第206回
サブスク時代の映画沼の道しるべ!――『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』発刊
2026.01.16更新
こんにちは。ミシマガ編集部のスミです。
いよいよ明日1月17日(土)、春日太一さんの『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』が、リアル書店発売となります!(ネット書店を含む公式発刊は、1月21日(水))

配信プラットフォームで映画を観ることが主流となった今、自宅にいながら日本映画の傑作に出会い、存分に楽しむための、新しい作品ガイドです。
自宅のテレビ台やソファーに常備しておくのにぴったりの、ポケットサイズ文庫版。
装丁は寄藤文平さん・三浦裕一朗さんに手掛けていただきました。
迷えるサブスク時代の道しるべ。
私はひそかに本書をこう呼んでいます。
というのも、私はいろいろな配信サイトのアカウントを持ってはいるものの、いざテレビ画面の前に座ってから、「何を見たらいいのかわからない・・・」と、途方に暮れることがよくあるからです。
休みの日に「今夜は名作を観たい」と意気込んでも、「あなた好みのおすすめ」欄ではなにか物足りず、リモコン片手にずるずると検索しているうちに数十分が経ち、そのあいだに用意していたビールもぬるくなって、こんなはずじゃなかったのに!! ということを幾度となく繰り返してきました。貴重な週末の夜が溶けてゆく・・・。
同じようなご経験のある方は、きっと少なくないのではないか、と思います。
本書の冒頭で、春日さんはこう書かれています。
多くの方は次のような壁にぶつかるのではないでしょうか?
・作品数が多過ぎて、どの作品を観られるのか追いきれない
・どれを観ればいいか判断できない
・それぞれの作品がどのような内容かわからない
・それぞれの作品にどう接し、どう楽しめばいいかわからない
本書は、そうした方々に向けた一冊になります。
(...)
・今、こういう作品が観られますよ
・この作品はこういう内容ですよ
・この作品は、実はこういう接し方、楽しみ方ができますよ
――といったことを、筆者自身の実体験を交えて、短い文章でわかりやすく記してあります。これ一冊で全てを網羅できるわけではありませんが、広大な旧作邦画の沼の入り口に――ある程度の地理感とともに――立つことができるのではないかと考えています。
――春日太一『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』2-3頁
地理感。まさにこれが、私も映画を探して観るときにほしいと思っているものです!
では、本書はどのようにして「沼」の道しるべとなってくれるのか? その一部をご紹介します。
道しるべ① 珠玉の厳選55作品!
本書は、雑誌「週刊文春」で13年以上にわたりつづいた人気連載「春日太一の木曜邦画劇場」全600回以上から、55本を厳選したベストコラム集でもあります。
忙しくて時間が足りない方も、膨大な日本映画の作品群から、「今週末はこれ!」と選んでいただけます。
<本書が取り上げる作品>
『隠し砦の三悪人』『座頭市血煙り街道』『浪人街 RONINGAI』『天使のはらわた 赤い教室』『飢餓海峡』『旗本退屈男 謎の蛇姫屋敷』『GONIN』『竜二』『スケバン刑事』『戦争と人間』『居酒屋兆治』『緋牡丹博徒 お竜参上』『吸血鬼ゴケミドロ』『金環蝕』『人斬り』『極道の
道しるべ② 12の視点
それぞれのコラムは、邦画を楽しむ「視点」にそって、12章で構成されています。
1 春日流、邦画の楽しみ方
2 男惚れした男たち
3 戦後邦画史を象徴する作品
4 やくざ映画でしか救われない魂
5 戦う女性たち
6 戦争を描く
7 名作に名スタッフあり
8 仄暗い青春に捧ぐ
9 ザ・名匠
10 あの監督・脚本家の秘作
11 ぶっとんだストーリー! マッドな奴らが大暴れ
12 今、蘇る傑作
「やくざ映画を、おそるおそるはじめてみるときの楽しみ方は?」「歴代の名作が描いてきた女性の姿を知りたい」「この夏に戦争映画をじっくり観賞したい」。そんなとき、それぞれの章から気になるテーマを選んでみてください。
各章の冒頭には、春日さんによるミニ解説も載っています。
『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』第2章冒頭
道しるべ③ あの名優の演技と生き様
名優と呼ばれる俳優たちの演技、ひいては生き様そのものに光を当てたコラムも多数掲載しています。
ニュースで名前を聞いた俳優の演技を見てみたい、映画史に残る名演技やアクションに触れ、唸り、わくわくしたい、といったとき、ぜひ目次を開いて、こんな見出しを探してみてください。
・仲代達矢をスターにした日本映画屈指の大作
・二〇二四年エミー賞受賞までの道のり(真田広之)
・松方弘樹、東映やくざ映画の看板を背負った男
・市川雷蔵、命がけの晩年の殺陣『ひとり狼』
・三國連太郎、一世一代の名演技
・高倉健はギャング映画も様になる
道しるべ④「春日流、邦画の楽しみ方」に触れる
本書でなによりおもしろいことのひとつは、「春日太一さんが映画をどう観ているか」に触れられるということです。たとえば・・・
一般的に時代劇というと『水戸黄門』などに代表される「お年寄り向けの古臭い表現」という印象が強いのだろう。筆者は二十代から「時代劇研究家」を名乗ってきたため、「時代劇の研究をしている」などと言うと「その若さでなぜ」と聞かれることが多い。だが、その理由はいたって単純だ。とてつもなく面白かったから――。(...)筆者が時代劇にハマるキッカケとなった一つが、今回取り上げる・・・
――春日太一『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』17頁
以前、佐藤浩市にインタビューをさせていただいた際、「父・三國連太郎が演じてきた中で、今の自分が演じてみたい役柄」という話題になった。その際に佐藤が挙げたのは『復讐するは我にあり』だった。一方、「自分にはできない」と述べた役柄がある。それが、・・・
――春日太一『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』63頁
近年のやくざものの映画やVシネマには、どうもハマりきれないものがある。凄味をきかせ腹の据わった者ばかり登場するため、粋がっている絵空事にしか見えないのだ。
かつての東映やくざ映画には、むしろ観客が笑い飛ばしたくなるような「ヘタレ(根性なし)」たちが数多く登場している。
――春日太一『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』95頁
映画史・時代劇研究家であり、数々の俳優、監督、映画の作り手たちにインタビューをしてきた春日さんだからこそ書ける、映画の見方。一度見たことのある作品を、本書を片手にもう一度楽しんだり、まずは作品を観たあとで、本書を読んでみたりすることもおすすめです。
『自宅で楽しむ 週末邦画劇場』は、1月17日(土)リアル書店にて発売です。
ぜひ、今週末からのお供に! お近くの本屋さんでお手に取ってみてください。





