今日の一冊バックナンバー

  • Jan

    01

    『困難な成熟』内田樹(夜間飛行)

    『困難な成熟』内田樹(夜間飛行)

    年があらたまり、これからの人生をずっしり重心低く送っていきたい。そう思われた方は迷うことなく、本書をお勧めします。就職に悩んでいる人も、会社を経営している人も、どんな立場の人にも、訴える言葉が満載です。たとえば、会社の代表をやっている身としては、「全身全霊でことに打ち込む責任者だけが、誰も気づかない床のゴミに気づく」という指摘にずどーんとやられました。僭越ながら、約12年前に私が編集を担当した『街場の現代思想』と対をなす人生指南本だと思います。

    (ミシマ社 三島邦弘)

  • Jan

    02

    『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕 上』ジョーゼフ・キャンベル(ハヤカワ文庫)

    『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕 上』ジョーゼフ・キャンベル(ハヤカワ文庫)

    話題の「スター・ウォーズ」も、コーヒーと一冊第2弾の『イナンナの冥下り』も、昨晩見た初夢の意味も・・・この本を読めばまた違った見え方が広がります。古今東西の神話や民話の「英雄」を比較して、人間の心に潜む物語の基本構造を浮かび上がらせた、古典的名著の新訳版。

    (ミシマ社 星野友里)

  • Jan

    03

    『深呼吸の必要』長田弘(晶文社)

    『深呼吸の必要』長田弘(晶文社)

    なにもしたくなくなって、本すら読めなくなった時期がありました。そんなこと今までなかったので、かなり、落ち込みました。仲良しの書店員さんにそのことを話したら、控えめにこの本を薦めてくれました。少しアイボリーがかった紙に余白がたくさん、字は明朝体のモスグリーン。なんとなくひらがな多め。あ、なんだかこれなら読めるかも。そうして読んだ詩の言葉たちは、そーっと心に寄り添ってくれて、それからまた少しずつ本を読めるようになりました。

    (ミシマ社 平田薫)

  • Jan

    04

    『ソラシド』吉田篤弘(新潮社)

    『ソラシド』吉田篤弘(新潮社)

    音や音楽を文章で表現するのは難しい。だけどこの物語に登場する架空の音楽ユニット「ソラシド」の音を私は聴いた気がします。
    謎解きの中にちりばめられる80年代の音楽。読み進めるうちに音楽が聴きたくなり、読み終わってまた音楽が聴きたくなりました。

    (フタバ図書アルティ福山本店 田中知絵さん)

  • Jan

    05

    『のんのんばあとオレ』水木しげる(筑摩書房)

    『のんのんばあとオレ』水木しげる(筑摩書房)

    水木しげる先生は妖怪の1種なのであろうと思っていた。が、先日旅立たれた。
    思えば、自分の中の仕事や人生に対する考え方の根源には、水木先生の哲学が刷り込まれている。
    そして、その「水木先生」の始まりにはのんのんばあがいる。
    のんのんばあと水木先生の少年期。

    (フタバ図書アルティ福山本店  伊藤裕樹さん)

  • Jan

    06

    『官能小説用語表現辞典』永田守弘/編(筑摩書房)

    『官能小説用語表現辞典』永田守弘/編(筑摩書房)

    その言葉が一体何を指しているのか、これはもはや推理に近い。体の部位ひとつとってもこんなにも様々な表現があるのかと感心する。おそらくこの知識を手に入れたところで、役にたつことはない。官能小説の作家先生方がどのようにしてその表現を閃いたのか、日常生活の合間に急に降りてきたかのようにぱっとでるのか、考えて考えて、きたーっ!とでてくるのか。読めば賢くなった気になれるはずです、たぶん。

    (フタバ図書アルティ福山本店 伊藤裕樹さん)

  • Jan

    07

    『ごろごろにゃーん』長新太(福音館書店)

    『ごろごろにゃーん』長新太(福音館書店)

    26.7歳のときだったと思う。前任者の休養で急に児童書担当を任された。それまで全くと言っていいほど絵本、児童書に縁も興味もなく、文字通り右も左も分からなかった。そんなときにこの本に出会い、絵本とはなんと奥深いものかと驚嘆したのだった。「ナンセンス」といわれながら、そこに意味がないとは思えない。
    ただ、大人にはきっと理解できない。

