ミルコの六本木日記

第7回 毛のない生活 1

「100%、脱毛をきたします」
と、説明を受けていたとおり、私のあたまは脱毛をきたした。
抗がん剤が、私は怖かった。
なんとか逃げようと考えていた。
あらゆる代替療法の本を読み、お酒、お肉、乳製品・・・ガンの栄養になりそうなもの(=私の好きなもの)をいっさいやめて、海藻類を多く摂っ た。が、半年以上努力を続けた甲斐なく、けっきょく抗がん剤治療を受けることになったし、脱毛もきたした。きたしたくなかったから努力していたのに、効果 がなかったと泣いた。
 
まさか自分の人生に、坊主になる事態が起ころうとは、予測していなかった。
起きてマクラが髪の毛だらけで真っ黒だったあの朝のことは、生涯忘れないだろう。
目に焼きついて離れないマクラのようす以外、髪が抜け始めた頃のことを細かく思い出せないのは、いま思えば、辛かったからだろうと思う。 
抗がん剤を投与して2週間で脱毛は始まり、2週間をかけ髪はすべて抜け落ちた。その間は、悲しく、そして頭皮の痛みが続いた。

抗がん剤は共倒れ戦法である。
いったんあらゆる細胞を打ちのめすが、そのうち悪い細胞は倒れたまま、良い細胞のみ、必ず立ち上がってくる。それを、待つ。
すぐに結果の出ないとこが、仕事に似ている。
闘病も自分の底力を信じて、あきらめないことが肝心なのだ。

それなりに憂鬱なこともあるし、毎日寒い。
なのに、このところ、朝目覚めるといつも、すがすがしい。
わけがわからない。
わけがわからないが、どうやら私は、体本来の力を取り戻しているようだ。
そんな前向きな新年の気持ちで、節分を迎える。

お便りはこちら

プロフィール

山口ミルコ(やまぐち・みるこ)

プロデューサー、編集者として出版社で20年、現在はフリーで芸能、文芸のさまざまな企画にかかわっている。趣味は楽器演奏。「ジャズジャパン」、フリーペーパー「BIGBAND!」、富士通テンの音楽情報サイトKOBE jazz jp などにエッセイを書いている。

http://kobejazz.jp/

バックナンバー