明日の一冊

2025年11月

にんじんとごぼうとだいこん鈴木出版

にんじんとごぼうとだいこん

日本民話 和歌山静子/絵

小さい時から大好きな絵本。赤・白・黒の謎がすっきり解けるすごい本です。子どもにも孫にも読みきかせて皆大好きなお話しです。日本民話ってすごい!

(ミシマ社サポーター 福田奈津美さん)

2025.11.26

現実のクリストファー・ロビン 瀬戸夏子ノート2009-2017書肆 子午線

現実のクリストファー・ロビン 瀬戸夏子ノート2009-2017

瀬戸夏子

暮田真名さんの『宇宙人のためのせんりゅう入門』(左右社)を読み、マジに短詩としての表現を突き詰めることで読み手をハッとさせ続ける「現代川柳」の世界を知ることができたのは、今年の大きな出来事でした。その暮田さんが川柳を始めるきっかけに、瀬戸夏子さんの存在があったと本に出てきます。『現実のクリストファー・ロビン』は5年以上前に買いつつ、読み慣れない文芸(主に短歌)評論が出てくることにビビり、読まないままになっていましたが、「その時が来た」と読み始めました。本書に収録されているのは、歌人の瀬戸さんの短歌以外の文章、評論・詩・小説・インタビュー・ブックガイド。どの形式の文章も、評論対象に、「男性歌人」に、登場人物に、瀬戸さん自身に、そして読み手に向けて、鋭いナイフのように迫ります。時に冷徹に歌壇への失望を綴る、時に情熱的にアイドルを語る言葉に絶えず心を動かされ、本来この本を読むには読書量が足りていない私も「気づけば読み進めていた」の体験の繰り返しでした。

ミシマ社 営業チーム 須賀紘也

2025.11.21

富士中公文庫

富士

武田泰淳

文芸同人会で80歳の先輩に「『富士』はすごい」教えてもらった一冊。先輩が大学生の頃に所属していた文芸サークルで「武田泰淳の『司馬遷』を読まずに現代文学を語れるか」と言われるほど、武田が重要な作家であることを知りました。富士山の近くの精神病院が舞台の本作は文庫版で約670ページの大作ですが、次々にショッキングな事件を起きるので、特に後半は落ち着いて読む間がありません。過激な登場人物たちの言動を通して、「人間とは」「精神とは」との問いが読み手に投げかけられつづけ、日常生活とは違う頭の働きによってめまいを味わうことができます。文章は今売られている文芸誌に載っていてもおかしくないんじゃないかと思うほど言葉づかいが現代的で、描写も会話もすんなり読みやすいのでおすすめです。

ミシマ社 営業チーム 須賀紘也

2025.11.11

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