今日の一冊バックナンバー

  • Mar

    01

    『沼地のある森を抜けて』梨木香歩 (新潮文庫)

    『沼地のある森を抜けて』梨木香歩 (新潮文庫)

    性とは、生物とは、人間とは何かと考えさせられる。普段から思考を巡らせる梨木さんなりの生命への思いや疑問を感じられる一冊です。人間のドロドロとした感情や人に対する愛情など、人間の醜さや美しさに鳥肌が立ちます。ラストのシーンは「生」があることの美しさに感動してしまします。淡々としたクールな主人公"久美"の心の変化も見所です。

    (新丸三書店 本店 頼本奈波さん)

  • Mar

    02

    『ホームクチュールセレクション』茅木真知子(文化出版局)

    『ホームクチュールセレクション』茅木真知子(文化出版局)

    この本は茅木真知子さんが過去に出版した本から 20 点のパターンを、今風にアレンジしたものが収録されています。その中には私が作ったこともあるスカートもありました。茅木さんが東京の西荻窪に布屋をオープンしたと知って、東京出張の際には、是が非でもいかなくてはっ!と、会議終了後に中央線に飛び乗ったのを覚えています。その時、著者ご本人に接客していただいて購入した綿レースはスカートとなり、今でも時々着用しています。

    (新丸三書店 本店 宮本由利恵さん)

  • Mar

    03

    『残穢』小野不由美 (新潮文庫)

    『残穢』小野不由美 (新潮文庫)

    以前、霊が視えるという某出版社の方に、「この世に未練や何らかの恨みを抱いて亡くなった人の霊は何故かぼんやりとぼやけて見える」という話を聞いた。はっきりと見えないモノのほうが怖い。「残穢」はまさにそんな物語。ぼんやりと実体がなく、そしてとても怖い。実は読んだ後、家に持って帰れず職場に置きっぱなしです。うっかり何かが家までついて来そうなもので。

    (新丸三書店 医学部店 徳永郁代さん)

  • Mar

    04

    『原野行』松本紀生(クレヴィス)

    『原野行』松本紀生(クレヴィス)

    昔見た映画で、刑務所から脱獄した男が目指していたのがアラスカだった。これは、そのなんとなく憧れを抱いていたアラスカ大自然の写真集で、思わず買ってから、実は、地元松山出身の写真家の作品だと知った。風景の写真集は好きでクオリティにはこだわりがあるが、美しさでも壮大さでもピカイチで、見ていると魂が抜けそうになる。また、挿入されるエッセイも飾り気がなく、思いが伝わってくる。

    (新丸三書店 本店 井門道治さん)

  • Mar

    05

    『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』黒岩比佐子(角川ソフィア文庫)

    『音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治』黒岩比佐子(角川ソフィア文庫)

    昭和30年代の福岡の街を写し取った、ろうあの写真家。井上の残した「思い出の街」は、新潟で育った私にも、小学生時代の記憶を湧き上がらせてくれます。黒岩さんの著作を読み始めて偶然、図書館で本書に出会いました。耳がきこえないカメラマンが残した街の風景が私に語りかけてくる。こんなにたくさんのものをとらえている目、カメラで残す力に圧倒されました。

    (ミシマガジンサポーター EishiNさん)

  • Mar

    06

    『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』森見登美彦 川上弘美  中島京子 堀江敏幸 江國香織 訳(河出書房新社)

    『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』森見登美彦 川上弘美  中島京子 堀江敏幸 江國香織 訳(河出書房新社)

    伊勢物語、堤中納言物語、更科日記...一応名前は知ってるし、教科書で一部読んだこともあるけど、全文を読み通したことのある人って結構少ないのではないでしょうか。(私だけ?)池澤夏樹さんの個人編集で2014年から刊行の始まったこの日本文学全集。この巻は好きな作家さんが多く登場しているので買ってみたのですが、それぞれの素敵な訳はさることながら、古くから読み継がれてきた物語の力のようなものに引き込まれてしまいました。これを機に30巻、全部読んでみようかなと思ったり。ポップカラーの装丁も、本棚にずらっと並べたくなるポイントです。

    (ミシマ社 平田薫)

  • Mar

    07

    『かんさい絵ことば辞典』ニシワキタダシ(パイインターナショナル) 

