今日の一冊バックナンバー

  • Feb

    01

    角田光代『対岸の彼女』(文春文庫)

    角田光代『対岸の彼女』(文春文庫)

    JKとして記号化された少女たちの明るさと笑顔の陰に、時として底知れぬ孤独と残酷さが見え隠れしていることがあります。読み進むにつれ、そんな彼女たちの心の闇に押し込められますが、最後にささやかな救いが用意されています。高校生活に倦んだバスケ少年に、ふとこの本を差し出したことがあります。先日、その彼に「おもしろかった。先生のお薦めの本、他にも読みたいです」と、声をかけられました。本の力を感じた一冊です。

    (神奈川県立荏田高校国語科教諭 嘉登 隆先生)

  • Feb

    02

    『深夜特急1―香港・マカオ―』沢木耕太郎(新潮文庫)

    『深夜特急1―香港・マカオ―』沢木耕太郎(新潮文庫)

    「〝かっこいい〟とはこういうことだ」思わず授業で生徒に読み聞かせてしまいました。場所は香港の波止場。屋台での貧しい若者との出会いの場面です。沢木は地べたを踏みしめながら、そこから見える等身大の人間を書き残してくれました。「旅とは人に会いに行くことだ」沢木の声を聞いた生徒の何人かが、さっそく学校の図書館で「深夜特急」の切符を買い求めたそうです。高校時代、僕が買い求めた切符は『青年は荒野をめざす』でした。

    (神奈川県立荏田高校国語科教諭 嘉登 隆先生)

  • Feb

    03

    『国をつくるという仕事』西水美恵子(英治出版)

    『国をつくるという仕事』西水美恵子(英治出版)

    町の本屋さん(横浜の石堂書店)で出会った一冊。筆者はエジプトの陋巷で貧しい少女ナディアと出会います。その瞬間、少女は筆者の腕の中で短い生涯を終えます。その死が筆者の生き方を変えます。この3年ソーシャル・リーディングの手法を使って生徒とこの本をシェアしています。今、そこで学んだ生徒がネパールの教育支援に取り組んでいる学生団体のリーダーをしています。筆者の生き方が本を通して若者の生き方を変えました。

    (神奈川県立荏田高校国語科教諭 嘉登 隆先生)

  • Feb

    04

    『風が強く吹いている』三浦しをん(新潮文庫)

    『風が強く吹いている』三浦しをん(新潮文庫)

    僕の勤務校は神奈川屈指の陸上競技の強豪校です。僕の教室でも「箱根」や「新国立」での活躍を夢見る若者が学んでいます。ところで最近、「夢」という言葉が力を失いつつあるような気がしています。「夢」の多くが「夢」で終わるのは確かです。しかし「夢」が人に生きる力を与え、人を幸せにするのも確かです。この作品は箱根駅伝をめぐる夢物語です。でも読む人は不覚にも涙している自分と出会います。夢は人を動かすものなのです。

    (神奈川県立荏田高校国語科教諭 嘉登 隆先生)

  • Feb

    05

    『教えるということ』大村はま(ちくま学芸文庫)

    『教えるということ』大村はま(ちくま学芸文庫)

    「『静かにしなさい』『教科書を開きなさい』は教師でなくても言えます」20代の頃、ツッパったやんちゃな生徒たちに手こずっていた時、本屋の本棚でこの言葉と出会いました。「この先生、言うじゃないか」と思い全集を読破しました。「ありあわせのもので授業をしない」「一度した授業を使い回さない」などなど、教えのプロとしてのあり方を大村先生が教えてくれました。この本は僕の国語教室の原点であり、迷った時はここに帰ります。

    (神奈川県立荏田高校国語科教諭 嘉登 隆先生)

  • Feb

    06

    『ノラネコぐんだん パンこうじょう』 工藤 ノリコ(白泉社)

    『ノラネコぐんだん パンこうじょう』 工藤 ノリコ(白泉社)

