今日の一冊バックナンバー

  • Dec

    01

    『星新一 一〇〇一話をつくった人』上下巻 最相葉月(新潮文庫)

    『星新一 一〇〇一話をつくった人』上下巻 最相葉月(新潮文庫)

    まだSFという言葉がほとんど知られていなかった時代、江戸川乱歩はある同人誌を読んで、一人の天才が現れたことを知りました。その名は、星新一。容姿に恵まれ、東大卒。森鴎外の血縁で星製薬の御曹司と絵に描いたようなサラブレッドですが、その略歴とは裏腹に失意のどん底にいました。砂を噛むような毎日を救ったのが、ブラッドベリの「火星年代記」だったと、本書ではじめて知りました。
    試行錯誤を繰り返しながら、「ボッコちゃん」で覚醒し、一〇〇一話の物語を生み出す過程と葛藤には思わず胸が熱くなります。何度読み返しても、新たな発見があり、星新一の小説が読みたくなる、とてつもない評伝です。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Dec

    02

    『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』最相葉月(ポプラ社)

    『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』最相葉月(ポプラ社)

    学生時代に英語の先生から、一篇の格言を紹介してもらいました。"Some people bets on dogs or horses, but I bet on myself. "(ある人々は、犬や馬に賭ける。僕は自分自身に賭ける。)田舎町でくすぶっていた時代のジェームズ・ディーンの言葉でした。『星新一 一〇〇一話をつくった人』でも述べられていたように、生きるために必要なのは、お金でもなければ、人の羨むような容姿でも、学歴でもありません。肝心なのは、生涯を賭けるに値するテーマといかに出会えるか。
     本書では、東工大の学生に向けて、テーマとの出会い方を4つに分類し、実際に下村脩さんをはじめ12人のさまざまな分野の研究者をロールモデルとしながらその生涯に迫ります。まっすぐな一本道を歩む人もいれば、挫折し、迷い、苦しむ人もいる。どんな人に出会い、いかに決意したか。人生を切り拓くための一冊です。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Dec

    03

    『れるられる』最相葉月(岩波書店)

    『れるられる』最相葉月(岩波書店)

    モンテーニュの『エセー』に、私が猫と戯れているとき、ひょっとすると猫のほうが、私を相手に遊んでいるのではないだろうか、という一節があり、はじめて読んだとき、かなり驚きました。見る側と見られる側の関係が、たった一瞬で逆転したからです。
    本書では、人生の受動と能動がスイッチする境目を「れるられる」の風景と名付け、生と死、正気と狂気、強者と弱者など6つの視点から描いています。本書の醍醐味は、インタビュアーとインタビュイーの関係が次々に切り替わっていくだけでなく、著者自身が自己をさらけだしながら、ふつうに生きて、考えているだけでは届かない、ほとんど見えない存在から言葉を発していることです。
    『絶対音感』が最相葉月さんをノンフィクションライターとして決定づけた作品だとすれば、本書が代表作だと僕は思います。人生観が変わります。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Dec

    04

    『辛口サイショーの人生案内』最相葉月(ミシマ社)

    『辛口サイショーの人生案内』最相葉月(ミシマ社)

    大正三年から百年以上も続く読売新聞の名物連載「人生案内」の中でも、とくに辛口な最相葉月さんの回答を集めた名作選です。ホストに恋する六十代の未亡人、夫の浮気、妻子ある上司との不倫、十代の失恋、就職への不安、職場での不仲、乳がんの発覚、夫が自殺......。ここに集められた四十六の人生相談は、匿名の見知らぬ誰かが、身近な人にも打ち明けられず、結局解決できなかった切実な悩みばかり。そんな難しい相談に、一体どう答えるのか? 見開きたった二頁の中に相談者の人生があり、その悩みに真正面から向き合った最相さんの答えがあります。本書が圧倒的に面白く手放しで楽しめるのは、明日を生きるために差しのべられた最相さんの手のぬくもりがあるからこそ。「人類史上最高のエンタテインメント」がここに誕生。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Dec

    05

    『花と龍』火野葦平(岩波現代文庫)

    『花と龍』火野葦平(岩波現代文庫)

