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「ロシア人の名前は何であんなに長ったらしいのか?」と、よく言われます。時にはもっと単刀直入に、「なんであんなに滑稽なのか?」とすら言われたこともある。
確かに、ロシア人といえば、「ドストエフスキー」「ムソルグスキー」「ゴルバチョフ」など、ゴツイというか愛想がないというか、そんな名前ばかり。
ですが、「グジェ」とか「ドヴァ」とか、「ルグスキー」なんて不可思議な文字列は、ロシア人の名前でも呼ばない限り、一生声に出すことはないはず。
だったらせっかくなので、読みづらいけど、大声で唱えてみよう。気分が晴れたり晴れなかったりするかもしれません。
本連載では、そんな怪しげな響きのロシア人名を厳選して紹介するとともに、その人物のプロフィールを解説。ロシア人の名前の仕組みについてもわかる。役には立たないが。
第29回 カラマーゾフ その1
Братья Карамазовы
前回、スメルジャコフという『カラマーゾフの兄弟』の登場人物の名前を取り上げたので、今回は「カラマーゾフ」という名前のほうを取り上げたいと思います。
なんか順番が逆のような気がしますが・・・。
「カラマーゾフ」、いかにもドストエフスキー好みの重苦しい名前です。
私も本書を読む前は、「ロシアの大地で泥にまみれて生きる農民の兄弟たちの苦難の物語」とか思っていました。
全然違いました。
舞台は農村ではなく地方都市(スターラヤ・ルッサという町がモデル)だし、三兄弟も、
・長男は軍隊帰りのプレイボーイ。あっちこっちで揉め事を起こす問題児だが、実は熱血漢でいいやつ
・次男はインテリ大学生。クールぶって小難しいことばかりしゃべっているが、実はとっても繊細
・三男は現実逃避癖があるけどみんなに愛されるいい人。ただ、好きな女性から「いい人すぎてつまんない」とか言われたりする悩み多き青年
という感じで、農民どころか、みな仕事すらしてません(笑)。
それにしても、こうしてみるとキャラ立ってます、みんな。
というか、「熱血漢」「クール」「癒し系」って、今でもマンガやら特撮ヒーローやらのキャラ設定の王道じゃないか。
ルーツはここだったのか!?
村上春樹氏のカラマーゾフ好きは有名ですが、確か『ノルウェイの森』に、主人公が「カラマーゾフの兄弟の名前を全員言えるのは俺くらいだろう」みたいに(自嘲気味に)独白するシーンがあります。
これを覚えていると、村上文学の主人公みたいにモテモテになれるかもしれません。
長男・ドミートリー、次男・イワン、三男アリョーシャ。父称はみな(スメルジャコフと同じく)フョードロヴィチ。
「イワン・フョードロヴィチ・カラマーゾフがさあ・・・」とか日常会話に織り交ぜて、ぜひ知的アピールしてみてください。
確実に迷惑がられますが。
