今日の一冊バックナンバー

  • May

    01

    『ぽっぺん先生の日曜日』舟崎克彦 (岩波少年文庫)

    『ぽっぺん先生の日曜日』舟崎克彦 (岩波少年文庫)

    小学生の頃、「本ばかり読んでいないで外で遊びなさい!」と叱られて、土手に持って行って読んだ本がこれでした。当時は筑摩書房のハードカバー(箱つき)でしたが、文庫になって今でも手に入るのですね。本は見たことも聞いたこともない遠くの世界に連れて行ってくれる魔法のツールだとこの本で知りました。お尻の下の芝生のちくちくした感触と一緒に蘇る原体験。おとなになったらぽっぺん先生と結婚したいと思ってました。

    (てんらい事務局 後藤正子さん)

  • May

    02

    『詩人の評伝1 貘さんがゆく』茨木のり子 (童話屋)

    『詩人の評伝1 貘さんがゆく』茨木のり子 (童話屋)

    世の中には詩を書いて暮らしている人がいるのだと知ったのは、山之口獏さんの詩集がきっかけでした。けれども獏さんはどうやら詩では満足に食べていかれなかったようで、いつもお腹を空かせてお金のことばかり考えていたようです。貧しくて、腹ペコで、それなのに詩は透明でとてもきれいな感じがします。獏さんの詩に登場する娘のミミコさんとは私が幼稚園に通っていた頃からの仲良しです。「あなたに初めてオバチャンと呼ばれたのよ」と、今でもちょっぴり恨まれています。

    (てんらい事務局 後藤正子さん)

  • May

    03

    『ぶるうらんど - 横尾忠則幻想小説集 』横尾忠則(中公文庫)

    『ぶるうらんど - 横尾忠則幻想小説集 』横尾忠則(中公文庫)

    ずっと会っていない人の訃報に触れても、しばらくすると死んだことを忘れてしまう。たまたま道端で知り合いにあったときに、あとからふと、あの人はもしかして死んだんじゃなかったろうかと思うことがたまにある。さらに、もしかして死んだのはあの人ではなくて私だったんじゃなかったろうかと。あの世とこの世の境目が、年齢を重ねるごとにだんだん薄まってくるように感じます。世界はじわじわ「ぶるうらんど」になってしまうのだろうなぁ。

    (てんらい事務局 後藤正子さん)

  • May

    04

    『ゆるめてリセット ロルフィング教室―一日7分!体を芯からラクにするボディワーク』安田登(祥伝社)

    『ゆるめてリセット ロルフィング教室―一日7分!体を芯からラクにするボディワーク』安田登(祥伝社)

    アマゾンによると、「お客様は、2007/8/7にこの商品を注文した」そうで、その後、よもや自分が安田先生の寺子屋の受付をすることになるなんて、もちろん想像していなかったです。生きているといろいろありますな。それはさておき、ロルフィングはなかなか施術を受けるチャンスのないボディーワークなので、本を見ながらひとりでできるというのは本当にありがたい。いまだにときどき引っ張り出しては「ゆるめてリセット」に励んでいます。

    (てんらい事務局 後藤正子さん)

  • May

    05

    『水鏡綺譚』 近藤ようこ(ちくま文庫)

    『水鏡綺譚』 近藤ようこ(ちくま文庫)

    描き始めから完結編が出るまでなんだかんだで15年ぐらいかかっている、近藤ようこさんご本人も思い入れの深い作品だそうです。文庫で初めて読んだのですが、いやー、やられました。ただただ雲が流れていくシーンで胸が締め付けられる思いをしました。一番好きなシーンですとご本人にお伝えしたところ、あれはページの都合でどうしても何か描かなくっちゃならなくて描いたもの、との意外なお言葉。椅子から転げ落ちそうになりました。

    (てんらい事務局 後藤正子さん)

  • May

    06

    『友だちは無駄である』佐野洋子(ちくま文庫)

    『友だちは無駄である』佐野洋子(ちくま文庫)

    ここのところ、佐野洋子さんを再読中。佐野さんの本のどれかに猫について書かれた文章があって、それを探している。「猫は大きさがちょうど良い。叱られた息子が猫を抱きしめるのを見て、息子のために猫がいて良かった...」という美しい文。まだ見つけられず、今、この本を読んでいる。

    (ミシマガジンサポーターさん)

  • May

    07

    『人工知能の核心』羽生善治・NHKスペシャル取材班(NHK出版新書)