    『戦場で書く 火野葦平と従軍作家たち』(渡辺考・NHK出版)の書評をよんでいて、10年くらい前、この『花と龍』がめっちゃおもしろかったことを思い出しました。何度も映画化されているけど、ま、いっぺん読んでみらんね!「義理と人情」はなくしたらいかんばい。

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Dec

    06

    『岸辺のヤービ』梨木香歩(福音館)

    『岸辺のヤービ』梨木香歩(福音館)

    ある日本屋さんでこの本に出会い、衝撃をうけました。いまどきの児童文学には珍しい箱入り。そして線画で丁寧に描かれた挿絵は、ムーミンやロアルド・ダール、というか世界児童文学全集を思い出させます。そして著者はだいすきな梨木香歩さん。これを買わずとして何を買えばよいのでしょうか。飛びつくように買って、夢中で読みました。はりねずみのような小さな生き物の男の子・ヤービと「わたし」の、ちいさくて美しくてかわいい、輝きにあふれた物語。子どものころにこの本に出会える、いまの子どもが羨ましいなあ。けれど大人になっても、素晴らしい児童文学に出会えるよろこびは変わらない、と教えてくれます。

    (ミシマ社 新居未希)

  • Dec

    07

    『黄色い本』高野文子(講談社)

    『黄色い本』高野文子(講談社)

    【お悩み】
    片仮名が苦手です。一例ですが、「ポルチーニ」と「ボルチーニ」。何度覚えてもどちらが正しいのかわからなくなります。音楽は一度聴いたら忘れないのに、曲名や歌手名が片仮名だと覚えられません。さかのぼれば中学生の頃、トルストイの「戦争と平和」で発狂しそうになりました。主人公のピョートル・キリーロヴィチ・ベズウーホフは覚えたとしても、2人目から挫折です。ニコライが何人もいるし!! 登場人物559人のうち1~2人しか名前を覚えられなくて読書は成立するでしょうか。片仮名が苦手でもロシア文学が楽しめる方法を教えてください。
    ――辛口サイショーさん(50代女性・文筆業)

    【回答】
    私もカタカナが苦手です。海外ミステリーの登場人物が覚えられず、カバーの袖に印刷された人物リストを何度も見返すのが面倒で、ちぎって手の甲に貼っておきたいくらい。登場人物559人...名前の文字数の合計は一体どのくらいでしょう。考えただけで胸焼けがします。うう。
    『黄色い本』の主人公・実ッコちゃんは図書館から借りた『チボー家の人々』を熱心に読むうち、登場人物が目の前で語り、行動し、生きるようになり、ともに季節を重ねます。ひとりで外国映画の深夜放送を見た晩から、です。
    というわけで、ロシア映画を参考にニコライたちの姿を目の前に思い浮かべて読み進めるのはいかがでしょう?(部屋がぎゅうぎゅうになりそう...)

    (佐藤ジュンコさん)

  • Dec

    08

    『ふたりはともだち』アーノルド・ローベル(文化出版局)

    『ふたりはともだち』アーノルド・ローベル(文化出版局)

    【お悩み】
    だんしに木からくつをおとされて目にあたった。ないたらなきむしっていわれた。しかえしをしたいけどしたらまたされる。どうしたらいいかわからない。いじめられたばっかりでなにもいいことがない
    ――沖縄県 ひーなーちゃん(7さい女の子)

    【回答】
    ひーなーちゃんへ

    こんにちは。おてがみ、ありがとう。

    いやなことをされるのはかなしいけど、じぶんもおなじようなことをして、おなじようないやなひとになるのもかなしいよね。
    わたしもむかし、ともだちにいやなことをされて、とてもかなしかったけど、いまはいやなひととはいっしょにいません。
    ともだちがすくなくても、ひとりひとりとほんとうになかよくできるのがいいって、いまはおもうよ。
    『ふたりはともだち』というほん、しってるかな?
    かえるくんは、がまくんのことがだいすきで、ともだちでいられることをとてもうれしくおもっています。
    がまくんも、そうです。
    わたしも、がまくんとかえるくんみたいになりたいな。
    ひーなーちゃんは、かなしいこころもつらいこころもしっているから、きっとおともだちをだいじにできるね。
    ずっとなかよしでいたいとおもうおともだちをたいせつにしてね。

