第7回 2009年10月 今月の一冊
三島今月10月に読んだベスト1の本ということでやりたいと思います。ではいきましょうか。じゃんけんほい。
自分は健全ですごく真っ当に暮らしていると思っていました。
『しがみつかない生き方』(香山リカ、幻冬舎新書) |
窪田はい。では、僕からですね。また、よりによってすごくいい本のときに一番になってしまいましたね。
三島何を言ってるんですか。
大越今日は髪型がパイナップルみたいだな。
窪田いやいや。関係ないじゃないですか。
ということで、今月のベスト1は『しがみつかない生き方』(香山リカ、幻冬舎新書)です。
一同おお〜。
窪田知ってますか? 皆さん。
三島『しがみつかない書き方』なら知ってる。

窪田違う、違う。そっちじゃない。今回、この『文章は写経のように書くのがいい』の新しい帯を作ることになったので、一応勉強しといたほうがいいと思って買ったんです。そうしたら、これがまぁ、びっくりするくらい名著でしたね。
三島ほぉ。
窪田私はもともと香山リカ先生ファンなので、ひいき目もあるかもしれないんですけど、それにしても、やっぱり売れる本だなと思いましたね。
タイトルのつけ方とか、章立てはビビッドなんですけど、実際に書かれてることはすごく真っ当なことなんですね。
今まで、自分ではすごく健全で真っ当に暮らしていると思っていたんですよ。いま不況で大変ですけど、それでも自殺してしまったり、対人関係が悪くなって鬱になってしまったりする人たちとはあまり関係ないところにいると思ってたんですね。でも、自分もある部分ではそういう流れに流されているんだということを気づかせてくれた一冊といいますか。
三島なるほどね。
窪田たとえば、恋愛に過剰になってしまったり、仕事やお金ばかりに頭がいっぱいになって、日々の生活や人の気持ちを顧みなくなったりとか、客観的に見てみると、「私たちはみんな、ある部分ではおかしな方向に向かっているんじゃないですか?」っていうか。
そういうことをスピリチュアルな方向じゃなく、精神科医の目から論理的に書かれていて、とても納得できるんです。
木村うん。
窪田それで、自分も精神が病むところまではいってはいないけれど、普通のノーマルな考え方から少しずれていたところはあるなと。なので、これが売れて、これを読む人が多いっていうのは、けっこういいことなんじゃないかと思いました。
木村こないだ、「これ、木村さんくらいの世代の人が読むといいですよ」って勧められてたんですよね。
亜希子「わたしの世代って何よ」って感じ?
窪田ははは。世代はあまり関係ないですけどね。でも、「<勝間和代>を目指さない」っていうところばかり取り上げられてると思うんですけど、それは手に取ってもらうきっかけのきっかけにすぎなくて、それこそ「うまいこと時流にのっけて売っちゃったんでしょ」って思っている人にこそ読んでもらいたいなと思いましたね。
古い家電は使いつづける方がもったいない。
『知識の構造化』(小宮山宏先生、オープンナレッジ) |
大越じゃぁ、次は私がいきます。
私は小宮山宏先生の『知識の構造化』(オープンナレッジ)という本です。タイトルは堅そうなんですが、講演録なので読みやすいです。小宮山先生は、東大の前総長で、現在は三菱総合研究所の理事長をされている方で、バリバリの工学博士の方なんですね。
窪田はい。
大越タイトルの意味ですけど、たとえば今、グーグルで「リサイクル」と検索すると、2千万件くらいヒットしたり、地球の環境問題についても各分野でいろんな人が研究していて、全員の研究論文を読むことなんて到底不可能じゃないですか。
亜希子そうですね。
大越だから、それぞれの分野で研究はすごく進んでいるのに、それがどういうつながりをもっているのかということを把握している人って実はすごく少ないんですね。本当は人類がいま持っている技術を組み合わせれば、CO2の25%削減とか、地球の環境問題を解決できるだけの力は持っている。でも現実にはそれができていない。だから、「そういった知識を構造化することが大切ですよ」ということを一冊通じて主張されているんですね。