    『人工知能の核心』羽生善治・NHKスペシャル取材班(NHK出版新書)

    いまからちょうど1年ほど前、NHKスペシャルで「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」という番組が放送された。本書はその制作の一つの成果であるが、むしろ番組以上に面白く、一気に読んでしまった。人工知能は、データなしには学習できない。「とすれば、データが存在しない、未知の領域に挑戦していくことは、人間にとっても人工知能にとっても、大きな意味を持つと考えています」と羽生さんは言う。そして、『今後、私たちは「知性」をもう一度定義しなければいけなくなる』と強く感じたそうです。現代最高の知性であり、将棋の世界を通じて、人工知能の進化を肌で感じてきた羽生さんが、自らの言葉で、人工知能をとりまく様々な論点に切り込んでいく。「人工知能について知ることは、人間について深く知ることでもあるのかもしれません。」と本書を結んだ羽生さんの考えをたどる読書体験。これが面白くないわけがない。

    (ミシマ社 渡辺佑一)

  • May

    08

    『Carver's Dozen――レイモンド・カーヴァー傑作選』レイモンド・カーヴァー/著、村上春樹/編訳(中公文庫)

    『Carver's Dozen――レイモンド・カーヴァー傑作選』レイモンド・カーヴァー/著、村上春樹/編訳(中公文庫)

    それは孤独であったり、悪意であったり、愛であったり。彼はそういった見えないからこそ、そこにあるものを丁寧に掬いとって、文章に溶け込ませることに長けた作家だ。そこで起こる非日常的なエッセンスがとくとくと読者を酔わせる。この唯一無二の作家を村上春樹による翻訳で楽しむことが出来るのだから、一読してみないわけにはいかないということです。

    (蔦屋書店 海老名市立中央図書館 文芸書担当 簑島ほなみさん)

  • May

    09

    『イバラードの旅』 井上直久(架空社)

    『イバラードの旅』 井上直久(架空社)

    駅のホームに立っていて、いつもより輝いている電車が来たら、それはイバラード行きかもしれません。イバラードとは、画家・井上直久さんが描き続けている不思議な世界。幻想的な色彩と溢れ出る多幸感は、まるで起きながら夢を見ているかのよう。時々この絵本を開いて、あちらの世界へ連れ出してもらいたくなります。

    (蔦屋書店 海老名市立中央図書館 文芸書担当 簑島ほなみさん)

  • May

    10

    『すみれの花の砂糖づけ』 江國香織(新潮文庫)

    『すみれの花の砂糖づけ』 江國香織(新潮文庫)

    江國香織さんの詩は、私の女性性に電流を走らせる。なんだか苦しくなって、胸がどきどきしてしまうのだ。普段ないがしろにしがちな部分が、熱っぽく、そして生々しくにおい立つ言葉に刺激され、沸騰する。私が私を確かめるために読む一冊です。

    (蔦屋書店 海老名市立中央図書館 文芸書担当 簑島ほなみさん)

  • May

    11

    『こちらあみ子』今村夏子(ちくま文庫)

    『こちらあみ子』今村夏子(ちくま文庫)

    この小説を初めて読んだときの衝撃は、これからも忘れられないと思う。私はあみ子に感情移入できない。あまりにも違う存在だからだ。けれど、あみ子は美しいということは断言できる。この世からなくなってはいけないもの、皆で大切にしなくてはいけないもの。それが何故かはわからないけど、その答えはこれからも探していきたいと思う。今村夏子さん、あみ子に出会わせてくれて有難うございました。私の中で一番新作が待ち遠しい作家です。

    (蔦屋書店 海老名市立中央図書館 文芸書担当 簑島ほなみさん)

  • May

    12

    『星へ行く船シリーズ1星へ行く船』新井素子(出版芸術社)

    『星へ行く船シリーズ1星へ行く船』新井素子(出版芸術社)

    約30年前、日本中のティーンズが夢中になっていた人気作家、新井素子。彼女の代表作ともいえる『星へ行く船』シリーズが新装完全版として復刊。あゆみちゃんや太一郎さんを始め、登場人物の愛おしさたるや。そして、現代が抱える問題にも通ずる問いかけに我々はどう答えを出せるのか。この本を手に取るべき理由はいくらでもあるが、個人的には可愛すぎる装丁に注目していただきたい。怖れるなかれ、ページ数のフォントまで可愛いのである。

