今日の一冊バックナンバー

  • Oct

    01

    『いがらしろみのレシピノート romi-unieの焼き菓子、ジャム、果物のおやつ』いがらしろみ(NHK出版)

    『いがらしろみのレシピノート romi-unieの焼き菓子、ジャム、果物のおやつ』いがらしろみ(NHK出版)

    いがらしろみさんのお店の焼き菓子は、見た目も味も派手さはないけれど、とにかくおいしくて、はじめて食べたときは感動しました。レシピはいたってシンプルで、どの材料も近所のスーパーで買えるし、工程も1ページ(しかも紙面は余白いっぱい)のなかで終了します。ただ、細部の注意書きなんかを読んでいると、素朴だけどとってもおいしい、その理由がわかるような気がしました。うまく自分で作れたかは、また別の話ですが...。

    (ミシマ社 長谷川実央)

  • Oct

    02

    『私たちが好きだったこと』宮本輝(新潮社)

    『私たちが好きだったこと』宮本輝(新潮社)

    団地の一室でルームシェアをする若い男女四人の日々を描いた物語。思い通りにいかない生活や人間関係に、時に歯ぎしりするような思いを抱えながらも、彼らはいつも他人を想って、そして自分を大事にして生きています。『コスパ』、『自己責任』という言葉が心の中まで入り込んでくるような時代を生きている私たちに、「人のために生きてしまうのは私たちのどうしようもない性分だった」という登場人物たちの生き様がどうしようもなく刺さります。また、挫折や別れに直面したときにどう生きていくべきなのか。それが描かれる場面を読んだとき、思わず涙が出ました。どこか生活の中に苦しさを感じているすべての人に読んでほしい一冊です。この本が日々の生活を続けていく力を吹き込んでくれます。

    (ミシマ社 京都オフィスデッチ 立野由利子)

  • Oct

    03

    『107号室通信』カシワイ(リイド社)

    『107号室通信』カシワイ(リイド社)

    植物になった恋人。外に向けて掛けられたカレンダー。宇宙で聞く音楽。身近なモチーフでシュールな発想。そして、読むとどこか懐かしい気分になる短編集。内容はもちろん、イラストのタッチや色使い、装丁や紙の質感などすべてがステキで、ぜひ手元に置きたいと思える本です。読み終わった後、見慣れた普段の光景がいつもより眩く見えるはず。

    (ミシマ社 京都オフィスデッチ 立野由利子)

  • Oct

    04

    『ポトスライムの舟』津村記久子(講談社文庫)

    『ポトスライムの舟』津村記久子(講談社文庫)

    世界一周のクルージングと私〈ナガノ〉の工場勤務の一年間の収入はまったく同じ、百六十三万円。世界一周すれば何か変わるか、とお金を貯めることにした女性、ナガノとその周りの人たちの物語。ナガノの大学時代の友人たちを通して、家族という共同体とはなにか、女性が一人で生きていくとはどういうことなのか、どんな人も無関係ではいられないテーマについても描かれていて、思わず自分に引き寄せて考えてしまいます。大きな事件が起きることもなく迎えるラストは、爽やかでふっと暖かい気持ちになれるはず。この本の東大寺の描写が素晴らしくて、読み終わった後、私は奈良に行きたくなりました。

    (ミシマ社 京都オフィスデッチ 立野由利子)

  • Oct

    05

    『走れ! タカハシ』村上龍(講談社文庫)

    『走れ! タカハシ』村上龍(講談社文庫)

    11の作品のどれもが爽やかな短編集です。なぜ爽やかさを感じるのかが全然わからないところが一番の魅力です。登場人物は普通の人々です。しかも、人間の少しゲスいところが描かれています。しかし、爽やかです。男性を振り回す女性たちや、醜態を晒す男性たちまでもが、なぜ爽やかなのでしょうか。この短編集を初めて読んだ時、私は高校2年生でした。青春にコンプレックスを未だに引きずる元男子校生としては、この本を読まなかったら、もう少し青春に執着した高校生活を送ったかもなあと思います。しかし、当時の私は「大人には大人の甘酸っぱさがあるのだな」と思いました。そして私は、そっちの方が青春より馴染みやすそうだな、と高校生ゴコロに思ったのです。

    (ミシマ社 自由が丘オフィスデッチ 須賀紘也)

