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第3回

3限目:『今を歩く 第10回「ファッションについて」小石祐介』前編

2018.08.21更新

 毎月1回の定期更新というつもりで始めたこの連載ですが、気づけばすでに不定期連載の様相となって参りました。せめて今後も不定期という定期更新を目指して自分のペースで続けていこうと思いますので、そんなつもりでお付き合い頂ければと思います。

 さて、せっかく『みんなのミシマガジン』という媒体で連載をしているのだから、今回のテーマはミシマガジンで連載されている数々の素敵な文章の中から選ぼうと思い、散々迷った結果小石祐介さんのファッションについての文章に決めました。

 理由としてはファッションについて自分があまり自覚的じゃないということがあります。どうせだったら素敵な服を着たいなあとは思うものの、その欲求は僕の人生においてあまり優先順位は高くありません。

 また、そんなファッションに興味がない僕だけど、森田真生さんのツイートで小石さんが企画デザインされている『NOVESTA』というスニーカーメーカーのイベントがあると知り、なんとなく伺うことにしました。そこで買った『MARATHON』というモデルの靴は、軽さや履きやすさ、シンプルな格好良さもさることながら、何より「スロバキアの靴なんだよ」というプチ情報を後輩たちに自慢できる点が優れていて、おかげで何人かの後輩から「さすが吉笑兄さんはセンスがいいですねぇ」と褒められました。そのお礼も兼ねて、今回は小石さんの連載について向き合ってみようと思います。

 ということで、まずは『今を歩く 第10回「ファッションについて」』をお読みください。また後ほど、こちらで合流しましょう。

 この連載を読んでまず思ったことは「あぁ、小学校の制服をアルマーニにしようとして騒ぎになったやつがあったなぁ」ということです。たった数カ月前の出来事ですが、そんなことはもうすっかり忘れていました。あの後どうなったんですかねぇ。

 とは言え、『吉笑ゼミ。』は時事エッセイを書く場じゃなくて、テーマを自分なりに考えて最終的に落語の形に昇華させようというものなので、もう少し普遍性のある「ほつれ」を見つける必要があります。

 よく考えてみたら当たり前のことだけど、改めて文字で目にしてハッとしたのは、「ファッション」と聞くと直感的に「服」を想起してしまうけど、服はファッションの一部でしかなくて実際は服以外の「振る舞い」だったり「知識」だったり、小石さんの言葉を借りると「人の装いや有様の様相」そのものもファッションと言えるということ。ファッションはめちゃくちゃ範囲の広い言葉なんですね。そうやって考え出すと、自分にまつわるありとあらゆることがファッションと思えなくもない。喋り方もそうだし、この文体、落語家だということ、禁酒中、独身、パクチーが嫌い、これらもファッション? さらには「人間である」ということも? 「いま、ここ」にいるということも? むしろ「ファッション」ではないものってなんなの? この「ほつれ」は根が深そう!

 イベントではゲスト講師の講義を聴きながら、この連載ではこの文章を書きながら、どんどんとアイデアの種が溢れてくる。それをできるだけ漏らさずすくい取っていきたい。

 僕と同じように大勢の方は「ファッション=服」と思い込んでしまっている。ファッション雑誌には流行りの服がたくさん掲載されている。・・・おっと、早くも脱線をするけど、この「流行りのファッション」にも違和感を感じます。

〈流行りのファッション〉
 「この秋のトレンドはモノトーンです」みたいなことを、秋がくる前に伝える番組だったり雑誌を見たことが何回もある。この「流行」が先立つ感じって何か歪な感じがしませんか? 秋がくる前になんで秋に何が流行るのかがわかるのだろう。

 そう言えば以前『JUN』というファッションブランドから社内イベントで「ファッション」についての落語を披露してほしいと依頼を受け、まさにこのあたりのことを探ったのを思い出しました。その時調べて驚いたのは、確か世界には流行色を決める機関というのがあって、そこが「次はこの色でいきましょう」と発布しているとのこと。なにその仕組み!

 実は自分たちの知らないところで誰かがそんなルールを決めていると仮定したら、その状況はネタになりそう。思えば「長袖の上に半袖を重ね着するスタイル」とかもよく考えたら変だものなぁ。誰かの仕業かも。

 で、話は戻るけどファッション雑誌には流行りの服がたくさん掲載されているけど、先に述べたようにファッションをもっと広い範囲だと捉えたら、

〈服以外のファッション雑誌〉
 例えば「言葉づかい」とか「仕草」についてのファッション雑誌があったら? 「この冬は慎重さがにじみ出る『二度見』が流行る」みたいな特集。「できる男のうなずき方」みたいな。

 ファッション雑誌の編集部員が表参道でおしゃれな人のストリートスナップを撮影しているみたいに、オフィスの脇に編集部員が立っていて「すみません、今のハンコの押し方を撮影させてもらえませんか?」みたいな。今の時期だったら高校球児用に「保護者に刺さる甲子園の砂の持って帰り方」とか。ファッション雑誌の編集部員用のファッション雑誌での「秋の街頭アンケート時のコーデはこれだ!」とか、

 服以外のファッションについての雑誌だったり、めちゃくちゃ狭い対象のためのファッション雑誌だったりについてのネタは何かしらできそうだ。というか現に、雑誌の見出しとかって大喜利かと思うくらい突拍子もないものがたくさんある。

 実用書なんかもまさにそうだし、就職活動に伴うリクルートスーツとか、面接審査での理想的な受け答え方について書かれた本とか、歪さで言えばもはやネタレベルだもの。

 と、ここまで書いてきてさらに僕が引っかかったのは、「ファッション」と聞いて直感的に「服」を想起してしまう僕だけど、

〈そもそも「服」ってなんだろう?〉
 古典落語の中で「着てりゃ服だけど、落ちてたらただのボロきれだ」というフレーズが出てくることがある。貧乏な登場人物がそれくらい粗末な服装をしているということだけど、確かに服ってなんだろう。子供の時にゴミ袋に穴を開けて、そこに頭を入れてワンピースみたいにして着たことがあったけど、「ゴミ袋」も着たら「服」になるということだ。と考えると「着る」という行為が今度は何か不思議に思えてくる。僕は今、これを書いている「家」を着ていると考えられなくもないし、宇宙から見たら地球を着ていると考えられなくもない。もっと遠くから見たら宇宙を着ている? 現実を着ている? さらには、例え裸になっても、自分を着ている? じゃあそれを脱ぐとどうなる? 「脱衣所で自分を脱ぐ」みたいな状況もある? と、このあたりも掘っていくとネタになりそう。

 など、小石さんの連載の冒頭部分だけでもこれだけザクザクとネタに繋がりそうな「ほつれ」が見つかる。さらには中盤以降に書かれている「制服」であったり、ファッションにおける「象徴や記号」の強大さについても、すでに色々な糸口を見つけているけど、ひとまず文字数が増えてきたので、続きはまた次回!

立川 吉笑

立川 吉笑
(たてかわ・きっしょう)

1984年生まれ。京都市出身。2010年11月、立川談笑に入門。わずか1年5ヵ月のスピードで二ツ目に昇進。「立川流は〈前代未聞メーカー〉であるべき」をモットーに、気鋭の若手学者他をゲストに迎えた『吉笑ゼミ』の主宰や、初の単著『現在落語論』(毎日新聞出版)の刊行、全国ツアーを開催するなど、業界内外の注目を集める。

立川吉笑ウェブサイト

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