教えてナカムラさん! 採用のこと、仕事のこと(2)

第8回

教えてナカムラさん! 採用のこと、仕事のこと(2)

2018.12.24更新

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『生きるように働く』ナカムラケンタ(ミシマ社)

『生きるように働く』の著者であるナカムラケンタさんは、求人サイト「日本仕事百貨」を運営されています。そして、その日本仕事百貨で新しいスタッフを募集することにしたミシマ社。12月5日のお昼にその求人ページのための取材で、ミシマ社メンバーが、ナカムラさんからインタビューを受けたのでした。その夜には今度はミシマ社メンバーがナカムラさんへ逆インタビューする「教えてナカムラさん! 採用のこと、仕事のこと」というイベントをご近所のかもがわカフェさんで開催。2日目の今日は、すごく盛り上がったお客さんからの質問コーナーをお届けます。

1日目の記事はこちら

結局、自分が「どう」生きたいか。

お客さん 転職を考えていて、いま「自分のライフワークが何なのか」について日々考えているんです。みなさんのライフワークを教えていただけますか。

ナカムラ 僕が今日取材して思ったのは、ミシマ社の皆さんは「これが自分のライフワークだ」と思ってる感じじゃないんです。

渡辺 かもしれないですねぇ。

三島 僕自身は、「オン・オフ」でいったら、生きてる間はずっとオンだと思う。それは、生きている間ずっと働いてるってことではなくて、1つの生命である人間として、より豊かに他者との関係を築きあって、全体がいい感じで生き延びていくっていう。これが理想なんだろうなぁと。その道筋として、1つ、仕事があるということかなぁと思っていて。

ナカムラ そうですね。

三島 その、"ライフワーク"っていう、何か一つの対象があるっていうよりかは、ひとつの人生ですからね。だから、「この仕事」というようことは、あんまり思ってないですね。

ナカムラ 渡辺さんはどうですか?

渡辺 私は、学生時代からも含めて本屋に行くのがすごく好きで。本の流通とか販売とか、出版社をいまやってますけど、本の近くにずっといる感覚があるんです。それで、本の近くにいて嫌な思いをしたことっていうのはないんですよ。

ナカムラ おお、いいですね。

渡辺 本の近くにいると、いいことがある。たとえば今日のこの場も含めて、本当は人の前でお話をさせてもらうような身ではないんですけど、本の近くにいるとこういう機会もあって。本がきっかけで楽しいことがたくさん起こる感じですね。

ナカムラ なるほど。

渡辺 以前新潟の書店員さんを取材したときに、「本当はこうしたいけど、なかなか時間も取れなくて、うまくいかなくて、あーとかうーとか言いながらやってるけど、でもまぁ喜怒哀楽だよなぁ」と仰っていて。その喜怒哀楽を仕事を通じて感じられるのって、すごく素敵なことだなあと思いました。ときに怒りだったとしてもそうだと思ったんです。

ナカムラ いいお話ですね。でも少し気になったのが、三島さんも渡辺さんも、「生まれてからいままで、最初からそうでしたか? 」と聞きたいんです。もっと噛み砕いて言うと、「修行や、準備期間みたいなものはなかったんですか?」という質問。三島さんは最初に入った2社の出版社では、いまみたいに、いまを生きている実感がありましたか?

三島 ありました!

ナカムラ 本当ですか(笑)?

三島 あったあった(笑)。でも学生まではけっこう悶々としてました。

ナカムラ 悶々としてた時期はあったんですね。

三島 学生の頃から「How do you live?」って聞かれたら、「とにかくおもしろく生きるんだ!」ってことは明言していて。でも、そのエネルギーのやり場がなくて、走りたくても走れない状況に悶々としていました。

ナカムラ なるほど。

三島 それで、出版のこともあまり知らなかったんだけど、たまたま出版社入ったらすげぇ楽しい。だから、ライフワークというよりか、「どう生きるか」という問いがけっこう重要だと思ってるんです。

ナカムラ うんうん。

三島 ときどき、就活の相談を受けたりもするんですけど、「私、何が向いてると思いますか?」とか言われたりすることがあって。

ナカムラ ありますねえ。

三島 「『なに』じゃなくて、あなたが『どう』生きたいかという問いがまずないと、『なに』は見えないと思うよ」ということをけっこう言うんです。

ナカムラ なるほど。

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面接でわかってしまうこと

三島 僕からひとつナカムラさんに質問なんですけど、どういうタイミングで「採用しよう」って思います?

ナカムラ 人が必要になったときですよね。足りない! ってなったとき。定期採用はしていないですし。

三島 足りないってなったときって、手遅れではないですか?