窪田おもしろそうですね。
大越実は今日、その小宮山先生にお話を伺ってきたんですけど、「エコ家電」についても、自分たちが全く知らないことってたくさんあるなと思いましてね。
窪田へー。
大越いま盛んに「エコ家電に買い替えろ」って言われるじゃないですか。でも、「買い替えるなら今まで使ってたものを捨てなきゃならないし、それこそ環境に優しいの?」って僕は思ってたんですね。
窪田そう思ってる人、たくさんいると思います。僕もそうですもん。
大越でも実は、買い替えた方が絶対得で、10年ぐらい前の古い冷蔵庫を作った分のエネルギーや、リサイクルに必要なエネルギーっていうのは、最新型の冷蔵庫だと、数ヶ月でまかなえて、お金の面でも電気代が安く済むから、数年で得するんだそうですよ。つまり古い冷蔵庫を使い続けるほうが、お金もかかるし環境にも悪い。
亜希子へー。
大越日本では「もったいない」といってものを大事にするけど、古い冷蔵庫とか車とか、無駄なエネルギーを使うものを使いつづけることは、むしろ莫大なエネルギー資源を使うことになるので、よっぽどそっちのほうがもったいないんだそうです。
窪田へー。
大越あと面白いのが、2050年くらいにはもう、鉄とか金は掘らなくてもよくなるんだそうです。なぜかというと、いま1tの金山からとれる純金って20gぐらいなんですが、1tの携帯電話を集めると、そこから250gくらいの金がとれるらしいんですね。だから、すでに採って工業製品に使った金属をうまく回収して、いろいろな金属に仕分けしていけば、新たに鉱山を掘る必要はないらしいんですよ。
三島それすごいですね。
渡辺「都市鉱山」というやつですよね。
大越金属はみんなそうらしいです。でも、それが進んで行かないのは社会システムがそうなってないからなんですよね。鉄鉱石から酸素を分離して鉄をつくるエネルギーって、すでにできた鉄を溶かして再利用するエネルギーの25倍必要になるから、鉄はリサイクルした方が絶対にいいんだそうです。
いま、リサイクルはムダだとか、地球温暖化なんてないと言っている人たちはいますけど、一部の問題点だけをあげて指摘しているだけであって、トータルでみればそんなことはないと先生もおっしゃってましたね。
三島今までの技術で処理しようとするから、資源は枯渇するし大変なんであって。
大越そうそうそう。だから、見方を少し変えてみて、組み合わせて摺り合わせれば、ほとんどのことが解決できてしまうということがすごくわかりやすく書かれてある本なので、すごくお勧めです。これを読むと未来って超明るいじゃんって思いますよ。
ただ登りたいからてっぺんを目指す姿にぐっときました。
『青春を山に賭けて』(植村直己、文春文庫) |
木村はい。では次いきます。
私は植村直己さんの『青春を山に賭けて』(文春文庫)です。
窪田植村さんはすごいですよね。
木村「やっぱり登らなきゃ生きて行けない人っているんだな......」というのが率直な感想ですね。
植村さんは、もともと、小さい頃から特にやりたいことはなくて、大学に入ったら何かしたいなというくらいの気持ちで山岳部の扉を叩いたそうなんですね。
窪田なるほど。
木村それで、新入生歓迎会でいきなり山登りをするんだけど、一番体が小さくて、一番体が弱かくて、一番最初にへたれてしまったんですよ。
そこで、朝早く起きて9km走ったり、1人で山に登ったりといった自主練を繰り返すようになるんです。どんどん上達して行って、大学を卒業するときには「世界の山を登りたい」と思うようになるんです。
窪田それもすごいですね。
木村で、大学卒業後、110ドルだけ手にして言葉も話せないのに、アルプスを目指して日本を出るんです。でも、いきなりアルプスに行ってもしょうがないと思って、まずはお金を稼げそうなアメリカに渡ります。
窪田ほう。
木村アメリカではぶどう農園でアルバイトをしたりするんですけど、そこで、蜂に顔を刺されるっていうエピソードがあるんですよ。でも「アルプスに行くためにはこれだけのお金を稼ぎたいんだから、そんなものは痛くもない」といって、朝から晩まで働くんですね。
