月刊 ちゃぶ台

第4回 リアルな場所でも、ネット空間でもない、「これからの地元」

2017.12.26更新

  政治にもお金にも縛られることのない人生。
 そんな生き方を可能にする時代を自分たちの手でつくっていきたい。
 こんなことを考えたとき、何か参考になる雑誌はあるだろうか?
 あれば誰よりも僕自身が読んでみたいな。
 なければ自分でつくってみよう。
 そうして2年前に創刊したのが「ミシマ社の雑誌 ちゃぶ台」です。
 
 今年の10月、その第3弾となる「ちゃぶ台Vol.3」(「教育×地元」号)が発刊されました。
 特集タイトルは、「学びの未来」と「新しい地元」。
 前回、特集の柱のひとつに「教育」を据えた理由を述べました。
 ひとことでいえば、教育をビジネスの手から取り戻し、自分たちの時代の教育を自分たちの手でつくっていく、そのきっかけとしたかった。
 そのために、大人こそそうしたこれからの学びを実践する。がちがちに凝りかたまった頭と体をほぐしながら。

 そういう思いで、「教育」特集を先行して取材していきました。
 やがて、この「学びの未来」を実現させるためには、生活の足場がしっかりしていなければいけない、そのことをはっきり意識するようになりました。
 もちろん、その足場のひとつは、仕事であったり、会社であったりするわけで、思い返せば、それは「ちゃぶ台」第1弾、第2弾で特集したことでもありました。
 ただし、足場はなにも経済的足場だけではありません。
 自分たちの生活を成立させる要件のひとつには、そこに住むということがあるはずです。定住、そして日々をそこで過ごす。
言い換えれば、地元。
 冒頭に掲げた時代を実現するためにも、「新しい地元」という捉え方が必要なのではないか。
そんなふうにして、もうひとつの特集の柱は決まったのでした。

 特集「新しい地元」では、タルマーリの渡邉格さんに「私の成長録〜智頭町に来たからこそ変わったこと」を、周防大島在住の中村明珍さんに「海辺のフカフカ」、内田健太郎さんに「もらい物はもらうもの」を、ご寄稿いただきました。個人的には、この3本は格別の思い入れがあります。原稿を読んで以降、明らかに自分のなかで、何らかの「支え」となっています(そのことについては、あらためて述べたいと思います)。
 加えて、『インタビュー』著者・木村俊介さんが、誠光社の堀部篤史さんにおこなったロングインタビュー「地元的なるもの」を掲載しています。
 少し長くなりますが、引用します。

似たようなスタンスでやっている個人店をいくつか見つけて、そことお付き合いするという範囲を、ぼくは自分の属するコミュニティという意味で「地元」と捉えているのだと思います。(略)
とくに、ぼくがやっているような嗜好品を扱うお店は、近くにいる人みんなに関係があるとはいえない、来る人を選ぶタイプの商売なわけです。そうなると、コミュニティという意味での「地元」は、町内やご近所のことだけではなく、同じような姿勢、規模で、同じように嗜好品や文化的なものを扱うお店やそのお客さんになるんです。(略)
ぼくが言及している「地元的なもの」は、エリアのみによるかつてからの「地元」よりはもうちょっと擬似的な共同体なのかもしれませんね。それでも、おたがいに顔を知っていて認識しあっている先輩たちや後輩たちとの中にいるという感覚から、旧来の地元のように、そこに属することによって仲間たちによってアイデンティティが確立するということもあると思うんですよ。

(「ちゃぶ台Vol.3」p86ー87)