    のらねこがぱんこうじょうにしのびこんで、ふくらしこをいれすぎてしまい、かまどでできあがるのをまっていたら、ふくらみすぎてバクハツするのがおもしろいです。

    (ミシマガジンサポーター かわいみきちゃん)

  • Feb

    07

    『消滅世界』村田沙耶香(河出書房新社)

    『消滅世界』村田沙耶香(河出書房新社)

    すごいものを読んでしまった。なにが「正常」で、なにが「異常」なのか。どこまでが本能で、どこからが刷込みなのか。「家族」とは。「夫婦」とは。「恋愛」とはーーあぁなんてこった、あらゆるものにカギカッコがついてしまった・・・。さて、問題のこの結末。どう思うだろう。とにかく読んで、教えてほしい。

    (ミシマ社営業チーム 池畑索季)

  • Feb

    08

    『ラブ・ゼネレーション』早川義夫(文遊社)

    『ラブ・ゼネレーション』早川義夫(文遊社)

    「伝えたいことと、伝えたい人がいれば、才能がなくとも、歌は生まれると、僕は、いまでも、思っている。」(「文庫版あとがき」より)
    『へろへろ』を書き始めるときに、鹿子さんが「僕はこういう気持ちで本を書いてみようと思います」と言って教えてくれた早川義夫さんの言葉です。私にとっても大切な言葉になりました。『へろへろ』制作中に何度も読み返した本。

    (ナナロク社 川口恵子さん)

  • Feb

    09

    『かわいい夫』山崎ナオコーラ(夏葉社)

    『かわいい夫』山崎ナオコーラ(夏葉社)

    帯に「寝る前に、一、二編」と書いてあって、そのつもりで購入したのですがとんでもなかった! 一晩でむさぼるように読んでしまいました。今まで「きっと私の心が狭くて意地悪なんだ」と思って誰にも言えずにいたことを、ナオコーラさんは鮮やかに書ききっていて清々しかった。泣かずにはいられませんでした。これはいい本です。

    (ナナロク社 川口恵子さん)

  • Feb

    10

    『圏外編集者』都築響一(朝日出版社)

    『圏外編集者』都築響一(朝日出版社)

    首がちぎれるかと思うくらい頷きながら読んだ本。「聞き書きでもいいですから!」と粘り、都築さんを説得してこの本をまとめてくださった編集の方にはお礼を言いたい! 出版関係者に限らず、これから働き始める若い人たち、仕事に迷いを感じている人にもおすすめします。編集ノウハウとかそういうせこい話ではなくて、人生をもっともっと面白くするためのヒントがいっぱい詰まった本です。

    (ナナロク社 川口恵子さん)

  • Feb

    11

    『詩のこころを読む』茨木のり子(岩波ジュニア新書)

    『詩のこころを読む』茨木のり子(岩波ジュニア新書)

    中学生のころに父に買ってもらった本。以来、何度も読み返しています。ジャック・プレヴェール、辻征夫、会田綱雄、黒田三郎、永瀬清子......この本で知った詩人がたくさんいます。詩にはさまざまな色と味わいがあるということ、ことばはどこまでも自由で豊かだということを、私はこの本を通して知りました。茨木さんの詩のセレクトも最高だし、押し付けがましくない解説がすばらしいです。

    (ナナロク社 川口恵子さん)

  • Feb

    12

    『女たちへのいたみうた 金子光晴詩集』高橋源一郎編(集英社文庫)

    『女たちへのいたみうた 金子光晴詩集』高橋源一郎編(集英社文庫)

    「重箱のやうに狭つくるしいこの日本。」(「富士」)と書き、「恋人よ。/たうとう僕は/あなたのうんこになりました。」(「もう一篇の詩」)と書き、「S・S嬢よ、/その卵のやうなお尻を/すこしばかり/さすらせておくれ」(「愛情4」)と書いた金子光晴の詩のアンソロジー。教科書には絶対載らない詩の数々、最高にかっこいいです。もし気に入ったら、同じ著者の『マレー蘭印紀行』もぜひ。

