんな彼らが日々「何を食べている」のか? 神楽坂のフランス人やベリーダンサーのイラン人など、本当に多種多様な人たちに、高野さんが触れていく様子が描かれる。ああ、ほんまにいろんな人がこの国、この地球に生きてるんやなあと思って嬉しくなる。私が住むこの日本だって、外から見るとただの「変わった文化の国」にしか見えなかったりする。でも、それでええやん、と何故だか救われた気持ちになるのだな、これが。

    (ミシマ社 新居未希)

  • Oct

    12

    『富士』武田泰淳(中公文庫)

    『富士』武田泰淳(中公文庫)

    その分厚さ(文庫本で2センチ超)、そして著者が戦後文学の巨人であるだけに敬遠されがちかもしれない。戦時中の富士山麓にある精神病院が舞台。登場人物は奇人・変人・助平ばかり。ドストエフスキーの小説ばりにやたら長い台詞が繰り出され珍妙で深淵な対話が繰り広げられて興奮させられる。これほどエロく面白い小説はそうそうない。誰か映画化する者はいないだろうか。

    (東京堂書店 神田神保町店 竹田学さん)

  • Oct

    13

    『書物の近代』紅野謙介(ちくま学芸文庫)

    『書物の近代』紅野謙介(ちくま学芸文庫)

    作家の肖像写真や装丁、造本、印刷といったメディアを視角に文学史を読みかえるスリリングな文学研究。文学のみならず出版や書物に関心のある人にとって、間違いなく名著である。学術書としてのバランスのよさと読物としての面白さが両立している稀有な書物。本書あとがきに著者の志を感じることができ、出版に携わる人間の励みになるだろう。観念にも陥らず、フェティシズムにも堕さないまっとうさが爽快である。

    (東京堂書店 神田神保町店 竹田学さん)

  • Oct

    14

    『ママのためのシュタイナー教育入門』ドーリス・シューラー(春秋社)

    『ママのためのシュタイナー教育入門』ドーリス・シューラー(春秋社)

    別にママでなくとも、パパでもグランパでもグランマにも読んで身に沁みる。子育て実用書は数多あるが、子育ての哲学書は滅多にない。本書では著者の生活・人生・身体に根差す、それ以上でもそれ以下でもない言葉で子を育てるということの真理が語られている。育てることは育てられること。そんな当たり前のことが肯定的に再発見できる。もちろんシュタイナー教育に関心のある人にも格好の入門書だ。

    (東京堂書店 神田神保町店 竹田学さん)

  • Oct

    15

    『おかしな金曜日』国松俊英(偕成社文庫)

    『おかしな金曜日』国松俊英(偕成社文庫)

    子が捨てられる話である。生活苦から子を置いて出奔したり、遺棄したりする親がしばしばニュースになる。作品当時よりも母子家庭をタブー視する風潮は薄れているだろうが、無縁社会化が進む現在は、子を一人で育てることの困難はさらに増しているのではないか。捨てられた子どもたちのたくましさ、けなげさに寄り添って読み進めていくことで「社会」としての問題へ目が開かれていく、硬派な作品。

    (東京堂書店 神田神保町店 竹田学さん)

  • Oct

    16

    『死にゆく者の孤独』ノルベルト・エリアス/著、中居実/訳(法政大学出版局)

    『死にゆく者の孤独』ノルベルト・エリアス/著、中居実/訳(法政大学出版局)

    死、そして老いについて深く洞察する歴史社会学のエッセイであり看取りやケアにアプローチする際にも必須の文献。死にゆく者とは、老い衰えゆく者であり、社会の周縁に追いやられる者である。根源的な孤独。しかし自分はそれを本当に腹の底から理解できない。人は自分だけは死なないとどこかで思っているものらしい。「しかしわれわれは、究極的には死を所与の事実として直視することはできるのである。」メメントモリ、それが生きることだ、と本書は語りかける。

    (東京堂書店 神田神保町店 竹田学さん)

  • Oct

    17

    『手紙にそえる季節の言葉 365日』山下景子(朝日新聞出版)

    『手紙にそえる季節の言葉 365日』山下景子(朝日新聞出版)

    「心晴らし」「梅雨明り」など、日本語の美しさにうっとりしてしまいます。日本人で本当に良かった。手紙を書くのが大好きですが、気の利いた文が浮かばず困っていました。この本で知った言葉をたった1つそえるだけでパッと映えるから不思議です。「毎晩一語」楽しみながら読んでいます。

    (ミシマガジンサポーター Hamiさん)

  • Oct

    18

    『泣き虫しょったんの奇跡 完全版 サラリーマンから将棋のプロへ』瀬川晶司(講談社文庫)

    『泣き虫しょったんの奇跡 完全版 サラリーマンから将棋のプロへ』瀬川晶司(講談社文庫)

