今週のミシマ社

 ミシマ社刊『今日の人生』の勢いもまだまだ止まらない益田ミリさんですが、最新刊『こはる日記』(KADOKAWA)が刊行になりました!
 女子高生の主人公・こはるの日々を綴るコミックエッセイです。

10代をくぐり抜けてきた、すべての人に贈るコミック

中学から高校へ、何気なく過ぎていくこはるの毎日。揺れ動く感情を切り取った1コマ1コマが、大人になりたくない/なりきれない、誰もの胸にしまわれた「あのころ」を揺り起こす。(KADOKAWAホームページより)


 本書がとってもよく、思わず語りたくなってしまったミシマ社メンバーは、「ここの1コマがいい!」という1コマを抜き出して座談会をおこないました。
 抜き出した1コマと直筆コメントとあわせてお届けします。

参加者:ミシマ、ワタナベ、ホシノ、アライ、ハセガワ、トリイ、オカダの7人

ちゃぶ台座談会 『こはる日記』益田ミリ(KADOKAWA)

2017.11.12更新


ワタナベ僕の奥さんは『こはる日記』を読んで、「こんなこと私も考えてたな〜」と言ってましたね。でも主人公のこはるちゃんは女子高生だし、主に女性が読む感じ...?

ミシマ......と思いきやそうではないということを言いたくて、僕はこのコマを選んだんですよ。

 「女性のための本」と思いがちですが、この人には読んでほしい! とまっさきに思い浮かんだのが、光嶋裕介さん(建築家。『これからの建築』の著者)でした。彼はありとあらゆる場所で「見て見て!」とスマホで娘さんの写真を見せてますが、そんな光嶋さんにやっぱり、「これだよ、こんなこと言われんだぜ」と。そんな遠くない娘の姿を先取りして見るのにも、おすすめです。

アライホシノさん、けっこうこれに準じたコマを選ばれてましたよね。姉妹あるあるというか。

ホシノこれですね。

 単身赴任しているお父さんのことを書いている箇所が、本のなかにけっこうありましたよね。こはるちゃんは2人姉妹で私と同じ。わかるというか、やっぱり、姉妹と母親という構成に対して男はお父さんだけっていう家族って、ちょっとお父さんはかわいそうな立場だというのが基本的にあるんじゃないかなという気もしていて。私も「気持ち悪い」までは思ってなかったんですけど、何を話せばいいんだろうっていうのはありましたね。

ハセガワわぁ、そうなんですね!

ホシノ同じ部屋にいて「シーン......」となることが多くって(笑)。父親がつけた巨人戦を一緒に観ながらも会話はなく、当時いた村田っていうすごいデッドボールを受けやすい選手がデッドボールを受けたとき、「村田、またデッドボール受けたね」と話すのが唯一の会話という。

一同(笑)

ホシノ妹はたぶん私よりももっと父親と話してて、このこはるちゃんみたいな気持ちで見てたんじゃないかな。お互い口には出さないけど、暗にやりとりしている空気みたいなものはすごくわかるなと。

アライ私は3人姉妹なんですけど、うちの場合は妹が「お父さんの入ったあとのお湯なんか浮いてるねん!」とかすごい言ってましたね〜。暗にというか、直接的に。

ワタナベええー! そんなんつらすぎる、イヤやなぁ......。
※ワタナベには娘さんがいます

ミシマお父さんの悲哀の話やね。

トリイそんなメインで出てきますっけ? お父さん(笑)。




ワタナベ『こはる日記』には父娘軸もあるんですが男女軸もありまして、そこで私が選んだのがこの1コマ。

 公園でブランコに乗ってたら、車に乗った若いお兄ちゃんにナンパされて逃げるシーンですけれどもね。「汚い目で見られた」という経験が私も最近......

ハセガワえっ、あるんですか。

ワタナベ飲み会の席で、仲の良い書店員の男性と盛り上がって戯れてたんですよね。そうしたら腐女子の方々から、「二人付き合ってんじゃないの?」とじろじろと見られて。ほんと、ちょっとゾワゾワッとして、性的対象として見られるっていうんですかね、そのときのゾワゾワ感ってこんなのかなって......

ミシマ......うん?? それはちょっと性的対象っていうのとは違うんちゃう??

一同(笑)

ワタナベいや違うんですよ、直接的にはたしかに性的な目線ではないんですけれども、汚い視線を感じたっていう。

ミシマ間接的にってことね。直接的にはね、ほんっと怖いよ。

ハセガワえ、経験したんですか? どこで?

ミシマサンフランシスコに行ったとき、着いてすぐにさぁ......(長くなるので割愛いたします)。




ワタナベこの、「マジメに思われたくない」っていうのはどういうことでしょうか、オカダさん。

オカダ私、「マジメだよね」っていろんな人から言われてたので。「マジメ」っていう言葉に含まれる、なんというんでしょうか、あのニュアンスがすごく嫌だったんです。なんかちょっと不真面目なことをしようと試みたりしてました。こはるちゃんみたいにコンビニには行けなかったんですけど......ちょっと飴なめるとかそんな感じで。マジメが考える不真面目なんて大したことなくって、マジメから脱出はしなかったんですけど(笑)。
 今よりももっと、中学、高校のときってこのことを思っていて、まわりに合わせようとしていた自分がいたな、って『こはる日記』を読んで思い出しました。

トリイたいへんだよね、その年齢は......

