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「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。
第13回 ムソルグスキー
Модест Петрович усоргский
ロシア音楽史を語る上で必ず出てくる「五人組」というものがあります。正確には「ロシア五人組」。
西洋的な音楽を追求した(のにどうもロシアっぽさが抜けなかった)チャイコフスキーに対して、彼ら五人組はあえて反西欧のロシアらしい音楽を追求しようとした人たちです。
五人組といっても、別に連帯責任取らされるわけじゃなく、同じような志を持つ作曲家たちの緩やかな連帯みたいなものだったらしい。モノマネ四天王みたいなもんか。違うか。
さてこの五人組の中で、ひたすら(名前的に)異彩を放っているのが彼、ムソルグスキーです。
モデスト・ペトローヴィチ・ムソルグスキーは1838年生まれ。反西欧を掲げる五人組の中でもひたすら「ロシアらしさ」を追求しようとした作曲家です。
そして、非常にロシアらしくアル中になり、精神を病んで奇行・妄言を繰り返す。名前だけじゃなく、実際にもなかなかエキセントリックな人でした。見かねた五人組のメンバーの援助にもかかわらず(あれ、やっぱり連帯責任だったのか、五人組)、40歳そこそこで帰らぬ人となりました。
アクセントは冒頭に来るので、発音は「ムーソルグスキー」。現地の人の発音を聞くと「グ」はほとんど聞こえない。すると「ムーソルスキー」なので、多少はゴツゴツ感が緩和されます。
ま、ロシア語で「ムーソル」って、「ごみ」って意味なんですけどね(多分、語源的には関係ないですが)。
彼はどちらかというと死後、有名になりました。
「展覧会の絵」というピアノ曲は、フランスの作曲家ラヴェルがど派手なオーケストラ曲に編曲したことで有名になり、「禿山の一夜」はそのあまりの狂いっぷりが、恐怖シーンを表すのに最適だと映画音楽としてひっぱりだこになり、オペラ「ボリス・ゴドゥノフ」は、非常にロシアっぽいオペラとして、ロシア情緒を味わいたいオペラファンの支持を受けています。
死後、拾い上げられたムソルグスキーの曲。これがほんとのごみ拾い・・・いや、不謹慎でした。すいませんすいません。
