本屋さんと私

 先月、発売となった『家のしごと』
 装丁デザインを手がけてくださった名久井直子さんとの初めての打合せのときに、「イラストをお願いしたい方がひとり思い浮かんでいるのですが、あと2~3日自分の中で寝かせて、もう一度ご連絡してもいいですか」と仰っていただき「もちろんです」とお返事。
 そしてちょうど3日後、「やはりこの方にお願いしたいです」といただいたメールに書かれていたのが、後藤美月さんのお名前でした。

 後藤さんにイラストをお願いすることになった、とミシマ社メンバーに伝えると、仕掛け屋ハセガワが「えーーーー! 後藤さんの絵、超好き~!」とハイテンションに。雑誌や装丁のイラストで見かけて、ずっと気になる存在だったそうです。

 そうして描いてくださった、このイラスト。はみ出る元気さとぬくもりを、本書にもたらしてくださいました。そしてハセガワ情報によると、どうやら絵本のお店で働いていらしたことがあるらしい...。これは一度ゆっくりお話をうかがってみたい! ということで、今回、「本屋さんと私」にご登場いただくこととなったのでした。

 今回の絵のこと、本のこと、仕事のこと...3回にわたってお送りします。

(聞き手:星野友里、長谷川未央、構成補助:衣笠美春)

第190回 こういうかたちが、こうやって並んでいたら可愛いな(後藤美月さん編)

2016.12.19更新

―― まずは、今回の本の話からお伺いしたいと思います。描いてくださった絵の中で、お鍋などは、本文にも出てくるのですが、それ以外にも、短くなった鉛筆やクリップというものもあります。どうしてこれを描こうと思われたのでしょうか?

後藤自分の家の中にあるものをまずスケッチしようと思って、そうすると、やっぱり文房具が多くなりました。短い鉛筆は、山本さんのブログで、短くなった鉛筆を箱のなかにためているのを知って、私もそうしているので、同じだなと思って。私それを骨壺って呼んでいるんですけど。

―― 骨壺(笑)! このイラストは、実際は描かれているというより、切り絵のような感じでつくってあるんですよね。

後藤そうなんです、実物はこんな感じで。



―― うわー、こうなってるんだ。すごい...!! これは下書きがあってその線通りに切っているんですか?

後藤下書きはしないで切っています。落ちている切りかすみたいな紙から、これはこのかたちに見える、と思って貼ってみたり。

―― たとえばやかんだったら、実際には、円くて整っているじゃないですか。それが、この絵ではちょっと歪みますよね。「この歪みがいいな」というのはどうやって決めているんですか?

後藤わからないですね。でも、整い過ぎたかたちを切ってしまった時には、変だなと思ってやめます。私、かたちばっかり気にしていて、何か意味があるとか、そういうのは全然関係ないんです。こういうかたちが、こうやって並んでいたら可愛いなと思って、考えていく感じです。


絵本は一番難しい、総合芸術

―― 名古屋の専門学校を卒業してすぐに、メリーゴーランドさん(四日市市にある絵本の本屋さん)で働き始めたのですか?

後藤そうですね。その前に別の絵本屋さんにも面接に行ったんですけど、「履歴書を持って来なきゃ意味ないでしょ」って言われて。私、なんで本屋で働くのに履歴書がいるんだろうと思って。それで、その前から手伝いに行っていたメリーゴーランドに行ったら、履歴書の話とか何もせずに、「水着審査あるよ」って言われて(笑)。でもなくて。働けることになりました。

―― 働く前から、お手伝いをされていたんですね。

後藤メリーゴーランドの店主が増田というんですけど、私が行っていた専門学校の絵本の授業をしている先生が増田さんの教え子で。そのご縁で学校の合宿に増田さんが教えに来てくださったりして。そこからお店に、イベントの手伝いに行くようになりました。

―― 専門学校には絵本の授業があったのですね。

後藤はい。絵本コースもあったんですけど、私は絵本はやらない、絶対やらないと思っていて。一番難しいと思うんですよ。総合芸術という感じがして。私は自分に中身がないと思っていて、自分から生み出すことはできないから、イラストのほうが合っていると思い込んでやっていた部分があります。なので、イラストレーションコースでした。

―― どうしてメリーゴーランドで働こうと思ったんですか?
 
後藤やっぱり絵を描きたいと思っていたので、絵の近くにいたいと思って。ただ、絵本は全然読んでこなかったですね。メリーゴーランドで働いている人はみんな、本大好きみたいな感じですけど、私は全然読んでこなかった。


すっごい下手なんだけどすっごい上手な絵



―― 全然読んでこられなかったなかで、絵本ってすごいと思うようになったのは、何かきっかけがあるんですか?

後藤小学校の時に、校内読書図画大会みたいなのがあって。テーマになった二冊が、田島征三さんの『しばてん』と、田島征彦さんの『じごくのそうべえ』で。私は絶対に賞がとりたくて、みんなが選ばなそうな『しばてん』にしたら賞がもらえるだろうと思って描きました。


 なんか変な絵だし汚いし、絶対自分にも描けると思って選んだんですけど。全然描けなくて。すごく難しい絵なんだと、その時に思ったんです。
 賞がとりたかったから、居残りで描いていたのですが、幼馴染の子も一緒に残っていました。その子は、すっごい下手なんですけどすっごい上手なんです。うまい絵だけがうまいんじゃないんだなと、その時に何となく感じました。二人とも結局、賞はもらえなかったんですけど。


(つづきます)

   

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後藤美月(ごとう・みづき)

1981年、三重県四日市市生まれ。
名古屋デザイナー学院卒業後、三重県四日市の子どもの本専門店・メリーゴーランドに勤務。2008年7月に上京する。FM802 digmeout・RECOMMEND artist登録
「プロフェッショナル イラストレーター集団 イラストレーターズ通信」会員

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