今月の特集1

クラフト・エヴィング商會と私(3)

2017.10.17更新



 

吉田さんが考える「考える」って?


 『京都で考えた』が先行発売となりました。
 その一週間ほど前、見本を手にした吉田篤弘さんにお話しをうかがいました。
小説に通底する空気や世界がたっぷり詰め込まれつつも、小説とははっきりと何かがちがう。
 そんな本書を、著者である吉田さんはどんなふうに捉えているのでしょうか?

 (構成 三島邦弘)

 世の中でこういうことが起きているから、それについて考えるというのは皆さんされていると思います。ですから、ぼくは、なるべくみんなが考えていないようなことを考えたいんです。小田嶋隆さんがおっしゃっていましたが、(吉田さんは)「余計なこと」を考えつづけている、って。まさにその通りです。
 『京都で考えた』は、「考える」について書いた最初の本です。
 東京にいるときは、『ちゃぶ台』(Vol.3)に書きましたが(エッセイ「東京で考えた」)、大体、あんなことを考えています。
 

*ソースのこと
*眼鏡とは何か
*いかにして、一人で背中に湿布を貼るか
*時計はなぜ円形なのか
*準備運動について
*栓抜きの存在理由
*試食はどうして美味しいのか
*画家はなぜ自画像を描くのか
*○と×の中間に位置する△とは何か
――『ちゃぶ台』(Vol.3)収録エッセイ「東京で考えた」より。


 それで、京都に行くと、もうすこし実のあることを考えよう、と思うんでしょうね。
 「本」のことについても書いていますが、それもまた「京都で考えた」からこそだと思います。

『京都で考えた』目次

Ⅰ怪物と忘却
見えない目次
バオローテイ
円卓の騎士
チェシャネコの笑い
地球の外から来た友人

Ⅱ ふたつの怪物
なぜ、地球は回っているのか
答えはいつもふたつある
圏外へ
ひそやかな水の力
冬のスパイ

Ⅲ 中庭の怪物
剥製工場
読まない測量師
言葉の森
本当のこと

スリンク――掌編小説


 もちろん東京にいる時間が長いので、『京都で考えた』に書いたようなことは東京でも考えてはいます。それを発展させたものというか、何年か前にひとまずの結論として保留していたことを、今回、書くことで、考えを前に進められたんです。
 とくに、「決めつけられるということがいや」なんだというのは、この本の執筆を通じて発見したことです。子どものころ、もやっとした不愉快な感じがあったんですが、それがなんなのか、わからずにいた。それが、「決めつけられることがいや」なんだ、とわかった。
 その一方で、「考えた」ことによって、自分で自分を「決めつけ」てしまうこともある。そこからも逃れたい、自由になりたいという気持ちがあります。
 こういうことは、この本を作る過程で気づいたことで、これまでは書けなかったんです。

 もっと考えたいことがあるのは間違いないです。
 ひとつは、子どもの時間と、いまの時間のこと。子どものときのテリトリー、自分にとっての場所といま、の違い。そうしたことを『京都で考えた』に書きたかったんですが、今回はできませんでした。
 子供のころ、はじめてひとりで買い物に行ったのが、パン屋だったんです。大きな丸いパンを、焼きたての時間に買ってくるというのが、自分の仕事だと思ってました。小学校3、4年のころかな。
 いまも、パンを買いにいきます。ほとんど毎日。
 パンを買っておかないと、どうも落ち着かないんです。
 そう思うと、パンを買うことは、本を買ってきたことと並ぶ、子どものころからいまに至るひとつながりのものです。
 パンは奥が深いですよ・・・
 
  *

 こうしてパンを入り口に話が止まらなくなった吉田さん。
 前々回お伝えしたように、『京都で考えた』の最初の打ち合わせで「京都」の話が止まらなくなったときを彷彿とさせる時間が、また始まりました。
 きっといずれ、その話はちがうかたちで読むことができると思います。
 そのときを楽しみに、いまは、できたてほやほやの『京都で考えた』をお楽しみくださいませ。
 
 先行発売店はこちらになります。
 全国での発売は、10月20日です。


★発刊記念イベントのお知らせ

●吉田篤弘『京都で考えた』刊行記念イベント 於:恵文社一乗寺店

【出演】 吉田篤弘・吉田浩美(クラフト・エヴィング商會)
【日時】 10月17日(火)19:00start / 18:30open
【参加費】2000円
【会場】 恵文社一乗寺店内 COTTAGE(〒606-8184 京都市左京区一乗寺払殿町10)
【ご予約方法】 
  ウェブ予約フォーム or 恵文社店頭(075-711-5919)まで。


●代官山文学ナイト:クラフト・エヴィング商會トークショー「クラフト・エヴィング・ラジオ」 於:代官山 蔦屋書店

【出演】 吉田篤弘・吉田浩美(クラフト・エヴィング商會)
【日時】 11月2日(木)19:00start
【参加費】1,000円(トークイベントのみの参加費)
     または、
     2,500円(トークイベント+サイン会に参加できる『京都で考えた』付きの参加費)
【会場】 蔦屋書店1号館 2階 イベントスペース
【ご予約方法】 
  店頭 (1号館1階人文フロアレジカウンター)
  お電話 (03-3770-2525)
  オンラインストア

 

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