本のこぼれ話

 去る11月2日。福岡の名門書店ブックスキューブリックの箱崎店にて、熱い、熱いイベントが開催されました。
 題して、「これからの街」を考えよう 〜建築・出版・書店、それぞれの視点から〜。
これからの建築・出版・書店はどうなっていくのか? そしてこれから街はどうなっていくのか? 先日発刊した『これからの建築』著者の建築家・光嶋裕介さんと、『ちゃぶ台』『ちゃぶ台vol.2 革命前々夜号』の編集長であるミシマ社・三島邦弘との対談で見えてきた「これから」とは?
 後半では、10年前、全国に先駆けて街ぐるみのブックイベント「ブックオカ」を立ち上げ、まちの本屋の最前線を走る大井実さんも加わって、さらにヒートアップしました。

 二日間にわたってお届けします。福岡の熱い二時間をぎゅぎゅっとどうぞ!
 また、今週末の11月19日(土)には、岡山にて、「これからの町」を考えよう~建築・学問・出版 それぞれの視点から~のイベントもございますので、ぜひお越しくださいませ!

(構成:田渕洋二郎 構成補助:中谷利明)

光嶋裕介×三島邦弘×大井実トークショー「これからの街」を考えよう ~建築・出版・書店、それぞれの視点から~(1)

2016.11.15更新

これからの建築を3分で説明!

三島突然ですが、光嶋さん、この『これからの建築』の本のことを3分で話してください(笑)。

光嶋いきなり(笑)。しかも3分ですかぁ...、がんばります。まずこの本の前に『建築武者修行』という、学生時代からの10年の旅の記録をまとめた本を出したんです。それは当時20歳の「過去の自分」に向かって「20年後、おれはいまこんなこと考えてんねんで」というつもりで書いた本なんですよ。
 でも、『これからの建築』では、実際に建築家になった今、これから20年後の自分が建築家としてやってるときに、「2016年のいま、ぼくはこう思います」と言うつもりで「未来の自分」に向けて書いた本なんです。「こんな建築があったらいいよね」「こんなふうにできたらいいよね」ってことを投げかけていけたらいいなと。

三島なるほど。

光嶋それで書いている内にこの本のテーマが「生命力」ではないかと思ったんです。たとえば、ガウディの建築がすごくいいなぁと思うのは生命力を感じるからなんですよ。ガウディのサクラダファミリアはいまだに完成していないんです。ガウディがいなくなって100年経っても、外尾悦郎さんとか、いろんな人たちがいまだ作り続けている。そこにウワァーッ!となる。

三島うんうん。

光嶋生命力、というものを考えたとき、「完成しない」というのがキーワードなんですよ。たとえば一本の木があるとします。それは種からどんどん成長するけど、完成は存在しない。死も存在していない。枯れて無くなっても、根っこが残っているかもしれないっていうる長い時間軸があるということですよね。そうか「生命は動きなんや」と。
 だから図面を書いて、それを再現するだけでは、「完成(竣工)」しただけで終わってしまいそうな気がする。それが怖いので、ぼくは現場で色んなことを考え続けて、アイデアを更新し続けたいんです。大工さんからしたら、それはえらい迷惑かもしれませんけど。

三島そうですね(笑)

光嶋それに、衣食住のうち、「今日のファッションかっこいいですね」とか「最後の晩餐はなにが食べたいですか?」とか、衣と食についてはみんなよく話すのに、建築と自分の空間に対する会話がないってことが、すごく不自由だと思うんです。どこか無関心なような気がして。だから、「もっと建築っておもしろいんだよ!」ってことを伝えたいというのが、根底にあって書いた本ですね。
三島ありがとうございます。

生命力の建築、生物のちゃぶ台

光嶋それでは、三島さん『ちゃぶ台vol.2』も3分で説明お願いします(笑)

三島これはですね、いま実は光嶋さんが全部言ってくださっていて、「建築」と「編集」に置き換えたらほぼ同じなんです。

光嶋ずるい(笑)

三島前回は「移住」と「仕事」をテーマにしていたんですが、今回は「食」と「会社」がテーマになっています。会社のことを「カンパニー」というじゃないですか。これって「com」は「一緒に」っていう意味だから、「パンを一緒に食べる」ということで「company」なわけですよ。これが会社の原点なのですれど、いま、会社というものがちょっとおかしなことになってるというのがこの本をつくった動機なんですね。たとえば株主の方ばかり向いてるとか、あとはとにかく利益、効率優先ということだったり。

光嶋そうですね。
 
三島そもそもなぜ「company」というものが生まれたのかというと、人間の生存上、一緒にやるほうが、生き延びていきやすいからなんです。光嶋さんが「生命力」と言っているものを、ぼくは「生物」というふうに捉えています。人間も一生物として捉えたら、やはり色んな感覚を使いながら滅びずに生き延びていくことが大切になってくる。そのひとつのかたちが「会社」なのであって、いまみたいに集団で組織で利益をいっぱい出して、それを株主に還元しましょうという行為とはかけ離れているわけなんです。

光嶋おお!

三島かつての始まりが全てというわけではないんですけど、原点を失ったまま途中で進化したところだけで生きていくと、なんかすごく変なことになってしまっている。そんなことを考えながら「食」と「会社」をテーマにしました。

タイトルの秘密

光嶋でも、タイトルは「食」と「会社」号ではないですよね?

三島そうなんです。最初はそのはずだったのですが、取材をすすめるうちに、平川克美さんも近藤淳也さんも、鷲田清一先生も「革命」という言葉を共通して使われていて、「革命前々夜号」と今回つけたんです。
「前夜」だったらみんなが「何が起こるんだ!」って感じですけど、「前々夜」っていうのは、明治維新のときもそうだし、ソ連崩壊のときもそうだったと思うんですけど、数カ月前までは普通に生活してました。でもある日にブワァー! っと。


光嶋なるほど、前夜じゃなくて、前々夜なんですね。

三島鷲田先生がおっしゃっていたのは、東京がしんどくなっているひとつには、神奈川、埼玉、千葉から、東京に働くためだけに行って、住んでいる地元には一切なんの貢献もしてないのが原因だと。
会社っていう存在は本来、経済の語源になっている「経世済民」で、公に貢献することこそが役割なのに、いまは全然パブリックなものではなくて、すごくプライベートなものになってしまっている。

光嶋なるほど。閉じた「会社」「株式会社」という組織内でお金を回すということだけをやってきて、自分が住んでいる町に全然還元されないんですね。

三島はい。でもそれはかなり不自然な状態で。だから一方で、そうじゃない、揺り戻しのような動きというのが起こっているんです。

「これからの町」を考えよう ~建築・学問・出版 それぞれの視点から~

【出演】三島邦弘(ミシマ社代表) × 光嶋裕介(建築家) × 松村圭一郎(岡山大学文学部准教授)

【日時】2016年11月19日(土) OPEN 16:00 / START 16:30

【会場】旧内山下小学校 体育館(岡山市北区丸の内1-2-12)

【参加料】前売一般 1,500円 / 当日一般 2,000円 / 学生 1,000円(前売・一般)/ 小学生以下無料

【ご予約方法】こちらのHPより、メールか電話にて承ります。


  

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