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「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。
第11回 クトゥーゾフ
Михаил Илларионович Кутузов
短くても発音しにくいロシア人名は多々ありますが、これはその最たるものかと。
しかもなんとも憎々しげな響きで、マンガやゲームのラスボスの名前として使われそうです。
「わはは、よくここまで来たな。だが、このクトゥーゾフ様の姿を見たものは生きては帰さん。覚悟しろ!」
ですがこの方、ミハイル・イラリオーノヴィチ・クトゥーゾフ将軍は、ナポレオンのロシア遠征の際にロシア軍最高司令官を務め、最終的にナポレオンを打ち負かしたという英雄。 ラスボス扱いなど許されないお方なのです。
もっとも、このナポレオンのロシア遠征(ロシアでは「祖国戦争」という)を描いたトルストイの『戦争と平和』などを読むと、勇猛果敢な将軍、というよりも、ナポレオンと皇帝の間に立って悩める中間管理職、みたいなイメージの人です。
実際、彼の行った焦土作戦(退却して相手を国土の奥深くまで誘い込み、補給を困難にさせて撃退する)は国内からブーイングの嵐で、仕方なく戦ったら負けて(ボロディノの戦い)、ナポレオンを追い返したら追い返したで「逃げられるとは何事だ」とか言われる始末。
高齢に心労がたたったのか、翌年に病死しています。
まさに苦闘ーゾフな人生でした。
そのあたりを意識しながら、苦々しげに発音してください。
