ローカルメディアのはなし。

第13回 誰も見ない「続きはWEBで!」

2017.03.29更新

 1週間ほど前、『ジモコロ』というウェブマガジンの編集長の徳谷柿次郎くんと、発酵デザイナーの小倉ヒラクという超ナイスな友だちとともに、山形と秋田を旅してきました。
 きっかけは新宿での飲み会。ヒラクおすすめの居酒屋で美味しい純米酒飲みながら盛り上がり、「今度みんなで旅しようぜ」と忙しいおじさんたちがカレンダーとにらめっこしながら、「ここの日程だっタラ」「この打ち合わせを移動できレバ」と、その場でいきおい、日程を決めちゃったという、タラレバにノリを加えたポジティブおじさん旅だったんですが、これがずいぶん楽しくて困りました。

 しかも、偶然そのタイミングでローカルメディアについて特集を組みたいという雑誌『ソトコト』の取材オファーがあったもんだから、それならばもう一緒にしてしまえと、旅の最中に秋田でソトコト用に柿次郎くんと僕の対談までやっちゃうという、ローカルメディアカオス状態。
 その対談の内容はぜひ4月5日発売の雑誌『ソトコト』を読んでもらえればと思うのですが、そういえば、その対談で語り忘れてたぞと思うことが、前回の「メディアの尺」にかかわる話だったので、そのことをすこし書いておこうと思います。


 そもそも柿次郎くん(35歳)もヒラク(34歳)も、僕(43歳)の一世代下なんですが、僕と彼らとの間の決定的な差は、やっぱりウェブメディアに対するリテラシーだと思うわけです。
 ブログという言葉がいったい何を意味するのかすらよくわからなかった10年ほど前、僕のような紙媒体を作る編集者やライターは、インターネットマガジンの可能性に無闇にワクワクしたのですが、そのとき僕たちに見えていた可能性というのは、残念ながら単なる「尺」でしかありませんでした。つまりは印刷費など、かかる経費を理由にこれまで抑圧されてきた「尺」から、ついに解放されるんじゃないかとぬか喜びしたわけです。

 このウェブメディアの尺についてもう少し具体的に説明すると、たとえば柿次郎くん編集の『ジモコロ』の1コンテンツの文字数は平均してだいたい1万字くらい。それも状況説明をできるだけ端折るべく対話形式にしたり、さらに写真やイラストを随所に挟むことで、小気味よいリズムを作るなど、なんとか飽きさせないようにと工夫を重ねて、ようやく読める文字数です。
 これはおそらく文字量としては多いほうで、『ほぼ日刊イトイ新聞』などは、本文の平均が5000字くらいになるんじゃないでしょうか?
 5000字といえば、14文字×36行×5段組みが基本の雑誌「AERA」で換算すると(なんでAERA?)、見開き1つ分。ただ、さすがに文字だけでびっしり埋まることはないから、せいぜい見開き2つというところでしょうか。ひとつのウェブ記事を無理なく読んでもらえる文字量は、せいぜいこれくらいなわけです。
 ちなみに僕のこの連載はまったく文字だけなので、できるだけ2000字超えないようにと思いながら書いていたりします。つまり、ウェブで文字を読ませるというのは、ある意味、紙以上に難しい。


 いま思えば顔が真っ赤になるほど恥ずかしい「続きはWEBで!」が、かつて無闇に多用されたのは、紙媒体の編集者のウェブメディアに対する無闇な期待以外のなにものでもなく、それはつまりウェブメディアに対するリテラシーのなさだったのだと思います。
 取材の裏側をとか、載せきれなかったエピソードをとか、そんな付録みたいなものを餌にウェブに誘導されても、これハッキリ言うけど、ほぼ誰も見ない。というかそれはやっぱり、どこか無自覚にウェブメディアを舐めていたのかもしれません。

 紙は紙の尺のなかに、ウェブはウェブの尺のなかに、伝えたいことを収めきらなきゃいけないという当たり前の事実どころか、印刷コストに阻まれることなく無限に文字を流し込めるウェブメディアは、尺に対する自制心が紙媒体以上に必要であり、柿次郎くんのようなウェブメディアの編集者が毎回そこと必死に向き合っていることをきちんと理解しなければ、またこれ「グローバル」じゃないけど、おじさんの大好物な「メディアミックス」なる言葉に翻弄されて、いつまた「続きはWEBで!」をやっちゃうかわからない。あ〜おそろしい。


 いまやいろんな地方でさまざまなウェブメディアが生まれ、各地方自治体のみなさんもウェブを活用したPR に躍起になっています。
 さすがに5年前と比べれば、ウェブ=コストが安い、という安易な考えで、ことを進める人は少なくなってきましたが、それでもウェブメディアについて、過剰な幻想を抱いている人も多いように思います。
 そこはきちんと考えをあらためなきゃですよといったところで、続きはWEBで......じゃなかった、また来週。

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藤本智士(ふじもと・さとし)

1974年兵庫県生まれ。編集者。有限会社りす代表。雑誌『Re:S』編集長を経て、秋田県発行フリーマガジン『のんびり』、webマガジン『なんも大学』の編集長に。編集・原稿執筆した『ニッポンの嵐』ほか、手がけた書籍多数。自著に『ほんとうのニッポンに出会う旅』(リトルモア)。編著として『池田修三木版画集 センチメンタルの青い旗』(ナナロク社)、近著にイラストレーターの福田利之氏との共著『いまからノート』(青幻舎)など。

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