ローカルメディアのはなし。

第3回 加入率100%超えってなんだ?! 長野県諏訪市LCVのすごさ

2017.01.18更新

 ちょっとした閃きから秋田のケーブルテレビ局、CNAさんと番組づくりをはじめることになった僕は、そのおもしろさからケーブルテレビという存在自体にどんどんと興味が湧いてきました。
 アンテナから電波を受信して放送を見る地上波テレビに対して、電線から各建物に物理的に繋げられたケーブルを介して放送をお届けするケーブルテレビは、いたるところにWi-Fiが飛びまくっている現在にあっては、それこそレガシー感たっぷり。でも僕はかえってそこに魅力を感じるのです。

 1955年、地上波テレビ放送が開始されたわずか2年後にはじまったケーブルテレビは、当初うまく地上波が受信できなかった地域のための再放送からはじまり、全国に広がっていったそうです。
 その後、インターネットや電話などの通信サービスの提供をスタートさせ、いまではケーブル(有線)でなく無線の通信サービスも充実。ちなみに僕も地元のケーブルテレビ局と契約していますが、それも放送ではなくて、インターネット接続契約。そういえば、うちのプロバイダもケーブルテレビだって方も多いんじゃないでしょうか?

 そんなケーブルテレビは現在日本各地に350以上もあるといいます。そのなかでも僕が一番興味を持っているのが、長野県諏訪市にあるLCVというケーブルテレビ局。
 そもそも僕がLCVさんの存在を知ったのは今年の春。7年に一度の諏訪の大祭、御柱祭を、念願叶って見に行ったときのことでした。ふらり入った飲食店でも、宿泊先のドミトリーでも、友だちのお家でも、どこに行ってもテレビのチャンネルがLCVに合わせられていて、もうこれは偶然ってレベルじゃないぞと思い、知り合いに聞いてみたところ「(御柱祭を)生中継しているのはLCVだけだから」との答え。

 そしてさらに「LCV放送エリアのケーブルテレビ加入率が100%を超えているんだ」とか言うから、いよいよ謎!
 100%を超えるって、いったいどういうこと? とその真偽を確かめたくなった僕は、それから約半年が経った年の瀬に、手土産代りの番組企画書を持って、単身、LCV さんに乗り込んだのでした。


 お会いいただいたのは、LCV株式会社取締役のIさんと放送部長のSさんのお二人。
 早速「加入率100%超えっていうのは本当なんですか?」と聞いてみたところ「たしかに少し前はそうでした」と即答。実はLCV さんの放送エリア内には、蓼科などの別荘地も多く、別荘でケーブルテレビ契約をされている方は世帯数に入らないので、契約数が世帯数を超え、加入率が100%を超えるという結果になっていた時期があったとのこと。
 なるほどー! 納得! しかしそれもこれも、やはり御柱祭の存在がとても大きいのだそうです。

 7年に一度の大祭にかける地元諏訪のみなさんの熱量は凄まじく、最初から最後までその様をしっかり中継するLCV さんに地元のみなさんは絶大な信頼をおいているようです。
 実際、LCVさんならばと、いい場所を確保してくれたり、飲めよ食えよと手厚く歓迎してくださる地域の方もとても多いのだそう。
 そして何より僕はその視聴率を聞いて、腰抜かしそうになりました。
 LCVさんの御柱祭中継の視聴率、いくつだと思います? なんと2016年の御柱祭、12日間の平均視聴率が81%ですよ! なんじゃそれ!!! 81%って、NHK紅白歌合戦の過去最高視聴率とおんなじ!  しかも紅白の場合はこれ1963年の話ですからね。現在とはまったく状況が違う。
 で、さらに7年前の2009年の御柱祭の視聴率にいたっては89.8%だったっていうからもうLCVさんすごすぎでしょ?!

 取締役のIさん曰く、当時この驚愕の視聴率について取り上げようとした東京のテレビ局の方がいたんだけれど、あまりに信じがたい数字に、放送直前になって「そんな数字本当なわけがないから、もう一回聞いてみろと上司に言われました」と再び電話があって、「いや、この数字は自社調べとかではなく、きちんとビデオリサーチさんが出してくれた数字です」と回答したのに、実際の放映を見たら、それでもなお信じられなかったのか、テロップにカッコ書きで<LCV調べ>と書かれていたとのこと。あ〜東京の放送局ダサい!


 こういう話一つとっても、いまや都会から田舎が学ぶ時代ではないことがよくわかりますよね。
 東京を中心とした巨大なメディアをお手本にローカルメディアが学ばせていただきますなんて時代はもう終わったんじゃないかなあと、つくづく僕は思うのです。だって、この平成の時代に東京のどこのメディアが視聴率80%超えられます? いやあ〜、ほんま夢あるなあ〜ケーブルテレビ。
 ということで、また来週〜。

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藤本智士(ふじもと・さとし)

1974年兵庫県生まれ。編集者。有限会社りす代表。雑誌『Re:S』編集長を経て、秋田県発行フリーマガジン『のんびり』、webマガジン『なんも大学』の編集長に。編集・原稿執筆した『ニッポンの嵐』ほか、手がけた書籍多数。自著に『ほんとうのニッポンに出会う旅』(リトルモア)。編著として『池田修三木版画集 センチメンタルの青い旗』(ナナロク社)、近著にイラストレーターの福田利之氏との共著『いまからノート』(青幻舎)など。

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