第31回 編集も営業も一冊入魂です!
「坪単価最強書店」はすごかった!
三谷このまえ、アノニマで半年前に出した本が急に入用になったことがあったんです。休日だったので、家の近所のお取引のある書店さんで手に入れようと思って、何軒か電話で在庫の問い合わせをしたのですが、置いていなくて。
安西最近の新刊の動きの速さは半端ないんですよ。
三谷結局、新宿のブックファーストで手に入ったんですが、ちょっと前に出た本が、書店さんでふつうに手に取れないんだって感じました。できるだけアマゾンじゃなくて、リアル書店で本は買いたいと思っているのですが。
―― そうですよね。
安西新刊点数が多いから仕方ないのかもしれませんが、書店員さんが好きなように本を並べているところって案外少ないんじゃないかなーって思います。
三谷それでいうと、ミシマガジンでも紹介されていましたけれど、にいがた空艸舎(くうそうしゃ)さんのイベントに出展されていた北光社・佐藤店長の「坪単価最強書店」こと「空艸書店 by 北光社」はすごかったんですよ。私、中谷宇吉郎の随筆集をそこで買ったんです。いわゆる「名作」と呼んで差し支えないような昔の本も、今でもすごくおもしろく読めるんだってことを上手に展開されていて。ああいう書店さんがもっとあると楽しいですよね。書店さんが、それぞれの個性をどんどん出していってほしいです。
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安西そのほうが生き残れるんじゃないかって思いますよね。
三谷ニーズは細分化しているので、すべてには応えられないかもしれないですけど、そこの書店員さんじゃないとできない品揃えをしてくれたほうが、見に行くほうも楽しいですし、そこで信用がうまれてお客さんもついてきそうですよね。
新潟・英進堂さんでの「灯台フェア」。一冊一冊にグラシン紙がかけられ、諸橋店長のひとことコメントがついています! |
安西そういうことを文化の発信地の東京の書店さんがしてほしいなというのはありますね。今、地方のほうがおもしろくなっているような気がします。特に、新潟はおもしろいです。北光社さんは残念ながら閉店されてしまいましたけど、英進堂さんも独特でおもしろいですよ。書店員としての心意気、気合の入り方が尋常ではなく、それが売り場から伝わってくるんです。店長の諸橋さんは、若いスタッフの方に対して、自分らしい棚をつくるように指導もされているんですよ。
―― うわー、新潟、アツイですね!
「COOKCOOP」と「百年」
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―― 日々、書店営業をしていて、「生活実用書だったら、ここ!」といったおすすめの書店さんはありますか?
安西際立っているのは、渋谷にあるCOOKCOOP(クックコープ)さんですね。料理関連の本しか置いていないっていうのもありますが、あのセレクトはすごいです。レシピ本や食にまつわるエッセイなど、新刊、既刊に関係なく置いていますし、コーヒーやお菓子、ジャムなどの食品やキッチンまわりの生活雑貨も本と一緒に販売しているんですよ。
南イタリア・プーリア州の伝統料理「水と塩」を米沢さんみずから調理。新鮮な野菜とちぎったパンを冷水と塩、オレガノ、オリーブオイルで和えるこの料理、固くなったパンをおいしく食べるために生まれたのだとか。 |
―― 「おいしいもの」をぎゅっと集めた書店さんなんですね。
安西あと、お店の近くにCOOKCOOPさん専用のキッチンスタジオがあるのですが、そこで『イタリア料理の本・2』(米沢亜衣著)の出版記念イベントをしていただきました。アノニマの路線と相性がいい書店さんだなと思っているので、今後も一緒になにか仕掛けていきたいです。
―― 三谷さんのおすすめの書店さんはどこですか?
三谷今、営業の仕事から離れているのですが、個人的に行きたいお店ということであれば、吉祥寺にある百年さんですね。新刊と古本の両方扱っている書店さんで、ここのすごいところは、リトルプレス(小部数の印刷物)に力を入れているところです。
―― リトルプレスって、書店さんでたまにフェアをしているのを見かけますが、常設しているのはめずらしいですね。
三谷リトルプレスに対する情熱はすごいですよー。なかには、よくこれを置くなーと思うものもあるんですけど、百年さんがおすすめするならおもしろい本なんじゃないかなーと思える。それぐらいセンスのある選書をされているんです。リトルプレスを眺めていると、本の流通に関していろいろな側面がみえて、勉強になりますね。
―― アノニマさんの本も置いているのですか?
三谷はい。なかでも、高山なおみさんの本の充実ぶりはすごいです。一軒の書店さんで、こんなにっていうぐらい、たくさん置いてくださっています(笑)。
―― 百年さんのホームページを見たことがあるのですが、哲学とか思想系のイベントもされているんですね。
三谷そうですね。ギャラリーもされていて、テーマも現代思想やサブカルっぽいものから生活系に至るまで、幅広い内容で月に何回か展示やイベントなどを企画されていますね。いい意味でとんがった書店さんだなと思っています。私、ふだんブログとか読まないんですが、百年さんの店長さんのブログはたまに読んでいるんです(笑)。今日の売上は・・・・・・とか、ダイレクトにそういうことを書かれているのがおもしろいんですよ。
番線、取りたいです!
―― 最後に、アノニマさんの今後の展望を聞かせてください。
安西ぶれないなにかを持っているなと読者さんに感じていただけるような本を出し続けていきたいですね。
―― アノニマさんってそこでファンを獲得してきた部分がありますよね。
安西大衆化するよりは、アノニマ的なフィルターを通して、ぶれないものづくりをしていくのが一番いいんじゃないかなと思いますね。書店さんにも、そこの部分を確実に見られているなというのは感じています。
―― 新刊で売上をたてるのは勿論大事ですけど、一年とおして「灯台フェア」をされてきた実績があるから、新刊だけで勝負しなくても、アノニマはいけるぞ! っていうのがあると思うんですよね。
三谷本それぞれに特徴がありますし、うちは既刊にすごい愛情をもって営業していますよ! われわれ、一冊一冊入魂ですよ! つくる側もそうですけど、売る側もかなり入魂してやっておりますよ。
―― なかなかそこまで既刊に愛情を傾けているところって少ないと思いますよ。フェアもひとつの柱ですよね。アノニマさんに行って直接本が買えるっていうのもいいですよね。
三谷火~土曜日まであいていますので、本を買いにアノニマに遊びに来てください!
安西三谷さん、番線(注)取って、アノニマの一階で書店やったらおもしろいんじゃない?
三谷「アノニマ書店」、ぜひやってみたいです! 週替わりでまったくテーマを変える、とか、全国から名店長の「お招き本棚」とか企画したらおもしろそうですよね。もし書店員さんが、諸事情で自分のお店で思うような選書ができないのならば、アノニマがあるじゃないか! とか(笑)。
安西それいいなー。一番やりたいかも(笑)。
―― 流通の面さえクリアできたら、ほんとおもしろそうですよね。アノニマさんの今後の野望は「番線を取りたい!」ということで(笑)。今日はどうもありがとうございました!
入口入ってすぐの「ガレージ」でアノニマ・スタジオの全書籍を販売。奥は、器と生活道具の店「in-kyo」。器などの作家さんの企画展も精力的に行っている。 |
*注:取次が取引のある書店に対して割り当てるコード。出版社が書店に本を送付する際、伝票に番線を記入し取次に搬入すると、その番線の書店に本が届けられる。