窪田強いですね。
木村だけど、あるとき、アメリカの労働許可証をもらわずに働いていたことがバレて警察に捕まってしまうんです。でも、そこで「僕はアルプスに行きたくてお金を貯めていました」と自分の動機を警察官にまっすぐ伝えたら、「もうアメリカで働いてはダメだけど、君はいますぐアルプスに登りに行きなさい」といってくれて、日本に送還されずにすむんです。
窪田おお。
木村そこから、アルプス登頂への道が一歩ずつ開けて行くんですね。
すごいなと思ったのは、植村さんは「見たことのない世界を見たくて」ということじゃなくて「ただ登りたいからてっぺんを目指す」っていう衝動が常に体の中にあったっていうところですかね。それを成し遂げるためには手段を選ばずどんどんやれることをやっていくっていう感じでまっすぐに進んでいった。
もちろん、その間には人に裏切られてぼろぼろになったり、危険な目にあったり、いろいろあるんだけど、それでも登りに向かうまっすぐさがとにかくカッコイイ。もう、読んでいるとニコニコしてきちゃう本でしたね。
大越もうお亡くなりになられてけっこう経ちますよね。
木村そう、山で遭難してしまってね。まだ発見されていない。
窪田我々も山登りいかないとだめですね。
なんなんでしょうね。この山男の魅力っていうのは。
三島身一つだからね。
売れ筋を狙わないミリさんの心意気を感じました。
『週末、森で』(益田ミリ、幻冬舎) |
三島じゃぁ、次は私が行きます。山の次は森ということで、『週末、森で』(益田ミリ、幻冬舎)。
木村おお。
三島益田ミリさんの新刊ですね。僕がこの本を押したいのは、売れ筋のタイトルを目指しているわけではないし、中身も特にノウハウが詰まっているわけでもない、3人組の独身女性の物語なんだけど、ほんとうに大切なことが詰まっていると感じたからです。
窪田ほお。
三島ひとりが東京から離れて、山梨県か長野県とおぼしき森の近くに住みはじめるんですね。そこで、翻訳家の仕事をこつこつやりながら、生活と仕事が全部一体となった生活をするんです。他の友だち2人は東京に住んでいるんだけど、週末彼女のところに通い出してから、だんだんそのOL2人の場所としても、この森というものが機能していくという話で。
窪田いい感じですね。
三島また、ちょっとしたエピソードがすごくいいんですよ。
例えば、ボートをまっすぐ漕ごうとするんですけど、蛇行してうまくいかない。そのときに「手元ばっかり見ないで。自分の行きたい場所を見ながら漕ぐと近づけるよ~」って言われ、やってみたら、「あら、ホントだ」、とかね。
そういう、人生にも通じるようなエピソードがさりげなく溶け込んでいて、それがじんとくる。
木村うん。
三島『週末、森で』っていうタイトルをつけた著者と編集者の心意気を感じた名作だと思います。
読了後すぐに出てきた言葉はこういうものでした。
「週末、森で」、それは、未来へ、という意味だった。
35歳女子の日常はぜんぜん悲しむものじゃない。
森の世界を知ったなら。
大切なことを忘れそうになったとき、何度も何度もこの本を開きたい。
本当に広く読まれてほしいです。
亜希子田舎で森に住んでるんだけど、毎週友だちが東京でお取り寄せしたおいしいものを持ってきて、田舎暮らしなのか、今どきの若者なのか、その絶妙な描き方がミリさんだなぁと思って面白かったですね。
木村装丁も綺麗ですね。
三島「エコな生活」とか「農業をやろう」とか、そういう流れの中で「田舎暮らしをしよう」っていうのとは違うところもすごくいいなと思って。
ゴッドファーザーが好きな人は、きっと好きだと思います。
『犬の力』(ドン・ウィンズロウ、角川書店) |
亜希子はい。では次いきます。
私はミシマガジンの「今日の一冊」で紀伊国屋富山店の朝加さんが紹介して下さった、『犬の力』(角川書店)です。
実は今読んでる途中で、読み途中のものを紹介するのもどうかと思ったのですが、とても面白いので紹介させてください。作者はドン・ウィンズロウ。皆さんご存知ですか?
