ミシマ社の話

「しごとのわ」始動に際しーー編集チームとして

2017.02.11更新

 今年初の本コーナー。遅くなりましたが、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 というわけで発刊後のご報告となりましたが、「しごとのわ」という新レーベルをこの一月にインプレスさんとともに立ち上げました。
 企画・編集を100%ミシマ社がおこない、営業・流通をインプレスさんが担当する。こういう役割分担で、このレーベルを運用してまいります。

 創刊の二冊は、こちら。

 小林奈穂子さん著『生きる場所を、もう一度選ぶ〜移住した23人の選択』
 神吉直人さん著『小さな会社でぼくは育つ』


 この二冊の佇まいから想像されました通り、「しごとのわ」はビジネス書を中心としたレーベルです。ただし、大型書店のビジネス書コーナーでよく見かける本たちと、どこかちょっと違う装いを、雰囲気を醸し出したい。そんなふうに思っています。
 ミシマ社の本をこれまで読んでくださっている方々は、「ああ、ミシマ社のビジネス書がやってきたことでしょ」と思われたかもしれません。そうです、その通りです。
 たとえば、この10年の間、ミシマ社が手掛けたビジネス・仕事本としては、平川克美さんの『小商いのすすめ』、西村佳哲さんの『いま、地方で生きるということ』を筆頭に、金井壽宏先生の『やる気!攻略本』(神吉さんの『小さな会社で〜』はこの文脈に位置付けられます)、藤井大輔さん『逃げない・めげない カイシャ道』、ミシマ社編『仕事のお守り』などがあります。
 いずれも、仕事を生活の延長線上にとらえ、点としての仕事を扱うようなことはありません。ましてや、ある仕事の一部のみ(お金儲けとか)を取り出し、その生産性・効率性を高めるといったこともない。ビジネス書といっても、かぎりなく生活実感に近いところに仕事を位置づけ、そこから何かを考える、新しい視座を得る、ということをめざしてきました。
 さらに、ミシマ社の雑誌『ちゃぶ台』を創刊(2015年10月)してからは、「移住」というテーマが、このミシマ社的仕事文脈に加わりました(『生きる場所を、もう一度選ぶ』は、まさに対をなします)。

 新レーベル「しごとのわ」では、こうしたミシマ社的仕事文脈を反映した企画を中心に、ビジネス書コーナーを盛り上げていきたい。そう意気込んでおります。

 ちなみに、今回、コンセプトシートというのをつくりました。

本の中に挟み込んでいるのですが、早速読者の方から、嬉しいお言葉を頂戴しました。


このシートに、「しごとのわ」のエッセンスを詰めたつもりです。


しごとのわ

仕事を語るとき、大切にしたいもの。
点ではなく、輪であるか、どうか。 たとえどれほど小さな輪であっても、点ではなく、輪でありたい。
そのちいさな「わ」の中を塗りつぶさんばかりに、思いをこめて動きつづける。 すると、あるとき、こんなふうになっているかもしれない。

ちいさな「わ」が点みたいになって、その周りにちょっと大きめの輪ができている。 もちろん、ふたつの輪は移動も自由。
大きいほうの輪のなかを、ちいさな輪が動いたり、回転したり。 そうしているうちにまた―
もっと大きな輪ができたりして。

もしかすると、反対かな。 先に大きな輪があって、そのなかで人びとが動いている。
かかわりあいの輪、生活の調和、・・・そうした輪、話、和 わ!
その「わ」が充実していると、自然と内側に、 ちいさな円の輪郭がくっくり浮かんでくるんだろう。

どっちから始めたっていい。点みたいな円からでも、大きな輪からでも。 大切なことは、点にしないこと。 生活や周りと、過去と未来と、わたしとあなたとを切り離さないこと。 どっちから始めても、仕事を通じて、話が何重にもなって充実し、成熟していくこと。 こうした「わ」を、「しごとのわ」と呼ぶことにしよう。


