ミシマガ・ミュージック

ミシマガミュージック明和電気さん

第6回 明和電機的! ナンセンス発想法で、あそびをつくる楽しさを、もう一度 【後編】(明和電機さん編)

2011.04.28更新

オモチャやさんを、本来の姿に。オモケンの挑戦

―― 「オタマトーン」は最近の明和電機さんの作品のなかでも大ヒットした商品ですよね。あれはどのようにして生まれたのですか?

ミシマガミュージック第5回明和電機さん

エレキギターのようにネックを押さえて、下のほうの口を動かし、音を出す。不思議で楽しいオモチャ楽器。

土佐あれは、もともとセーモンズというアート作品があって、それを改良したものです。声の呪術性や機能性の面白さを表現した作品なのですが、それをマス・プロダクトのオモチャにしたものがオタマトーンです。

―― 実際のオモチャを考えるとなると、企業のマーケティング活動や商品としての制約と衝突することもあるのでは?

土佐そうですね。やっぱりオモチャ会社さんの意見や、予算枠とはぶつかることが多いですね。でも、その過程を通ることで、きちんとマス・プロダクトとしてブラッシュアップされます。人間って、制限された状況のほうが発想が膨らむんです。そもそも「魚」という枠で発想するのも、ひとつの制限だといえます。アートという行為自体が、自分で制限を見つけて、そのなかで自由になる試みなんだと思います。

―― オモチャをつくるときは、メーカーさんに直接プレゼンテーションに行くのですか?

ミシマガミュージック明和電気さん

オタマトーンの原型になったと言われる、鉄巨人のような楽器。コンピュータ制御でゴムの声帯を震わせて音を出す。

土佐はい、ずっと明和電機のオモチャをつくってくれている会社、株式会社CUBEがあります。あと、明和電機では以前からナンセンス・オモチャ研究所、略して「オモケン」という活動を行っています。これは「ナンセンス発想法」を使って、実際にオモチャをつくるというワークショップです。

今の子どもが遊ぶオモチャのほとんどは、メーカーがCMや広告などを通じて「こんなのが欲しいでしょ」と一方的に与えているものばかりです。これをちょっと変えたいと思っているんです。自分の手を使ってつくるオモチャを復権させたい。しかし、そこで昔ながらの竹とんぼに戻る、というのは面白くない。今の時代にふさわしい、手づくりのオモチャを生み出したい、というのが「オモケン」の出発点です。

―― それはどんな人でも参加できるのですか?

土佐小学生からおじさん・おばさんまでいろんな人が参加して、年に2回ペースでやっています。3日間、16時間くらいかけてオモチャを発想して、形にし、プレゼンするところまでやります。こちらで公募しますね。

―― 大人もたくさん参加されてるんですね。

土佐もう、ノリノリになりますよ(笑)。やっぱり普段と違う部分の脳の使い方をするからだと思います。ワークショップをやると、いろんなアイデアが出てきます。それをデータベース化して、オモチャ会社の研究機関で研究資源として使ってもらえないかな、とも思っているのです。

さらにそのなかから本当に面白いものを企業が実際にオモチャにしてゆくというサイクルをつくりたいんです。遊びたい人が、遊びたいものを考えて、自分でつくって手にしていく。明和電機は、僕ひとりでそれを行っているということになります。

ゆくゆくはここで生まれたオモチャを、日本各地にあるおもちゃ屋さんが販売してくれたいいなと思っています。最近のオモチャ業界は、ほとんどが大手チェーンの店で販売されるようになって、街の小さなオモチャ屋さんはどんどんつぶれていっています。それがなんともさびしい。一昔前の、オモチャ屋さんに子どもがたむろしている、あの感じ。あれが本来のオモチャ屋さんの姿ですから。

―― たしかにそうですね。自分で遊びたいものを考えて手にしてゆく。それが幼い頃にオモチャ屋さんとともにたくさんあると、そもそも遊びはつくるものだという感覚で社会に出て行くことができる。

土佐一番面白い遊びって、遊びを考えることだと僕は思うんです。極端な話ですが、無人島に流れ着いて、何もないところから遊ぼうとする場合、とにかく遊びを考えると思うんです。それが多分一番面白い。最初、子どもはそれができているんです。でもだんだんと、すでにある遊びに縛られてゆく。本来は大人になるほどできなくなるわけでもないのに、やっぱりほとんどの人が縛られてゆく。

