ダンス・イン・ザ・ファームダンス・イン・ザ・ファーム

第18回

リッスントゥザミュージック

2019.12.19更新

高齢化の波

 つい先日、妻のおばあちゃんの弟、つまり親戚のおっちゃんとおばちゃん(ともに80代)に「車に乗せて」と言われたので、運転手として出かけてきました。行先は20キロくらい離れた警察署とスーパー。おっちゃんがついに運転免許を返納したからです。

「首がまわらんけぇバックがようできんくなって」
「娘夫婦からも免許返しんさいとうるそーてから」

 と理由は切実。不便になった? と訊くと、

「おう不便よ」

 さらに、

「もう一日が長いんよ。ほじゃが一週間はあっという間よ」

 と謎に名言(が実はよくわからない)。とにかく、今まで運転してパッと動けていた状況が変わった。時間の感覚も変わった。道の駅への農産物の納品ももう行かない。車が頼りの地域で免許を返し、運転しなくなるのはどういうことか、高齢ながらも元気というのがまた際立たせます。
 何か起きてしまう前に、という英断でした。まあ、たしかに近所にも毎週移動販売の車も来るし、半径1キロほどの集落の外に出る用事もまず、ないそうだし。

「これからは『うみ』と友達になる」

 近所にいる、4歳のうちの息子と仲良くしていくとのことです。その「うみ」は最近こんなことを質問してきます。

 「うみちゃんの、すきなたべものは、なんで?」

 どうあれ、仲良くやってほしいです。

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***

高齢化の波2

 ちょうど最近、暮らし支援サービス「netto」という業態を発明した島在住の末弘隆太くんが、「福祉を語らナイト」という会を開きました。会場はイベントバーエデン周防大島、参加者も多く関心の高さを感じたこの日、こんな話がありました。

 「島にコミュニティバス的なものを走らせた方がいいと思う」

 どうやら、以前から福祉の現場の方が町などに働きかけていたそう。ここにいた数名は介護のベテランで、いずれ来る高齢化地域で何が必要になるかを考えていた。現在、島では各病院や施設のバスが走っている。民営のバスやタクシーもあるけど、本数はかなり少ない。電車もない地域で、より手軽な移動手段があれば、ということでしょう。

 ただ、予算の問題や各所の調整が必要で、検討中ながらも実用のメドはまだ立っていないみたい。加えて、ミカンなどを栽培する地域としては、バスで運ぶわけにもいかないから車はやっぱり便利。いまも現役の運搬車「トップカー」とか「テーラー」と呼んだりする軽車両もあるにはあるけど。はて、何が正解か。

 この日、同じく現場のこんな声もありました。

「ゴミの分別が高齢者にとっては大変。だから、分別しなくていい仕組みが欲しい」

 なるほどたしかに。体が思うように動かない高齢者にとっては切実です。そうか、と納得しつつ、僕の頭にはふともう一つのことが浮かんできました。  

 タイムリーにも数日前、「島のゴミ焼却炉の見学会」に行っていたのです。友人の白鳥法子さんに誘われてノリでついて行ったんですが、見学会自体も町では初めての試みなんだそうで、興味津々。
 折しも現場で聞いたのは、こんなことでした。

「分別がだいじ」

 どういうことでしょう。

 管理の方の話によれば、周防大島町でひとつの焼却炉、これは大きな市などと違って、小さめの焼却炉で火力も小さい。
 一般的に、炉としては「24時間ずっと火が点いている方が長持ちする」が、周防大島は人口減少の流れにあって、処理場が作られた当時よりもゴミが増えることはなく、むしろ減少傾向。つまり、ゴミの量がそこまでないので、毎日点けたり消したりする方法をとっている。なんでもかんでも燃やせてしまう、大きい焼却炉と性能が違うので、もし分別せずにどんどんプラスチックなどを入れてしまうと、火力が上がりすぎて傷み、いずれは壊れてしまう。

 じゃあ、その施設は無くして島外の大きな処理場に集めては? という話になっても、今度はゴミ収集のルートがずいぶんと遠路になり、仕組みを作り直し、ガソリンもより使うことになる。なので現状、管理者としては、

 「今ある焼却炉を、メンテナンスしながら大切に使っていきましょう」

 という提案でした。そのための「分別がだいじ」ということ。
 「高齢者は分別が大変」と「焼却炉は分別がだいじ」との間に架かる橋は、一体あるのでしょうか。 

 福祉イベントの最中、僕は「ゴミが減ればいいんじゃないかなあ」と考え始めてしまい、高齢者問題からはボーッと離れてしまいました。

 そもそも地球全体の温暖化が言われ続け、シミュレーションの精度も上がり、そのペースは「思ってたよりもずっと悪かった」とわかってきた昨今。もうこうなると「燃やしていく」こと自体も怪しい。

 そういえば、僕はこのあいだ畑のドラム缶でものを燃やしていた。するとそこに通りかかったNY出身の英語教師エイブくんが、

 Carbon OK?

