ローカルメディアのはなし。

第1回 究極のローカルメディアとは?!

2017.01.04更新

 はじめまして藤本智士です。
 兵庫県の西宮という町に住みながら、フリーの編集者として日本のさまざまな地方のお仕事をさせていただいたりしているのですが、ここにきてなんだかまた一層自分の仕事がおもしろくなってきたなあと感じています。
 それはシンプルに言えば「未来を感じる」ってこと。ローカルなメディアには未来があって楽しい! そんなことをミシマガジンで語っていければいいなあと思っています。

 ということでまずは「ローカルメディア」という言葉に対する、僕なりのスタンスを書いておきます。
 ローカル=地方、地方=田舎、すなわち都会ではない日本の地方で発行されている雑誌やら新聞やらウェブメディアやら放送やら、というのが、この言葉に対してみなさんが自然に抱くイメージであり、実際そういうことを指す言葉だと思うのですが、たとえば「東京ローカル」なんて言葉もあるように、ローカルを局所だと捉えれば、僕にとって究極のローカルメディアは自分自身であり、あなたです。

 おっと、ちょっと飛びすぎましたか?

 そうですよね。自分がメディアだと言ってももちろん、耳なし芳一みたく身体中に文字を書き連ねるわけではなく、あなた自身がどんな服を着て、何を身につけ、どんなものを食べ、誰と付き合い、何を話し、どんな行動をとるか、という一挙手一投足が、あなた自身からの発信であり、それはもはやあなた自身がメディアであるということです。
 そんなあなたに他人は、共感したり、感動したり、よいもわるいも影響を受けたりします。それは意図せずともです。
 偶然町で見かけたあの人の服素敵だったなあというのも、電車の中で騒ぐ子どもに毅然と注意するおじさんかっこよかったなあと思うのも、短くも胸に残るコラムを読んで小さく生き方が変わるのと同じことなんです。

 そうやってみなさん自身がメディアなのだと認識してくれたその先に、それぞれがもっと意図的に買い物をし、意図的に食べるものを選び、意図的に考えを口に出す世の中が生まれるんじゃないか、と僕は期待しています。
 そんな思いから、全国さまざまな地方で編集ワークショップを開いたりもする僕は、この「最小単位にして最強のローカルメディアは自分である」ということをいつも冒頭で伝えるようにしています。そうやって「メディア」そのものを、一方的に発信されるコントロール不可能な媒体(メディア)ではなく、自分がコントロールできるものに引き寄せることが、これからの世の中においてとても大切だと感じています。

 実際、「レガシーメディア」という、本来時代遅れの記憶媒体(MO、フロッピーディスクなど)のことを指していた言葉が、いまではテレビ、新聞、雑誌、ラジオなどのことを指すようになっています。
 ネットメディアに比べてスピードが遅く、また一方通行であるこれらのメディアは、もはや若者たちだけでなく、現在42歳の僕のようなおじさんにとっても、ある種のレガシー感を感じてしまうほどです。
 けれど、それらのメディアは僕にとっていまもなおとても魅力的だし、可能性も未来も十分にあると思います。だから僕がここで言いたいのは、なんだか最近のテレビはおもしろくない的な乱暴な意見ではなくて(実際すごくおもしろいものがたくさん)、いま「ローカルメディア」を考えるということは、あらゆるメディアの可能性をもう一回ゼロから考えるに等しくて、それはとてもワクワクする! ということです。

 地方=田舎のよいところは、芸能界という特殊な業界と距離が遠いことです。
 僕にとってのレガシーメディアはスピードのような話ではなくて、いつまでたっても芸能界とつながって仕事することをステイタスに思う特権的メディアのことで、それこそ僕にとっては時代遅れでしかありません。
 黒柳徹子さんの自伝的ドラマ「トットてれび」(NHK)を見て感じたような、テレビ草創期のワクワクは、いま田舎にこそあります。そのことを声を大にして言うのがこの連載の骨子のような気が、いましてきました。

 地方というより僕は胸を張って田舎と言うけれど、15年以上関西という田舎を拠点に編集者という仕事をさせていただいた僕は、いま「ローカルメディア」という言葉を借りて、小さな小船で大海に出た心地です。
 しかし小船は小船でも最新のMAPもGPSも完備だし、自然エネルギーを動力に安心安全なハイテク小船。だからみんなも勇気をもってこの大海に出ればいいじゃん。って思うのです。
 次回からはもう少し具体的な事例とともにお話ししたいと思います。

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藤本智士(ふじもと・さとし)

1974年兵庫県生まれ。編集者。有限会社りす代表。雑誌『Re:S』編集長を経て、秋田県発行フリーマガジン『のんびり』、webマガジン『なんも大学』の編集長に。編集・原稿執筆した『ニッポンの嵐』ほか、手がけた書籍多数。自著に『ほんとうのニッポンに出会う旅』(リトルモア)。編著として『池田修三木版画集 センチメンタルの青い旗』(ナナロク社)、近著にイラストレーターの福田利之氏との共著『いまからノート』(青幻舎)など。

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