佐藤純子さんは、ジュンク堂書店仙台ロフト店で文芸書、文庫、新書を担当する書店員さんです。そのほかにも「BOOK! BOOK! Sendai(注1)」のメンバーとして活動されていたり、ご自身の名を冠したお便り漫画「月刊佐藤純子」を発行されていたり、何やらとっても楽しそう・・・。その楽しさの秘密を探るべく、営業・渡辺がお伺いしてきました。
(聞き手:渡辺佑一)
注1:2008年7月に本好きのメンバー10人で「杜の都を本の都にする会」を発足。2009年9月からは「Book! Book! Sendai」の名前でさまざまなプロジェクトを展開中です。2010年も 「6月の仙台は本の月」 をキャッチコピーに、約1カ月半にわたり仙台市内を中心に様々な本のイベントを開催いたします。(公式ホームページより)
ジュンク堂書店仙台ロフト店 佐藤純子さんに聞きました

―― 佐藤さんのブログ「私は本になりたい」を拝見させていただいたのですが、とっても楽しいブログで・・・。
佐藤ありがとうございます。あ、そうだ。忘れないうちに、「月刊佐藤純子」(注2)のバックナンバーを全部コピーしてきたので、お渡ししてもいいですか?
注2:『月刊佐藤純子』とは、佐藤純子さんに会うと押し売りならぬ押し配りされる(かもしれない)、漫画のフリーペーパー。A4サイズの紙一枚に佐藤さんの近況が綴られている。ちなみに同じような名前のグラビア雑誌がありますが『月刊佐藤純子』にグラビアはございません。全編イラストです。
―― うわ、ありがとうございます! 私、実際に佐藤さんとお会いするの、今日が初めてじゃないですか。でも、「月刊佐藤純子」のイラストを見ていたので、今日、売場ですぐ「あ、この人が佐藤さんだ!」ってわかりました。漫画から出ているオーラそのままだったですもん。改めまして、今日はよろしくお願いいたします。
佐藤こちらこそ、よろしくお願いします。
一番好きなもののそばにいなさい
仙台の本を集めた棚 |
―― 売場では、地元関連の本がとても充実していたり、瀬名秀明さんや伊坂幸太郎さんなど、地元在住作家がセレクトした本を並べる棚を作ったり・・・、佐藤さんから、並々ならぬ「仙台愛」を感じるのですが。仙台は、地元なのですか?
佐藤私、実家は福島なんです。大学から仙台にきて、それから卒業してからもずっといるんですけど、仙台は好きです非常に。街の単位がちょうどよいというか・・・。仙台のコンパクトさ加減と、便利は便利だけど人もいる感じとか。あと好きな人がいっぱいいるので、ここから離れたくないなーって。
―― なるほど。本屋さんには、なりたくてなったのですか?
佐藤そうです。
―― へー。
佐藤私、学校を卒業してから、なんにもしていない期間があって。友だちの家に居候したりとか。お金貯めたのを食いつぶしてフラフラしたりしてたんです。
―― へぇ、意外な感じです。
佐藤そんなフラフラしてたときに、いよいよ友だちから「もういい加減ちゃんとしなさい」って言われて、ワーってなって。
―― ふふふ。
佐藤で、その友だちに「何が一番好きなの? 純子ちゃんは、一番好きなもののそばにいなさい。」って言われて・・・。
―― ええ。
佐藤で、「私は、本が一番好きだな・・・」と思って。それでジュンク堂に電話を掛けて、面接を受けました。
―― はい。
佐藤面接が終わったあとに、そこにマフラーを置いてきてしまったことに気づいて「あーマフラーマフラー、すみませんマフラー忘れちゃって」って取りに行ったら、そのとき髪を茶色にしていたんですけど、「佐藤さん、明日とかに髪の毛、黒くできる?」って言われて。
―― おっ。
佐藤「あ、なんだろう??」と思って、「あ! します。できます。」と言ったら、「じゃあ、明日から来てね。」って言われて。
―― おぉぉ。
佐藤それで、ジュンク堂で働くことになったんです。
―― それはよかったですね。最初は、どのジャンルを担当したのですか?
佐藤最初は、ビジネス書を担当していて。こう言っちゃ何ですが、ビジネス書やりたくなくて・・・。
―― ちょっと、佐藤さんのイメージじゃないですもんね。
佐藤なんか、お客さまのほうが圧倒的に詳しいですし・・・。試験モノとか、棚の前に立っていると、目がチカチカしてくるし・・・。
―― ははは。やっぱり、文芸書をやりたかったんですよね、きっと。
佐藤そうなんです。だから文芸書をやらせてもらえることになったときは、すごくうれしかったです。今も、毎日毎日、楽しくて楽しくてしょうがないです。
私はフランス人になりたい
―― 本を好きになったきっかけはなんですか?
佐藤うーん何だろう・・・。気づけばもう好きだったのですが、周りにいる人の影響とかはあったかもしれないですね。
―― 学生のころは、どんな本を読んでいたのですか?