    (フタバ図書アルティ福山本店 伊藤裕樹さん)

  • Jan

    08

    『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三(講談社文庫)

    『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三(講談社文庫)

    戦後のとある村で起こる、奇怪な事件。
    正直、読みにくい部分はあるが、次の展開が読みたくて
    ぐいぐい引き込まれていきます。
    そして、ラストで明かされる驚きの結末。「騙されたっ!」ってなります。
    ホラー好きにもミステリー好きにもオススメの作品です。
    シリーズがたくさんありますが、一番の傑作だと思います。

    (フタバ図書アルティ福山本店 吉野友貢さん)

  • Jan

    09

    『新編 風の旅』星野富弘(学研プラス)

    『新編 風の旅』星野富弘(学研プラス)

    筆者は若き日、不慮の事故で手足の自由を失い、筆をくわえて文や絵をつづり始めました。どの作品も大変美しく、字と絵の練習を始めた初期のものは一段と輝いているように思います。1枚を仕上げるのに一体どれほどの時間をかけ、どれほどの苦労を尽くされたのだろう。心が洗われる詩画集です。

    (ミシマガジンサポーター Hamiさん)

  • Jan

    10

    『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士(ワニブックス)

    『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』佐々木典士(ワニブックス)

    部屋の整理の参考にしようと思い読み始めたところ、次に文章に行き当たりました。
    「ぼくは自分の価値を置いてある本の量で示そうとしていた」
    グサリときました。ぼくにとっての本棚は、ある意味で公開の「日記」みたいなものでした。人に見せるためのものではないが、見てもらうことを期待している。
    自己満足そのものです。どうせ死んだたみんな捨てられてしまうのですから、捨てるのなら僕が捨てる。その他にも、いろいろ「箴言」に満ちた本です。

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Jan

    11

    『この世にたやすい仕事はない』津村記久子(日本経済新聞出版社)

    『この世にたやすい仕事はない』津村記久子(日本経済新聞出版社)

    津村さんの小説の魅力のひとつに、微に入り細に入り書き込まれた日常のディテールがあります。時に細かすぎるがゆえに思わず吹きだしてしまうのですが、波のように訪れるその瞬間瞬間に物語がぐいぐい読者との距離をつめてきます。本書で私が他人事と思えないのは第3話「おかきの袋のしごと」。まわりは"いい人"ばかりなのに追い込まれる主人公の姿は、まるで職場の自分を眺めているよう。仕事とどう折り合いをつけて生きていくか、普遍的な何かを"体感"できる作品です。

    (日本経済新聞出版社 苅山泰幸さん)

  • Jan

    12

    『空にみずうみ』佐伯一麦(中央公論新社)

    『空にみずうみ』佐伯一麦(中央公論新社)

    佐伯さんは私小説作家であることを公言し、日常のなにげない出来事をしっかりと地に足のついた言葉で紡いでいく。ものやことや音には必ず個人的な記憶がまとわりついていて、「私」を掘り下げると、同時代の活字や映像にはなかなか残らない記憶が掘りかえされる。この作品は東北のある街に住む作家とつれあいが「あの日」から四年目を迎えるまでの一年ほどの物語。「あの日」、おそらく3・11。一日一日を「暮らす」ことのかけがえのなさが読むうちに体感させられます。

    (日本経済新聞出版社 苅山泰幸さん)

  • Jan

    13

    『漂砂のうたう』木内昇(集英社文庫)

    『漂砂のうたう』木内昇(集英社文庫)


    この作品の登場人物は「自由」を求めて懸命に生きる。「自由」といってもラブ&ピースではなく明治初期、東京・根津遊郭の物語。主人公は武士の身分を失った廓の番頭。谷底から抜け出し、ご一新の世で生き残るため、あるはかりごとに手を染める。元武士と苦界の女たちとのコントラストが、凛として身の丈を知って生きる美しさを際立たせ、悲しくもさわやかな読後感を残す。これまでの枠組みや常識が音を立てて崩れている今こそご一読を。時代小説ではありません!