    (蔦屋書店 海老名市立中央図書館 文芸書担当 簑島ほなみさん)

  • May

    13

    『母』三浦綾子(角川文庫)

    『母』三浦綾子(角川文庫)

    小林多喜二の母の物語を寺島しのぶが映画で演ずると知って、これは見る前に読もうと、手にとりました。泣きました。秋田に生まれ、4歳の多喜二と小樽に移り、3男4女の母セキとして暮らす貧しい日々を語ります。優しい母の全身全霊に涙がわきおこります。

    (ミシマガジンサポーター EishiNさん)

  • May

    14

    『田中小実昌エッセイ・コレクション1 ひと』田中小実昌/著、大庭萱朗/編 (筑摩書房)

    『田中小実昌エッセイ・コレクション1 ひと』田中小実昌/著、大庭萱朗/編 (筑摩書房)

    ある書店員さんがおすすめしてくださったのがきっかけで手に取りました。コミさんが書き残した膨大なエッセイから「ひと」について書いてあるものをまとめた一冊です。肩の力が抜けた感じのリズム、文体がたまりません。中でも印象に残ったのは「酔払(デキアガリ)交遊録」。酒場エッセイというと店のことや酒のことがメインになりがちですが、コミさんは店に集ったひとを描きます。相当な量のお酒を飲んでいるはずなのに、ここまで鮮明に面白おかしく書く技術は圧巻です。

    (ミシマ社 田渕洋二郎)

  • May

    15

    『1993年の女子プロレス』柳澤 健(双葉文庫)

    『1993年の女子プロレス』柳澤 健(双葉文庫)

    プロレスファンなら誰もが知っている「10・9東京ドーム大会」。それより5年前に生まれた伝説の試合「11・14ブル中野×アジャコング戦」。ここに至る過程が生々しく載っています。「背骨が突き抜けて死ぬかもしれないけど、まあいいや」金網最上段からの伝説のダイビング・ギロチンを受けきったアジャ様。先日アジャ様の試合を観戦。尊敬!

    (インプレス 加茂下良憲さん(大のプロレスファン))

  • May

    16

    『隠蔽捜査 シリーズ』今野敏(新潮文庫)

    『隠蔽捜査 シリーズ』今野敏(新潮文庫)

    主人公はエリート警察官僚、原理原則主義、融通がきかない、頑固で第一印象はほんと嫌なやつなんですが、読み進めると不思議な事にぶれない強い意志、信念に気づき、えらい好きになってました。脇役の幼馴染みの刑事部長との絡みも絶妙で良い味を出しています。共感、感動有り! 一気読みでシリーズ中毒間違いなしですわ。

    (インプレス 岩本琢磨さん(大阪出身で声がでかい楽天主義))

  • May

    17

    『道をひらく』松下幸之助(PHP研究所)

    『道をひらく』松下幸之助(PHP研究所)

    累計500万部超の大ベストセラー書籍です(戦後のベストセラーで第2位!)。「経営の神様」と称される松下幸之助氏の人生論や仕事の心得などが、美しい言葉で綴られている随想集です。見開き2ページの短編で構成されている誌面はとても読みやすく、それでいて一編一編が心を前向きにしてくれる強い力を持っています。1968年の発売から50年以上も経っている本書ですが、日々の生活から仕事の姿勢に至るまで、常に新しい気づきを与えてくれる一冊です!

    (インプレス 大野智之さん)

  • May

    18

    『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』松本修(新潮文庫)

    『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』松本修(新潮文庫)

    アホは新しく、バカは古い言葉なのだそうです。発端は『探偵!ナイトスクープ』の企画で、「アホ」と「バカ」の境界を探して欲しいという依頼。境界を探しているうちに、多様なアホ・バカ表現に出会い、その分布が京都を中心に同心円状に広がっているという言語地理学上の発見に至ります。調査の過程は、ドキドキの冒険譚。そして、同心円状に広がっている多様なアホ・バカ表現のすべてが、愛情あふれるものだったという発見は日本人論としてもおすすめ。

    (インプレス 岩織康子さん)

  • May

    19

    『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』

    『夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録』

    心理学者である著者自身のホロコースト体験を綴ったもの。冷静な語り口ゆえに「この世の地獄」の真実が伝わってくる。とても辛い話だけれど、読まなくてはいけない! 逃げてはいけない! そして、カンタンに泣いてはいけない! 諦めてはいけない! ここには人間の生と望みが書かれているから。フランクルは言うのです「われわれは生きる意味を問うのではなく、問われているのだ」と。それから、このお話を戯曲化した『もうひとつの〈夜と霧〉ビルケンヴァルトの共時空間』(ミネルヴァ書房)は今年4月に邦訳されたばかり。あ! 「今日の一冊」なのに二冊も。ごめんなさい。

    (インプレス 中村昌代さん)

  • May

    20

    『ウソつきの国』勢古浩爾(ミシマ社)

    『ウソつきの国』勢古浩爾(ミシマ社)

    一気に空気がおいしくなりました。すると体内で何かが芽吹くような反省には木漏れ日がそそぐような......です!