    (さとうじゅんこさん)

  • Dec

    09

    『禁酒宣言 上林暁・酒場小説集』坪内祐三 編(ちくま文庫)

    『禁酒宣言 上林暁・酒場小説集』坪内祐三 編(ちくま文庫)

    【お悩み】
    二日酔いの朝、もうお酒なんてキライ!と思うのに、夕方になると「生ビール+おつまみ2品1000円!」というような看板にふらふら引き寄せられてしまいます。
    そしてビールを飲むと二日酔いが治ります。
    こんな生活を続けていていてよいのでしょうか。
    なお、やめた方がいい場合、ホドホドにお酒を楽しむ方法を教えてください。
    ――兵庫県 盃満ちるさん(30代女性・古本屋)

    【回答】
    その気持ち、よーくわかります。私もしょっちゅうです。気が合いそうです。今度一緒に一杯いかがですか?
    私は二日酔いは少ないのですが、飲み屋さんからベッドまでの記憶がなく、何度か骨が折れてました。近頃は怪我は減りましたが、体重が増え。
    先日『禁酒宣言 上林暁・酒場小説集』を買いました。知人が働く本屋さんで「やめとけー、無理無理!」と言われましたが、禁酒どころか酒場礼賛、飲みに行きたくなる本でした。そんなわけでこんな生活はまだ続く予定ですので、盃さんも道連れでいてください。

    (佐藤ジュンコさん)

  • Dec

    10

    『村山籌子作品集2・あめがふってくりゃ』村山籌子 文/村山知義 絵(JULA出版局)

    『村山籌子作品集2・あめがふってくりゃ』村山籌子 文/村山知義 絵(JULA出版局)

    【お悩み】
    こんにちは、先日、スーパーで水菜を買ったら既に傷んでおり、イモ虫が2匹もついていました。翌日、別のスーパーでブロッコリーを買うと、またもやイモ虫がついていました。
    これでは野菜を買っているのか、イモ虫を買っているのかわかりません。
    イモ虫に悩まされることなく料理をするにはどうすればいいですか?
    ――愛知県 岸メン太郎さん(20代女性・在宅ワーカー)

    【回答】
    実家から裏の畑でとれた野菜がたっぷり届くと、虫が段ボール密航することがあります。同郷出身と思うと無下にもできず、対応に悩みます。若葉色した小さなきれいなクモがやってきたときには、しばらく一緒に暮らしてましたが、いつのまにかどこかへ行ってしまいました。
    『あめがふってくりゃ』の登場人物は野菜や動物、鳥などの生きもので、たまねぎさん、つるさん、やぎさん...みんな「さん」付けです。私も真似してお野菜さんたちをさん付けで呼ぶことにしました。岸メン太郎さんもぜひご一緒に。水菜さん、ブロッコリーさん、いも虫さん...敬意と親密感が!
    というわけで表紙には、村山知義の描くリアルかつおしゃれな虫さんがいっぱいです。

    (佐藤ジュンコさん)

  • Dec

    11

    『壇流クッキング』檀一雄(中公文庫)

    『壇流クッキング』檀一雄(中公文庫)

    【お悩み】
    私はおいしいものとお酒がとても好きで、目がありません。おいしそうだなーと思ったらまず食べてみるし、好きな仲間と飲むビールは最高においしいですよね。そう、食べることが心から好きなんです。だってどうせ何かを身体に入れるなら、おいしいものを食べたい! ですよね!?!?
    しかしながら、食べたら食べた分だけ身になる体質ということもあり、働きはじめて食生活が不摂生ということもあり、こう、お腹のあたりにプニッと、いや、プニプニプニ...とお肉さんがついてきてしまいました。友人の結婚式なんかに行くと、細くてキレイなウェディングドレスを着た花嫁さんを見たりして、「...やせなあかんよな」と思ったりします。けれど食べるのもお酒も好きなんです。「自分の身体を管理できないなんて」云々という話も聞きますが、いやいや私の中でその優先順位が低いだけだよとか思ったりします。努力してスリムになるべきでしょうか。スリムになりたい気持ちもあるし、けど、おいしいものも食べたいです。
    ――京都府 ミッキーさん(20代女性・会社員)