    (日本経済新聞出版社 苅山泰幸さん)

  • Jan

    14

    『書を捨てよ、町へ出よう』寺山修司(角川文庫)

    『書を捨てよ、町へ出よう』寺山修司(角川文庫)

    マームとジプシーの藤田貴大さんが昨年末に上演台本と演出を手掛けた劇を観て再読。単行本刊行は天井桟敷を旗揚げした1967年! スキャンダラスなアングラ演劇の旗手として知られているけれど、半世紀前の本なのにリミックスがカッコよく、実感にもとづく肉体の復権(?)をうたい、高度成長期の安定志向を痛罵する文章は、明晰でクールなのが新鮮。この本の「不良」にあこがれて「ネットを捨てよ、町へ出よう」と閉塞状況から本気で"家出"する少年少女が出てくるかなあ。

    (日本経済新聞出版社 苅山泰幸さん)

  • Jan

    15

    『戦後入門』加藤典洋(ちくま新書)

    『戦後入門』加藤典洋(ちくま新書)

    640ページに及ぶ分厚い本書が1400円(税別)の新書で出ていることが加藤さんと筑摩書房の英断。安保法制に憲法改正、不気味な違和感を抱きながら、自分がよって立つ場所がわからなくて態度を決めかねている人は多いと思う(私もそうだ)。「平和憲法」がどのように生まれ国民に受け入れられていったか、そして今。歴史的な経緯を声高にならず「ねじれ」た糸を解きほぐすように教えてくれる本書は、態度を決めかねている多くの人にとって目からウロコの必読書です。

    (日本経済新聞出版社 苅山泰幸さん)

  • Jan

    16

    『孤独の価値』森博嗣(幻冬舎新書)

    『孤独の価値』森博嗣(幻冬舎新書)

    多くの人にとって「孤独」というのは、人のある「状態」を表す言葉だ。だが、「孤独」を何かを成し遂げるための「手段」と考えることもできるのではないか。そのように思うと本書は、「一見すると否定的な状態を価値ある手段として捉えなおす方法論」と考えることもできよう。

    (ミシマガジンサポーター いとみきさん)

  • Jan

    17

    『正しい家計管理』林總 著(WAVE出版)

    『正しい家計管理』林總 著(WAVE出版)

    家計簿、続けられません。アプリ、レシートだけ貯める方式など、どれだけの種類、何度チャレンジしたことか。うちの家計は赤なのか、黒なのか、この先どうなるのか・・・。そんな私のような人におすすめなのがこの本です。家計簿、つけなくていいんです。レシートも、ためなくていいんです。きっちりこの本に書いてある通り、とはいきませんでしたが、わが家の家計、徐々に改善しつつあるような気がしています。手元において、時々ながめたくなるようなおしゃれな装丁もおすすめです。

    (ミシマ社 平田薫)

  • Jan

    18

    『月の影 影の海』小野不由美(新潮文庫)

    『月の影 影の海』小野不由美(新潮文庫)

    店を初めて4ヶ月。あっという間に日々が過ぎ、本屋なのになかなか本を読む気になれなかった。年末年始の休みにようやく、脇目も振らずどっぷり浸かれる本が読みたくなった。そこで手に取ったのが、この十二国記シリーズ第1作。「あちら」は実在する、と錯覚してしまうくらい緻密に設定された世界観の中で、人間のむきだしの感情が丁寧に描かれる。主人公たちが前を向き、ひたむきに生きる姿に、読むたび勇気をもらっている。

    (1003 奥村千織さん)

  • Jan

    19

    『神戸、書いてどうなるのか』安田謙一(ぴあ)

    『神戸、書いてどうなるのか』安田謙一(ぴあ)

    神戸のさまざまな場所、人、店についてのエッセイ108。神戸の街の今むかしが静かな眼差しで語られている。まずは通読、2回目は行ってみたい場所を拾い読み。県外から移住した私にとっては、『ほんまに』と共に大事な街の教科書だ。

    (1003 奥村千織さん)