私はこの作家さんの作品を始めて読みました。この話、すごく面白いです。
物語はメキシコの麻薬をめぐる30年間の戦争を描いたものです。麻薬をめぐる抗争とか利権争いは、まさにゴッドファーザーの世界。
窪田ふーん。
亜希子メキシコからアメリカに大量に流れる麻薬。その麻薬をめぐり、裏切りの連鎖が生まれていきます。メキシコ麻薬ルートをつぶすためにアメリカからやってきた麻薬捜査官(DEA)、麻薬組織を牛耳っていた叔父の後継となったバレーラ兄弟...。次々と人物が登場し、何が正義で何が悪なのか、誰が味方で誰が敵なのか分からないままに物語はどんどん進んでいきます。
窪田面白そうですね...。
亜希子メキシコとアメリカって、麻薬と近いイメージは漠然と持ってたんですけど、そういう話を今まであまり読んだことがなくて引き込まれてますね。
けっこう残酷な場面とか、処刑のシーンが出てくるんですが、そういうのも読ませてしまう作者の力はすごいと思うし、翻訳もうまいんだと思います。
物語に出てくる、ドンたちが揃って密談が交わされている場面なんて見たこともないはずなのに、情景が浮かぶ。また、たくさんの人物が登場し、それぞれの思惑が混在するにもかかわらず、感情の動きもすんなりとはいってきて、どんどん詠み進めます。これは読んでみたら絶対に面白いんじゃないかと思います。
大越私の好きなジャンルですね。
窪田えー。大越さんそういうの好きだったんですか。ハードボイルドですね。
亜希子私もまだ途中までしか読んでないので、きちんとストーリーを語ることができなくて申し訳ないのですが、これからどうなるかが楽しみなところです。ゴッドファーザーが好きな人にはオススメです。
木村大越さん釘付け(笑)
大越これはぜひ、読んでみたいですね。ありがとうございました。
「じゃぁ、"自分"っていうのは何なんだよ」と。
『自分をいかして生きる』(西村佳哲、バジリコ) |
渡辺僕はですね、西村佳哲さんの『自分をいかして生きる』(バジリコ)です。
『自分の仕事をつくる』(晶文社)っていう本が6年くらい前に出ているんですが、著者によると、それの補講っていう位置付けで編まれた本なんですね。
で、なんというか、好きすぎてですね、この本を僕の言葉で説明しようとするのははばかれるくらいでして......
だから、「この本はスゴ本です」っていう紹介ができないくらいというか。
木村ははは。なるほど(笑)。付箋の数がすごいですね。
渡辺『自分の仕事をつくる』っていう本を出した後、西村さんは、「じゃぁ、"自分"っていうのは何なんだよ」というところに切り込んで行くんですね。
木村ふぅん。
渡辺さっき、窪やんが香山さんの本で受けた印象を「普通のノーマルな考え方から少しずれていたところもあるなと思った」って言ってたけど、じゃぁそこで言うところの「普通」って一体なんだよ? って僕は思ってしまうんですよ。そんな僕だから、つい「自分ってなんだよ?」っていうところを考えてしまうところもあってですね。
木村はいはい。
渡辺自分で「普通とはこういうことだ」とか「自分ってこういうものだ」っていうことを説明できないと、どうも言葉が上すべりするというか。納得感がない感じがするんですよ。だからこの先、一生そういう世にある言葉を自分の言葉として獲得し直していく作業が僕にとって必要なんだなと、そういうことをもう一度考えさせてくれる本だなと。
木村ほう。
渡辺すらすら読めなくてつっかえながら2カ月くらいかけて読んだんですけど、また読みなおしているところです。
亜希子なんか、すごく大事な本なんだっていうことが伝わってきました。
三島哲学者はそういったことを論考するかたちにするけど、この本は、西村さん自身の戸惑いとか揺らぎがそのままかたちになってるところが良いですよね。彼の中で結論が出て書いているわけじゃないけど、漠然としているわけでもなくて、書きたいことはあるんだけど、それを書きつく先がわからないっていうところがこの本の素敵なところかなと。
渡辺たしかに。
三島あとがきで「鷲田清一先生が言った一言でなにか少しみえた」って書いていて、自分っていうのは「unique」と「one of them」との間を揺れうごくことによって成熟していく存在なんじゃないかっていう話なんですけど、これはすごく本質的なことだなと。
渡辺うんうん。
これはじっくり読んでもらいたいですね。
自分は客観的に自分をみてると思っている人に読んでもらいたい。
『あなたの話はなぜ「通じない」のか』(山田ズーニー、筑摩書房) |
林私はですね、実は一昨日出会ってしまった本なんですが、これです。
『あなたの話はなぜ「通じない」のか』(山田ズーニー、筑摩書房)。
木村あははははは。
三島なるほど。これは名著ですよ。
