スポーツ紙バカ一代

第31回 ノムさんに病床は似合わない

先週からスポーツ紙野球担当の話題は、楽天・野村克也名誉監督の入院騒動で持ち切りになっています。あまりに情報が乏しいことから、噂が噂を呼んでいますが、ご本人が不在なこともあって、裏をとりようがありません。一日も早く元気になって、またあのボヤキが聞ける日を、待ちわびるばかりです。

「ノムさん入院」の一報に接して、6年前の出来事を思い出しました。2004年3月4日、巨人・長嶋茂雄名誉監督が倒れた、その直後です。わたしは当時、アマチュア野球担当として、社会人野球・シダックスの監督を務めていたノムさんの番記者をしていました。好敵手の緊急入院を、どう思っているのか? チームは埼玉・戸田市内のグラウンドで練習を行うということで、談話を取りに出かけました。

「その件については、一切話さないよ」

心なしか、元気がない。なんかいつもの野村監督と雰囲気が、違う。

そうだ。トレードマークの眼鏡が、ない。

「監督、きょう、眼鏡はどうされたんですか?」

「忘れたよ...」

動揺は隠せない。普段は鋭い眼光で練習を見つめるノムさんが、この時ばかりはほおづえをついて、もぬけの殻になっていました。いつもの憎まれ口は、あくまで演技。本当はショックを受けているんだな、長嶋さんが大好きなんじゃないかな――と、その瞬間、確信しました。

その時、自身の健康法について、こんな話をしてくれました。

「亀理論というのがあるんだよ。長生きする動物は、動かない。亀は万年とも言うしな。年をとって、散歩だジョギングだと動いているヤツは、だいたい早死にする。運動は新幹線の階段の上り下りぐらいで十分なんだよ」

なるほど。一理あります。試すには、僕はまだまだ、若すぎますけど・・・。

「そうや、もうひとつある。究極の健康法がな」

それは、何ですか?

「一番の健康法は、いくつになっても、働くことや」

日々の暮らしは今、癒しや優しさに満ちあふれている。そこには明らかな嘘が含まれていることに、誰もが気づきながら。だからこそ、誤解を恐れないストレートなあなたの言葉は、聞いている者の心に響く。監督、少しだけ休んだら、また大いにボヤいて下さい。時代はまだまだ、野村克也を必要としています。

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左から3人目が筆者

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プロフィール

加藤弘士(かとう・ひろし)

1974年4月、茨城県水戸市生まれ。ジャンボ鶴田最強論者。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶大法学部法律学科卒業後、97年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、03年からアマ野球担当。05年はアマ野球担当キャップ。06年には巨人番(投手担当)。07年にはアマ野球担当キャップに復帰し、09年からは楽天・野村番。社内外で常にペコペコしていることから「米つきバッタ」の異名を誇る。好きな言葉は「そのうち何とかなるだろう」。カラオケの十八番は「夜空」(五木ひろし)。173センチ、61キロ。右投右打。

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