  • Jan

    20

    『暗黒神話』諸星大二郎 集英社文庫

    『暗黒神話』諸星大二郎 集英社文庫

    誰と話していても、思わず「先生」とつけてしまうくらい、諸星先生が好きだ。初めて読んだ作品が『暗黒神話』。現代(と言っても40年前に描かれたのだけれど)の日本を舞台に、主人公が神話に則り8つの聖痕を受け、スサノヲを従えるアートマンとなる。なんとワクワクする設定だろうか!絵のタッチといい、古代神話の知識ぎっしりのすこし怖くて不思議なストーリーといい、いっぺんに心を掴まれた。お気に入りは49頁中段の1コマ。

    (1003 奥村千織さん)

  • Jan

    21

    『カメラの前で演じること』濱口竜介(左右社)

    『カメラの前で演じること』濱口竜介(左右社)

    「互いにじっと見つめ合うこと」が慣習的に禁止された社会において、「決して目をそらすことのない」カメラの前で演じるとはどういうことか、神戸を舞台にした映画「ハッピーアワー」の製作過程を題材に、きめ細かく考察されている。完全収録されている「ハッピーアワー」のシナリオと、裏設定とも言えるサブテキストは、映画と合わせて読むとより楽しめる。

    (1003 奥村千織さん)

  • Jan

    22

    『あさ』谷川俊太郎/文、吉村和敏/写真(アリス館)

    『あさ』谷川俊太郎/文、吉村和敏/写真(アリス館)

    インクの匂う新聞の見出しに
    変わらぬ人間のむごさを読みとるとしても
    朝はいま一行の詩
    (『朝』p.10より抜粋)
    美しい写真とはっとさせられる言葉で紡がれる朝の風景。さまざまな朝が1冊に詰まっていて、朝を迎えるのが楽しみになります。明日は早起きしよう!

    (1003 奥村千織さん)

  • Jan

    23

    『喜びの生き方塾』松岡浩(モラロジー研究所)

    『喜びの生き方塾』松岡浩(モラロジー研究所)

    たった64ページの薄い冊子に、生き方の基本が詰まっています。「頭の偏差値より、心の偏差値を」という言葉に頭をガーンと殴られました。我が子たち、頭のいい子になってくれたらそれはそれで嬉しいことです。でも思いやりのある人に成長してくれたらもっともっと喜ばしい。まずは、私が人を喜ばせられる人でありたいと思いました。

    (ミシマガジンサポーター Hamiさん)

  • Jan

    24

    『コーヒーの絵本』作・庄野雄治 絵・平澤まりこ(mille books)

    『コーヒーの絵本』作・庄野雄治 絵・平澤まりこ(mille books)

    今年に入ってから、ミシマ社自由ヶ丘オフィスではハンドドリップでコーヒーを淹れるのが流行っている。その味わいに奥深さを感じていたところ、本書を発見。オビに「おいしいコーヒーのいれ方がよくわかる 世界でいちばんやさしいコーヒーの絵本」とある。パラパラめくれば、家で飲むコーヒーの楽しさに胸がおどり、今日がいい一日になる予感がしてくる。道具を一通り持っているけど、あまり使っていない私のような人には、本書を手元に置くことをぜひすすめたい。

    (ミシマ社 渡辺佑一)

  • Jan

    25

     『私たちはどこから来て、どこへ行くのか:科学に「いのち」の根源を問う』森達也(筑摩書房)

    『私たちはどこから来て、どこへ行くのか:科学に「いのち」の根源を問う』森達也(筑摩書房)

    これだけ科学が進歩しても「生命の誕生」「人類への進化」「意識とは何か」といった私たちについての基本的な謎はまだ解かれていない。そして宇宙についてもその誕生、現状、その終焉までわからないことだらけだ。そんないつもは脇においている素朴だけど根源的な疑問を「超文系」の森達也が最先端をいく科学者に直球でぶつける対談集。素人にとってはハイレベルな対話もかわされるが、要所で解説も入っているので大丈夫。「最先端の科学は時に哲学的・宗教的になる」ことを実感できる。

    (ミシマガジンサポーター 塩出慎吾さん)

  • Jan

    26

    『いま、幸福について語ろう 宮台真司「幸福学」対談集』宮台真司(コアマガジン)

    『いま、幸福について語ろう 宮台真司「幸福学」対談集』宮台真司(コアマガジン)

