2022年4月
早川書房
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『何もしない 』
著者の方に教えていただいて読んだ一冊。私たちは、自分たちの自由と意志で、SNS等の情報を摂取していると思っているけれども、実のところ、企業による"注意"の奪い合いに巻き込まれているだけで、脈絡のない情報をいくら浴びたところで、自分で何かを考えることにはつながらないのではないか? その罠から抜け出すためには、まず自分が何に注意を向けているかということに自覚的になること、そして著者が「生命地域」と呼ぶ圏内のことに、意識的に注意を向けること。生活者目線で日常を生き直す、『くらしのアナキズム』と通底するメッセージを受け取りました。
2022.04.29
講談社
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『ほんのこども 』
目に見えない何かにぶつかってその衝撃に呆然としているような読後感。いまだに、自分が何を読んだのか、ちょっとよくわからないような。私小説を模した(という言い方で合っているのかもわからない)物語(なのか?)は、目の前で母親を父親に殺された同級生と「私」を軸に人称が入り混じりながら濁流のように続く。そこで繰り返し問われているのは、偽善、ロマン、肯定的な物語の欺瞞などなどを排した場合の小説とは何か? ということと私は感じたけれど、そうなのか? 本作を読んだ誰かと語らいたくなる小説。
2022.04.27
文藝春秋
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『香君 』
いつも新刊を心待ちにしている上橋先生の、長編がついに発売、ということで上下巻900ページ、2日間で一気に読みました。この数年、農や食にかかわる本の編集を担当することが多かったのですが、そんななかでぼんやりと感じていた不安や違和感が、壮大な物語として目の前に差し出されたことに、息をのむ思いです。植物、虫、そして人が共存する道はあるのか、国とは何か。上橋作品がいつもそうであるように、ファンタジーでありながら、驚くほどに現実世界とリンクする展開と描写、圧巻です。
2022.04.25
情報センター出版局
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『沢田マンション物語 』
夫婦2人で作った建売住宅に住み、売れると次の住宅を作る。他に類を見ないジプシーのようなスタイルでほぼ無一文からお金と経験を積み、人生の集大成である100所帯のマンションの手作りへ向かう彼らの伝記本。
今の価値観で考えるととんでもないケースも多分にあれど、既に三世代の夢となった沢田マンションに関わる人たちは皆、過去にすがらずアイディアを生み、自分の手と足、そしてそして周りの人たちの助けや縁でそれぞれの限界と最善を尽くしているように思える。
「本はしょせん、他人が考えたものよ。わしは自分の頭で考える」。深い夜の帳を抜けた先で手ぶらで会えたら最高だと思う。
2022.04.15
NHK出版
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『語るに足る、ささやかな人生 』
ミシマ社より刊行の『「消費」をやめる 銭湯経済のすすめ』のなかで平川克美さんが紹介していて手にした1冊。アメリカのスモールタウン。名もなき人々との出会い。次の町へ向かう車からの眺めのごとく否応なく背後に消えてゆく現在。その一瞬一瞬にちゃんとさよならを言うように書き留められた13篇。この本がリュックのなかにあるときは「何処へでも行ける」と「ここにいてもいいんだ」という矛盾しているようで心地のいい気持ちが胸にあった。自分だけの「旅」はこの本から始まったと思っていて、お店のオープン日は駒沢さんの命日にしました。2022.04.13
童話館出版
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『あなただけのちいさないえ 』
わたしだけのちいさないえ
私たちのちいさな家 ちいさな居場所ちいさなお店 ちいさな会社
ちいさな町 ちいさな州
ちいさな国 ちいさな領土本当に小さいのはどこからどこまでなのだろう
あなただけの領域が 自分が自分でいられる場所が
闘わずして守られますように2022.04.11
ミシマ社
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『すごい論語 』
『論語と算盤』と並行して読んでいて、論語が読みたくなりました(でも、きっと読めない)。次は『身体感覚で『論語』を読みなおす。』を読むつもりです。今年は安田先生の本を楽しもうと思いました。
(ミシマ社サポーターさん)
2022.04.05
ベストセラーズ
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『タリバン 復権の真実 』
タリバンを二十年以上にわたって見てきた日本人ムスリムのイスラム法学者によるタリバンの真実。タリバンが発表した綱領も収録されていて、直接、タリバンの思想を知ることができる唯一の本。
2022.04.01