    『かんさい絵ことば辞典』ニシワキタダシ(パイインターナショナル) 

    関西出身のイラストレーター、ニシワキタダシさんによる関西弁を辞典風に紹介している「かんさい絵ことば辞典」。私も関西出身ですが、今の時代使っている人いるの!?と思うようなマニアックな言葉や、テレビなどでよく耳にする言葉まで著者の可愛いイラストと共に関西弁を知る事が出来ます。この本をより理解して頂くためにも、読む際はヒョウ柄のシャツを着ることをオススメします。

    (ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店 上出秀房さん)

  • Mar

    08

    『毎朝1分で人生は変わる』三宅裕之(サンマーク出版)

    『毎朝1分で人生は変わる』三宅裕之(サンマーク出版)

    もっとやる気を出したい!人生を充実させたい!そんな方へオススメの本です。変わるためにはまず行動すること。先に計画を立ててから、行動へ移るのではなく、行動をする事で小さなきっかけを作り、そこから大きな変化へ繋がっていくのだと紹介しています。頭の中で、「それはわかってるんだけどなぁ。」と思われたらぜひ、この本を手に取ってみるという小さな変化を起こしてみましょう!

    (ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店 上出秀房さん)

  • Mar

    09

    『デザインのひきだし23』グラフィック社編集部/編(グラフィック社)

    『デザインのひきだし23』グラフィック社編集部/編(グラフィック社)

    毎回印刷物の材質や加工を、現場の目線で紹介しているデザインノひきだし。23号では、製本加工について特集。書籍に限らず、冊子やカタログ、ノートなどの文具に至るまで紙でここまで表現できるの!?という、プロフェッショナルな技術を知る事が出来ます。今の時代、電子書籍という大変便利なモノもありますが、紙の本も最高なのです!

    (ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店 上出秀房さん)

  • Mar

    10

    『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵(サンマーク出版)

    『人生がときめく片づけの魔法』近藤麻理恵(サンマーク出版)

    「一度片づけたら絶対に元に戻らない方法」という、魔法の様なことが実現!米国TIME誌の世界で最も影響力のある100人に選ばれた、こんまりさんこと、近藤麻理恵さんの整理術。この本を読んだ私は「絶対に戻らない」という魔法はまだ習得しておりませんが、最初のきっかけである、今まで捨てずに置いていたものを大量に処分することに成功しました。捨てる、楽しさを発見できる本です。

    (ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店 上出秀房さん)

  • Mar

    11

    『月光ゲーム Yの悲劇'88』有栖川有栖(東京創元社)

    『月光ゲーム Yの悲劇'88』有栖川有栖(東京創元社)

    閉ざされた空間で起こる殺人事件。登場人物は、「容疑者」にも「被害者」にもなり得る状況の中、ページをめくるたびに読者自身が推理をしながら楽しめる本格推理小説。
    ストーリーの終盤で著者による「本編はここに至り、この事件の真犯人を特定するに充分なデータが出揃いました。」という、読者への挑戦状が!捜査のヒントはどこに?1ページも
    目が離せないスリルを味わってみて下さい。

    (ジュンク堂書店梅田ヒルトンプラザ店 上出秀房さん)

  • Mar

    12

    『パリジェンヌの着物はじめ』マニグリエ真矢(ダイヤモンド社)

    『パリジェンヌの着物はじめ』マニグリエ真矢(ダイヤモンド社)

    新聞の書籍紹介で、着物姿のマニグリエ真矢さんのお写真を見てひと目惚れ。長身、みるからにパリジェンヌ、めがねもかっこよく、着物がとってもお似合いで、すばらしい着こなしでした。さっそく本書を購入して読みました。パリジェンヌから見た着物の魅力、着こなしのポイントには目からうろこな点がいっぱいです。

    (ミシマガジンサポーター ウエスギエリコさん)

  • Mar

    13

    『人間の土地』サン=テグジュペリ(新潮文庫)

    『人間の土地』サン=テグジュペリ(新潮文庫)

    「一番ほしい乗り物は何ですか?」ときかれたら、ナウシカのメーヴェなわけですが、この本を読むと、本当に空を飛びたくなります。1月に発刊した想田和弘著『観察する男』に出てくる、漁師のワイちゃんのエピソードを読んでいたら、なんとなくこの本を読みたくなって、久しぶりに読み返しました。いろいろな意味で名著なのですが、今回は、人間と乗り物が見事に一体化することの美しさと恍惚、という角度からおすすめします。

