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『サラバ!(上)』西加奈子(小学館)

 ミシマ社では、毎年、年末に行っているひとつの恒例イベントがあります。
 それは、紀伊國屋書店梅田本店の書店員・百々典孝さんと開催する「百々ナイト」。参加者の皆さんに本について語っていただいたり、百々さんが今年いちばん面白かった本を選ぶ「百々大賞」を発表したり、本好きにはたまらんイベントなのです。

 そしてそんな去る2014年の「百々大賞」を受賞されたのは、のちに直木賞も受賞された、西加奈子さんの『サラバ!』です(百々大賞のほうが先だったんですけど、ね...!)。
 イベントの様子はこちらをぜひご覧ください。
 前回のマイケル・ブースさんに直接賞状をお渡しできたことで味をしめた私たちは、調子に乗り、西さんが関西にいらっしゃる際に、勝手に授賞式を行ってきました。

(文・写真:新居未希)

第45回 西加奈子さん 百々大賞授賞式!

2015.06.01更新

百々さんが参加できなかったため、盟友である紀伊國屋書店グランフロント大阪店の星店長が代打。


君はすごく幸せな作品なんだよ、って言いたい

―― この「百々大賞」は、毎年、年末に紀伊国屋書店梅田本店の百々典孝さんと開催している「百々ナイト」というイベント内で発表している賞です。昨年末の12月にも行い、西さんの『サラバ!』が受賞となりました。

西とにかく光栄です。本当に、百々さんをはじめとするたくさんの書店員さん、読者の方一人ひとりがいらっしゃらなかったら、『サラバ!』という作品は成り立たないんです。『サラバ!』だけじゃなくて、どの作品も、読んでくださる方がいてこその作品なので。まず、こんな上下巻という長いものを読んでくださったというだけで嬉しいのに、素敵な賞までいただいて、『サラバ!』って、私って幸せもんやなって思います。君はすごく幸せな作品なんだよって、『サラバ!』に言いたいです。

―― それだけのすごい作品を、とにかく書いてくださったことに「ありがとうございます」という言葉しかなくて。読めたことの嬉しさを感じるような本でした。
 ふだん、プロットなしで作品を書かれるとおっしゃっておられますが、この作品に関してはいかがですか?

西そうですね、一緒です。プロット書かずに、最後まで書きました。なんとなーく、言語が異なる男の子の友情の話にしよう、とか、救いのある話にしよう、長いものにしよう、というのは決めていました。けれどそれ以外は決めずに、自分の10年のキャリアを信じて書こう、と思って。
 あとは、やっぱり同時代にたくさんの素晴らしい作家がいるということが大きかったです。同時代の作家が、それぞれがそれぞれの思っていること、真実を書いてくれているから、役割分担というと言葉が違うんですが、私は私の好きなものを全力で書けるんですね。自分が日本で唯一の作家やったら、絶対書けなかったわけやし......。それが『サラバ!』で最後、ナチュラルに出てきていると思います。思い入れがありますね。


10年分を、まるごと褒めてもらっているような気持ち

―― ここからは、編集をご担当された石川さんにもご登場いただければと思います。素晴らしい本を、本当にありがとうございます、という声しかないです。

石川僕も本当に、編集者冥利につきるというか......作家としての10周年として、西さんに「長いものを書きたい」と2010年の冬ごろにおっしゃっていただいて。それを心待ちに、日々過ごしていたんですね。本当にすごいものを書いていただいたなという言葉しかないですね。感無量です。

西石川さんに読んでほしいというのが、まず書き始めるときの思いとしてあった本なんです。「長いものを書きます」と言ったときに、受け止めてくださるのは石川さんやな、という思いがありました。本当に一緒に走ってくださった感じがあるから、嬉しいです。ほかのどの作品でどの賞をいただいても嬉しいんやけど、やっぱりこの『サラバ!』で、石川さんと一緒に、こんなに評価していただいたっていうのは、10年分をまるごと褒めてもらっているような気持ちになるので......ほんと良かったです。

石川百々さんが、「百々大賞」のときに触れてくださってましたが、プルーフに書いたことは本当に偽りなく......

百々西加奈子さんのデビュー作『さくら』を担当した、小学館の石川さんという方がこの『サラバ!』の編集担当なんですね。この石川さんはすごくヘンで面白く、なおかつ情熱があって敏腕。『世界の中心で、愛をさけぶ』や『のぼうの城』など、そうそうたる作品を担当されている方なんですよ。

 そんな石川さんが、「傑作です、間違いありません。編集者をこのまま続けていてもこれ以上の作品に出会える気はまったくしません。それぐらいものすごい作品です」と、書店員に渡すプルーフ(校正刷りを冊子にしたもの)にコメントしていたんですね。普通は、特定の作家に対して編集者はこんなことは書きません。ほかにも自分が担当している作家はたくさんいるし、その人たちの耳に入るといい印象はないですよね。でも書いちゃう、というぐらいの心意気だったんです。僕はこれを読んで若干引きました(笑)。石川さんがここまで言うと逆に読めないな、と。だからこそ、最初はマイナスイメージからのスタートだったんです。だけどすごかった。

(――2014年 今年の一冊! 百々ナイト編

西やばいよな、あれ。

石川いや、もう本当に(笑)。ほかの作家さんにもだし、西さんがこれから書かれる作品に対しても「これを越えられないと言っているのか」という、危険な言葉なんですけど......でも本当に、僕自身も一度空っぽになってしまうような、怖くもあり、まだ整理もつかないような、そんな作品なんですね。そういう思いをさせてくれる本に、出会えたというと変ですが、担当をさせてもらえたというのはなかなか得難いものだなと思っています。

西うれしいなあ。

石川僕のこの熱の入りようで、逆に読むことをためらう人も出てきちゃったんだな......というのが、百々さんのコメントではじめてわかりました。やっと気づいた(笑)。

西でも本当に、二人で全力でした。どうしよう、とにかく姑息なことせずに真っ向勝負でいこう、読んでくださいとにかく!というのを伝えようとして。だからそうやってできた本が、こうして素敵な賞に選んでいただいて、とっても嬉しいです。

―― こちらこそ、本当に素敵な本を、ありがとうございました! これからも作品を楽しみにしています。

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