ナカムラ うーん。僕らの仕事はですね、人が足りないと、クライアントを待たせている状態になるんですね。でも人が足りないから会社が立ち行かなくなる、という話ではなくて。「お待たせしているな」ってなって、「もうそろそろ採用しなきゃな」って感じです。

渡辺 なるほど。でも誰でもいいってわけじゃないんですよね。もちろん。

ナカムラ そうですね。僕らはいま、文章を書くゼミをやっていて。そのゼミ生から採用しております。だから、ゼミをやりながら「いいな」と思った人を採用している。
もともと僕、5年くらい前は文章は誰でも書けるものだと思ってたんですけど、いまはやっぱり仕事百貨の文章は、ある程度の適性があるっていうことがよくわかりました。

三島 適性はありますよね(笑)。

ナカムラ それを見極めるのは、1回の面談だけではやっぱり無理なんですよね。だから、ゼミをやって、ゆっくり人を見ています。だから採用した人は、間違いがないです(笑)。いまのところ。4名採用しましたけど、全員優秀。

渡辺 いいですね。技術ももちろんですけど、メンタリティも大切ですよね。

ナカムラ そうですね。技術というよりかはそっちですね。技術は後からいくらでもついてくるので。姿勢がすごい大切ですね。

三島 1回の面接ではわからないですよね。

ナカムラ わかんないんですよ。面接だけだと判断つかないのは、目がキラキラしてる人とかですね。最近はもう、それだけでは採用しないです(笑)。

三島 なるほど(笑)。

ナカムラ すごい背伸びしてる人っているんですよ。1回だけだと、作れちゃうんです。全力を傾けてこの面接の準備をしていると、「この人すごい!」と思うもん(笑)。
だけど、入ってから枯れたようになっちゃう人とかを見てきたことがあるので...。

渡辺 辛いですねえ。

ナカムラ でもそれを見破る方法がひとつあるんです。

三島 おぉ!!

ナカムラ 今日教えましょう。それはね、面接中に30秒くらい黙ってみるとわかるんです。

三島 へぇ〜!

ナカムラ そうするとですね、すごい目がキラキラしてる人たちっていうのは、基本的には自信のない人たちなので、30秒も無言になっていると、不安で不安でしょうがなくなってしゃべり出します。

三島 うんうん。

ナカムラ だけど、本当に自信があって、「まぁこれダメだったらしょうがないな」って、ある種の達観がある人っていうのは、「あっ、いまこの人は考え事をしてるんだ」と落ち着く余裕があって、「私も待っとこう」って、待ってられるんですよ。本当に自信がある人はこうやってニコニコしながら待ってます。

渡辺 なるほど!

ナカムラ で、待ちきれないように自分のことペラペラ話しちゃう人は、ちょっと減点対象です。「考え事してるのを邪魔してまで言うことかい?」という感じで。言い方悪いですけど(笑)。

渡辺 僕らみたいな登壇者が30秒くらい黙ってたら事故ですけどね(笑)

ナカムラ そうですねぇ(笑)。

渡辺 逆にお客さんがしゃべり出しちゃうみたいな(笑)。

--(笑)!!

「こうしないといけない」は気にしない

お客さん 周りの友達が転職をしている人が多くて、そういう人がすごくカッコよく見えるんです。そうすると、新しいことに挑戦していない自分がダメなのかも、思ってしまうときがあって。その辺をどういうふうに見極めたらいいのか、もし何かアドバイスがあればいただきたいです。

三島 まったく気にしなくていいと思う。

ナカムラ そうですね。

三島 僕は続けられることって、とてもかっこいいと思いますよ。それで、続けるなかでは、楽しいときと楽しくないときとかいろんな状態があるから、それを全部引き受けながらやっていくっていうことしかないと思います。周りがどうであれ「自分が選んでやってるんだ」っていう実感さえあったら、あとはどうだっていいと思う。

ナカムラ 本当そうですよね。もちろん、隣の芝生はみたいなことはありますが、僕は、本当にそんなに羨ましいんだったらやっちゃえばいいと思いますけどね。それで、やってみてからまた考えてもいいと思うよ。

三島 あとね、周りを見て「自分もこうしないといけないんじゃないか」というのは、全部、自分に対して檻をはめてるようなものなんです。「挑戦」が価値だと捉えているのも自分への檻です。だから、そういうものから自分を解放していくということがすごい重要で、そのためには、まずは人と競争しないっていうこと。そもそも競争するような場に行かないことが大切かな。

ナカムラ おお。

三島 僕は基本的にずっとそうしてきました。だからミシマ社はどこの出版社とも競争してないんです。ただ、おもしろいと思うものをやるっていう。「おもしろい」っていうのは、絶対に測れないものなので。たとえば僕がナカムラさんの本を「おもしろい」って言う。これに対して誰も否定できないですよね。「いや、この本はおもしろ数値がまだ0.5%足りません」って言おうものなら、心配されますよね。

ナカムラ 本当ですね。

三島 そうやって生きると、「あっ、こういう景色があったんだ」と、同じ地点に立ってても全然景色が違いますよ。僕ももともと会社を作るなんて全然思ってなかったですし。

ナカムラ 本当ですか(笑)?

三島 「会社だけは作るまい」と思ってた(笑)。でもそれがすごい自分を縛ってたわけですよ。あるときそれがフッとなくなって、「会社つくればいい」と思って(笑)。ひらめいた瞬間にアイデアがどんどん湧いてきて、それをガバッと起きてノートに書き溜めました。

ナカムラ 『計画と無計画のあいだ』にもある、有名な話ですね(笑)。

三島 自分の感覚を大切に、閉じることなく、けどなんでもかんでも流されることもなく。長い目で見たとき、自分の生命力がどうやっていけば高まるかを大切に働いていければいいんじゃないでしょうか。日々を楽しんでいってください。

お客さん ありがとうございます!

(終)

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