    (ナナロク社 川口恵子さん)

  • Feb

    13

    『カナヘイのゆるっと小動物がいっぱい』カナヘイ(PARCO出版)

    『カナヘイのゆるっと小動物がいっぱい』カナヘイ(PARCO出版)

    ラインスタンプで人気の愛媛在住のイラストレーター、カナヘイさんの本です。考えすぎて頭が疲れたときに、パラパラッとめくっては、クスッと笑えて、いま一番の癒し本です。読書仲間の67歳のおばちゃんにも見せたら、すぐ買いに行きました。

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • Feb

    14

    『詩墨集 詩の旅 心の旅』山本万里(行路社)

    『詩墨集 詩の旅 心の旅』山本万里(行路社)

    田中国男さんの詩を書家の山本万里さんが書いた作品と、その作品をめぐるお二人の対談が載っています。現代詩の世界も、書の世界もあまり馴染みがなかったのですが、この2つの世界が融合した作品からはものすごいエネルギーを感じました。当たり前のことですが、同じ言葉でも、パソコンの画面の文字と直筆では意味が違ってきます。「手紙書こう」と思いました。

    (ミシマ社 田渕洋二郎)

  • Feb

    15

    『ぷらせぼくらぶ』奥田亜紀子(小学館) 

    『ぷらせぼくらぶ』奥田亜紀子(小学館) 

    主人公は中学生の岡ちゃん。へちゃむくれの岡ちゃん。友達が恋をしてしまったら、やりたいことを見つけてしまったら、自分より先に。置いていかれた気持ち?それともまだ大人になんかなりたくない、って思っていたんだっけ。何年もかけてやっと(年齢だけでなく)大人になったと思う今日この頃、ページをめくりながらフラッシュバックする日々。懐かしいとも恥ずかしいとも愛おしいとも違う、たぶんあの頃にしか感じられない得体の知れない感情が戻ってきます。中学・高校時代にキラキラした青春を過ごせなった、岡ちゃん曰く「向こう側」にいなかった人は、必読です。

    (東風 向坪美保さん)

  • Feb

    16

    『日本史の謎は「地形」で解ける』竹村公太郎(PHP文庫)

    『日本史の謎は「地形」で解ける』竹村公太郎(PHP文庫)

    学生の時に丸暗記していた歴史を、学び直したいと思った時に出会った本。
    世界最強のモンゴル軍による二度の元寇から日本を守ったのは「神風」と呼ばれる嵐であったと教科書では習ったのに、実は「泥」と「ヤブ蚊」により守られていたなんて・・。
    赤穂浪士の討ち入りが成功したのは、江戸幕府が見て見ぬ振りをしていたから!?
    遊郭が吉原にあるのは、江戸を守るため!?など。そういうものであると鵜呑みにしていた定説とは異なるのに、地形・気象・インフラという動くことのない事実から語られると、妙に説得力がある。読んでいると当時を生きた人々の息遣いが聞こえてきて、生きた歴史を体感できる。歴史に興味のない人にこそ読んで欲しい!

    (東風 酒井慧さん)

  • Feb

    17

    『はじめてのおつかい』筒井頼子/作、/林明子/絵 (福音館書店)

    『はじめてのおつかい』筒井頼子/作、/林明子/絵 (福音館書店)

    昨年夏に次男が生まれました。長男はまだ甘え盛りの二歳児。悪態をついたり、愛想を振りまいては気を惹こうと必死です。そんな彼へ読み聞かせる絵本のひとつです。
    母親に頼まれ、ひとりで牛乳を買いに行く、五歳の女の子のはじめての大冒険。やっとのことで牛乳を手にし、代金をお店のおばちゃんに渡すとき、少女の瞳からほろっと涙が落ちます。それは少女のなかの大きな歯車が、「コトッ」と静かに動くような、なんとも言いがたい瞬間です。
    物語を暗記したのか、時折ひとり読んでいる息子をみると、「この子のはじめての大冒険はいつかな?」と想像してしまうこの頃です。