 炭素出してるけど大丈夫か? と指摘してくれた。そのときハッとしました。野焼きはわりとよく見る風景ですが、恥ずかしながら、僕はこのとき初めてその行為の意味を意識したのです。

 自分は全くできていない上で、次のことを考えています。
 ゴミが少しでも減るには、ものを長く使う、もしくは土に還るものを使うのがよさそうです。畑で「朽ちて消えていかないもの」を見たときから思うようになりました(テレビが捨ててあったこともあった)。
 だとしたら、何かを作って売る際も、「長く使えるものを売る」方がよさそう。そうなると、「消費」のサイクル自体どんどん怪しく感じてくる。消費するスピードで企業が稼ぎ、経済が活性化する、というような。
 こうなると、今度は「消費者」という言葉が怪しくなってくる。僕は消費者。ショウヒシャ・・・。

***

程度の違い

「コンクリートの登場だと思いますよ」

 役場の前でばったり会った知人の学芸員さんが、立ち話で突然、鮮やかに放ちました(たしか全然違う文脈の話で)。かつての木造の建物など、メンテナンスし手直しして使ってきていた。ところが、だんだんと生活様式が変わり、経済も変わっていった、その起点がコンクリートの登場ではないかと。 

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 実際、僕も家のリフォームでうむむと思っていたところでした。
 というのも、戦後間もなく建てられたその物件をリフォームするなかで、大工さんが修繕した場所の一つが、コンクリートと木材の接地面。昔ながらの「木」の部分と、新しい技術「コンクリート」の部分の落としどころがまだ噛み合っていない時期、というのが見て取れる作りで、そこに水分が溜まり、結果的に木が腐っていたのでした。
 大工の黒木さんは、昔の柱を活かして、いろんな箇所を見事な技術で手直ししてくれました。他の先輩大工さんが「ここすごいよ見てごらん」「大した腕だ」というほどに。

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 木の建物は直して使い続けることを想定している。例えばお寺や神社などもそんな感じ。一方、コンクリートは「一旦壊して、新しくする」ほうに寄っている気がする。

 すごく便利で、僕も恩恵をたくさん受けてきた。

 だけど、それを拡張して「社会全部」がそれにならう必要はもうたぶんない。壊して、捨てて、新しく手に入れる。そういう、僕自身もずいぶん享受してきた使い捨ての生活を、さすがにもうちょっと別の方に展開するように考えた方がいいんじゃないかな、と。

 きっと、便利なことでも程度がある。程度を考えられないだろうか。例えば、どうしても「必要」な便利さと「そうでもない必要」寄りの便利さ、とか。
 まあ難しいのが、程度は程度だけあってはっきりした物差しがない。けれど、それでも、人や人以外のすべてとやりとりしながら見つけていくことは可能ではないでしょうか。(ちなみにゴミを焼却した後の灰は、現在山口県ではセメントの原料になっているそうです。)

***

学校の統合の話

 この間、娘が通う小学校の統合の話合いがありました。その進捗はまたいつかに譲るとして―――。
 少子高齢化の地域で、保護者、児童、地域の方、先生たちのいろんな思いが錯綜するのは当然のこと。統合する・しないも本当にケースバイケース。
 そこでも思うのは、「いろいろまたいで考えたいね」ということ。元あった場所には、無くなる。新しい場所には人が増える。関係性も変わる。学校は教育の面だけでなく、大人も子どもも、生活と地続きの話です。
 高齢化の話もゴミも学校も地球の話も、ひたすらまたいでいきたいものです。時間をかけて。

 そういうクロスオーバーなサウンド、聴きたいなあ。

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中村 明珍

中村 明珍
(なかむら・みょうちん)

1978年東京生まれ。2013年までロックバンド銀杏BOYZの元ギタリスト・チン中村として活動。2013年3月末に山口県・周防大島に移住後、「中村農園」で農業に取り組みながら、僧侶として暮らす。また、農産物の販売とライブイベントなどの企画を行う「寄り道バザール」を夫婦で運営中。

YORIMICHI BAZAR

編集部からのお知らせ

FM山口で『Dance in the island ~周防大島に生きる 2』が放送されます!

放送:2019年12月31日午後6時から。
公式twitterhttps://twitter.com/danceoshima

 本文にも登場している、白鳥さんや末弘さんのインタビューがFMラジオ特番が大晦日に放送されます。
 テーマは「移住・定住と生業」、聞き手は中村明珍、ディレクターも周防大島在住の三浦宏之さんです。
周防大島の生の声を聞いてみてください。
FM山口でON AIR。radiko エリアフリー(有料)やポッドキャストで全国どこでも聴取可です。

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