アライトリイさん、たいへんだったんですか?

トリイいや、僕はそういうこと一切思わなかった。この本に書いてあることの9割は「あ、そうなんだ...」ということで、違う世界のような気分もあったんですよね。でも、このコマはすごいわかる。

 こういう、「同じところもあるんだな」というポイントもあって、興味深かったですね。




アライハセガワさんの見どころもナイスですよね。

ハセガワこはるちゃんの座り方のバリエーションはかなり面白いので注目です。けっこうお家では行儀悪くって、学校と全然違う。そういう細かい微妙なニュアンスが面白かったですね。

アライあひる口をするときは足をピシッと閉じてたり。

ハセガワ内面的なものとしては、「自分もこう思ってた」というのは私もそんなになかったんです。私、昔から「情熱大陸」に出たかったので、普通の思春期になりたくなくって、そういう思春期っぽいこと考えてること自体がやだなって思ってた(笑)。こういうこと考えてたのかもしれないけれど意識してなかったし、ひとりぼっちは嫌だけど一匹狼になりたいって思ってた。グループのごたごたもなかったし(笑)、不思議な感じでした。

ワタナベえーっと、今日欠席している2人(タブチ、イケハタ)の分もありますね。これはタブチ。

トリイ......かわいいね(棒読み)。

ミシマなんやそれ、誰がかわいいんや。

トリイこういうこと書いちゃうタブチくんがね、かわいいなぁ...って。

ワタナベこういう男子いるかもしれないね、こういうこと言う中学くらいの男子。そういうことじゃないんだけど、みたいな。

ホシノ......タブチくんは、もう男子っていう歳じゃないですけどね(笑)。

ワタナベこのイケハタくんのはどうですか。

 見てないふりしながら女子の胸を見る、というコマですね。

ハセガワそれで「あー、バレてたのかぁ...」って書くのちょっとなんか、コワイです...。

ワタナベイケハタくんはこれ、自分が見られてたってこと??

ハセガワ違う違う、自分が見てたってことです、それで「あのとき見てたのバレてたのか〜」って言ってるっていう。

ワタナベイケハタくんが見てたってことね、なるほどなるほど。

アライこれ、自分が見てたのに、なんでそれを気づかれて「女の人ってコワイ」と責任転嫁をしているのか全然意味がわからない......。

ハセガワわー、ホントだ!(笑)

ホシノあれ、ミッキー(アライ)のって出てます?

アライあー、私のですか、あのー私はですね。

 これなんですけど。昔から「ナメられたくない」という気持ちがすごく強かったので...でも、一方でものすごくこのお姉ちゃんの気持ちもわかるというか......。

ホシノ(笑)

ワタナベミッキーはヤンキーではないんだよね?

アライいや、全然そんなことないです!(笑)でもさっきオカダさんの「マジメって言われたくない」の話を聞いてて思ったんですけど、「マジメだよね」って、その言葉にちょっとバカにしている感じが含まれてるじゃないですか。

オカダ上からこられている感じですよね。

アライその上からこられてる感に「なんやねん」ってずっと思ってたんですよね。「まぁ、若い女の子だからね〜」って言われたりしたことがけっこうあったりして、あー、対等に扱ってはくれないんだなっていう悔しさっていうか...。




ミシマこうして1コマずつあげてみて、どこかに自分が入っていけるコマが必ずあるな〜というように強く思いましたね。それがすごい。男女性別問わず読める名作だなと。全部この通りじゃないんだけど、10代にかえることができる一冊。

ハセガワこんなにみんな、10代のとき、考えてました? こんなに考えててすごいなーっていうのが、私のこはるちゃんに対する思いですね...。

アライ一個一個は全然考えてなかったですね、私も。でも、瞬間的には考えてたのかもなって。

ホシノそうだよね。瞬間的に、サラッと頭の片隅では考えてたけど、そこをしっかり掘ってるという感じ。

ミシマそれが全部書き留められて、こっちの記憶を揺さぶってくる。そういう意味でも名作ですよね。

アライこのあたりの時期に思ってたことって、今も通じている部分が多かったりしますよね。

ホシノほんと、ミッキーの「ナメられたくない」とか今も同じこと言ってるもんね(笑)。タブチくんとかトリイさんにしても、1コマ選ぶとその人のことがよくわかってすごく面白かった〜。


 * * * *

 ......ということで、1コマを通してその人が見えてくる!? という、大充実だった座談会でした。『こはる日記』は一人で読んでも多人数で読んでも楽しい。あなたの心のどこかにきっと響きます!

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2006年創業、「一冊入魂」をモットーに本作りを行う小さな総合出版社です。ただいま東京・自由が丘と、京都の2拠点で活動中。今週の出来事や刊行書籍のお話をお届けします。

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