林考え方の考え方というか、本当に基本的なコミュニケーション術が書かれていて、おもしろくて一気読みしてしまったんですね。
窪田へー。
大越どんな言葉にぐっと惹かれたんですか。
林例えば「自分でものを考える方法とは」という項目で「あなたは24時間以内に何をしたいですか?」「そのためには何が必要ですか?」っていう質問があるんですけど、それに対して漠然と考えて一番最初に出てくる答えってあるじゃないですか。
大越ふんふん。
林でもそこから、さらに「明日の自分を現実的に考えて最悪のシナリオは?」「明日の自分を現実に考えて最良のシナリオは?」「最悪なシナリオになるとしたら何が原因?」「最良のシナリオになるとしたら何が必要?」といった10個の質問の答えを考えてから改めて「いまから24時間以内にあなたがいちばんやりたいことは?」を考えると、はじめの二問だけ考えて出てくる答えと自分の中で形成された答えが違うっていうことに納得したんですね。
大越なるほど。最初の「あなたは24時間以内に何をしたいですか?」という問いの前に、それだけ考えておく必要があるということだよね。
林そうですね。そうすると、具体的に誰かから「なんでそれをやりたいの?」って聞かれたときに、より確固と「なぜならば...」っていう説明ができるようになると。これは本当に基本的なことなんですけど。この他の考え方も、根本に山田ズーニーさんの「人と通じあいたい」っていう肯定的な人生観から生まれている気がして、それがいいな、と思いました。
三島確かにね。
林この本は、自分は客観的に自分をみてると思っている人に読んでもらいたいですね。今、立場がどんな人でも、もっともっと可能性を広げられるっていう気持ちを持っていることが大切なんだろうなと。
渡辺なるほどね。
三島コミュニケーションの基礎の基礎って、実は教育されることがないまま社会に入ることってすごく多いから、だから、ズーニーさんって若い人にすごく支持されてるんだろうなと思うんですよね。
渡辺僕は、こういう「話が通じる通じない問題」が発生するといつも思い出すことがあるんですよ。宮台真司さんが言うところの「吉幾三問題」。
木村え、何ですか? それ。
渡辺吉幾三さんが上京したての頃、喫茶店でバイトをしていて、ある日店長の留守番してたときにお客さんがウインナーコーヒーを注文してきたと。それで、吉幾三さんはウインナーコーヒーを知らなかったので、ウインナーとコーヒーを一緒にお客さんに出したんですね。そしたら、お客さんは何も言わずにそのまま食べてお金を払って帰って行ったそうなんですよ。
木村うんうん。
渡辺で、帰ってきた店長にこの件を報告したら、「バカヤロー」って怒られた。
一同ははははは
渡辺っていうエピソードがあって、そこで、僕はいま何を言いたいのかさっぱりわからなくなってるんですけど...(笑)
亜希子「話が通じる通じない問題」でしょ。
渡辺そうか。「ウインナーコーヒー」と呼ばれているものが世の中にはあるけれど、そのまま「ウインナーコーヒー」を見ないまま吉幾三さんが死んでしまったら、吉幾三さんにとっては、あれが「ウインナーコーヒー」だったという。
もっというと、わかったつもりになっているけどわかってないとか。だけど、わかってないのにわかっているかのごとく振る舞えるとか。このエピソードが示唆するところは、いろいろあるわけですよね。
窪田そうですね。
渡辺僕は、吉幾三問題から、「伝える営みに対する謙虚さ」とか、「信じることと疑うことのバランス」を持たねばいけないと感じるんですね。「本当にこれ、ウインナーとコーヒーでいいの?」とか、単に素直に聞けば良かっただけっていう話でもあったりして。だから、客観的に自分がわかったつもりになっちゃいけないんだ、っていうことは思ったりしますね。なんか、いらない話をしてしまったようで、すみません...
林いえいえ、興味深い話です。
三島ここにいいこと書いてあるね。
「信頼を得るには、やはり小手先じゃダメだ。」
「自分自身を鍛えなければいけない。」
林ズーニーさんの実体験がちりばめられていて、すごい説得力のある優しい言葉ですね。
三島「根っこにあるものは何?」っていうことをズーニーさんはいつも追いかけていて、その意見の質問だとか発想の根本思想をいつも突き詰めて行く訓練をしないといけない。そして、相手の中にもその根本思想がどこにあるかをちゃんと理解してコミュニケーションはとらないと、通じあうことはないっていうことを繰り返しいろんな角度から言っていると思いますね。
木村一昨日、林さんの目にふと飛び込んできたんだね。
亜希子ちょっと通じないと思ったことがあるんだね。
渡辺今日は少し、自己対話が促されるような本が多かったような気がするけど、そういうタイプの本って、出会うタイミングが重要なんでしょうね。
木村はいはい。
三島ということで、今日もありがとうございました。
