明日の一冊

2021年9月

逆行ミシマ社

逆行

尾原史和

表現をしたい、デザインをしたい、思うもままに生きたい欲求とそれらを実現していく為に歩んだ尾原史和さんの仕事の履歴書です。
私も業種や規模は違えど、やりたい欲求に沿ってもがいて生きてきたので、内容に非常に共感します。この「逆行」はリアルという迫力を持ってあなたの欲求に迫ります。
そしてそれは何かを起こしたい人を確実に動かすと感じます。
今、進む道を迷い一歩を踏み出したい方には力になる。そんな一冊です。

WHEELACTION BOOKSTORE 西村豪さん

2021.09.29

フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへミツイパブリッシング

フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ

森達也

目まぐるしく世の中の価値が入れ替わり、白か黒か、右か左か、正義か悪か、その思想の選別やそれぞれのギャップに心のスタミナを奪われる日々が続きます。

自転車店の店頭で接客をしているとインターネットなどに書かれているレビューを信じてやまない方が一定の割合で来店されます。それ自体は個人としても、まあしょうがないかと割り切れるのだけれども、ただ、あなたの目の前にあるリアルを信じられないような世の中になりつつあって、そしてそれが不確かなものがベースになっているのであれば、それは 私たちは 目線を改める術を身につけないといけない。
これはそんな未来をきちんと選択して生きていく為の技術書です。
一見、若者向けに書かれているようですが、本当に必要なのはデジタルネイティブではない中高年だと個人的に感じます。

WHEELACTION BOOKSTORE 西村豪さん

2021.09.27

民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代中公新書

民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代

藤野裕子

アナキズムは、支配権力に抵抗する民衆の力に注目してきた。本書は、その民主化運動としての可能性だけでなく、関東大震災のあとの朝鮮人虐殺など、民衆の暴力がさらに弱い人たちに向けられた歴史を直視する。暴力をどう制御し、秩序をつくるのか。民衆の暴力と国家の暴力とはいかなる関係にあるのか。日本で近代国家が樹立される過程で噴出した民衆暴力を丁寧に描き出す本書は、『くらしのアナキズム』では十分に深められなかった重要な問いを投げかけている。

『くらしのアナキズム』著者 松村圭一郎

2021.09.24

21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学ミシマ社

21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学

平川克美

『くらしのアナキズム』に出てくる「贈与」と「市場交換」、「有縁」と「無縁」の関係。それらはいずれも平川さんが本書で論じていたテーマだ。人は「正しさ」に憧れて物事を二項対立的にとらえ、一方を思考の外に追い出して中心がひとつの真円のように考えてしまう。そうではなく、ふたつの焦点をもつ楕円を描くように考え、ためらう。どちらか一方に偏りすぎない節度をもつ。それはまさに対立をのりこえる「大人のアナキスト」の態度だ。アナキズム論と楕円幻想論は、深いところで共鳴している。

『くらしのアナキズム』著者 松村圭一郎

2021.09.22

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論岩波書店

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

デヴィッド・グレーバー著/酒井隆史ほか訳

『くらしのアナキズム』ではふれられなかったD.グレーバーの名著。じつはアナキズム論とブルシット・ジョブ論はつながっている。無意味な仕事が増加した背後には、大衆に暇を与えると危険だという富裕層や権力者の思惑があった。グレーバーは、それを富と権力の集中に異議申し立てする人びとの力を削ごうとする政治的プロジェクトだったという。「こんな仕事辞めてやる!」。そう言えなくなったぼくらは、政治的な力も同時に失ってきたのだ。

『くらしのアナキズム』著者 松村圭一郎

2021.09.20

ラフカディオ・ハーンの耳岩波書店

ラフカディオ・ハーンの耳

西成彦

比較文学を専門にされている西成彦さんによる、ラフカディオ・ハーン論及びに日本文化論。なかで引用されている「教育や知識が、(...)純粋に自然な感情や素朴な表現能力を葬り去ったということです。農民を教育してごらんなさい。それはかならずや彼らの詩心を殺ぐことになります。」というハーンの言葉に、ハッとしました。明治期の急速な近代化によって失われた音の呪術性、そして感性が変わってしまったことで聴こえなくてしまった音。ハーンが今生きていたらどんな音を聴くのだろうとぼんやり考えていました。