  • Oct

    06

    『河馬に噛まれる』大江健三郎(講談社文庫)

    『河馬に噛まれる』大江健三郎(講談社文庫)

    浅間山荘事件に関わったのち、ある施設に収容されている「河馬の勇士」が、小説家である「僕」との手紙のやり取りをきっかけに、無気力から回復してゆく姿を描いた小説です「河馬の勇士」は、役立たずとして軽く見られていました。左派赤軍に参加したものの、理論武装も武闘訓練にもついていけなかったのです。自己批判を恐れて、山岳ベースの便所掃除を引き受けていました。しかし便所掃除に奮闘した日々こそが、彼を無気力の「穴ぼこ」から抜け出すヒントになるのだ、と「僕」は考えます。終盤の葉山嘉樹『海に生くる人々』を引用するシーンは圧巻です。考えごとばかりしていてはいけない。行動することは気持ちいいのだ、と気合いが入ります。

    (ミシマ社 自由が丘オフィスデッチ 須賀紘也)

  • Oct

    07

    『すこやかな生き方のすすめ』桜井章一、よしもとばなな(廣済堂出版)

    『すこやかな生き方のすすめ』桜井章一、よしもとばなな(廣済堂出版)

    異色の2人の対談に惹かれて読みました。「人が人として生きることはそれだけですごい、ということに気づけば、もう十分生きていると言えます」という桜井さんの言葉に勇気をもらいました。

    (ミシマ社サポーター 平野美香さん)

  • Oct

    09

    『希望のごはん』クリコ著(日経BP社)

    『希望のごはん』クリコ著(日経BP社)

    口腔底ガンを患って噛む力を失った最愛の夫に、噛みやすく飲み込みやすい介護食を食べさせてあげたい!一念発起した妻は、あふれんばかりの愛を込め、「味」「栄養」はもちろんのこと、「見た目」にもこだわった介護食づくりに邁進する。「食べたいものを食べられるというヨロコビは生きる希望そのもの」。本当にそのとおり!介護食のレシピ本でもあり、夫妻の闘病記でもある一冊。泣ける。けれど、とてもやさしい気持ちになります。

    (かじやま すみこ)

  • Oct

    10

    『近くて遠いこの身体』平尾剛著(ミシマ社)

    『近くて遠いこの身体』平尾剛著(ミシマ社)

    ミシマガ読者にはお馴染、元ラグビー日本代表の平尾さんが、日常生活のなかで感じる身体感覚を綴ったエッセイ集。「体育嫌いだったひとたちへ」という序章のタイトルに「えっ、私のこと?」とドキッ。「古傷や後遺症まで、全部ひっくるめて面倒をみる覚悟で自らの身体を引き受けよう。そう決意するだけで身体は活き活きと輝きはじめる」。この一節が、事故で重傷を負い、思うように動かない身体と格闘する身にずしんと響いた。

    (かじやま すみこ)

  • Oct

    11

    『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川 達雄、中公新書)

    『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川 達雄、中公新書)

    人間は1秒に1回、ゾウは3秒に1回、体の小さなハツカネズミは0.1秒に1回ドキンと心臓が鼓動を打つ。ハツカネズミの時間はせかせかと、ゾウの時間はゆったり進むけれど、一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりのエネルギーの消費量はどの動物も同じなのだとか。命の神秘......神様のフェアな采配にしみじみ感動!ネズミもモグラも愛おしくなる。本来なら40歳くらいで寿命を迎えるはずの人間。現代の異様な長寿が怖い。

    (かじやま すみこ)

  • Oct

    12

    『オプションB』シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント(日経新聞出版社)

    『オプションB』シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント(日経新聞出版社)

    レジリエンス(回復する力)について知りたい人にお勧め。グラントの『GIVE&TAKE』には共感したけれど、フェイスブックCOOの『LEAN IN』はどうも苦手......そう思って躊躇したけれど、読んでよかった。「愛する夫の予期せぬ死」に打ちのめされた彼女は、その悲しみをどう乗り越えたのか。「悲劇は自分のせいではなく、すべてに及ぶわけでも、永遠に続くものでもない」。著者を励ました言葉が、弱った心にじわじわ沁みます。

    (かじやま すみこ)

  • Oct

    13

    『5 ファイブ』ダン・セドラ(海と月社)