    社会学者宮台真司と「まどマギ」脚本家 虚淵玄などトップクリエーター4人との対談集。幸福を求めてfacebookのイイネ!を集めるといった承認を得てもそれは一時のことで、持続させたいのなら永遠に自分をダダ漏れさせる「無間承認地獄」に陥るしかない。そうではなく、自らの内から溢れ出る強い意志(内発性)によって周囲をそして世界を幸せにしていくこと、それがひいては自分の幸福につながっていくという話が随所で展開されていく。まさに「情けは人のためならず」ですな。

    (ミシマガジンサポーター 塩出慎吾さん)

  • Jan

    27

    『「空気」と「世間」』 鴻上尚史(講談社現代新書)

    『「空気」と「世間」』 鴻上尚史(講談社現代新書)

    80〜90年代にカリスマ的な人気を誇った劇団「第三舞台」主宰の著者。日本人が「空気(同調圧力)」にどれほど弱いか、また「世間(自分の仲間と認識している集団)」には敏感だが逆に「社会(その他大勢)」には無関心ということを「会社で同僚より先に帰るときの後ろめたさ」などの具体例をもって平易に説明。普段は意識することのない行動規範が明らかにされることで「常識(当然だと思っていること)を疑う」ことができるようになり、より柔軟で自由な思考が可能になった。

    (ミシマガジンサポーター 塩出慎吾さん)

  • Jan

    28

    『美味礼讃』海老沢泰久(文春文庫)

    『美味礼讃』海老沢泰久(文春文庫)

    辻調理師学校を設立した辻静雄が主人公の小説。彼は自らの意志で学長になったわけではない。しかし学校運営にあたって「日本に本物のフランス料理が存在しない」ことを知り「私が本物を学び、それを生徒に教えなければ」という使命感に突き動かされるようになる。偽物を教え続けるという安易な選択をとらず苦労してフランス料理を研究し、多くの料理人を育て、とうとう日本に本物のフランス料理を根付かせることに成功する。そのひたむきで愚直な姿に強く心を打たれた。

    (ミシマガジンサポーター 塩出慎吾さん)

  • Jan

    29

    『夕凪の街 桜の国』こうの史代(双葉社)

    『夕凪の街 桜の国』こうの史代(双葉社)

    「夕凪の街」は原爆が人々の体だけではなく心にどれほど深い傷を負わせてしまったかを、10年後の広島に生きるひとりの被爆女性を主人公に描く。愛する人を亡くし、自分だけ「生き残ってしまった」罪悪感を背負うことのつらさ、そして時限爆弾のようにいつ劇症化するかわからない原爆症の恐怖。これらをいたずらに悲惨な描写を使わずに描ききる筆力には脱帽。続編「桜の国」は被爆者の子どもが受けたいわれなき差別を描く。「戦争の足音」が聞こえてきた今こそ読まれるべきコミック。

    (ミシマガジンサポーター 塩出慎吾さん)

  • Jan

    30

    『驚嘆!セルフビルド建築 沢田マンションの冒険』加賀谷 哲朗(ちくま文庫)

    『驚嘆!セルフビルド建築 沢田マンションの冒険』加賀谷 哲朗(ちくま文庫)

    2002年に情報センター出版局から出版された『沢田マンション物語』はほんとうに痛快で、読んだ当時はこの建物を見にいきたくてたまらなかったのを覚えていますが、この本は、建築家が実際に専門家の目で、沢田マンションを細部にいたるまで解剖して紹介するものです。デザイナーズマンションが「家庭画報」?なら、沢田マンションは「ちゃぶ台」です。(←いいきりすぎかな?)

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Jan

    31

    『聡明な女は料理がうまい』桐島洋子(アノニマ・スタジオ)

    『聡明な女は料理がうまい』桐島洋子(アノニマ・スタジオ)

    未だになくならない、家事は女性の仕事という価値観、なんやねん、とずっともやもや思っていた。けれどこの本は、料理は生きていくうえで必要なものなんだから、うまくなるにこしたことはない。おいしいものをほしいままにできる力、食いしん坊の貴方には、あったほうが人生楽しいんじゃない。そう言ってくれる。これが70年代に出た本なのかと思うと驚くし、格好よさは、決して色あせないんだなと思う。

    (ミシマ社 新居未希)