一泊なのにこの荷物!

第17回

お昼ごはん

2021.08.01更新

 子どもたちの夏休みが続いています。暑いので、南丹市美山町の由良川へ泳ぎに行こうということになりました。美山はその名の通り、かやぶき屋根の集落で有名な、美しい里山です。私たち家族の大好きな場所。

 水着、シュノーケルマスク、ライフジャケット、タオル、バケツに網、日よけテントにクーラーボックス・・・といそいそ準備をしていると、小3の息子が「お昼にラーメンも作ろう」と言い出しました。

 アウトドアで即席ラーメンを食べる。いつから始まったのかは定かではないけれど、少なくとも私が子どものころから、野天で家族やイトコたちとラーメンをすすっていた記憶がある。そう、泳いで冷えた身体には、熱々のしょっぱい汁物が旨いんだよなあ。うんと遊ぶとお腹減るんだよね〜。五臓に染み渡るラーメン、ありがたいものです。子どもがしたいことをするのが夏休み。よし、じゃあカセットコンロと鍋、お椀に割り箸、ラーメンも追加だ!

 コンロ持って行くならコーヒーも飲めるねと、さらにマグカップ4つ、挽いたコーヒー豆8杯分、紅茶のティーバッグとお砂糖も加わった。いつものごとく車に大量の荷物を積み込んで、清流目指して出発です。ぷっぷー。

 さて、みなさんの好きなお昼ごはんってなんですか?

 私は焼きめし、チャーハンが好き。冷やごはんが冷蔵庫に潜んでいると、かなりの確率で焼きめしを作ります。具も冷蔵庫や冷凍庫にあるものを適当に。一口二口だけ残した豚の生姜焼き、漬けもの、キムチ、ネギ、たまご、ちりめん山椒、万願寺トウガラシ、ちくわなど適当に2、3種類取り合わせるのが楽しい。料理研究家の土井善晴先生が常々料理について、食材も調味料もあんまり触ったらダメなんです、と言うようなことをおっしゃっておられますが、焼きめしも、「ごはんを焼くから焼きめしなんです」。鍋を振って炒めないこと、と念を押しておられたのでハイ、それを聞いてからは私も鍋を振らないようにして作るようになりました。

 これまで、あおる感じで炒めるのが格好いいと思って生きてきたため、中華鍋を振りたい欲求が体の中に確かに残っているのですが、それを左手で「ぐっとこらえて」諫める感じです。確かにそうすると、ごはんに焼き目がついて美味しいんですよね。もちろん仕上げに醤油を回しかけるのも忘れてはいけません! 香ばしい良い香りが食欲をそそります。

 夏休みのお昼、家族でよく食べるのはそうめん。つゆは、毎回食べる分だけ作ることにしていますが、京都にある〈うね乃〉というお店の「職人だし」で作るのがお気に入り。イワシやサバの厚削りの節がブレンドされているもので、風味があって麺類にとても良く合うのだ。適当に湯を沸かして、軽くひとつかみの職人だしを入れたらとろ火程度の弱い火でふつふつふつと数分。火を止めて削り節が沈んだらそーっと目の細かなザル(私は使い古した茶こしをひとつ、出汁漉し用に転用しています)で漉し、後から昆布の粉末を入れる。昆布出汁をひくのは時間がかかるので、めんつゆを作るときは粉末になった昆布を後で入れることにしています。

 イノシン酸の削り節とグルタミン酸の昆布が組み合わさると旨味がぐんと増すんですよね。1足す1が2ではなく、4にも5にもなる、それがお出汁のおもしろいところです、と以前出汁の勉強をしたときに教わってから、トマト、玉ねぎは昆布と同じグルタミン酸、お肉やお魚はイノシン酸、干しシイタケなどキノコ類はグアニル酸、と覚えて洋風でも和風でも、違うグループから出汁になる食材を組み合わせて使うようになりました。