    (東風 石川宗孝さん)

  • Feb

    18

    『塵よりよみがえり』レイ・ブラッドベリ(河出書房新社)

    『塵よりよみがえり』レイ・ブラッドベリ(河出書房新社)

    私が好きなSF作家の一人、ブラッドベリが、自身の親族をモデルに、着想から55年の歳月をかけて書き上げたファンタジー。「春の日々には雨がやさしく屋根に触れ、十二月の夜には、目と鼻の先の戸外の外に雪の気配が伝わってくる屋根裏に、〈ひいが千回つくおばあちゃん〉がましましている。」昔、この書き出しに胸躍らせて、一晩で読み上げた。この"ましましている"ミイラのおばあちゃんの屋敷に集まってくる魔力を持った一族と、主人公の少年ティモシーとの出会いと別れが描かれる。「生と死」を一つのテーマとしながら、どこか切なくて甘酸っぱい気持ちにさせられる青春小説のような作品。

    (gnome(ノーム) 村田悦子さん)

  • Feb

    19

    『対訳 技術の正体』 木田元/著、マイケル・エメリック/訳(デコ)

    『対訳 技術の正体』 木田元/著、マイケル・エメリック/訳(デコ)

    たとえばフィルムからデジタルへ。技術の進歩で映画の配給という仕事もずいぶん様変わりしたけれど、我が暮らしそんなに楽にならず。これは一体どういうことかと恨めしく思う僕に、先生曰く。技術は人間の理性よりも古くて、しかも異なる起源をもっている。火を起こし、道具をつくり、食料を保存するという技術のほうが、今日の僕らのような人間を産み出したのであって、その逆ではない。だから君が技術を都合よく使いこなせるなんて、ずいぶんな思い違いかもしれないよと。うーん、そうだったのか...。まいったな...。

    (東風 渡辺祐一さん)

  • Feb

    20

    『本当の仕事』榎本英剛(日本能率協会マネジメントセンター)

    『本当の仕事』榎本英剛(日本能率協会マネジメントセンター)

    私の「仕事」の概念をひっくり返してくれた本です。日本人は「4つのメガネ」で仕事を見ている。その1つが「仕事=お金」。私自身、仕事を辞めた時、「主婦業=無収入=仕事ではない」と後ろめたく思っていました。仕事とは、自らの存在意義を探求し、それを表現すること。どう生きて喜びを与えていくかを考えていきたいです。

    (ミシマガジンサポーター Hamiさん)

  • Feb

    21

    『家をせおって歩く』村上慧(福音館書店)

    『家をせおって歩く』村上慧(福音館書店)

    家をせおってあるく村上さんの旅の記録。発砲スチロールで作ったひとりがやっと寝れるくらいの小さな家をガレージやら庭先やら教会やらに置かせてもらって生活する。
    僕もコンクリートの倉庫とか砂利の海岸とか川原とかいろんなところで寝たことはあるけど、それが日常生活になるってちょっと想像がつかない。たのしいのかな。たのしそうだな。

    (ミシマ社 鳥居貴彦)

  • Feb

    22

    『シェフを「つづける」ということ』井川直子(ミシマ社)

    『シェフを「つづける」ということ』井川直子(ミシマ社)

    10年間料理人をつづけてきた夫が独立を決意した時に見つけた、ドンピシャのタイトル。「つづける」ということの難しさを実感し、行く先を悩んだ時に読み返したくなる。自分にとって何が大切なのかを思い起こさせてくれる一冊です。何かをはじめる前にこの本に出会えた事で、私にとって特別な一冊になりました。

    (アンジェ ボン・ルパス烏丸店 中井亜矢香さん)

  • Feb

    23

    『ちいさな桃源郷』池内 紀 (幻戯書房)

    『ちいさな桃源郷』池内 紀 (幻戯書房)