佐藤ジャン・コクトーとか読んでました。意外と読んでなさそうに見えて。私、フレンチかぶれになりたかったんですよね。ゲンズブール聴いたりとか、ボリス・ヴィアン読んだりとか。
―― へぇ、フランスに行ったことあるのですか?
佐藤いや、まだ行ったことはないのですが。学生のころは、ことあるごとに「私はフランス人になりたい」とか言っていて、周りの友だちを困らせていました(笑)。
―― 「BOOK! BOOK! Sendai」には、どのような流れで参加することになったのですか?
佐藤ブックブックは代表が武田こうじ(注3)という方なんですが、武田さんとは、学生のころCD屋のバイト先が一緒だったんですよ。ワールドミュージックとジャズのフロアにいたんです。武田さんは詩人なのですが、ポエトリーリーディングのライブを一緒に観に行ったりしました。
注3:「BOOK! BOOK! Sendai」代表の武田こうじさんは、昭和46(1971)年、東京生まれ。仙台市在住の詩人。10冊の詩集を自費出版。カフェやライブハウス、書店、動物園、天文台などでポエトリーリーディングを展開。雑誌の連載やコミュニティーラジオのパーソナリティーもつとめる。
―― 「フランス人になりたい」って言っていた頃ですね(笑)。
佐藤はい。あと『火星の庭』というブックカフェをされている前野さんという方もメンバーなのですが、その方とも別で知り合いになっていて。本を通じて、つながりはもともとあったんです。
―― ブックブックのメンバーと個別には知り合っていたのですね。
佐藤そうなんです。一昨年、本のおもしろさを愛する人たちが、それぞれの知り合いを連れてこよう、という趣旨のもと集まる機会があって、そこで盛り上がって。
―― 仙台の本好きが集って、つながって、イベントをするまでになったのですね。
街にちゃんと根をはりたい
仙台ロフト外観 |
佐藤あの、あんまりいい話じゃないかもしれないんですけど。
―― はい。
佐藤ジュンク堂は、関西からドーンって、ペリーのようにやってきて。
―― 黒船のように?
佐藤はい。それで、もともと仙台にあったお店がなくなってしまうこともあったりして、そういう、もともとあった小さなお店を愛してきたお客さまからしたら、「なにがジュンク堂だ」という批判があるのかもしれなくて。
―― なるほど。
佐藤でも私はこう、街にちゃんと根をはったお店になりたいなあ・・・と思っていて。仙台の本を集めたコーナーを作ってみたり、売場に昔の仙台を映した写真を展示してみたり。
―― はい。
リトルプレス棚 |
佐藤東北地方のリトルプレス(注4)も置いたりとか。いろいろ工夫をして、街に愛されたいなあと思っているんですが・・・。
注4:リトルプレスとは、個人やグループなどが、自分自身の手により企画・発行・販売まで手がける本や冊子のこと。
―― そういう手応えありますか? 感触とか。
佐藤うーん、ちょっとずつですけど、あります。仙台の本が動くのは、うれしいですやっぱり。
―― それは、良かったですね。
佐藤あと私は、おじいちゃんおばあちゃん受けがいいんです。名指しで、「佐藤さん〜」と。
―― ふふふふ。もう馴染みのおじいちゃんおばあちゃんが。いいですねえ。そしたら「何かオススメの本ある?」とか聞かれたりするんですか?
佐藤あります。いつもそうやって来てくれる方がいて、そのお客さまから、「ミステリーでも笑って読めるやつがほしい」と聞かれて。でもそれほどミステリーに詳しくないから、私がよく行く近所の飲み屋さんで、ミステリー好きの人から以前、「おもしろかったよ」と教えてもらった本をお薦めしてみたんですね。
―― はい。
佐藤そうしたら、後日、そのお客さまがまた来てくださって「このあいだの本、よかったよ!」って。それで、「またこういうの、ある?」って聞かれて。私、「うわわ、飲み屋の人、他になにをおもしろいって言ってたっけ〜??」ってなっちゃって。これはもう、直接その方同士を紹介した方が早いんじゃないか? と。
―― ははは。
佐藤なのでそのお客さまには、「こういうお店があるんですけど・・・、もしいつか行かれる機会があれば」と紹介してみました。
―― へー。佐藤さんを通じて、街に暮らす、まだ見ぬ本好き同士が、つながったかもしれないと。なんか、いい話・・・。
佐藤「本を読む」ってすごく個人的なことなんですけど。
―― はい。
佐藤ホント個人的なことなのに、こうやって本の話をできる。それって不思議ですよね!
―― 確かに。不思議ですね。
本じゃないものも売ってます

佐藤あ、でも今、本じゃないものも売ってますよ。
―― え、どんなのですか?
