小さな会社でぼくは育つ

第3回 「中小企業」といってもそれぞれ

2016.12.24更新

 「中小企業」と一括りにされていますが(本連載でもこの便利な表現に頼って進めてきましたが)、その形態は会社ごとにまったく異なります。
 第1回で触れたように、製造業の場合、従業員数が300人以下であれば中小企業に分類されます。ミシマ社は東京・京都の両オフィスを合わせて10人ですから、ミシマ社からみれば、100人を超える規模の職場でも、十分大きいと感じるのではないかと思います。

 また、同じ100人の会社でも、本社に全員が集まっているところと、数カ所の支社に分散して働いているところでは(つまり、部門や部署の数といった組織構造の違いによっては)、事情が異なるはずです。オフィスの立地、形状など物理的条件の影響もあるでしょう。

 さらには、製造業とサービス業では、仕事の内容も業務に携わる時間も(ひいてはライフスタイルも)異なります。製造業でも作るものによって千差万別ですし、たとえ同じものを作っていても大企業の下請けに従事しているところと、自社のオリジナル商品を作っているところではまったく......。

 と、違いを記述することはいくらでも可能なわけで、時間を共有したり、協力し合ったりする同僚の数は、同じ中小企業で働くとしても個々のケースによって異なります。"中小企業で働く"ことは一般化して述べられるものではありません。

 つまり、この連載のような企画は「そもそも無理筋である」と(笑)。

 というなかで、それでもあえて「小さな会社で働くということ」について考えていきます(経営学は社会科学の一領域であり、経営という事象のなかに、普遍的法則を見出そうというある種の無理筋こそが、僕たちが行く道です)。


小さな会社のメリットとデメリット

 この連載にあたり、ミシマ社の担当編集者である"みっきー"こと新居さんが、中小企業で働く方々とのインタビューをセッティングしてくれました。また、新居さんご自身のお話も伺いました。

 大企業に比べて小さな会社で働いておられるみなさんですが、給料をはじめとするお金のことは、ほとんど気にされていない様子でした。お金はあればうれしいけど、使える額にはかぎりがあるし、上を見たらきりがない。そういう地に足のついた、真っ当な認識を感じました。

 このようなインタビューの特性上、会社のなかでも幸せな方にお話を伺ったのは確かです。しかし、きれいごとに聞こえるかもしれませんが、充実した仕事生活を送っている人は、概してこのような意見なのではないかと思います。


いろいろできるから楽しい、いろいろありすぎてしんどい

 お金の話を別として、みなさんが感じている小さな会社のメリットとデメリットを伺いました。共通して挙がったのは、まさに小さな会社ならではの話で、ある人の言葉を借りれば「いろいろできるのが楽しいし、いろいろありすぎてしんどい」というものです。

 他にも「やることが盛りだくさんで大変」という声は、多くの方から聞かれました。もちろん、大企業での仕事も大変でしょう。ただ、従業員の数が少ない中小企業では、相対的に一人にかかる負担が大きくなりやすいのは確かです。

 ですが、これをポジティブに捉えるならば、「いろいろできるのが楽しい」という言葉にもあるように、さまざまなことを経験できると考えられます。今後また詳しく述べますが、経験は成長にとって一番のチャンスです。場合によっては、大企業よりも早くから責任ある仕事を幅広く体験できる可能性があることは、若いうちに中小企業に身を置くことの、最大のメリットと言えるでしょう。

 また、仕事において、多くの人がやりがいを感じる条件は、「担当業務に関して最初から最後まで一任されること」と「それに対して予算も含めた権限がついてくること」です。つまり、ある程度の権限移譲がなされ、自由裁量の余地が大きければ、よりやりがいがあるというわけです。一人にかかる負担が大きい中小企業の職場は、ポジティブに捉えれば、このような機会である可能性が考えられます。

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神吉直人(かんき・なおと)

1978年兵庫県姫路市生まれ。京都大学経済学研究科修了。博士(経済学)。専門は経営組織論。神戸大学、香川大学を経て、現在は追手門学院大学経営学部経営学科准教授。研究の傍ら合気道にも足しげく通い、フットサルもお酒も(麻雀も)たしなむ。

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