    通勤中や都会の喧騒の中などでなく、田舎や自然を感じる場所で読んでほしい一冊。1958年~1983年まで刊行された山の文芸誌「アルプ」より33篇を収録した本書は、今では味わうことのできない情景、文化も含んでいて、まるで旅やタイムスリップをした気分になります。伝説と称された雑誌「アルプ」の空気が詰まった書籍です。

    (アンジェ エキスポシティ店 藤本拓磨さん)

  • Feb

    24

    「ロマンス小説の七日間」三浦しをん (角川文庫)

    「ロマンス小説の七日間」三浦しをん (角川文庫)

    海外小説の翻訳をしている主人公と、その主人公によって翻訳(を通り越し捏造)されていく小説。主人公の恋愛と小説の中の恋愛、2つのストーリーが交互に展開され、どんどん引き込まれます。ロマンスという言葉から連想される甘々な要素がなく、しをんさん節炸裂の恋愛小説です。

    (アンジェ ラヴィサント梅田店 黒木由美さん)

  • Feb

    25

    『旅の窓』沢木耕太郎(幻冬舎)

    『旅の窓』沢木耕太郎(幻冬舎)

    旅の途中、気まぐれに撮られた写真たちが、沢木氏によって「意味」を与えられた旅のエッセイ本。端的にまとめられた1篇1ページの中に垣間見えるちょっとシニカルではかなげな沢木氏の感性に心惑わされます。ちらほらと現れるシュールな写真もみどころです。

    (アンジェ河原町店 中村 瞳さん)

  • Feb

    26

    『十頁だけ読んでごらんなさい。 十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』 遠藤周作(新潮文庫)

    『十頁だけ読んでごらんなさい。 十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』 遠藤周作(新潮文庫)

    本屋さんでこの本を見たとき、長く挑戦的なタイトルにびっくりしました!
    まずは「十頁だけ読んで」みようと買いました。激しいタイトルですが本の中は手紙の書き方について書かれていて、読む人の身になって書くということをいろんなシチュエーションでわかりやすく書かれています。
    著者の軽妙な語りが楽しくて「飽きて本を捨てる」ということにはなりませんでした。

    (アンジェ ラヴィサント梅田店 浅井朋子さん)

  • Feb

    27

    『且坐喫茶』いしいしんじ(淡交社)

    『且坐喫茶』いしいしんじ(淡交社)

    8年間お休みしていた茶道のけいこを再開しようと思っていた矢先、先生が引退されることを聞きました。そんな時出会ったのが、いしいしんじさんの『且坐喫茶』です。決まった形の茶道が自由な宇宙へと続いている事をすばらしい言葉で表現されています。

    (ミシマガジンサポーター 平野美香さん)

  • Feb

    28

    『電球交換士の憂鬱』吉田篤弘(徳間書店)

    『電球交換士の憂鬱』吉田篤弘(徳間書店)

    主人公・十文字扉のお仕事は、切れた電球を交換することです。深夜の休憩時間に、薄暗い美術館の片隅で、手づくりの卵サンドとポットに詰めてきたいれたてのコーヒーで一息入れるシーンがあって、この2セットは何回か出てくるのですが、わたしはそれが、なせかとてもすきです。こういうなんでもないことが、なんだかいいなあと感じられる一冊です。

    (ミシマ社 長谷川実央)

  • Feb

    29

    『宝くじが当たったら』安藤祐介(講談社文庫)

    『宝くじが当たったら』安藤祐介(講談社文庫)

    これは売れそうにないなあ、と思った。まず題名がダメだ。なに読んでるのと人に聞かれて、「宝くじがあたったら」と正直言えるか。「あの日」とか答えて、やっぱり小保方さんは理研がきっちり調べるべきだよなんてごまかしたくなりそうだ。とにかく入荷初日にアウトだときめつけた。でも間違ってた。買っていく客がいた。次の日も、その次も。今は平台の真ん中に積んでいる。神様、反省した私の宝くじ、どうかあたりますように。

    (新丸三書店 本店 文庫係)