    (ミシマ社 星野友里)

  • Mar

    14

    『絡新婦の理』 京極夏彦(講談社文庫)

    『絡新婦の理』 京極夏彦(講談社文庫)

    春が近づいてきました。毎年この季節になると思い浮かぶのがこの小説です。冒頭が桜が舞い散るシーンから始まり物語が収束していきます。これが対比となって起こる事件の凄惨さが際立つのですが、桜が好きなせいか、毎年散りゆく桜を見るとふと頭に過ぎります。「あなたが蜘蛛だったのですね」。

    (ジュンク堂書店高槻店 永松太直さん)

  • Mar

    15

    『ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊』出口治明(日経BP社)

    『ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊』出口治明(日経BP社)

    私が出口治明さんの著書を意識したのは幻冬舎新書「人生を面白くする本物の教養」でしたが、こちらは書籍の紹介に特化しています。紹介されている本は自分では読んだことのない本が多かったのですが「読んでみたい!」と思わせられます。春は「何かを始めよう」と思いたつ季節だと思います。思い浮かぶのは語学やスポーツですが、自分の幅を広げるために「教養」を身に着けようと思います。

    (ジュンク堂書店高槻店 永松太直さん)

  • Mar

    16

    「貞観政要」呉兢著  守谷洋 訳  ちくま学芸文庫

    「貞観政要」呉兢著  守谷洋 訳  ちくま学芸文庫

    昨日紹介した出口治明さんの本を読んで読もうと手に取った本です(紹介は明治書院版でした)。リーダーシップを主眼においた本は数多くありますが、「鏡」の逸話などを知ると自分が今まで感覚的に身につけようとしていたものは所詮は付け焼き刃、と思わずにいられません。春は人事異動の季節でもあります。新たに部下ができる方もおられると思いますが、この本を読むことで新たに知見が広がるのではないでしょうか。

    (ジュンク堂書店高槻店 永松太直さん)

  • Mar

    17

    『「世界一速い会社」の秘密』 竹田正俊 ダイヤモンド社

    『「世界一速い会社」の秘密』 竹田正俊 ダイヤモンド社


    私はどちらかといえば仕事が遅い方でした。「苦手」という意識を持ったものはついつい後回しにしてしまう、という正に「宿題が終わっていない夏休み終了直前」が常にあったという負のスパイラル。ですが、この本で「自分の仕事が誰かの仕事に繋がっている」という意識を改めました。春は見直しの時期でもあります。もし仕事のスピードが出なくて...と困っているのなら、この本で意識を変える事から始めるのも手だと思います。

    (ジュンク堂書店高槻店 永松太直さん)

  • Mar

    18

    『生の短さについて 他二篇』セネカ/著、大西英文/訳(岩波文庫)

    『生の短さについて 他二篇』セネカ/著、大西英文/訳(岩波文庫)

    「われわれにはわずかな時間しかないのではなく、多くの時間を浪費するのである」。こちらは「生の短さについて」からの引用ですが、充実した生を送るための心構えを説く「幸福論」とも言えるのではないかと思います。考え方に活を入れたい時に手に取ります。

    (ジュンク堂書店高槻店 永松太直さん)

  • Mar

    19

    『世界は終わりそうにない』角田光代(中央公論新社)

    『世界は終わりそうにない』角田光代(中央公論新社)

    題名にひかれて買った一冊。何気ない日常のなかの心の動きみたいなものが言葉にのって詰まっている一冊でした。

    (ミシマガジンサポーター 三宅沙弥さん)

  • Mar

    20

    『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』川上和人(技術評論社)

    『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』川上和人(技術評論社)

    恐竜のことについて、多くの人は学校で学ぶ機会はあまりないし、知らなくってもあまり困りません。だから存在はよく知られているのに、人によって知識の偏りがとてもあります。多くの人の恐竜の知識は、小さい頃に読んだ子ども向けの恐竜の絵本から得たものが大半ではないでしょうか。この本を読んで、その知識の多くを覆し、6,600万年以上前の生物の最新の姿や生態に想いを馳せてみませんか。

    (本庄行宏)

  • Mar

    21

    『あいうえおの本』安野光雅(福音館書店)