           *

 ところでなぜインプレスさんと組んだのですか?
 このひと月ほど、よく尋ねられました。ごもっともな質問です。
 たしかに、「ミシマ社」本だけ見ていては、これまでのミシマ社の出版活動の流れにないように感じられる面もあるはずですので。

 ひとつの選択が会社の行方を左右する。
 何かを選びということには、常に、その可能性と危険性がつきまといます。とりわけミシマ社のような小さな会社の場合、そうであるのは間違いありません。たとえば、これまで書店直取引としてのミシマ社のことを応援してくださっていた方が、インプレスさん営業という取次経由で書籍が流通することに、違和感あるいは反感を覚える可能性だってあります。
それを承知のうえで、なぜ、一緒に新レーベルを立ち上げることにしたのか?

 ひとつは、インプレスさんが、とても熱心に声をかけてくださったというのがあります。ミシマ社の本が好きで一緒に出版活動をしたい。現場の方のみならず、営業の方々、役員の方々までそうおっしゃってくださいました。
 率直に申して、心揺さぶられました。
 そして、仕事をする同じ人間として、とても頭の下がる思いがしたのです。
 こういう方々と一緒に仕事をさせていただくことは、むしろ、私たちにとって、大きな学びになるのではないか。とくに、ミシマ社は若いメンバーが多いので、ちょっとしたやりとりひとつが教科書のようなありがたい時間になっていくにちがいない。そんなふうに思えたことがひとつあります。

 もうひとつは、編集チームとして、もう一段上をめざしたいという思いがあります。
 実は、私ひとりしかいない創業期から、細々と編プロ仕事を続けてきました。
 制作だけを請け負うこともあれば、企画から手伝わせていただくこともありました。なかには、『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』のように、ヒットした本もあります。
 このように他社の方々と組むことによって、この間、編集の技術がどれほど磨かれてきたか、本当に、はかり知れません。それがミシマ社から出る本に生かされ、翻って、ミシマ社刊でつかんだ経験値が他社本で生かされる。こうした循環が、ミシマ社の出版活動の編集面であるのは確かです。この循環こそ、私たちの編集力の源泉である。そう言ってもいいかもしれません。
 ですので、インプレスさんからのお話は、編集チームとして、自分たちを高める得がたい機会にほかならなかったのです。

 もちろん、理由はほかにもさまざま挙げられます。先ほどの流通面のちがいでいえば、ビジネス書という種類の本にとっては、取次経由のほうが、「より生きる」可能性だって考えられます(たとえば駅ナカの書店さんにミシマ社本は置かれることはないのですが、それはビジネス書にとっては大きな機会ロスといえるかもしれず)。
 いつだって、「選んだ理由」はひとつではありません。
 ただ、なによりも、面白くなっていきそう! と思えたことが一番です。
 そして、ミシマ社が感じる「おもしろい」が、どういう形であれ、広がり、多くの方々に喜んでもらえるのであれば、積極的にやっていくほうがいいだろうし、やっていきたい。ほがらかに、にこやかに、こう考えています。

 ぜひ、「しごとのわ」を、ミシマ社の本と同様に、応援いただけましたら幸いです。
 「一冊入魂」。ビジネス書のコーナーでもお会いできるのを楽しみにしております。


* 来月には、「しごとのわ」レーベルで、こんな新刊が出ます! 乞うご期待。

川上浩司さん著 『ごめんなさい、
もしあなたがちょっとでも
行き詰まりを感じているなら、
不便をとり入れてみてはどうですか?
〜不便益という発想』

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三島邦弘(みしま・くにひろ)

1975年京都生まれ。1999年大学卒業後、PHP研究所に入社。単行本の編集者となる。2003年退社後、東欧などを旅する。同年10月、別の出版社で編集活動を再開。2006年10月株式会社ミシマ社を単身設立。「原点回帰」の出版社を標榜し、編集・営業・仕掛け屋などチームの枠を超え、「出版は全身運動である」という思いのもと、日々、奔走中。
「ミシマ社のblog」もがんばって書いてます。

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