    (ミシマガジンサポーター マル企画さん)

  • May

    21

    『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』益田ミリ(幻冬舎文庫)

    『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』益田ミリ(幻冬舎文庫)

    月1回のペースで全国各地を旅行し、47都道府県をひとつずつ制覇していくという連載企画の書籍化。私の場合、いわゆる紀行文は「どこか遠い世界の話」に感じられるし、旅行ガイドは読んでいるだけで消耗してしまい、実際に「行ってみよう」とはあまり思わないのですが、この本は違いました。ミリさんの旅はどこまでいっても日常の延長線上にあるといいますか、自分が一度も行ったことのない土地すらも身近に感じられて、思わず「今度の週末行ってみようかな」とその気になってしまうのです。各回に収録されているおまけの4コマ漫画が毎度おもしろく、そして旅で使ったお金を毎回書き出してくれていて、とっても親切。楽しみ方はいろいろ。読めばきっと、出かけたくなります。

    (ミシマ社 池畑索季)

  • May

    22

    『幻影の書』ポール・オースター/著、柴田元幸/訳(新潮文庫)

    『幻影の書』ポール・オースター/著、柴田元幸/訳(新潮文庫)

    友人から「面白い小説」を教えてと問われれば、必ずこの一冊を挙げる。飛行機事故で妻子を失った文学者を救ったのは、ある無声映画だった......。「喪失と再生」を軸とした物語の中に数多くの劇中作(映画)があり、その全てが簡潔ながら大変魅力的で、しかも小説全体に貢献して速力を損なわない。正確で凝縮された文体ながら難解にならず読みやすい。邦訳された著者の作品の中では最高傑作だと思う。

    (汐文社 北浦学さん)

  • May

    23

    『金閣寺』三島由紀夫(新潮文庫)

    『金閣寺』三島由紀夫(新潮文庫)

    青春文学としての完成度の高さに舌を巻く初期の代表作(映画公開が近い『美しい星』も大傑作ですよ!)。金閣に象徴される美の魔力に囚われた青年僧の悲劇......。といってしまえば一面的だが、恋、性、戦争、宗教、芸術、「父」との確執、学業の挫折など、青春文学のモチーフをたっぷり含んでおり、素直な共感をよぶ。個人的には、吃音症の主人公と、足に傷害のある級友との、愛憎相半ばした交流関係に強いリアリティを感じた(私も吃音だったから)。

    (汐文社 北浦学さん)

  • May

    24

    『影の現象学』河合隼雄(講談社学術文庫)

    『影の現象学』河合隼雄(講談社学術文庫)

    先日急逝した編集者としての師父が、一言「すごい本」と賞賛していた。ユング心理学における「影」の概念を入り口に、「もうひとりの自分」である無意識の姿を、神話や童話、絵画や文学作品の中から読み取っていく。ユング心理学の入門書でありながら、学問領域を越えた深い洞察を与えてくれる名著。[影=無意識]の力はプラスにもマイナスにも転化するのだ。

    (汐文社 北浦学さん)

  • May

    25

    『自我の起源ー愛とエゴイズムの動物社会学』真木悠介(岩波書店)

    『自我の起源ー愛とエゴイズムの動物社会学』真木悠介(岩波書店)

    人間はなぜそれぞれの「自分」を持って、他の「自分」と争ったりまた愛したりするのか? 社会学者がその「愛とエゴイズムの問題」に取り組むため、遺伝子理論や動物行動学の成果に向き合って書き上げた刺激的な論文。学問において「本当に自分にとって大切な問題」をまっすぐ追求することが、どこまでもわくわくする充実した道だということを教えてくれる。岩波現代文庫でも読めるが、2012年に出た定本著作集版が美しい。

    (汐文社 北浦学さん)

