今月の特集1

 今年の1月に発売となった、井川直子さん著、『昭和の店に惹かれる理由』
 静かで熱い井川さんの語り口と同じように、本書を支持する声が静かに熱くひろがり、おかげさまでこのたび、増刷も決定いたしました!!

 本書で井川さんは、昭和からつづくお店の方々を取材。なぜか心惹かれ、気づけば足が向かっている、それらのお店の「なんか正しい感じ」の正体を、探っていきます。そんな井川さんが、長年、一度お話をしてみたいと思っておられたのが、ナガオカケンメイさん。
 ナガオカさんは、「ロングライフデザイン」をテーマに「D&DEPARTMENT」や『d design travel』を展開し、47都道府県のその土地らしいものを紹介する活動をつづけながら、"新しくはないけれど、人々がいいと思うデザインやもの"について、長年、考えてこられました。

 そんなお二人が、先月4月21日、SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSさんでのトークイベントにて、『「つづいているもの」が持つ、"なんか正しい感じ"の正体』について語らいました。
 デザインと飲食、それぞれの分野で考えてこられた「つづく」がクロスして浮かびあがってきたものとは...? 前後編、2日間でお送りします。

(構成:星野友里、構成補助:ミシマ社デッチ、写真:新居未希)

ナガオカケンメイ×井川直子「つづいているもの」が持つ、"なんか正しい感じ"の正体(2)

2017.05.19更新


単機能だと、人間の手に負える

ナガオカその話をデザイン業界にもってくると、やっぱり答えられるなって思って聞いてたんですけど。例えば「不器用」でいうと、ロングライフな家電て、ほぼないんですよ、器用だから。

井川ああ、はい(笑)。

ナガオカ最新機能が家電のウリなんですよ。でもロングライフな家電って、だいたいリサイクル屋に行けばあるんですけど、アイロン、扇風機の類ですね。要するにスイッチを入れたら回るだけみたいな、そういう単機能なものの方が最終的にロングライフになっている。うちのお店で売ってるアイロンも、スチーム機能とかないんです。それが一番ロングライフなアイロンなんです。最新機能にすがった瞬間に、次の年には最新機能をウリにした家電がくるんで、古くないのに古くなっちゃうので、そういう意味で不器用なほうがいいなっていう。

井川ほんとそうですね。さっきたまたま控え室で話していたんですけど、今日出がけにウチのお手洗いのお水が止まらなくなっちゃって、どうしよう遅刻しちゃうって思いながら、奮闘していたんですけど。

ナガオカ止まったんですか?

井川止まったんですよ。浮きとかをガチャガチャやってたら止まったんですけど、アナログなものだから止まったんだよねって話をしていて。これが電動制御だと、私の手には負えない。だから単機能でちょっとアナログなものって人間の手に負える気がするんですよね、まだ。私も実は単機能好きなんですけど、それしか用途がないというものがすごく好きで。手に負えるんですよ、一個の機能だと。

ナガオカそうですよね、だいたい最新の家電は使ったこともない、一生使わないような機能がいっぱい乗っかってて、それをウリに家電屋さんがセールスして、そのセールスを真に受けて買ったけど二つぐらいの機能しか使わないみたいな、そういう世界ですよね。

井川結局シンプルが。壊れないですしね。


流行にどう乗らないかという工夫

ナガオカ「逆行」も、やっぱりデザインにも置き換えられて、流行をあてにしないっていうか。流行にいかに乗らないか。流行ってなんでもかんでも津波のようにさらっていくので、そこにどう乗らないかっていう工夫を老舗の人たちはしている。

井川どう乗らないか。この昭和の店の人たちに関していえば、自分以外はあまり気にしないですね。

ナガオカそうなんだ(笑)。

井川まったく気にしないわけではなくて、シンスケさんみたいにベジタリアンの外国人客が増えたら、鰹のお出汁を使わないものも置いたりとか、そういうふうに緩やかに変化はしていくんですけども、たとえば世の中の居酒屋がどうだからとか、世の中の天ぷら屋がどうだからとか、そういう考え方は不思議なぐらいみなさんしてない。

ナガオカ普通そういう発想しちゃいますよね。

井川しちゃいますよね、たぶん。

ナガオカたとえばおみやげの開発とかするときには、だいたいどっかの県の成功事例を見ながらおみやげをつくろうとするから、だんだん似てきちゃうんだけど、そういうことしない。

井川しないですね。

ナガオカ難しいですよね、要するに社会の情報をシャットアウトして、自分と向き合いながらなにか作っていくって。

井川そうですね。たぶんでも、たとえばフランス料理を食べに行ったりですとか、そういうこともされたりするので、情報をシャットアウトしているっていうよりは、情報は入ってくるけれども、でもあてにしないっていうことじゃないですか(笑)。

ナガオカあはは、そうですね(笑)。


お父さんより、おじいさんの影響のほうが強い

ナガオカやっぱりちゃんと、きっちりしている人たちに取材を繰り返すことによって、自分もなんとなく背筋が伸びたりしますよね。

井川ほんとにそうですね。心構えが変わってきました。人への向き合い方ですとか、まず顔を見に行く、挨拶をする、というところからとか。本当に、忙しい毎日を皆さん送っていると思うんですけど、つい、メールで電話で、ということも多いんですよね、取材依頼でも。だけれども、基本的に足を運んで、頭を下げる、という。

ナガオカ足を運ぶ、頭を下げる、手紙を書く。

井川いまコーヒースタンドが人気ありますけれども、この前会った、海外でコーヒーを学んできた人は、Tシャツを着て、スニーカー履いて、コーヒーを作っているような若い男の子なんですが、本当にスタンスが昭和で、仕事を一緒にしたい人は、まず会いに行く。アメリカでも......そこがちょっと、昭和とは違うスケール感なんですけど(笑)。アメリカでも会いに行くし、日本全国どこでも、まず、身銭切って、電車に乗って行く。で、挨拶からはじめるって、同じことをおっしゃっていました。

ナガオカなんですかね、その人たちは何を見て、何をして、そうなっていったんですかね。

井川お父さんより、おじいさんの影響のほうが強いというか。いつの時代も、一世代上より、二世代上のほうが、なんか共感できるものがあるのかなって。別に全然、学問に基づいているわけではないですけど、私の勘としてなんとなくあって。なんかこう、一周めぐって、お父さんたちが取りこぼしてきたものを、でもおじいちゃんがまだ持っているものを、拾っていこうとしているんじゃないかなって、すごく感じます。

ナガオカそれはなんか、テストに出てもいいような話ですよね。実際そうですよね、企業もやっぱり、ぎりぎり創業者が生きてらっしゃるときに、創業者にひっぱたかれた人たちの姿勢ってやっぱり違うし。

井川そうですね。すごく感じます。


...いかがでしたでしょうか。ナガオカさんは、『昭和の店に惹かれる理由』の帯に、コメントも寄せてくださっています。ぜひ店頭でお手にとってみてくださいませ!


 

お便りはこちら

みんなのミシマガジンはサポーターの皆さんと運営しております。

バックナンバー