明日の一冊

2019年2月

ぼくはきっとやさしい河出書房新社

ぼくはきっとやさしい

町屋良平

いい小説はたいてい、ここに書かれたことは自分にも「あったかもしれない」と思わせる。学生、旅人、会社員、それぞれの時期に、「意識なき物理」の法則に導かれるようにして起こる恋と落水。んん? これは俺のこと? むろん、書かれている内容のどれ1つとして自分には起こっていない。だけど、何かひとつの経験が違っていたら十分、わが身に起こり得た。と感じた時点でもうこの本は「自分の話」になっている。うーん町屋さん、恐るべし。

ミシマ社 三島邦弘

2019.02.27

あきない世傳 金と銀(六) 本流篇角川春樹事務所

あきない世傳 金と銀(六) 本流篇

髙田郁

高田 郁さんの本シリーズを読むことは、主人公の名の通り「幸」というほかありません。舞台は、18世紀半ばの大坂。奉公人から「御寮さん」になり、老舗呉服屋の七代目にまでなった女主人公・幸(さち)の商売哲学は、「買うての幸い、売っての幸せ」。自分たちがいかに儲けるか、ではなく、お客さんがどれだけ喜んでくれるか。本巻で、ついに江戸進出を果たす幸ですが、その判断のいちいちに私は「商売」を学んでます。そして、その苦難の数々に涙を流してます。もう、ほんと、たまりません。

ミシマ社 三島邦弘

2019.02.25

自殺会議朝日出版社

自殺会議

末井昭

自殺に関わった人たちが、自殺について語る本です。自殺されてしまった、自殺の名所で自殺者を止めてる、自殺しそうになった・・・など。それでもこの本が深刻一色に染まらないのは、家族の本でもあるからだと思いました。家族と自殺したひとの話をしたり、うつを発症したときに家族がちゃちゃ入れた・・・人生が一色に染まらないとか、家族がいてくれてありがたいことなんだ、とこの本を読みながらなんとなく考えました。

くまざわ書店武蔵小金井北口店[ミシマ社フェア開催中!] 中原高見

2019.02.15

小さなユリと夏葉社

小さなユリと

黒田三郎

酒びたりで、実生活では家族を振り回していたという詩人黒田三郎の、自己嫌悪と後悔から生まれた切なく美しい詩集。これは夢だ。黒田の、美しく甘い夢だろう。「詩に書かれているような場面や会話が実際にあったわけではない」と後年娘ユリは言ったという。そばにいた家族だのに、真っ直ぐ優しくできなかったという後悔がみせた夢。自分がここに居るということが耐えられなく恥ずかしくて、酒を飲まずにはいられなかった黒田。だから読んでいて胸掻きむしられ、涙が出てきて仕方がないのだ。

くまざわ書店武蔵小金井北口店[ミシマ社フェア開催中!] 小泉佳奈

2019.02.13

漂流女子朝日新聞出版社

漂流女子

中島かおり

子捨て、放置、虐待。悲しいニュースを目にした時、「ひどい母親だ」「ひとり親は自己責任」と切り捨ててどうしてそうなったのかを想像することをやめてはいけない。彼女たちがどんなに追い詰められ、ギリギリの状況で必死で生きているのか。にんしんSOS東京の中島かおりさんはそんな女性たちの話を深く、優しく聞き続ける。荒い海を漂う小舟が泊まる港のように。

くまざわ書店武蔵小金井北口店[ミシマ社フェア開催中!] 小泉佳奈

2019.02.11

ぼくのひまわりおじさん文屋

ぼくのひまわりおじさん

チャンキー松本/絵と物語、中島敏子/ルポ、半田真二/監修

東日本大震災発生後に「福島ひまわり里親プロジェクト」がスタートしました。でも、それよりずーっと前から、心をこめてひまわりを育てている人がいました。この絵本はみんなを笑顔にしてくれる「ひまわりおじさん」佐久間辰一さんの物語です。

(ミシマ社サポーター Hamiさん)

2019.02.08

ドーダの人、西郷隆盛中央公論新社

ドーダの人、西郷隆盛

鹿島茂

ドーダ学なるものがあるらしい。"ドーダとは自己愛に源を発するすべての表現行為である"というのが定義らしいが、このドーダを軸として日本の近代史を語るというのが本書です。NHK大河"西郷どん"の西郷隆盛のイメージががらがらと崩れていくのがある意味面白かったです。

(ミシマ社サポーター 金山忠司さん)

2019.02.06

好日日記 季節のように生きるPARCO出版

好日日記 季節のように生きる

森下典子

年齢とともに変化していく心や身体。お茶のけいこ中の気づきにも影響しています。変わりゆくもの、変わらないもの、どちらも大事だと教えてくれる本です。

(ミシマ社サポーター 平野美香さん)

2019.02.04

二重らせん講談社文庫

二重らせん

J.Dワトソン/著、江上不二夫/訳、中村 桂子/訳

科学は先人の仕事の上を進む。だが、ときに障壁を突破する瞬間が来る。著者らが1953年に提唱したDNAの二重らせん構造もそれに近い。本書は、科学の発見が静かな思考のみならず、剛腕からも生じることを教えてくれた。二重らせん構造の発見は、針金とブリキ板で組み上げた「ちからわざ」であった。長崎で85歳のワトソン博士に出会い、本書にサインをもらった。左手に万年筆を握ったワトソン博士はがっしりとして、その腕は太かった。

長崎大学病院病院長/『胎児のはなし』著者 増﨑英明先生

2019.02.01

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