    『5 ファイブ』ダン・セドラ(海と月社)

    古今の名言に力をもらいたいと思っても、本を読むのがおっくうなほど落ち込むこともある。そんなとき、こんなしゃれた一冊はいかが? ポジティブな箴言が美しくデザインされていて、見た目にもあざやか。薄いけど、心に残る。これからの5年を無為に過ごすか、新たな課題に挑戦するか、それは自分次第――。事故に遭って一時的に歩けなくなり絶望したとき、そんな問いかけが胸に刺さった。5年後の自分のために読む本。

    (かじやま すみこ)

  • Oct

    14

    『さぶ』山本周五郎(角川春樹事務所)

    『さぶ』山本周五郎(角川春樹事務所)

    頭が良く、男前で、自身に満ちている栄二。「おれは能なしのぐず」というが、真っすぐなさぶ。「世間に立てられていく者の影には、さぶちゃんのような人が付いている」。二人の友情を見守るおのぶの言葉にハッとさせられます。

    (ミシマ社サポーター Hamiさん)

  • Oct

    15

    読み手の視点に立って簡潔明瞭に文章を書くにはどうしたらよいか。その技術が紹介されています。仕事での報告やメールなど、ポイントを押さえて書くことについて苦手意識を持っている方は、本書を一読し、あとは日々の実践で工夫を重ねるとよいと思います。私もまた、そのひとりであり、ここ数年来、点検のためときどき読み返す一冊です。

    (ミシマ社 渡辺佑一)

  • Oct

    16

    『愛と欲望の雑談』雨宮まみ、岸政彦(ミシマ社)

    『愛と欲望の雑談』雨宮まみ、岸政彦(ミシマ社)

    雨宮さんの真っ向から自身と向き合ってきた人間だけがもつ言葉の説得力、社会学の話をふんだんに盛り込みながら人生の深淵について語る岸さん。幸せになりたいのにこじれてしまうのは自分自身の「愛と欲望」を飼い慣らすことができないからかもしれない...。じゃあどうする?そのヒントがつまってます。

    (今野書店 水越麻由子さん)

  • Oct

    17

    『男と女の台所』 大平一枝(平凡社)

    『男と女の台所』 大平一枝(平凡社)

    あなたにいまパートナーがいるとして、または独り身だとして、自宅の台所から見た風景に意外な自身の姿を見出すことがあるかもしれません。著者は有名人ではない市井の人々の、おしゃれでもなんでもない台所を撮影し、話を聞きいてきました。その人々とは離婚した女性や路上生活者、ブロガーに原発避難者など実に様々。「調理」する「場所」であるそこに、こんなにも人それぞれに固有の尊い物語があふれているとは。

    (今野書店 水越麻由子さん )

  • Oct

    18

    『差配さん』塩川桐子(リイド社)

    『差配さん』塩川桐子(リイド社)

    素晴らしい猫マンガを読んでしまいました。「マンガだからこそできる表現」と「描き手の生き物に対する無上の愛情」が見事に結実。語りに仕掛けがあり、一話読んだらあなたは必ずもう一度読み返してしまうはず。そして各話ハズレなしの傑作江戸人情ものなのです。山本周五郎ミーツ大島弓子な、笑えて泣けて猫好きも大満足な一冊です。

    (今野書店 水越麻由子さん)

  • Oct

    19

    『あたらしい無職』丹野未雪(タバブックス)

    『あたらしい無職』丹野未雪(タバブックス)

    こういうことを言うと失礼かもしれませんが、この本を読んでるあいだずっと、自分のパラレルストーリーを読んでいるようで心がしめつけられました。
    著者は非正規で編集者となり、懸命に仕事に取り組んでましたが雇い止めになりたちまち無職に。ハローワークで見つけた仕事で正社員になるものの、職場環境に耐えられず1年で再び無職。家計に重くのしかかる家賃や税金、健康保険...。読んでて切ないのは彼女が常識も経験もあって真摯に仕事してるのに、結果(賃金や安定)に結びつかないところ。それでもこの本がなぜか明るいのは著者のどこか達観したユーモアと、それまで築いた交友関係とそれを大切にする生き方ゆえ。職は大事ですが同様に、自分だけの豊かな世界を持っておくことの大切さが身にしみます。

    (今野書店 水越麻由子さん)