    将棋の世界には厳しい掟がある。26歳までに四段に昇段できなければ、プロ棋士にはなれないのだ。いや、なれなかったのだ、瀬川さんが「プロ編入」を果たすまでは――『透明の棋士』(北野新太)でも、印象的に描かれている瀬川晶司さん(現五段)が、一度はプロ棋士への夢を絶たれながらも、サラリーマン生活を経て、見事プロ棋士入りを果たすまでの「奇跡」を描いた本書。その生き様に、思わず涙し、励まされる。すべての人に読んでほしい一冊だ。
    (10月21日(水)には新宿にて、北野新太さん・瀬川晶司五段・本田小百合女流三段によるトークイベントもあります。詳細は→コチラ

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Oct

    19

    『ムハマドユヌス自伝』ムハマド・ユヌス、アラン・ジョリ/著、猪熊弘子/訳(早川文庫)

    『ムハマドユヌス自伝』ムハマド・ユヌス、アラン・ジョリ/著、猪熊弘子/訳(早川文庫)

    僕の人生を変えるほどのインパクトをくれたグラミン銀行ムハマドユヌス博士の半生を描いた一冊。挑戦と挫折を繰り返すその力強い生き方に世界を変える一歩を踏み出す勇気をもらえます。未曾有の飢饉がバングラデシュを襲い誰もが無力感を感じていたときにユヌス博士が何を感じ、どう動いたのか。文庫版の解説は僕が書かせてもらいましたのでぜひ合わせて読んでもらえると嬉しいです。

    (e-Education創業者・ロンドン大学院生 税所篤快さん)

  • Oct

    20

    『ユングの生涯』河合隼雄(第三文明社)

    『ユングの生涯』河合隼雄(第三文明社)

    いま個人的にもっとも興味がある夢分析。普段見ている何気ない夢が自分の潜在意識で感じているものを映し出しているのではないか。それを心理療法に昇華させたユングの生涯を日本の第一人者河合隼雄が綴る。ちなみに僕が昨日見た夢は、ひたすら虫の大群に追われるという夢。必死に走っても走っても虫たちが襲ってくる。それは先週発売した新著の売れ行きが気になってしょうがない強迫観念でしょうか。それとも寝る前に風の谷のナウシカ(漫画)を読んだからでしょうか。みなさんは最近どんな夢を見ましたか。

    (e-Education創業者・ロンドン大学院生 税所篤快さん)

  • Oct

    21

    『未来を変えた島の学校』山内道雄、岩本悠、田中輝美/著(岩波書店)

    『未来を変えた島の学校』山内道雄、岩本悠、田中輝美/著(岩波書店)

    過疎化した地方がいかに再生するのか、日本中の注目を浴びる島根県隠岐諸島の海士町の物語。ちょうど僕も先月行ってきて、この本で出てくる島前高校で「夢ゼミ」という講演をしてまいりました。日本中から「島留学」というコンセプトに共鳴して集まってきた高校生と、島の子どもたちの共存が学校に多様性とエネルギーをもたらしている。日本中いろいろなところで講演してきたが、この島前高校の高校生たちほど僕の話に反応してくれる子達はいなかった。普段どんな大人たちに接しているかが、子どもたちの「聞く姿勢」から簡単に感じることができた。この本は未来の教育の作り方に一石を投じた。

    (e-Education創業者・ロンドン大学院生 税所篤快さん)

  • Oct

    22

    『編集者という病』見城徹(集英社文庫)

    『編集者という病』見城徹(集英社文庫)

    モテたいというエネルギーを元に「圧倒的努力」を続け、血反吐を吐くまで働き出版会にインパクトを出し続けてきた見城さん。その肩に力が入ってるぶりはわれらがミシマ社の三島代表とはまさに水と油だ。僕もモテたい! というエネルギーが強く、それを今までの活動に存分に活かしてきた。それにしたって見城さんの自身の自己顕示欲とコンプレックスをここまでおおっぴらに開示してしまう胆力には驚くしかない。自分自身は果たして見城さんのようなエネルギーを仕事に向け続けられるだろうか。たぶん無理だろうな......。

    (e-Education創業者・ロンドン大学院生 税所篤快さん)

  • Oct

    23

    『若者が社会を動かすために』税所篤快(KKベストセラーズ)

    『若者が社会を動かすために』税所篤快(KKベストセラーズ)

    先週から書店に並んでおります、若手20代のリーダーたちの挑戦を書き下ろしたチェンジメーカー物語です。8人の取材した面々は広告、社会企業、ジュエリー、教育、人権と多岐に渡ります。共通しているのは「自分の信じている仕事」に打ち込んでいる姿勢だろう。たとえば最後に登場する武藤さんは27歳という若さでALSという難病を宣告される。体の運動神経だけがどんどん低下し、歩けず、手を動かせなくなってしまう病だ。彼はその宣告と進行のスピードにも関わらず決して自暴自棄になることになく、自分自身ができることをひとつひとつ実践していっている。この姿は僕たちの胸をうつ。こんな挑戦者たちの熱き物語をぜひ一人でも多くの人に共有したいと思っている。

    (e-Education創業者・ロンドン大学院生 税所篤快さん)

  • Oct

    24

    『証言・まちづくり』西村幸夫、埒正浩(学芸出版社)

    『証言・まちづくり』西村幸夫、埒正浩(学芸出版社)

