本屋さんと私


 本当に起こったらいいのに! というわくわくしたお話で、子どもはもちろん、大人も魅了する児童文学作家の岡田淳さん。私(デッチ・國井)ももれなくその一人です。

 2017年2月に出版された、『水の森の秘密』「こそあどの森の物語」シリーズが12巻をもって完成しました。その原画などの展覧会が7月15日から鎌倉文学館にて開催されています。初日は岡田淳さんご本人がオープニングギャラリートークをされました。今回の取材は、岡田さんの物語に惹きつけられたデッチの「ぜひお話を伺いたい」というインタビューのお願いを快く受けてくだり、トーク後にお時間を頂いて実現しました。

 岡田さんの物語は、読んでいるだけでいつの間にか不思議な世界へと連れて行ってくれます。そして、読み返すと自然と心が元気づけられるような気がします。岡田さんはキラキラした目で、好きな本のことや心に置いておきたい大切なことをお話ししてくださいました。全3回のインタビュー、ぜひお楽しみください。

(聞き手・構成:國井沙也香、写真:星野友里)

第197回 図工の先生をやることもお話を書くこともそんなに変わりはない

2017.08.08更新

はじめは漫画家になりたかった

―― どうして小学校の図工の先生になろうと思われたのですか?

岡田図工の先生になるって決めていたわけではないねん。僕ははじめ、漫画家になりたかった。それから、演劇関係の何かをやりたかった。もっと前は科学者になると思ってたくらい。「なりたい」じゃなくて、「なる」と思ってた。漫画家ゆうても、ストーリー漫画ではなくって、一コマの言葉のない漫画で、絵だけでわかるようなね。そういう漫画を描きたかったんだけど。でもすぐにパッと漫画家になって、食べてはいけない。ほんなら学校の先生にでもなろか。と言うたら非常にあれなんですけども(笑)。

 僕ら教育学部のみんなで子どもたちを集めてお絵かき塾みたいなのを作って、けっこうおもしろいなという感じもしてて。大学の先生たちから、小学校の図工の先生になって、それをやってる間に自分の仕事みたいなことを別にやっていって、そっちの道に進む方法もあるよ、と言われたりもした。手塚治虫も、漫画家になりたいという人にそういう勧め方をしててんね。なんか仕事をもって漫画描きなさいと。
 で、小学校の図工の先生になってしばらくしたら、図工の先生という仕事がずいぶん面白い仕事やなということになってきて。

 まあ、今よりもずっとのどかな時代ではあったし、一般的に言って先生が尊敬されている時代。別に尊敬されるのがうれしいってわけでもないけども、敬意をもって親たちが接してくれる、っていうのは、やっぱうれしいよねえ。常に批判的に見られるっていう感じでもなかったから、楽しい時代ではありました。


無理して違う自分にならない

―― 自分も、学校の先生になってみたい気持ちが少しあるのでうかがいたいのですが、小学校の図工の先生をしていて、どういうことが面白かったなって思いましたか?

岡田図工の先生同士が、授業を見学し合ったり、研究会したりして、どういうふうに教えるかなんて話し合う、そういう会があるねんね。そこで、ある人が、「岡田さんは俺らに話すときと子どもに話すときと一緒やなあ」って言ったことがある。「君らはちゃうのん?」「ちゃうで~」言うて。子どもには子ども向けにしゃべってるって言いよんねん。

 僕はどうも、おそらくさっきトークイベントでしゃべってたんと今しゃべるのんがそんなに差ないと思うねん。なんか、みんなおんなじらしい(笑)。なんていうんだろうね、「ざっくばらん」言うたらいいように言い過ぎか。なんか、「分け隔てがない」。あ! これもまたいいように言い過ぎか!(笑) 「いい加減」やなあ、まあ(笑)。

 つまり、無理して違う自分になってるっていうことでなくって、できるような道を選んでたんやないかな、って気はするなあ。だから僕の中ではね、漫画を描くことも、図工の先生やることもお話を書くことも、そんなに変わりはないねん。

―― そうなんですね。

岡田なんかおもしろいものを作ってくっていう、そういう感じ。


大切なのは、自分がどう生きるか


―― 『びりっかすの神さま』が私、好きで、良い面だけではなくて、ほんとうの小学生みたいに描かれるのがすごくいいなあって思って。『二分間の冒険』も『びりっかすの神様』も、小学生が協力して良くなっていく、という感じがあると思うんですけど、それは意識して描かれているんですか?

岡田それは、協力することが大事だから訴えよう、意識しよう、ではなくって、そのときに僕がやっぱりそう思ってたんやね。みんなで力合わせたらなんとかなるって思ってたんやろね。日本はもっと良くなる! とかね(笑)。でも、だんだんあとになるにつれて、そうでない作品が増えてるんとちゃうかなあ。たとえば、『扉のむこうの物語』になったら、あまり協力してないよね。

 チームとしては協力するけれども、だんだん、「個」っていう、自分がどう生きるかみたいな方向へ。だからもしかしたら僕の中では、全体で何とかするっていうことに対する難しさ、みたいなものが強くなってきたかもしれないな、と思いますね。

 みんな力を合わせてなんとかすればいいと、僕は今も、言葉で尋ねられれば、そう答えると思うねん。たとえば原子力発電所の問題とか、みんなでなんとかしたら、原発なしで暮らせるんじゃないの? とかいう方向に一石を投じたいとは思うねん。思うねんけれども、どうも、僕の心の深いところで、それ難しいよなっていう気があんのかなあっていう気はせんでもないな。

―― 自然と自分の中でも変わっていった...?

岡田まあ変わっていったと言えば変わっていったのかもしれない。今、大切なことは自分がどう生きるかみたいなね。そういうふうにシフトしてるような、気がします。


ちょっぴり気になること

―― 岡田さんの作品を読んでいて、ほんとに起こりそうだけど起こらないお話がたくさんあって、読んでて楽しいなって思うんですけど、実際に、本当にそういう不思議な体験をされたことってありますか?

岡田ない(笑)。

―― やっぱり(笑)。

岡田やっぱり(笑)。だから書くんやろうね(笑)

―― お話の中でオオサンショウウオとかヤモリとか、共通してよく出てくる生き物がたくさんあるなあって思うんですけど、それは、なぜですか?

岡田なんでやろね。ま、好きやねんね。オオサンショウウオ、ヤモリ、まあ、爬虫類とか両生類とか、あのへん好きやね。

―― へえ~。

岡田好きって、飼ってるわけじゃないんだけど、なんか、どことなく擬人化しやすいっていう気持ちがあるかなあ。猿なんかのほうがね、よっぽど擬人化しやすそうやろうけど。

―― 岡田さん自身にとって一番好きな作品をひとつ挙げるとしたら、どれですか?


岡田うーーん。それはねえ、困るんだよねえ。たとえば、僕が昨日『ポアンアンのにおい』を読んだとしたら、今一番『ポアンアンのにおい』が好きですって僕は言うやろねえ。この本の好きさとあの本の好きさってやっぱり違うから、一番好きっていうのはねえ......なんか、我が子を並べてどの子が一番好きですか? って聞かれるようなね。そんな感じで(笑)、決めがたいです。

―― はい(笑)。

岡田どれもようできてんねん(笑)

(つづきます)


    

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