明日の一冊

2018年4月

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白ミシマ社

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

小田嶋隆

坂本九の「上を向いて歩こう」のパロディタイトルですが、結構壮絶なアル中人生を送った筆者の人生を冷静なタッチで描いて、思わず笑えてくるところが面白い。「私はこうしてアル中から立ち直った」みたいな感動物語にしていないところがミソ。ラスト、アル中の話から、携帯電話への危険な依存へと展開してゆくところがミソですね。

レティシア書房 小西徹さん

2018.04.18

等身の棋士ミシマ社

等身の棋士

北野新太

将棋の世界を舞台にした、クールな文体の緊張感あふれるノンフィクション。沢木耕太郎ばりのタッチで、日々、熾烈な争いを続ける棋士たちの姿を浮き彫りにしていきます。女性棋士目指して、海外から来日する女性達がいたなんて知りませんでした。将棋の事知らなくても読めます。

レティシア書房 小西徹さん

2018.04.16

バブルの物語 人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのかダイヤモンド社

バブルの物語 人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのか

ジョン・ケネス・ガルブレイス/著、鈴木哲太郎/訳

ガルブレイスの偉大さは、「合理的な個人」という安易な仮説の上に築かれた経済学と一線を画し、「人間は愚かな存在だ」という冷徹な目で経済と社会をとらえていたことだろう。わずか150ページほどのこのエッセイを読めば、過去のバブルはすべて人間の愚かしさが招いた必然であり、ビットコイン騒動が示すように、それは今後も繰り返されるだろう、とあきらめに似た境地になれる。投資を始める前に必ず読んでほしい一冊だ。

『おカネの教室』著者、現役経済記者 高井浩章さん

2018.04.13

マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣パンローリング

マーケットの魔術師 米トップトレーダーが語る成功の秘訣

ジャック・D. シュワッガー/著、横山直樹/訳

どの世界にも「バイブル」がある。本書は金融市場の前線で戦うディーラー・トレーダーの必読書だ。約30年前、ネットも無かった時代のインタビュー集が読み継がれるのは、単なるテクニックではなく、人間の心理という普遍のテーマを扱っているからだ。世間に「金の亡者」ととらえられかねない彼らは、哲学者や武芸者のようにストイックにマーケットという魔物に対峙している。金融と無縁の方でもハッとさせられる言葉に出会えるだろう。

『おカネの教室』著者、現役経済記者 高井浩章

2018.04.11

現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?日経BP社

現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?

ケネス・S・ロゴフ/著、村井章子/訳

経済学で「ほとんど無用」(本文)と無視される現金が、いかに現代社会に「呪い」をかけているのか。超一流のエコノミストが脱税や犯罪と紙幣の根深い関係を丹念に読み説く。「日本の紙幣残高はGDP比2割と世界一で、9割を1万円札が占める」、「欧州で最初に紙幣を流通させたスウェーデンが最初に紙幣を廃止する国になる」といった誰かに話したくなるトリビアも盛りだくさん。おカネの面白さを深く味わえるラディカルな論考だ。

『おカネの教室』著者、現役経済記者 高井浩章

2018.04.09

データでいのちを描く テレビディレクターが自分でAIをつくったわけNHK出版

データでいのちを描く テレビディレクターが自分でAIをつくったわけ

阿部博史

著者の阿倍さんは、「震災ビッグデータ」「AIに聞いてみた どうすんのよ⁉︎ニッポン」などの番組を作ったNHKのディレクター。こうした番組を可能にしたのは、「社会課題解決型」のAIをNHKが独自に開発したからで、阿倍さんはその企画者であるばかりか、プログラミングもされました。多くのメディアで「AIが仕事を奪う」「AIが行うのは単純労働」など人間と対立関係に位置付けがちですが、本書では一貫して「協働」の実践例が書かれています。何より、人間からは出てこない変わったアイデアを出すこともあるようで、面白そう、と思いました。ミシマ社でも開発したい。自分がこんなふうに思うようになったことにびっくりです。

ミシマ社 代表 三島邦弘

2018.04.05

口笛の上手な白雪姫幻冬舎

口笛の上手な白雪姫

小川洋子

小川洋子さん作品に欠かせない小部屋。8つの短編を収めた本書にも、小部屋が随所に現れる。「〜横に細長い小部屋だった。どんなに工夫して二人座っても、必ず体のどこかがくっつき合うほどの狭さで〜」(「亡き王女のための刺繍」)、(かわいそうなことリストをつける少年の)「ノートの奥に隠された小部屋の鍵を持っているのは僕だけだった」(「かわいそうなこと」)。小部屋以外にも「空洞」「小屋」「ベビーベッドの脇」といった狭い空間がたびたび登場し、そのなかで静かに世界が動く。その世界がもつ豊かさに触れた瞬間、時空を超えた静謐さに包まれる。これほどの至福を1500円で得られるなんて!

(ミシマ社 代表 三島邦弘)

2018.04.01

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