第1回
ドイツから叫ぶ「こんな幼稚園ありかよ!」
2026.03.18更新
コツコツと更新を重ねている、「ミシマ社ラジオ」。
本日のミシマガでは、第32回、『大地との遭遇 こんな幼稚園ありかよ』著者の税所篤快さんをゲストにお迎えした際のトークの一部を、再構成した記事をお届けします。
幼稚園「大地」で過ごした日々のこと、園長先生青ちゃんの予言、そして今ドイツでどのように暮らしているのか。本書をこれから読む方も、すでに読んでくださった方も、ぜひお楽しみください!
作品として一番ふさわしいタイトル
ミシマ・フジモト:ゲストの税所さん、ようこそ~。と言いつつ、今どちらにいます?
税所:今、ドイツの ザールラントというところから参加してます。
ミシマ:この『大地との遭遇』というタイトルの本、「大地」というのは長野県にある幼稚園で、そこでの日々を書き綴った一冊なんですけども、その著者である税所さんが今ドイツにいるってどういうこと? となりますよね。これね、「読めば、分かる」という言葉を、本書の帯にスタジオジブリの鈴木敏夫さんがくださっていますが、まさにその通りなんですよね。読むと、だんだん染みてくる。
税所:ありがとうございます。
ミシマ:タイトルについて、出版社的に言うと、「こんな幼稚園ありかよ」をメインタイトルにして、「大地との遭遇」をサブタイトルにするという手もあったし、目先のセールスを優先するなら、そのほうがわかりやすかった。でも、一冊読み通した最後に、ああ、『大地との遭遇』というタイトルしかないなって、読者にわかるんですよね。作品として一番ふさわしいタイトルをつけられたのは、僕らとしてもよかったなと思っています。著者の税所さんから、この本を簡単にご紹介いただいてよろしいですか?
税所:ご紹介があったように、大地は長野の飯綱町にある幼稚園で、豊かな自然に囲まれて親子が過ごすというのが一番目立つところなのですが、実はその背後で、園長の青ちゃんたちが積極的に親の生き方を問うてくるという、幼稚園だったんですね。
いくつも印象に残っている言葉があるんですけど、やっぱり一番は、「子どもたちにこういうふうに生きてほしいという願いがあるんだったら、親がまずそれをやらなくちゃ」という言葉でしたね。
青ちゃんの予言
ミシマ:ここで、今、なぜ税所さんはドイツにいるのか、という話に戻りますが、本書の最後のほうに、シュタイナー教育をもっと勉強するためにドイツに行こうと思います、と税所さんが園長の青ちゃんに伝えるシーンがあります。それに対する答えが本当に秀逸で、「まず成長しないといけないのは税所君、あなたのほうだよ」というね。
税所:いや、ミシマさんあれ、僕ほら、応援してくれると思ったんですね。背中押してくれると思って、その一言を聞きに行ったら逆に、もっとここにいて、あんたがもっと成長しないといけないよって。普通の園では、親の選択だからまあ、ほっとくじゃないですか。それを諌めるような、ある種おせっかいなことを、線を跨いでやってくるところが、やっぱりすごく「大地」で、僕は、好きなところなんです。
ミシマ:まあ、ちょっと僕と税所さんって似たところがあると思うんですよ。パッと思いついて行動しちゃう。僕は最初、税所さんが20歳くらいの頃に会っていて、そのころから、面白いし、頭のいい人だろうなと思ってはいたんですけど、あまりにも勢いがすごいから勢いしか印象にない(笑)。なんといっても、最初の作品のタイトル、『前へ!前へ!前へ!』ですよ。どんだけ前に出てくんねん、落ち着けっていうね。
税所:そうですよね(笑)。
ミシマ:そんな税所さんをたしなめる方が出てきたことに、僕は感動しました。園長先生、よく言ってくれたと思いましたよ。僕とか税所さんみたいな人間にとって、そういう方が必要なんですよ。僕は自分自身が青ちゃんに言われているように読みました(笑)。
税所:ミシマさん、ドイツに来て、もう2年経ったわけなんですよ。『大地との遭遇』は、ドイツで長野を振り返りながらまとめた一冊だったんですけれども、青ちゃんが諫めた、僕の父親としての成長が足りないという言葉がですね、ある種予言的な意味を帯びて、ドイツに来てから様々な困難が降りかかって参りました。