それにこれからは、遊びから自分でつくって動かしていく感覚がだんだん必要とされているのではないかと思います。最近の日本はもはや、センスだけでものづくりをしないといけなくなってきてもいますので。考え方を考えるための発想です。
 

万能のネット検索でも「おかしさ」は正確に検索できない

―― インターネットの検索機能が発達したことで、人々の発想法も大きく変化しました。今では出版業界も企画を考えるときには、まず検索して情報を集めるのが常識となっています。しかしこの検索やネットがもっと発達すれば、やがて人はものを覚えなくてもよくなるかもしれないし、考えなくてもいろんなことが楽しめるようになるかに見えます。土佐さんはそうしたネット社会についてどのように考えておられますか?

土佐たとえばナンセンス発想法と同じことを、ネットの検索エンジンにやらせたらどうなるでしょうか。「おかしな + ふとん」で検索すると、さっきお話ししたような、ぶっとんだふとんはまず出てきません。「おかしな」と「ふとん」にまつわるキーワード、綿やおねしょなどがたくさん出てきます。

しかしそれは、「おかしなふとん」ではありません。それに意味的に近い言葉でしかない。人間がすごいのは、ある言葉に「おかしな」をつけたときに、その言葉の持つ意味から最も遠いところ・概念を検索できるのことなのです。そして、それが「おかしい」ということの本当の意味であって、正しい。これが検索エンジンにはできないのです。

―― なるほど。確かに検索エンジンは、まったく関連のないキーワードを拾ってくることはありえない。「おかしさ」は生み出せないわけですね。

土佐大前提として、人間、特に子どもは、放っておいても面白いものを考えつくものだと思います。それは脳という仕組みが、進化の過程で絶えず面白いものを生み出す行為を繰り返してきたからです。トカゲが鳥に進化したときは、ある日突然、木から飛び降りるトカゲの集団が現れたわけです。カルト集団ですよ。いったい何億匹のトカゲが、それで墜落死したのでしょう。もし生き物が常識的な安定思考をしていたら、そういうことは絶対しないはずなんです。しかし、実際に木から飛び降りるトカゲがいた。これはナンセンス! ですよね。

―― たしかにそうです!

土佐生命は常にそうしたナンセンスなことをやってきたし、人間が誕生して文明が生まれてもやっている。飛行機をつくって、死ぬかもしれないのに空を飛ぼうとする人がいたわけです。その中心であるのが人間のなかの脳です。アイデアプロセッサーとして、極めて自動的にそういったナンセンスなことをずっと行っているんです。

よって、みな同じ脳を持っているのだから、大前提としてみんな創造性があるのです。ところが普段はそこに常識というタガをはめている。そのタガを取ってやれば、誰でも面白いことを考えられるようになるんです。それがナンセンス発想法の原理なのです。

大人もふくめて、今の人は常識的になりすぎています。与えられた物をWebとかで「チョイス」や「セレクト」する能力はすごく高まっているのに、イチから「メイク」する面白さをあまり知らない。やり方さえわかれば絶対に面白いので、もっとそれで遊んだらどうですかということ。明和電機はそういうごっこ遊びが楽しくてやっているんです。
 
―― なるほど。たしかに、ものをたくさん検索することはできるのですが、それで自分は「メイク」したことにはならないということですね。便利ですが、「チョイス」や「セレクト」だけではせっかくナンセンスで面白い発想が無限に沸いてくる脳を持っているのに、もったいないです。人間らしい本当に楽しいことにもっと自覚的になってゆきたいものです。今回はありがとうございました!


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ミシマガミュージック第5回明和電機さん

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明和電機(めいわでんき)

土佐信道さんプロデュースによるアートユニット。ユニット名は父親が過去に経営していた会社からとったもの。青い作業服を見にまとい、作品を「製品」、ライブを「製品デモストレーション」と呼ぶなど、日本の高度経済成長を支えた中小企業のスタイルで活動。土佐信道さんは、3代目代表取締役社長である。

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