 ここでは、ながいインタビューのほんの一部だけを引用しましたが、本号に収録した堀部さんの言葉は必読と申し上げたいです。
 というのも、堀部さんがここで語っていることは何も堀部さん個人の話にとどまらないからです。
 別の箇所で言及されているように、堀部さんは自店のあり方を、「消費」的ではなく、「物語」的であることを意識されています。「物語」的であるというのは、時間軸が介在していることです。つまり、記号としての点ではなく、過去から未来へつづく線あるいは面、立体のなかでお店やコミュニティを見ている。
 すると、やっていることも置かれている環境も違うはずなのに、語られていることが我がことのように聞こえてきます。「点」では触れ合うことのなかっただろう話が、物語であるがゆえに自分のなかの物語と触れ合い、響き合う。そうして、初めて無意識のうちに宿っていた自分のなかの物語が想起されてくるのです。
 実際、私がそうでした。
 堀部さんが語った「地元的なもの」に触れたことで、なぜ今回の特集を「地元」としたか、その理由を深めることさえできたのです。
 どういうことかと申せば、この数年、「ちゃぶ台」を通して、自分自身が「地元的なもの」を求め、ゆるかに形成しようとしていたことに思い至ったのでした。
 それは、「ちゃぶ台」に登場いただいた周防大島の中村明珍さんや内田健太郎さんをはじめとする、島の人たちとの交流であったり、特集「学びの未来」で森田真生さんと対談してもらった高知県土佐町に移住した瀬戸昌宣さんとの出会いであったり。
 こうした方々とは、職種、職業を越えて、通じあう感覚が確固としてありました。共通するのは、既存の価値観や仕組みに回収されることを良しとせず、全身投げ打ってその世界から飛び出し、新たな世界を手作業で、開墾から始めようとしている。そういう方たちとの「つながり」こそ、「新しい地元」と言えるのではないか。
 常に同じ空間にいるわけではない。かといって、ネット空間で共生しているわけでもない。
 リアルな場所でも、ネットという消費空間でもなく、次の時代へ向かうという「行為」を通じてつながりあう地元意識。
 こうした「新しい地元」が、いま、日本中、世界中でぽこぽこと生まれているにちがいない。
 そんな物語が私のなかで立ち上がったのでした。
 そして、こう、素直に思えたのでした。
ーー同じような思いで身体をはりながら日々を送っている人たちにとって、「ちゃぶ台」が、「地元的」な機能を果たしてくれるだろう、と。

 同時に、まだそこに踏み出す前段階にいる人にとっても、なんらかのヒントが見つかるはずだと思います。
 たとえば、全体主義的な空気が蔓延する就活に違和感や孤独をおぼえたり、付和雷同的な職場に気持ち悪さをおぼえたり、自分が属する産業に未来を見出せなかったり、そんな日々を過ごしている人たちにとっても。きっと。

『ちゃぶ台 vol.3』と『うしろめたさの人類学』の発刊を記念したイベントを開催します!

◆<福岡>公開!「ちゃぶ台」企画会議
福岡から考える!「3年後、自分たちの社会はこうなっているかも」会議
 with 『うしろめたさの人類学』松村圭一郎さん

日程:2018年2月9日(金)19:00開演(18:00開場)
会場:カフェ&ギャラリー・キューブリック
参加費:2,000円(1ドリンク付・要予約)
  *懇親会有り(参加費1500円・カレーと2ドリンク付・要予約)
ご予約:
①メールでお申し込み
 hakozaki@bookskubrick.jpまで、件名を「2/9トーク予約」として
 [1.お名前、2.参加人数、3.ご連絡先電話番号 4.懇親会参加有無]
 をご記入の上お申込みください。
②peatixというサービスからも簡単に予約が可能です。
 こちらの「チケットを申込む」ボタンからお申込ください。
 参加費は当日受付でお支払いくださいますようお願いいたします。

◆<熊本>地元熊本・凱旋イベント
「うしろめたさ」からやり直す
~熊本も世界も、こんなことから変わります~
松村圭一郎さん講演+対談(相手:三島邦弘)

日程:2018年2月10日(土)14:00 開演(13:30 開場)
会場:長崎書店3F リトルスターホール
入場料:1,000円(当日会場入り口で頂戴いたします)
ご予約:長崎書店 店頭 もしくは電話 096-353-0555
    メール info@nagasakishoten.jp  まで

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