ミシマ:めちゃくちゃ面白い。すごいいい話ですね。
税所:まあまあタフな、夫婦でのパートナーシップの困難に直面することもあったんですよ。そのたびに、この青ちゃんの予言が胸に響いて、やっぱり未熟なまま来たからこうなったわ、という・・・。
ミシマ:本の中にもエピソードが出てきますけど、青ちゃんは、子どもだけじゃなくて、たくさんの親としての夫婦もご覧になってきているわけですよね。だから青ちゃんには見えていたんでしょうね。
税所:さらに言えば、青ちゃん自身も、僕とミシマさんと共通した部分を持っているんだと思うんです。
親が本気でバカをすること
ミシマ:そうでしょうね。わかるわかる。つまり同じ過ちを繰り返してほしくないみたいなところがあるんですよね。たぶん親心としてね。それを振り切って行ってしまう税所さんというのも僕はよくわかるし、そういう税所さんも僕は好きだなと思ってます。親が変われば子どもも変わるという、本書のメッセージで言うと、税所さん自身がそうやって困難に巻き込まれていっているこの2年間に、子ども3人も何かを学んでるはずですからね。
税所:そうですね。今年の1月1日に私、スペインのタラゴナ海岸で、初日の出に向かって出版記念と重版祈念を兼ねて、寒中水泳を行ったんです。
ミシマ:普通に考えたら意味がわからないですよね。
税所:当時12月の僕は、ドイツにいながらこの本を読者の方に届けるのに、何ができるんだろうということを非常に悩んでいたんですよ。そんな時にバルセロナから海を見ていると、大地での体験が蘇ってくるわけですよね。あ、そうか、海があるということで、寒中水泳のアイディアが(笑)
ミシマ:著者が本のためにできることが寒中水泳って初めて聞きましたね。これたぶん出版の歴史の中でも初めてのエピソードじゃないかなと思います。
税所:当時スペインの真冬ですね。朝8時過ぎですよ。妻がスマホで撮影して、日本の皆さんが中継で見ているところに、僕が『大地との遭遇』に出てくる海のシーンを朗読した後に、海に向かって駆け出していく後ろ姿を息子たちは近くで見ているわけですよ。長野から見ていた保護者仲間が、これぞ大地の真髄だと。親が本気でバカをすることを子どもに見せるということなんですね。本気で遊ぶっていうことなんですよ。
ミシマ:確かに確かに。それ言葉じゃないですよね。
今までにない職業をつくる
ミシマ:税所さんは、これからもずっとドイツに住み続けるんですか?
税所:今週妻とその話をします。
ミシマ:ホットな話題を振りましたね。でも、どうなっても楽しみですね。ドイツにいる、日本に戻ってくる、また違う場所に行く、いろんな選択肢ある中で、今後、学びとか教育というものとどう携わっていこうと今お考えなんですか?
税所:そうですね、20代の時に『「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう』という本を出しましたけど、そこにすごく関心を持って活動していたわけですよね。今の僕は、大地での学びを経て、僕自身がいかに自分の学びを更新できているかということ、自分自身が一番よく学んでる状態を30代では目指していきたいと思っているんです。
ミシマ:一周回っての結論が、この本の最後に戻ってきたような感じもしますが、フジモトさんどうですか?
フジモト:素直な気持ちで真っ直ぐ人生を生きられているというのがいいなって思います。いろんなこと考えちゃって、できないことも多い中、真っ直ぐ前をどんどん進んでいらっしゃるんだなっていうのをすごく感じました。
税所:僕、ミシマさんと最後に会った10年近く前に、京都のオフィスである一冊の本をいただいて別れたんですよ。それが甲野善紀さんの『今までにない職業をつくる』。今お二人と話していて、僕が学びを更新しながら学びを創出していくということが、「今までにない職業をつくる」ということへの応答なのかもしれません。中間報告ですね。
ミシマ:いやー、これからが本当に楽しみです。今日はドイツからありがとうございました。
税所:ありがとうございました!
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