    【回答】
    私もこの一年で「ぽっちゃり化」が急激に進行中です。「ぽっちゃりしてたほうがかわいらしいよ」との慰めに、もやもや。やせたらもっと自信を持って、きらきらして生きられように...恥ずかしくて惨めで、しょんぼりがっかり。
    ひとり飯20年目を目前に、ようやく台所に立つようになり、知人に勧められたのが『壇流クッキング』。読んで愉しい料理本、分量もレシピもないけれど真似たくなる。読む・作る・食べる、が経験としてつながる喜び、初めて知りました。
    おいしいたのしいうれしいごはん時間は、やっぱり幸せです。自己管理問題は保留!というわけで、ごはんの喜びが、お肉さん以外の場所にも現れるよう、精進しましょう! えいえいおう!

    (佐藤ジュンコさん)

  • Dec

    12

    『チェルノブイリの祈り 』スベトラーナ・アレクシエービッチ、松本妙子/訳(岩波現代文庫)

    『チェルノブイリの祈り 』スベトラーナ・アレクシエービッチ、松本妙子/訳(岩波現代文庫)

    本年のノーベル文学賞を受賞した作家です。本書は、チェルノブイリ原発事故で被害にあわれた方や、救助をされた方にインタヴューをしているものです。本書を読むと、原発事故で失うものがあまりにも大きく、取り返しのつかないものであるかを実感します。東日本大震災で原発の恐さを嫌という程知った我が国。それでも原発を稼働させるのですか?

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Dec

    13

    『赤めだか』立川談春(扶桑社文庫)

    『赤めだか』立川談春(扶桑社文庫)

    いや、面白いです。落語を知らなくても、この本は面白い。
    型破りな落語家・立川談志に17歳で入門した少年が、二ツ目に昇進するまでの一風変わった青春(前座生活)を描いた自伝的エッセイです。上の者の言うことが絶対という世界で、イエモト(談志師匠)の言動に右往左往する様は至って健気、そしてしくじる様はとても滑稽。でもこの談春さん、本当にしつこくて、生真面目で、振り回されながらも食らいついていくんです(まさに「下町ロケット」の殿村部長!)。笑いあり、人情あり、含蓄あり。まるで落語のような人生譚。待ってましたの文庫化!

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Dec

    14

    「ゴーシュの肖像」辻征夫 書肆山田

    「ゴーシュの肖像」辻征夫 書肆山田

    けっしてそこに答えがある訳ではないけれど、
    どうしようもなく疲れたとき、どうしようもなく行き詰まったとき、
    どことなくページを開いて出会う詩人の言葉の数々が、やわらかく染み込んでくるエッセイ集。例えば、「こんな詩がある」という講演をまとめたもの、
    岸田衿子、谷川俊太郎らの詩を交えながら、自詩の解説も。
    なかでも「蟻の涙」は、詩そのものも、解説も、
    もがきながら生きている人間の姿に、言葉が、静かに確かに寄り添ってくれています。

    (港区でいちばんちいさな出版社 ビーナイス 杉田 龍彦さん)

  • Dec

    15

    『雪のひとひら』ポール・ギャリコ/著、矢川澄子/訳( 新潮文庫)

    『雪のひとひら』ポール・ギャリコ/著、矢川澄子/訳( 新潮文庫)

    空から雪が舞い落ち、冬の訪れを告げてくれる頃に読みたい一冊。
    オー・ヘンリー短編賞の「スノーグース」や「ジェニー」でも知られるポール・ギャリコが、「雪のひとひら」の長い旅を、ひとりの女性の人生に見立てて紡いだ、生と愛の物語。
    この本を読むと、冷たい雪のひとひらも、手のひらで温もりを感じさせてくれるようになるでしょう。純粋な雪のひとひらに天空から聞こえてきた言葉、その最後の数行は深く響き、読み返すたびに、いつも誰かに贈りたくなります。

    (港区でいちばんちいさな出版社 ビーナイス 杉田 龍彦さん)

  • Dec

    16

    『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』マーシャ・ブラウン/著、谷川俊太郎/訳(港の人)