    久しぶりに滋賀・長浜へいき、少し時間をつくって長浜図書館へ。黒壁のこと書いてる本ないかな?手にとったのがこの証言集。小布施・犬山・大聖寺・長浜・近江八幡・伊勢河崎・徳島・由布院。この8つの町の再興にリーダーシップをとった人々の語り。気づくと涙ぐんでいました。

    (ミシマガジンサポーター EishiNさん)

  • Oct

    25

    『数学する身体』森田真生(新潮社)

    『数学する身体』森田真生(新潮社)

    つい先日発刊した、森田さんの初のご著書です。この前直接お聞きしたのですが、エピグラフまでご自身で訳されているそうで、特に終章のT・S・エリオットの引用が印象的でした。

    「すべて私たちの探求の終わりは
     出発の地に辿り着くこと
     そしてその地を初めて知るのだ。」

    本を読むことも探求であるならば、終章まで読んで初めて一行目を知る。
    読書という行為が循環的な営みであることに改めて気づかされました。

    (ミシマ社 田渕洋二郎)

  • Oct

    26

    『夕暮れの時間に』山田太一(河出書房新社)

    『夕暮れの時間に』山田太一(河出書房新社)

    名作ドラマを数々生み出した、山田太一さんが七十代に書いたエッセイ。境遇も立場もさまざまな「見知らぬ人」へ「さらりと笑顔を向ける」ような言葉の数々がとても美しい。
    年齢を重ねなければ、そして山田さんという希有な才能の持ち主でなければこんな文章は書けない、とつい崇めるような気持ちになるが、貫く倫理はとても普遍的なもので、なれるかはわからないけど、自分もこんな大人を目指していかなければいけない、と襟を正す思いになる。

    (ジュンク堂書店 池袋本店 五坪侑恵さん)

  • Oct

    27

    『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー/著、村上春樹/訳(新潮文庫)

    『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー/著、村上春樹/訳(新潮文庫)

    野崎孝さん訳の「フラニーとゾーイー」にももちろん感銘を受けたのだが、村上春樹さん訳の「フラニーとズーイ」はまた実に素晴らしい。村上版に付属の「投げ込み冊子」が、この物語の受け止め方についての解説をしてくれている。逡巡し迷いながらも、ニヒリズムに陥らず、人間の知性に賭け、対話をあきらめないこと。いまぜひ、いろんなひとに読んでほしい一冊。

    (ジュンク堂書店 池袋本店 五坪侑恵さん)

  • Oct

    28

    『ジャコメッティ』矢内原伊作(みすず書房)

    『ジャコメッティ』矢内原伊作(みすず書房)

    高校のころ憧れていた国語の先生に一番すきな本を尋ねたら、先生は『ジャコメッティとともに』だと仰られ、てっきり文学作品かと思っていた私は、少し面食らったのだった。
    真実に近づくために作品を作っては壊すジャコメッティと、帰国を幾度も延ばしながらそれに寄り添うヤナイハラ。
    試みは、遂行可能だから行うのではなく、その問いが立てられたことにより行われるのだと思った。大人になることへ希望を持たせてくれた一冊。

    (ジュンク堂書店 池袋本店 五坪侑恵さん)

  • Oct

    29

    『小商いのすすめ』平川克美(ミシマ社)

    『小商いのすすめ』平川克美(ミシマ社)

    当時城陽にあった「ミシマ社の本屋さん」で購入。「移行期的混乱」を読み、気になっていた平川克美さんの本。経済の本なのに、哲学の本のようで、読んですとんと腑に落ちていった。「小商い」は主体性を保ちながら働くための、唯一の方法なのだ。あの日買ったあの本が、その後の私の書店員としての方向性を決めてくれた気がする。

    (ジュンク堂書店 池袋本店 五坪侑恵さん)

  • Oct

    30

    『はまゆりの頃に』田代一倫(里山社)

    『はまゆりの頃に』田代一倫(里山社)

    2011~2013年の間、田代さんが福島で出会った人々のポートレイトを453点収録。一枚に一人、全身を写す構図で撮り続けた写真に、田代さんがとモデルが会った日時・状況が記されている。モデルになった福島の人々の前で、部外者としての田代さんが、ためらいながらもシャッターを切る姿がまざまざと浮かんでくるようだ。写真に写る全ての人々が、「かけがえのないひとりのひと」であるということを、実感させてくれる。

    (ジュンク堂書店 池袋本店 五坪侑恵さん)

  • Oct

    31

    『猪変』中国新聞取材班(本の雑誌社)

    『猪変』中国新聞取材班(本の雑誌社)

    亥年生まれの私はまずタイトルに掴まれました。海を泳ぐ二頭の猪の映像に大笑いしたのは半年ほど前だったのでしょうか。しかし、ぴったりとくっついて泳ぐ彼らの姿の後ろには現代の日本が抱える実に様々な問題があったのでした。剽軽な映像を見てオシマイにならず・・・この本がどんぴしゃのタイミングで発売されて良かったと思えました。

    (ミシマガジンサポーターさん)