 めんつゆは、お出汁に煮切ってアルコール分を飛ばした日本酒、薄口、濃い口の醤油で味を調えればできあがり。そうめん用のお湯を沸かしている間にほぼ完成するので、あっという間と言える。出来たてのつゆは香り高くすっきりしていて美味しいんですよね。薬味はネギ、シソ、ショウガ、ミョウガ、スダチ、ごま、梅干しなど各自適当に。鶏ささみや夏野菜の天ぷらを添えると栄養も取れ、お腹の持ちも良くなりますね。

 もちろん、時には外に食べに行くのもいい。

 私はいわゆる町の食堂というものが大好き。アジフライ定食にすべきか、中華そばにすべきか・・・あ、五目タンメンもある。いややっぱりカツ丼か? カツだとカツカレーという手もあるなあ。

 ぐーっ。お腹が「早よせい、なんかクレクレ」と騒ぎ出すのをなだめつつ、思案するのは楽しい時間です。豊富なメニュー、お給仕さんがてきぱきとして気持ちが良く、どれを頼んでもハズレなし、狭すぎず広すぎずの店内にテレビがついているという気取りのない雰囲気。そんな素敵な食堂が近くにあると嬉しいものですよね。私がたまに行くのは銀閣寺の近くの食堂ですが、家族みんな違うものが食べたいときにも食堂なら、全員が自分の食べたいものを選ぶことができるのです。

 例えば夫「餃子と冷や奴にビール」私「アジフライ定食」娘「鳥なんばんうどん」息子「オムライス」みたいな感じ。はぁ〜幸せ、ですね。

 冒頭に書いた由良川での川遊び。娘、息子、私の3人組で川流れを何度やったことか! ちょうど川がカーブするところで流れが速く、カーブ終わりでゆったりの流れに変わるのが楽しくて、何度も何度も流れました。天然の流れるプールなのです。しかも水中には魚がいっぱい。鮎の群れ、カワムツの群れ、そしてドジョウも5、6匹の集団で泳いでいました。ドジョウも群れるの? とびっくり。これは今回の大きな発見でした。ハゼのような形のヨシノボリもたくさんいて、両手で捕まえようとするとごしょごしょっと触れる感触がおもしろかったな。夏の日ざしが川底の石を光らせ、砂利を息子が足で掘ると、巻き上がった砂煙を目がけてカワムツたちが足元に群がるのを見るのも楽しかった。エサの水生昆虫を探して、何度も何度も砂煙に突進してくるのです。生きものの好きな息子はめくるめく水中世界に興奮してシュノーケルくわえたまんま、あっち見て! 母さんこっちも! とずっと騒いでいる。

 娘はというと、ぷかぷかと空を仰ぎ見ながら私の横を流れて行きます。こちらは正真正銘のカッパだ。気持ちいいねえ〜と、くたくたに力を抜き、身を委ねている。お皿も潤って、良かったね。

 夫は久々にフライフィッシングのロッドを取り出し、元気なカワムツたちに相手してもらっていました。ものすごい浅瀬にもいて、簡単に釣れちゃうんだよ〜と言いながら嬉しそう。

 みんなで目一杯遊んだあと、息子はタオルにくるまって、はふはふしながらラーメンを食べました。目が輝いて、活性化している! 夏の子ども、いっちょ上がりです。

澤田康彦さんによる
「お昼ごはん」はこちら

本上 まなみ

本上 まなみ
(ほんじょう・まなみ)

1975年東京生まれ、大阪育ち。俳優・エッセイスト。長女の小学校進学を機に京都に移住。主な 出演作に映画『紙屋悦子の青春』『そらのレストラン』、テレビドラマ『パパがも一度恋をし た』、エッセイに「落としぶたと鍋つかみ」(朝日新聞出版)、「芽つきのどんぐり 〈ん〉もあ るしりとりエッセイ」(小学館)、「はじめての麦わら帽子」(新潮社)、絵本に「こわがりか ぴのはじめての旅。」(マガジンハウス)など。京都暮らしのお気に入りは、振り売りの野菜、 上賀茂神社での川遊び。

写真:浅井佳代子
公式サイト「ほんじょのうさぎ島」

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