    『目であるく、かたちをきく、さわってみる。』マーシャ・ブラウン/著、谷川俊太郎/訳(港の人)

    ゆっくりと自分のペースで読みながら、時には声に出して読みながら、
    自分の周りにあるものとの新たに出会い直すことの入り口となってくれる一冊。
    今年の4月に96歳で亡くなられた『三匹のやぎのがらがらどん』等で知られる絵本作家のマーシャ・ブラウンの写真と文、谷川俊太郎訳による3冊の写真絵本『めで あるく』『かたち を きく』『さわって みる』が、一冊にまとめて再構成され、30年ぶりに復刊。
    「みることは あなたを ときはなつ!」
    先入観からも知識からも解き放たれて「みること」ができた瞬間、世界が愛おしく思え、自分に少しやさしくなれます。

    (港区でいちばんちいさな出版社 ビーナイス 杉田 龍彦さん)

  • Dec

    17

    『菜の花郵便局  大人と子供のための童話』つかこうへい(角川文庫)

    『菜の花郵便局 大人と子供のための童話』つかこうへい(角川文庫)

    亡くなって5年、この11月に「つかこうへい正伝1968-1982」(長谷川康夫著、新潮社)が刊行になったばかり。この正伝以降に小説や映画脚本など、執筆に専念していた時期に書かれた「大人と子供のための童話集」。
    圧倒的な熱量のつかこうへいの作品群の中でも異色に思える童話作品(挿画:朝倉摂)でありながら、過剰なまでに心優しく、誰にも分かってもらえない切なさも秘めてもつ登場人物には、つかこうへい作品のエッセンスが凝縮されています。
    標題作は、おせっかいな局員ばかりだけれど、街の人に愛されている「菜の花郵便局」。ありえなくても、あってもいいと思える郵便局。読み返すたびに、その局員たちのことが愛おしく思え、きっといまもどこかにあるに違いないと想像してしまいます。

    (港区でいちばんちいさな出版社 ビーナイス 杉田 龍彦さん)

  • Dec

    18

    『ウラオモテヤマネコ』井上奈奈 (堀之内出版)

    『ウラオモテヤマネコ』井上奈奈 (堀之内出版)

    手に取った瞬間に一気に絵本の世界に引き込んでくれる、ヤマネコが描かれた表紙とそのお腹に穴が空いている装幀(サイトヲヒデユキ)がなによりも印象的。
    そして、「まあ裏の世界からみれば、裏が表で表は裏なのだけれど」というウラオモテヤマネコの口ぐせに触れた時に、無限の宇宙の中に放り込まれてしまいます。
    表の世界で出会った少女の望みを叶えてあげるために、裏の世界へと連れ出したウラオモテヤマネコ、そこには、風の宇宙、空の宇宙、光の宇宙が広がっていて、でもその世界はやがて、、、。
    読み終わった後、後ろの見返しにある「手紙」を読むことで、また新たな世界が広がります。
    世界は同時にあって、しかも多様で、どれも美しい、そんな気持ちになります。

    (港区でいちばんちいさな出版社 ビーナイス 杉田 龍彦さん)

  • Dec

    19

    『みまもることば 思春期・反抗期になっても いつまでもいつまでも』石川憲彦(ジャパンマシニスト社)

    『みまもることば 思春期・反抗期になっても いつまでもいつまでも』石川憲彦(ジャパンマシニスト社)

    児童精神神経科医が書かれた本ですが、子育て中の方でなくても興味深く読める本だと思います。子供も大人も同じ人間だからでしょうか。読んだ後、少し気が楽になってました。

    (ミシマガジンサポーター 平野美香さん)

  • Dec

    20

    『寺田寅彦 科学者とあたま』寺田寅彦(平凡社)

    『寺田寅彦 科学者とあたま』寺田寅彦(平凡社)

    平凡社の「STANDARD BOOKS」という新しい随筆シリーズの一冊目です。大学再編に伴う、理系だの文系だのの議論がややこしい今日。このシリーズで取り上げられるのは、そんな枠にとらわれない、しなやかな知性をもった人たちです。とくに「手首」の話をしている章が面白かったのですが、日常生活でも手首をはじめ、関節を柔らかく使うことって大切だなあと思いました。