ミシマ社 田渕洋二郎

2021.09.17

竹でつくる楽器創和出版

竹でつくる楽器

関根秀樹

食材にも、建材にも、容器にも、楽器にもなる竹。その切り方、削り方を工夫すれば、尺八や篠笛になったり、アイヌのムックリになったり、南米のケーナになったり、インドネシアの打楽器にもなったりします。この本に衝撃を受けて、実際に山に竹を取りにいき、削り、吹いたのですが、どの過程も本当に気持ちのいい時間でした。竹一本あれば無限に遊べて、世界はこんなにも豊かになる。今年の冬も山へ行くのが楽しみです。

ミシマ社 田渕洋二郎

2021.09.15

じべた橙書店

じべた

谷川俊太郎/文、黒田征太郎/絵・字

どんなに風が吹いても、大雨がきても、流されないじべた。でもあるとき「きかい」がやってきて、ビルが立ち並び、いつしかかくれて見えなくなってしまいます。読んでいて、その覆われた表面を少しずつ「じべた」に戻していくだけでも、あらゆる植物、いきもの、そして地球にとって、息がしやすい世界になるよなあ、あと転んでも痛くないよなあと、ふと思いました。

ミシマ社 田渕洋二郎

2021.09.13

雑貨の終わり新潮社

雑貨の終わり

三品輝起

雑貨店を営む著者による、消費社会への愛憎まみえる雑貨論。あらゆる物が雑貨化するという論考を受けて思うのは、買う側に「媚び」を売り始めた時に雑貨化は始まるのでは?ということ。逆を言えば、つくる側と売る側に「矜持」が求められています。さらに話を広げると、買い物は責任が伴う時代に。気候変動や海洋汚染、人権問題などに直結しており、買う側も矜持を示さなければなりません。物が好きだからこそ本気で考え続けたいことです。

READAN DEAT 清政光博さん

2021.09.10

ほんとうのリーダーのみつけかた岩波書店

ほんとうのリーダーのみつけかた

梨木香歩

今年で40歳になりますが、未だに人の目が気になります。例えば「いい人アピールかも?」といった自意識過剰な考えが頭をよぎり、電車の中で席を譲ることを躊躇してしまったり。この本は若い人へ向けて書かれた梨木香歩さんからのメッセージですが、きっと大人にこそ必要な一冊です。自分を客観的に捉えて行動できているか、問い直すきっかけを与えてくれます。定期的に読み返すことで自己を点検しています。

READAN DEAT 清政光博さん

2021.09.08

小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常幻冬舎

小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常

辻山良雄

「独立系書店の品揃えは似ている」という批判的な意見を以前何かで見かけました。確かに一部の人にはそうかもしれませんが、その街のお客さんに届けたいと思って店主が選んだ本であるならば、問題ないと思っています。荻窪の新刊書店、Titleの辻山さんが綴る日常のエピソードは読んでいて姿勢が正されます。それぞれの場所で、それぞれの想いで同じ本を届ける。それは逆に胸を張っていいんだと気付かせてもらいました。

READAN DEAT 清政光博さん

2021.09.06

挑発する少女小説河出書房新社

挑発する少女小説

斎藤美奈子

若い頃読んだ本ですが、その頃は、ただただ胸をわくわくさせて読んだけれど、「あ~こんな意味があったのか」と、いま一度読んでみました。「女はかくあるべし」というジェンダーから離れ、自分で自分の人生を切り開いていく主人公に影響を受けていたのかも? 魔法使いがいなくても、それに頼らなくても、生きていけるんだと後押しされていたかも。

(ミシマ社サポーターさん)

2021.09.03

美容は自尊心の筋トレ P-VINE

美容は自尊心の筋トレ

長田杏奈

まず題名に心をもっていかれました。本の内容はさらに度肝を抜くものもありましたが、カチカチだった「美容」に対する考え方をやわらかく、優しく、そして自分を美しい方向へ変えてくれた一冊です。「今日はイケてないかな・・・」という日に読むと「これでいいや!」と元気になります。(編集部より:著者の長田杏奈さんへのインタビュー記事「美容は自尊心の筋トレ、という提案」はこちら

(ミシマ社サポーター 星野靖子さん)

2021.09.01

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