  • May

    26

    『文豪の怪談 ジュニア・セレクション〈霊  星新一・室生犀星ほか〉』東雅夫/編纂・注釈、金井田英津子/絵(汐文社)

    『文豪の怪談 ジュニア・セレクション〈霊 星新一・室生犀星ほか〉』東雅夫/編纂・注釈、金井田英津子/絵(汐文社)

    古今の文豪怪談の傑作を集め、徹底的に施された註釈と、美麗な書き下ろしイラストで話題を呼んだアンソロジーシリーズの最終巻。星新一「あれ」、水木しげる「ノツゴ」など、[文豪]の枠を更新する選定作の意外性が出色。死せる愛児との交流を描いた、室生犀星「後の日の童子」は何度読んでも泣かされる。8篇を通読するなかで霊魂と人間について深い洞察を得ることができる一冊。関わることができて心から幸せだった。ぜひ読んでください!

    (汐文社 北浦学さん)

  • May

    27

    『水丸劇場』安西水丸(世界文化社)

    『水丸劇場』安西水丸(世界文化社)

    高校生の頃に愛読していた音楽誌「新譜ジャーナル」に「ジャーナル君」という漫画のページがありました。登場人物は「神父さん」と「ジャーナル君」。安西水丸作品との出会いでした。水丸さんは亡くなりましたが、彼のイラストをいろいろなところで見つけるのは今でも楽しみです。

    (ミシマガジンサポーター 平野美香さん)

  • May

    28

    『三島由紀夫のレター教室』三島由紀夫(筑摩書房)

    『三島由紀夫のレター教室』三島由紀夫(筑摩書房)

    5人の登場人物のやり取りが、すべて手紙の形で描かれる小説。ラブレターやファンレターから、脅迫状や借金の申込の手紙まで種類は様々。登場人物たちがたった一人のために書いているその文章を盗み見ている感覚です。この本は「手紙の文例集としても使える」と紹介されているのですが、この小説に出てくるようなお手紙を送ったら、「言葉が強すぎて怒られるのでは?」と思うような痛快かつ毒舌な言葉が並んでいます。が、この痛快さがクセになります。

    (岡田千聖(ミシマ社))

  • May

    29

    『BUTTER』柚木麻子(新潮社)

    『BUTTER』柚木麻子(新潮社)

    この作品を読んでいる途中に、ついついスーパーへ行ってバターを買い求めた人も少なくないはず。わたしも買って試しました、バター醤油ご飯。柚木麻子さんの最新作は、首都圏連続殺人事件をモチーフにした長編小説です。主人公が事件の真相へ近づくとともに、現代を生きる女性たちの様々な葛藤や苦しみが深く掘り下げられていきます。ストーリーも食の描写も濃厚ですが、後味は意外なほど爽やか。「わたしもわたしの適量を見つけていこう」。そんな風に前向きになれる物語です。

    (ミシマ社 自由が丘オフィスデッチ 鬼木祐実)

  • May

    30

    『喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima』森博嗣(講談社文庫)

    『喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima』森博嗣(講談社文庫)

    理工系大学院で紡がれる、学究青春巨編。というと月並みだが、内実は違う。"STAR WARS"が銀河を股に掛けた絆の物語だとするならば、これは地方大学の片隅にある研究室の机上から歩き出した絆の物語である。学究とは、自分の限界と向き合って孤独な試し合いを続けることであり、時に星間移動のような閃きを体験することでもある。それは恐ろしいほど美しく、そして静かな営みだ。師たる人物と繋がれるのは、そんなときであると思う。誰にでも薦めたいとは思わないけれど、大切な誰かとは共有していたい、そんな小説です。

    (ミシマ社 自由が丘オフィスデッチ 太田泰文)

  • May

    31

    『新訳版 愛するということ』エーリッヒ・フロム/著、鈴木晶/訳(紀伊國屋書店)

    『新訳版 愛するということ』エーリッヒ・フロム/著、鈴木晶/訳(紀伊國屋書店)

    恋愛に悩まされる友人たちと読書会で手に取った結果、より一層悩まされるようになった一冊だ。フロムはこう指摘する。「人は意識のうえでは愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識のなかで、愛することを恐れているのである」と。私たちの中にある恋や愛に関する誤解を丁寧に解きほぐし、愛に関する考え方を一新してくれるはずだ。なぜなら「愛は技術」なのだから。

    (ミシマ社 自由が丘オフィスデッチ 上田剛輝)