    (ミシマ社 田渕洋二郎 )

  • Dec

    21

    『【現代版】絵本御伽草子 木幡狐』藤野可織/文、水沢そら/絵(講談社)

    『【現代版】絵本御伽草子 木幡狐』藤野可織/文、水沢そら/絵(講談社)

    「今じゃないけど昔というほど前でもないころ、」狐たちが「山城木幡女子中学高等学校計画」を立ち上げ、人間社会への侵略と攻略を目論んだ!今どき女子高生に天才的に化ける、きしゆ。常に冷めきっているきしゆが、阿呆な人間たちを騙して颯爽と帰って行きます。藤野可織の文章、水沢そらの絵も共に静か。物々しいプロジェクト名とかけ離れていてブラックな笑いを誘います。温度のあまり上がらない、不思議な魅力にあふれた絵本です。

    (大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん)

  • Dec

    22

    『友だちリクエストの返事が来ない午後』小田嶋隆(太田出版)

    『友だちリクエストの返事が来ない午後』小田嶋隆(太田出版)

    友だちが少ないのは、良くない事なのか? たまに連絡をとるあの人って友だちなのだろうか? 等々、友だちについて考えるときりがありません。SNSで手軽に人とつながってしまうこの時代に、ふと疑問や不安を覚えるとき、本書を手に取ってみてください。「孤独を抱えている人間は、同じように孤独を抱えている人間を誘引するものなのだ」という文が刺さります。人が、孤独に強くなれる日が、いつかくるのでしょうか。

    (大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん)

  • Dec

    23

    『イルカは笑う』田中啓文(河出文庫)

    『イルカは笑う』田中啓文(河出文庫)

    無駄に壮大で最高に阿呆らしく、かつ、恐怖や笑いや脱力にあふれた短編集です。駄洒落がこれでもかと襲ってくる「血の汗流せ」で笑い転げ、「屍者の定食」は目次で吹き出し、謎のジャズホラーというジャンルの「歌姫の唇」のラストシーンで戦慄します。田中啓文、ギャグなしでも書けるのか......!というよくわからない驚きもあり、お腹いっぱいです。常識などというものは宇宙空間に捨て去って、お読みください。

    (大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん)

  • Dec

    24

    『負けた者がみな貰う』グレアム・グリーン(ハヤカワepi文庫)

    『負けた者がみな貰う』グレアム・グリーン(ハヤカワepi文庫)

    さえない中年会計係の主人公と、若い恋人のケアリーのギャンブルをめぐる愛のすれ違いの物語。全章通して、恋人同士の軽快な会話が魅力です。「他の人と幸せに暮らすより、あなたと不幸に暮らすほうがいいもの」といった、率直で飾り気の無い台詞がちりばめられています。誰かを愛すると、人は途端に不器用になり、子どもにもどってしまうのかもしれません。傍から見ると滑稽ですが、それ故、愛の物語が喜劇たり得るのでしょう。

    (大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん)

  • Dec

    25

    『誰をも少し好きになる日』鬼海弘雄(文藝春秋)

    『誰をも少し好きになる日』鬼海弘雄(文藝春秋)

    写真家、鬼海弘雄のエッセイと写真。著者は写真を撮り、人々と言葉を交わします。あるいは言葉を交わさなくとも人と目と目を合わせているのかもしれません。写真からは、インドであれ、トルコであれ、あるいは浅草であっても、人の生活の匂いがします。国や時代、記憶の中をさまよう文章は、ゆらゆらと、とめどなく揺れています。人がいるかぎり、そこには生活があり、哀しみもあり、また喜びもあるのだと、本書は静かに語りかけてくるのです。

    (大垣書店イオンモールKYOTO店 辻香月さん)

  • Dec

    26

    『なるほど忍者大図鑑』ヒサクニヒコ(国土社)

    『なるほど忍者大図鑑』ヒサクニヒコ(国土社)

    にんじゃのいろいろなことがまなべておもしろいし、にんじゃファンにはぜっこうのほんだとおもいます。かたなのていれのしかたもやりました。しかもえいがでは、しゅりけんはジャンプしたりしてなげていましたけど、てつだし、おもくてなげられなかったとされます。

