2022年3月
書肆心水
-
『文明の交差点の地政学 トルコ革新外交のグランドプラン 』
難解な本ですが、かつてトルコの外相、首相を務めた著者が、トルコから見たときに世界の文明世界と現代の政治がどう見えるのかを体系的に描いた本は、西洋中心の世界観とはまったく別の世界を見せてくれます。
2022.03.30
幻冬舎
-
『往復書簡 限界から始まる 』
「男を諦めている」と言う鈴木さんに「素晴らしい男に書物で会うことができる」と上野さん。鈴木さんの率直な問いを両腕で抱きとめて、直球で答える厳しくも温かい上野さんの愛に脱帽です。本の中で上野さんは「その男性」のお名前を挙げてくれています。
(ミシマ社サポーター Hamiさん)
2022.03.28
NHK出版
-
『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと 』
凶弾に斃れた中村哲先生のアフガニスタンでの活動を綴った本。人びとと共にあり、共に生活を守ろうとする姿勢には、国際政治からは決して見えない真実があります。
2022.03.25
明石書店
-
『ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか? 』
アメリカを知るための必読の一冊。白人は、なぜ、レイシズムを自覚できないのか。この問題はアメリカ社会だけでなく、アメリカが軍事力を使って他国に侵攻したときに現地の人びととの関係にも表れる問題です。
2022.03.23
集英社
-
『インド残酷物語 世界一たくましい民 』
インドというとカースト。これは教科書でも習うことですが、インドに生きる人びとにとって、このカーストがどういう意味を持っているのか。差別だからなくせばいいと言うのは簡単だが、それがなぜ脈々と受け継がれることになるのか? 人間社会の差別と疎外という重い課題について、これだけ読者を引き込む本は滅多にないです。
2022.03.21
花伝社
-
『マッドジャーマンズ 』
この本はお店をはじめてから、さまざまな場面でいろいろな人たちに薦めています。グラフィックノベルにふれるきっかけとなるように、そして知らない世界を知るために。東ドイツの時代に翻弄され、「自分の国」というアイデンティティを揺るがされることとなる移民たちの物語。歴史とは大きな政治の話だけではなく、一人ひとりの1日の積み重ねであるということを再認識させてくれます。
(TOUTEN BOOKSTORE 古賀 詩穂子さん (3/21まで『みゃーこ湯のトタンくん』原画展開催中!))
2022.03.18
ヘウレーカ
-
『自然の哲学 』
最近読んだなかで「あの人にも薦めたい!」と頭によぎった人が多かった本です。
社会で生きていると、自然の世界が離れていってしまう。どこへ行くか考えなくても蛇口をひねれば水は流れるし、ゴミたちがどうなるか考えなくてもゴミの日は定期的にやってくる。この本は自然<しぜん>と人間を区別せず、両者が一体となった自然<じねん>の世界を日本の里山の歴史とともに読み解き、これからの生き方を見つめるきっかけになります。(TOUTEN BOOKSTORE 古賀 詩穂子さん (3/21まで『みゃーこ湯のトタンくん』原画展開催中!))
2022.03.16
リイド社
-
『盆の国 』
毎年、お盆の季節が来ると読む本です。スケラッコさんの漫画は軽やかに物語が展開して、まるでその在り方を知っていたかのようにするするとその世界観に惹きこまれていきます。お盆に帰ってきた霊たち=「おしょらいさん」が見える秋(あき)はその年、8月15日から抜け出せなくなります。日本の信仰や習俗をベースに描かれる描写や設定は読んだ後民俗学を調べたくなり、深掘りして考察できるおたく的楽しみ方もできます。そういう本、大好きです。
(TOUTEN BOOKSTORE 古賀 詩穂子さん (3/21まで『みゃーこ湯のトタンくん』原画展開催中!))
2022.03.14
中央公論新社
-
『牡蠣の森と生きる ――「森は海の恋人」の30年 』
漁師が山に植樹する。「森は海の恋人」を合言葉に牡蠣を育てる人。海の変化はすぐにわかる。元を正せば森が変わっているから。森、里、海のつながりをこんなにわかりやすく説く本とは! 聞き書きって奥が深いのですね。しびれます。
(ニイイリナ ミシマ社サポーター)
2022.03.09
新潮社
-
『定形外郵便 』
展覧会で古本屋で会合で・・・様々な出会いからつむぎ出される思索、その1つの思いから思いもかけない光景が出現し、そこからまた違う思いがつむぎ出される、古今東西の人と共に見知らぬ場所へと誘われる、静かで確かな歩みで。
(ミシマ社サポーターさん)
2022.03.07
文春文庫
-
『危機の宰相 』
政治家の伝記などたいして面白くもないだろうという予想を裏切って、本書は日本の戦後の発展を支えた三人の人物を生き生きと描き出して最後までわたしを引きつけて離さなかった。危機の宰相とは、池田勇人のことだが、この総理大臣と、高度経済成長の下絵を描いた経済学者下村治、そして池田と同期の大蔵官僚だった田村敏雄という三人の戦いが、単なる立身伝とは全く異なる視点によって、描き出される。三人に共通する「敗北」の経験が、この物語に深い陰影を与えている。『敗れざる者たち』から三十年を経て、沢木が到達した「敗者もの」の結実である。わたしは、本書によって下村治を知り、この異色であり、不遇でもあった経済学者に強い興味を抱いたのだった。それにしても、かれらと昨今の日本の政治家、経済学者を並べてみれば、その無残な劣化に笑いたくもなり、暗澹たる気持ちにもなる。
2022.03.04
角川文庫
-
『東京アンダーワールド 』
戦後の日本の発展の表皮を一枚めくると、そこには暴力団、インチキ実業家、高級売春婦、いかがわしいスポーツ興行主、街のごろつき、秘密諜報員、政治フィクサー、相場師が暗躍するアンダーワールドが顔を出す。六本木、赤坂といった今は華やかな繁華街の裏面史をリアルに描き出した本作が、外国人の手によって書かれたことに驚きを禁じえないとともに、日本の生活に精通した外国人だからこそ無事に描ききることができたのだろう。本作は、一読すれば世界が変わって見えるほどの衝撃を秘めており、まぎれもなく戦後ドキュメンタリーの最高傑作のひとつである。
2022.03.02