本屋さんと私

 先月、発売となった『家のしごと』
 装丁デザインを手がけてくださった名久井直子さんとの初めての打合せのときに、「イラストをお願いしたい方がひとり思い浮かんでいるのですが、あと2~3日自分の中で寝かせて、もう一度ご連絡してもいいですか」と仰っていただき「もちろんです」とお返事。
 そしてちょうど3日後、「やはりこの方にお願いしたいです」といただいたメールに書かれていたのが、後藤美月さんのお名前でした。

 後藤さんにイラストをお願いすることになった、とミシマ社メンバーに伝えると、仕掛け屋ハセガワが「えーーーー! 後藤さんの絵、超好き~!」とハイテンションに。雑誌や装丁のイラストで見かけて、ずっと気になる存在だったそうです。

 そうして描いてくださった、このイラスト。はみ出る元気さとぬくもりを、本書にもたらしてくださいました。そしてハセガワ情報によると、どうやら絵本のお店で働いていらしたことがあるらしい...。これは一度ゆっくりお話をうかがってみたい! ということで、今回、「本屋さんと私」にご登場いただくこととなったのでした。

 今回の絵のこと、本のこと、仕事のこと...3回にわたってお送りします。

(聞き手:星野友里、長谷川未央、構成補助:衣笠美春)

第192回 絵を描こうというんじゃなくて、ものをつくるみたいに

2016.12.21更新

子どもながらに、この人は超かっこいいんだなと思っていた



―― 小さい頃に読んだ本など、印象に残っている本はありますか?

後藤やっぱり私、絵を見ちゃうんですね。後々読んだらこういうことを言っていたのかって、今頃思い出すんですけど。井上洋介さんは、子ども心に、すごくお洒落だと思って、飾り枠をよく真似して描いていました。でも普通の一枚絵を見るとすっごく気持ちわるかったりして、底知れぬ何か、何だろうこの気持ちはというのが絵から伝わってきて。子どもながらに、この人は超かっこいいんだなと思っていました。

―― 最近でも、本を買おうと思ったら、絵から気になって探す感じですか?

後藤活字の本を読む時は、すすめられたり、読んでみたいと思って手に取るんですけど、それとは別に、ビジュアル重視の本を買ったりもします。活字の本とビジュアルの本と、買う時の気持ちが違いますね。

―― よく行っていた本屋さんや好きな本屋さんはありますか?

後藤それを言ったら、メリーゴーランドになっちゃうんです。でもメリーゴーランドは本屋というよりかは何か...。

―― ホームタウン?

後藤そうですね。染み込んでいますね、ほんとうに。この取材のお話をいただいた時も、メリーゴーランドの人に「こんなお話がきてしまって、絶対絶命だ」って、メールして(笑)。「大丈夫だよ」って励ましてもらいました。


図書館に入れる本を子どもたちが選ぶ

―― メリーゴーランドをつくられた増田さんは、すごい力を持っていらっしゃいそうですね。

後藤わるい男なんですよ、ほんとに(笑)。もう還暦過ぎてると思うんですけど、すごくカッコイイです、大人になっても。お洒落だし。

―― たぶん後藤さんだけではなくて、多くの四日市出身の子どもたちがメリーゴーランドカルチャーを全身にあびて育つんですよね。

後藤そうです。知らない間に。

―― それってすごいことですよね。文化的貢献度が半端ではない。

後藤半端ではないです。すごく面白いですよ。小学校の図書館に本を入れるとなると、普通はやっぱり、大人が読んでほしい本を薦めるじゃないですか、でもそういうやり方をせずに、体育館にたくさんの本を並べて、「じゃあ、よーいはじめ!」とか言って、子どもたちが図書館に入れたい本を選ぶんです。
 大人から見ると、「あっ、その本絶対面白くないのに」と思ったり、すごく小さい子がハリーポッターみたいな太い本を持っていて、読めるのかな、とか思うんですけど。それでも自分が選んだ本が図書館にあるっていうのがやっぱりすごく嬉しいと思うんですよ。それを友だちが読んでいても嬉しいだろうし。

―― 自分で選ぶって大事ですよね。

後藤増田さんは、子どもの前で本読んであげるのも、すっごく上手で、まず独楽回しから始まるんです。コマとかけん玉とかそういうことで子どもだちをつってから読むんです(笑)。それで、その本の最高に面白いところで、子どもたちが、「次は...!」ってなった時に、「おしまい」と。この続きが読みたい人は本屋さんに買いに来てくださいとか言って。もう、子どもたちからすると、「あのおじさん最高だ」みたいになりますよね。


絵を描こうというんじゃなくて、ものをつくるみたいに

―― これからやってみたいことはありますか?

後藤以前までは絵の仕事をやっていかなきゃと強く思っていて、空回りしていたところがあると思うんです。最近はわりと肩の力が抜けてきました。どうしても絵の仕事をやらなくても、自分がやりたいことをもうちょっと大事にして、それが絵なら絵をやろうみたいな感じで。イラストレーションは、何かのための絵なんですけど、もっと無意味なこともやりたくて。ちょっと上手く言えないんですけど。「何でこれ作ったんですか」と言われたら、「わかりません」と言うしかないものを作っていきたいなと。

―― なるほど。

後藤わかってきたのは、絵を描こうというんじゃなくて、ものをつくるみたいにというか。絵にするためにはものにならないと。絵のままだといやだという感じがするんです。 
 今回させていただいた装画は、ものになったと思ったんです、すごく。絵にしか見えない時と、本として独立したぞって思う時があって。この本は、本として独立したぞという感じがして、嬉しかったんです。

―― とてもよくわかる感じがします。私たちも嬉しいです。

後藤私はすごく人見知りで、家からあんまり出ないんですけど。絵はこうやって勝手に歩いていってくれるので、頼もしいなって思います。


   

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後藤美月(ごとう・みづき)

1981年、三重県四日市市生まれ。
名古屋デザイナー学院卒業後、三重県四日市の子どもの本専門店・メリーゴーランドに勤務。2008年7月に上京する。FM802 digmeout・RECOMMEND artist登録
「プロフェッショナル イラストレーター集団 イラストレーターズ通信」会員

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