    『あいうえおの本』安野光雅(福音館書店)

    安野光雅さんは僕の一番好きな絵本作家さんです。スケッチのような繊細な絵画のような、気持ちがゆったりと落ち着いてきて、丁寧にページをめくりたくなります。1976年に発行されたこの絵本は、ところどころに仕掛けが隠されていて、何度読んでも新しい発見があります。「もりのえほん」「旅の絵本」も大好きですが1冊を選ぶとしたらこの本。

    (katakana 河野純一さん)

  • Mar

    22

    『りんごかもしれない』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

    『りんごかもしれない』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)

    この絵本は頭の硬くなった大人に読んでほしい。「これは本当にりんごなの?」というシンプルな子ども視点の疑問がドンドン妄想を膨らませて、、あぁ!人間はこんなにも想像力豊かな動物なのかと感じます。そして楽しみは付録の「このりんごは○○○○かもしれない」と紙に書かれたリンゴのイラスト、あなただったら何を想像する?

    (katakana 河野純一さん)

  • Mar

    23

    『思いつき大百科辞典』100%ORANGE(学研・BOOKS POOKA)

    『思いつき大百科辞典』100%ORANGE(学研・BOOKS POOKA)

    この絵本は子どもたちへのプレゼントに人気です。そしてある現象が!プレゼントした大人たちが自分用に買いに来るのです。50音の他に濁音や半濁音がまさに思いつくまま描かれています。子どもには理解できないようなシュールな場面がほのぼのとのほほんと。ブランデーでも舐めながらニヤニヤとしたい本なのです。

    (katakana 河野純一さん)

  • Mar

    24

    『世界えじてん』てづかあけみ(パイインターナショナル)

    『世界えじてん』てづかあけみ(パイインターナショナル)

    てづかあけみさんの絵本は大好きですが、この本にはしびれました! 世界各国のおいしいモノや有名な史跡、文化などがわかります。ページをめくっていくと、ジンワリとこみあげて来るものがあるのです。名前も知らなかった国がたくさんあって、それぞれ住んでいる人がいて、その国の言葉で「こんにちは・ありがとう・さようなら」が笑顔で描かれている。現実の世界もこうなっていないといけないと思うのです。

    (katakana 河野純一さん)

  • Mar

    25

    『あさになったのでまどをあけますよ』荒井良二(偕成社)

    『あさになったのでまどをあけますよ』荒井良二(偕成社)

    「あさになったのでまどをあけますよ」のことばでいくつものシーンが荒井良二さんのやわらかなタッチで描かれています。東北の震災のあと彼は思い悩んだ結果、朝は必ずやってきて、必ず新しいスタートが生まれると思ったのだと思います。胎児に読み聞かせをしたいとの妊婦さんのリクエストにこの絵本をおススメしました。その後生まれた子に読んであげた時、この本知ってるよ! という顔をされたそうです。

    (katakana 河野純一さん)

  • Mar

    26

    『現在落語論』立川吉笑(毎日新聞出版)

    『現在落語論』立川吉笑(毎日新聞出版)

    落語聴くと更に楽しめます!
    吉笑さんのwebブログのファンの方、理論、理屈っぽいのが好きな方へ!

    (ミシマガジンサポーター 三浦裕子さん)

  • Mar

    27

    『光の子ども1』 小林エリカ(リトルモア)

    『光の子ども1』 小林エリカ(リトルモア)

    そういえば、「放射能」ってそもそもなんなのでしょうか。なぜそれらは放射能と呼ばれるようになったのか。放射能の歴史ってどうなっているのだろうか。放射能の存在をつい忘れがちになるけれども、このマンガを読むことで、この目に見えない何かへの想像力が、もっと豊かになるのではないかなと思った。

    (ミシマ社 渡辺佑一)

  • Mar

    28

    『ボクは坊さん。』白川密成(ミシマ社)

    『ボクは坊さん。』白川密成(ミシマ社)

    白川密成さんは、お遍路さんが訪れる四国八十八ケ所のお寺のひとつ、栄福寺のご住職です。高野山大学を卒業して地元の書店に就職したものの、先代のご住職を末期がんで亡くし、24歳で突然住職になった一人の青年の人生奮闘記です。