佐藤こけし売ってますよ。今、こけしフェアをしていて。
―― え、こけし?? しかもフェアですか?(笑)
佐藤フェアです。『kokeshi book』(青幻舎)という本が出ているんですね。その方と、仙台の方が作ってる『こけしの旅の本』(仙台こけしぼっこ)というリトルプレスがあるのですが、その2人から声を掛けていただいて。「地元のこけしを一緒に売れないですかね」と言われて、でも私さすがにこけし職人に知り合いはいないな・・・、と思ってたら、『こけしの旅の本』を作った方が地元の職人さんを紹介してくださって。
―― 職人さんとやり取りもされたのですね。

佐藤はい。でも高くて大きい立派なこけしを、ゴロンと売場に置いておけないので、「お手頃価格のこけしはないですかねえ」と言っていたら、その職人さんが「・・・、じゃあジュンク堂のために、小さいのを作りましょう」という話になりまして、いまその小さいこけしを本と一緒に並べて売ってるところです。
―― へぇ。
佐藤こけしフェアを始めた初日に、早速ひとりお買い上げいただいて。
―― すごい。
佐藤あまりのうれしさにレジで「お客様がこけしを買われた第一号です!」って話しかけてしまったんですが、その後ブログに「こけしフェア」のこと書いたら、そのお客さまから「その時こけしを買ったものですが」とコメントをいただいて。
―― うわー。ははは。
佐藤「その節は突然話しかけてしまって、ごめんなさい!」って返したんですけど、とてもうれしかったですね。
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―― すごいですね。こけしを通じたつながりが。(笑)
佐藤職人さんのためにも、こけしは、できたら完売させたいです。そうそうこけしフェア始める時に、ウチの店の女子の髪型、全員こけしにしたらいいのに、って言ったんですけど、「いやだ」って却下されました
―― ははは。佐藤さん、スタッフの皆さまとも、仲良さそうですよね。
佐藤あーそうですね。いいと思います。女性がいっぱいいる職場って、何かしら「キー」ってなりそうですけど、ウチの店はホントないです。これは、自慢かも。何か、女子にありがちな「変な感じ」とかもないですし、かといってなんかべったりして、ただただ仲良しで締まりがないっていうのでもないですし。注意するところはお互いしあいますし。
―― それは、よい関係ですね。
佐藤スタッフのみんな、穏やかで、私がいつもチャラチャラした訳のわからないフェアやろうとしても、許してくれるというか。「純子さんだからしょうがないよ」って見守ってくれている感じですね。
妄想手帖をつけてます
―― チャラチャラしたフェアって(笑) でも案外そういうのが売れたりしちゃうんじゃないですか?
佐藤やっぱり、自分が楽しいことだけしていたい、っていうことだと、それだけでは、お金にならないですから、いつも店長から、「目はYENにしなさい」って言われてます。目は¥に。
―― これからやってみたいフェアやイベントなど、何かありますか?
佐藤やりたいフェアは、いくつもあるんですけど。今、持ってないんですけど、「妄想手帖」というのをつけてまして、そこにはこれからやってみたいフェアがたくさん書いてあるんですよ。
―― 妄想手帖って!
佐藤例えば「日本におけるフランス年」とかあるじゃないですか。ああいう感じで、勝手に「ジュンクにおけるイタリア年」とか作って、選書を通じてイタリアのことをいろいろ紹介してみたり。
月刊佐藤純子 |
―― いいですね。他には?
佐藤あとは、「乙女」っていう棚ジャンルを作りたいんですけど・・・。多分店長に、「ダメだ」って言われると思うんですよね。
―― 乙女棚 見てみたい(笑)。
佐藤私、そういう妄想は事欠かなくてですね、役に立たない妄想ならすごくいっぱいあるので。妄想だけで暮らせるんだったら、長者番付に載ると思います。残念ながら、不毛な感じですが・・・。
―― でも、楽しい気持ちになるならいいですよね。妄想の思いつきで、何かうまくいったことはないんですか?
佐藤そうだ、「BOOK! BOOK! Sendai」で一箱古本市をやったときに、ちょっとでも活動資金を得られないだろうかと思って、「BOOK! BOOK! おみくじ」っていうのを作ったんですよ。
―― ははは。
佐藤自分でおみくじをひたすら書いて、それをコンビニでコピーして細く切って結んで、あと段ボールで鳥居と賽銭箱を作って、セルフサービスで「BOOK! BOOK! おみくじ」を1回50円で引けるようにしたんです。
―― ええ。
佐藤そしたら、1700円くらい貯まったんですよ(笑)
―― えー! すごい。全然、不毛なんかじゃないですよ。いいなあ、妄想手帖。私もはじめようかな。
佐藤ぜひ。妄想手帖は、楽しいですよ。
―― 最後に、ジュンク堂さんは、ナショナルチェーンですから、異動することがあるかもしれませんけれども、やっぱり仙台にずっといたいですか?
佐藤できることなら、私はずっと仙台にいたいです。でも万が一、どこか1カ所、行かなきゃいけないってなったら、私は、パリに行きたい。パリにもあるんですよジュンク堂。
―― そうか、パリがあった(笑)
佐藤フランス人になりたかったー。
―― 今日はオムライスを食べながらの取材、貴重な休憩時間に、どうもありがとうございました。
佐藤こちらこそ、ありがとうございました。