    (ミシマガジンサポーター わたなべさくたろうくん)

  • Dec

    27

    『ゴムあたまポンたろう』長新太(童心社)

    『ゴムあたまポンたろう』長新太(童心社)

    一度聞けばまず忘れないすてきなタイトル『ゴムあたまポンたろう』。ゴムのあたまでポンと飛んで行くポンたろう。山の頂上にポン、大男のつのにポン。ポンポン跳ねてるだけなのに飽きのこないストーリー。僕もポンたろうみたいに飛んでいけたらたのしいなー。

    (ミシマ社 鳥居貴彦)

  • Dec

    28

    『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』 鹿子裕文(ナナロク社)

    『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』 鹿子裕文(ナナロク社)

    ボケも、汚物も、困ったことも、オールインワンで産地直送 、すべて包み隠さず笑い飛ばすあの雑誌。『ヨレヨレ』の鹿子さんが本を出したと聞いて迷わず買った。
    老いても、ボケても、普通に暮らしたい――そりゃそうだ! でも現実には、そういう不都合なものは世間から見えないように隅っこに追いやられてしまう。そうして社会からはみだした老人たちに寄り沿う「よりあい」メンバーや鹿子さん自身もまた、「はみだし者」なのだという。この本は、そんな彼らが自分たちの居場所を自分たちの手で作ろうとした記録なのだ。まるでうそっぽさのない、フルチンな文章で綴られた記録。
    だからこそ、この本はとびきり面白い。頭じゃなくて、お腹にダイレクトに届く。全部ライブ。ナマモノ。生きて腸まで届く。じわじわと生命力が湧き上がってくる。あぁ、こんな本に出会えてよかった。

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Dec

    29

    『失われた感覚を求めて』三島邦弘(朝日新聞出版)

    『失われた感覚を求めて』三島邦弘(朝日新聞出版)

    今年、最後の一冊は何にしようかと悩んでいたのですが、この一冊にしました。とにかくエピグラフに引用されている言葉がかっこいいんです! 中島敦、谷崎潤一郎、夏目漱石、クロポトキン、小林秀雄の引用が、読者を一気にその章の世界に引き込みます。あと、寄藤文平さんと三島さんとの会話も二人の熱がそのまま伝わってきて、読んでるうちにワクワクしてきます。そんなミシマ社も来年は10周年! ワクワクもりもり盛り上げていきたいと思います!!

    (ミシマ社 田渕洋二郎)

  • Dec

    30

    『田辺聖子の恋する文学 一葉、晶子、芙美子』田辺聖子(新潮文庫)

    『田辺聖子の恋する文学 一葉、晶子、芙美子』田辺聖子(新潮文庫)

    田辺聖子さん、たまらん大好きなんです。どの作品も本当に、美しくてかっこよくて、たくさんのことを教えてもらいました。そして、古典にもすごく造詣が深いんですよね。本著では、樋口一葉・与謝野晶子・杉田久女・吉屋信子・林芙美子の5人の女性が、そんな田辺聖子さんの目を通して描かれています。与謝野鉄幹ってむっちゃダメ男やん、とびっくりしたり、林芙美子が貧困ながらも強く美しい文章を書き続ける姿に胸を打ったり...とにかく優しい視線と語り口に、一気に引き込まれること間違いなし! 田辺聖子さん、どうぞ健康で長生きしてください、といつも念を送っているわたしです。

    (ミシマ社 新居未希)

  • Dec

    31

    『ちびまる子ちゃん1巻』さくらももこ(りぼんマスコットコミックス)

    『ちびまる子ちゃん1巻』さくらももこ(りぼんマスコットコミックス)

    小1のとき、お父さんがある日突然買ってきたのがこのマンガです。「紅白」、「レコード大賞」、「ゆく年くる年」...大晦日の定番は、この中に出てくる話で知りました。というか、私が子供時代に得た知識のほとんどは、まるちゃんからです。ギャグだらけの中ときどき出てくる、じーんとくるお話がまたよくて、大好きなマンガです。ちなみに、年末年始系のネタは、3、7巻にも載ってます。

    (ミシマ社 長谷川実央)