    「"われらは、ここにあって死ぬはずのものである"と覚悟をしよう。――このことわりを他の人々は知っていない。しかし、このことわりを知る人々があれば、争いはしずまる」(『ダンマパダ』)

    日常的に向き合うことになった人間の病や死という重圧に押しつぶされそうになりながらも、仏の教えや仏典の言葉を頼りに、死とは何か、存在とは何か、悟りとは何か。掘り下げて考えたことをを親しい友人に宛てて書いた手紙のように、わかりやすく伝えてくれます。四国のお遍路さんが「同行二人」とつぶやくように、一人で読んでいても、まるで目の前に密成さんがいるような温かみのある一冊です。伊藤淳史さん主演の映画も素敵ですが、まずはこの一冊からお読みください。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Mar

    29

    『坊さん、父になる。』白川密成(ミシマ社)

    『坊さん、父になる。』白川密成(ミシマ社)

    あの密成さんに恋人が。しかも、初デートは比叡山!! 最澄と空海の間に勃発した「泰範の事件」の仏教史的確執に勝手にはらはらしながら頁をめくるも、彼女から不意に届いた感動的なポストカードから怒涛の展開に。
    劇的に地味? なプロポーズのち、仏前結婚式。スキンヘッドのお坊さんたちが百人集結した披露宴。当然、受付もお坊さん。読経、焼香、結婚指輪の代わりに数珠の交換、と痛快な坊さんワールドがフルスロットルで展開します。あまりの面白さに仏教書であることを忘れてしまいますが、「誤答でも答える」「自分の経験がすべてだとは考えない」など、密成さんの人生と向き合う姿勢は変わりません。

    「友よ。わたしは立ち止まる時に沈み、あがく時に溺れるのです。」(『サンユッタ・ニカーヤ』)

    仏教の智慧で生きることを考える。何度も思い出したくなるような、渾身の仏教の教えが、宝石箱のように詰まっています。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Mar

    30

    『空海さんに聞いてみよう。心がうれしくなる88のことばとアイデア』白川密成(徳間文庫)

    『空海さんに聞いてみよう。心がうれしくなる88のことばとアイデア』白川密成(徳間文庫)

    「仏弟子たるわたくし空海は、仏にならんとする心をはげまし、すべての根源である仏の境地にたどりつこうと願っているが、たどるべき道を知らず、いくつもの道のいずれかを択ぶかに迷い、いくたびとなく涙にくれた。」

    涙にくれているのは、誰か。
    弘法大師空海です。
    司馬遼太郎が、日本文化のもっとも重要な部分をひとりで創設したのではないか、といい、「日本史上もっとも形而上的な思考をもち、それを一分のくるいもなく論理化する構成力に長けた観念主義者」とまでいった超人・空海も、悩み、迷い、泣いていたんだと知ると、と大きな励ましをもらえたような気がします。
    本書は、空海の名言の中でも選り抜きの88の言葉を密成さんが超訳した生きるヒント集。巻末にある密成さんの私的入門ブックガイドもおすすめです。

    (梅田 蔦屋書店 人文コンシェルジュ 三砂慶明さん)

  • Mar

    31

    『だいたい四国八十八ヶ所』宮田珠己(集英社文庫)

    『だいたい四国八十八ヶ所』宮田珠己(集英社文庫)

    このタイトルはすごい。「四国八十八ヶ所」と「だいたい」という、一見、相反する言葉が組み合わさっているところだ。「ご朱印ガール」なる"スタンプラリー万歳"な女性が八十八ヶ寺を訪ね歩く姿を数多く見かけるようになったものの、本来、四国八十八ヶ所は全長1200kmを歩き通す「人生を振り返る修行」であり、「巡礼」のはずでは......。
     いやいや、それは勝手な思い込み、勝手なイメージ。お遍路の醍醐味は、実は、この「だいたい」にこそ詰まっているのだ。
    64日間にわたって歩き通した脱力系の旅日記は、旅の道連れとの人間模様、四国の自然、お遍路中に楽しむアウトドアレジャーで彩られる。さらには、具体的な持ち物話まで登場し、紀行文でありながら、なんと実用的なことか。
    宮田珠己さんが「だいたい」に込めた本当の意味。本書を読み終えた時、「旅とは、そして、人生とはこういうことなんだ」としみじみと染みわたる。

    (梅田 蔦屋書店 旅行コンシェルジュ 西野美和子さん)