じゃり道本屋さん日記

第31回 本屋さんの直納

2017.08.27更新

 こんにちは。ミシマ社の本屋さんのワタナベです。やー、京都の8月、暑いです。私はこの3月から京都に引っ越してきたのですが、その転勤を伝えた方の多くから「京都の夏は暑いよー」と言われたことを思い出しました。とはいえ、私ワタナベの故郷である埼玉県も最高気温的な面ではかなりの数値をたたき出すエリアです。しかし、京都の暑さは、それとまったく質が違うのを実感しています。歴史の重みさながらの「ずっしり感」といいますか、身体全体に染み渡るような暑さがたまりません。

 さて、「ずっしり」といえば、出版営業的には「直納」という言葉が頭に浮かびます。通常、書店への本の納品は、取次(問屋さん)からの配送便、あるいは出版社から宅配便で直送する形でおこなわれます。一方、直納とは、その名のとおり「直接納品」です。出版社の人が自ら、お店へ直接本を配達します。わが社のオフィスにも、直納で使う大きなトートバッグが常備されていて、日々活躍しています。ですが、真夏の直納は体力的には大変です。ただ、直納には、「作った人」が「売る人」に直接手渡しできる良さがあります。あと単純に、スピード感がある。それが大きい。直接手渡す場面で互いに交わす言葉も含めて、まさに本の熱量をまるごとお届けしている感覚があって、心が躍ります。

 そんな直納ですが、「ミシマ社の本屋さん」においては、「直納をする側」から「される側」に立場が変わるのが面白いです。ちょうどこれを書いている今日も、ご近所で器と本を扱う「nowaki」の筒井さんが来店。本がずっしり入った紙袋を片手に直納でやって来てくださいました。なんと温かみのある本たちなのでしょう。手に取ると、嬉しくなります。

 先月には、ホホホ座の山下さんがご来店。新刊『焙煎家案内帖(京都編・一)』を直納してくださいました。珈琲の香りが漂ってくるような佇まいの一冊。

 もちろん店頭にすぐ並べました。山下さんはこうやって本ができるたびに直納に来てくださいます。そして必ず、庭のカメたちの様子も気にしていかれます。もともとここのカメたちは、山下さんが飼っていたのを預かっているのです。(※カメがやってきたときの様子は本連載の第9回をご覧ください)

 ほかにも、出町柳でお店をやっている「風の駅」の太貫さんや、西陣の「マヤルカ古書店」なかむらさんなども、本を作って直納しに来てくださいました。

 これらのお店では、ミシマ社が作った本もお取り扱いしてくださっているので、我々も直納でお邪魔したりします。そうそう、本を作るといえば、ご近所の「誠光社」の堀部さんもまた、お店を営みながら、出版物を作っていらっしゃいますし、大垣書店さんにも出版部門がございます。

というわけで、私が京都にきて、とにかく面白いなあと思ったのは、本を仕入れて売る側の方々が、その一方で本を作る側でもあるという、その融合、その循環です。このミシマ社も、単に出版社としてやっているだけではなく、小さいながらもこの「ミシマ社の本屋さん」を営んでいることが、本作りにもいい影響をもたらしている感覚があります。この場があるから、お客さんに自分たちの作った本を直接手渡しでお届けできて、さらに、近所の馴染みの方々が、それぞれに作った本を直納してくださることが、とっても大きな刺激になっているのです。

本を作って、直接卸して、直接売って、そして直接仕入れて直接売って・・・。それぞれの場面で交わされる会話のひとつひとつが、とても豊かな京都の出版の世界を下支えしているように思えてなりません。

 つまり何が言いたかったかというと、京都は暑く、そして直納が行き交う京都はとっても熱いんだぞ! と、そういうことです。
(渡辺佑一)

※「ミシマ社の本屋さん」は、ミシマ社京都オフィスの1階で毎週金曜日と毎月最終土曜日に営業しています。
●9月の開店日(毎週金曜日)
1日、8日、15日、22日、29日
※9月の土曜営業日は、30日です。
OPEN 13:00 - CLOSE 19:00

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ミシマ社の本屋さん

出版社・ミシマ社が運営する小さな本屋「ミシマ社の本屋さん」。2014年3月まで京都府城陽市で営業しておりましたが、京都市内にて2014年10月3日(金)より営業再開。毎週金曜日、最終土曜日の13:00~19:00の開店です。

京都市左京区川端丸太町下る90-1
京阪神宮丸太町駅から徒歩1分

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